日本を代表する通信キャリア企業、ソフトバンク株式会社。2020 年 3月時点でグループ企業数は 260 社を超え、従業員数は単体で約 1 万 7 千人、グループ全体では約 4 万人に上ります。そんな同社は、通信事業を基盤に最先端テクノロジーを活用したサービスを提供することでさらなる成長を目指す「Beyond Carrier」戦略のもと、法人事業において パートナー企業と協力しながらデジタルコミュニケーション・デジタルオートメーション・デジタルマーケティングを推進しています。
そのコミュニケーションのデジタル化を実現するツールの 1 つとして 2020 年 10 月に導入を開始したのが Slack です。それまでのコミュニケーションスタイルはメールと対面を中心にした「日本企業の典型的なスタイル」だったという同社。約 5 万アカウントという大規模な Slack 導入を後押ししたのは、現場の従業員の活用でした。Slack の全社導入以前から、すでに現場はその効果を実感していたのです。
「当社だけでなく、お客様やステークホルダーにとっても、コミュニケーション変革のために Slack を全社導入する効果は大きいと確信しています」
メール&対面を中心とした日本企業型コミュニケーションからの脱却
ソフトバンクでは従来、日常的なやり取りにはメールを使い、すばやい意思決定が求められる場面では関係者を集めて対面で会議を行っていました。常務執行役員 兼 CIO IT&ネットワーク統括担当の牧園啓市さんは「このスタイルの問題点はビジネスのスピードを上げようとすればするほど、会議の本数が増えていくこと」だと指摘します。「当社には何事もすばやく決めて実行する企業文化がありますが、結果として、相当数の会議が日々行われてきたのが実情です」。
会議のような同期型のコミュニケーションにはスケジュール調整が必要になるため、常に適切なタイミングで行えるとは限らず、実施できる回数にも限度があります。その一方で、メールでのやり取りでは対面でのコミュニケーションのようなスピードは実現できません。法人事業の事業戦略・マーケティングを統括する常務執行役員の藤長国浩さんは当時について、「多くの役員は対面での打ち合わせが続き、会議室から出られない状態だった」と振り返ります。「事業のスピードが速く複数プロジェクトが並行して進むため、情報収集と意思決定を繰り返さなければなりません。それに加えて海外出張も多く、常にコミュニケーションに課題を感じていました」。
実のところ、社内では以前から若い世代の従業員を中心に Slack などコミュニケーションツールの活用が進んでいました。ただし何を使うかは現場の裁量に委ねられていたため、さまざまなツールが乱立し、管理が困難になるという問題を引き起こしていました。Slack の全社導入はこの問題を解決するためでもあったと牧園さんは明かします。
「IT 運用管理の観点から言えば、社内で使うコミュニケーションツールは 1 つであることが理想です。またそのツールを社内コミュニケーションの中心に据えて日々の業務を進めていくためには、社内のシステムと連携できることが欠かせません。当社では、その全社標準のコミュニケーションツールとして Slack を選びました」。
「意思決定スピードを高めてビジネスを加速するには、Slack のようなツールを導入し、メール依存・対面依存からの脱却が必要でした。現場はすでにそれをわかっていたのです」
現場での情報共有・検索の効率化が Slack 全社導入を後押し
そもそもなぜソフトバンクの現場では Slack ユーザーの裾野が広がったのでしょうか。その理由について早くから現場で Slack を使い始め、その後全社導入を後押ししたコンシューマ営業統括営業戦略本部 AI/RPA 推進室の飯塚和詩さんは「効率のよいコミュニケーションを実現できるツールだったから」と説明します。
「Slack を使い始めて、メールのように宛先を指定せずとも関係者間で会話の内容が共有できるようになりました。メールが中心だった頃は、スレッドの宛先に含まれていない人に内容を共有するのに手間がかかるうえ、スレッドが長くなったり分岐したりすると欲しい情報を探すのに苦労していたのです。そうした問題が Slack の活用によって一挙に解決できることに多くの現場が気づき、活用の裾野がみるみる広がっていきました」。
さらに飯塚さんは、Slack 浸透の理由として「製品そのものの良さだけでなく、開発理念に共感したこと」を挙げます。「Slack は常にアップデートを繰り返し、機能強化のサイクルも早い。それが現場の支持を集め、業務効率化への意識が高い従業員から Slack の浸透が進んでいきました。さらにさまざまなアプリと API 連携できることも私たちの業務との親和性がとても高く、先を見ても多くの可能性を感じています」。
「Slack が自然に浸透していったポイントは『検索機能』とチャンネルごとの『情報集約』にありました。その使い勝手に多くの現場が気づきはじめ、さらに情報が集まり、活用の裾野がみるみる広がっています」
自動化の推進と社外パートナーとの連携でビジネスのスピードを加速
Slack の全社導入後、従業員約 2 万人のコミュニケーション変革はソフトバンク社内で勢いよく進みつつあります。また Slack と社内システムを連携させ、業務プロセスを自動化する動きも進んでいます。例えば以前は営業部門の実績をメールで配信していたのを Slack への自動投稿に切り替えたり、従業員向けの FAQ の機能を Slack に統合したりすることで、コミュニケーションだけでなく業務全体の効率化につながりました。
今後は Slack コネクトを積極的に活用し、コミュニケーションを軸にしたグループシナジーの創出を目指すとともに、Slack をパートナー企業とのコミュニケーション基盤にすることも構想しています。藤長さんは今後の展望について、「Slack のメリットを活用し、社内外ともっとオープンにコラボレーションしていきたいと考えています。メールでは個々のやり取りで完結してしまいがちですが、チャンネルを活用した『公開議論』によって物事をオープンに進めるコミュニケーション文化を育むことを目指しています」と語ります。Slack のオープンコミュニケーションのとの掛け算で、今後ますます事業を加速するソフトバンクから目が離せません。