新型コロナウイルス感染症がパンデミックとなりつつあった頃、Twitter では経営層が 2 つの課題に直面していました。それは、メンバーの健康を最優先にしながらも、サービスを使う人たちのためにプラットフォームを滞りなく運営し続けるというものでした。
Twitter の危機対応チームが見据えたのは、世界中にいる 4,900 人以上のメンバーを完全リモートチームへと変えること。Twitter ではもう何年も Slack を使ってきましたが、ついに対面で行っていた会話や会議までプラットフォームに移す時が来たのです。完全リモート化を始めて間もない 3 月 4 日、Twitter は Slack と Google Meet を使った初めての全社会議を成功させました。
現在、たくさんのユーザー企業の皆さまが同じような状況に置かれていますが、私たちは Twitter の完全リモート化がなぜうまくいったのかぜひ知りたいと考えました。そこで、Twitter の Vice President of People である Jennifer Christie 氏(@jenchristiehr)に話を聞き、同社が完全リモート体制にすばやく切り替えられた方法について教えてもらうことにしたのです。この記事では、チームがどこにいてもつながり、エンゲージメントを落とさず、同じ方向を目指すために Twitter が Slack をどのように活用しているのかご紹介していきたいと思います。
Slack でチームを経営層の方針に揃える : リモート移行を決定
Twitter はアジア、オーストラリア、ヨーロッパ、南アメリカなど世界に 35 のオフィスを構えています。そのため、世界に散らばるリモートチームを管理すること自体はお手のものでした。一方、企業としてはコラボレーションを引き出すような物理的な環境も大事にしていました。そのため今回求められた社会的距離という概念は同社にとっては初めてのチャレンジでした。
2 月に東南アジアで新型コロナウイルスの拡散が始まった時、Twitter の経営層は、世界各地のチームをウイルスへの感染から守ったり気づかず拡散したりするのを防ぐために思い切った対策を講じなければならないと考えました。そこで、情勢に応じた決定事項やベストプラクティスを伝えるために、次のような Slack のチャンネルを新たに作りました。
- #oneteamQs(#ワンチーム質問): Twitter の全社会議中、世界中のメンバーが質問できるチャンネル
- #wfh(#在宅勤務): 在宅勤務のコツやベストプラクティスを誰でも共有できるチャンネル
- #twittertravels(#twitter-出張): 出張制限に関して、Twitter の出張担当チームがメンバーの対応をサポートするためのチャンネル
- #ask-corpsec-covid19(#質問-企業セキュリティ-新型コロナウイルス): 新型コロナウイルスに関する最新の状況について、Twitter のグローバルセキュリティチームがリアルタイムで共有するチャンネル
- #hr-crisis-management(#hr-危機管理): グローバル人事チームが新型コロナウイルス関連の緊急課題を話し合うチャンネル
3 月 2 日、Twitter の経営層は在宅勤務を義務付ける決定を下しました。それは具体的な想定を伴ったものでした。新しいリモートワークポリシーに関する重要な情報がすべてのメンバーに行き渡るよう、全社通知に使ったのはメールでした。一方リーダーに対しては、チームのフォローアップと質問への回答を Slack で直接行うように呼びかけました。
「通知前に、メッセージや情報共有に関する方針について色々と計画を練りました。その際に活用したのが Slack です」と Christie 氏は話します。「Slack チャンネルを使うことにしたのは、さまざまなタイムゾーンでの状況を把握するには、各自の時間帯で非同期的に進めていく必要があると考えたからです」。

「Twitter のメンバーは、自分のチームが大好きなのです。社会的距離を守る際に一番不安だったのは、これまでと同じように 1 つのチームとしてまとまることができないのではないかということでした。でも、Slack が大きな支えになったのです」
全メンバーを一同に : 全社会議の完全デジタル化を実現
Twitter で初めて行われたデジタル全社会議では、ある目立った成果がありました。それは、人前ではあまり質問しなかったようなメンバーが、積極的に発言するようになったことです。「これまでマイクを持って発言することに自信がなかったメンバーが積極的に声を上げるようになったのです」と Christie 氏は言います。
Twitter の全社会議を開くのに使われたのは Google Meet のビデオ会議でしたが、個々のメンバーの質疑応答が行われたのは Slack の #oneteamQs(#ワンチーム質問)チャンネルです。そのチャンネルでは、チームメンバーが +1 絵文字リアクションを使ってお互いの質問に反応したり返信でフォローアップしたりしました。また複数の進行役も分担してチャンネル上の質問に答えていました。
「この試みはとても透明性が高いものでした」と Christie 氏は話します。「どのような質問があり、どのような回答があったのかが一目瞭然だったのです。同じことを別の方法でやろうとしても、なかなか難しいのではないでしょうか」。
ここで、デジタル全社会議を開きたい組織のために、Twitter に聞いたコツをご紹介しましょう。
ポジティブな流れをキープ : Slack でチームをまとめてモチベーションを高める
Twitter では、新型コロナウイルス感染症対応のための 4 つのオーガナイゼーションチャンネルを使って、メンバーが最新の状況を絶えず把握できるようにし、臨機応変に在宅勤務ポリシーを調整できるようにしています。日常業務のためのやり取りは主にチームごとのチャンネルで行われ、リーダー層はクロスファンクショナルチャンネルで互いの調整をしています。こうして Slack がコミュニケーションとプランニングに効果的であると証明されたわけですが、Twitter においては Slack の社会的な側面も貴重だと Christie 氏は強調します。
「メンバーに仕事で一番の魅力は何かと尋ねたら、たいてい『人』だと答えます。Twitter のメンバーは、自分のチームが大好きなのです。社会的距離を守る際に一番不安だったのは、これまでと同じように 1 つのチームとしてまとまることができないのではないかということでした。でも、Slack が大きな支えになったのです」。
「前のような働き方に戻ることはまず考えられません。結果的にはすべてが良い方向に向かうでしょう」
メンバーは Slack 上でそれぞれの仕事スペースやお気に入りのプレイリストを共有し合ったり、このような状況で起こる浮き沈みについて個人的に話し合ったりしています。また、メンバー同士でオンラインハッピーアワーも開いているそうです。
「このような環境でも前と変わらず一緒に働くという体験を共有できています」と Christie 氏は続けます。「私たちは今、これまで試したことのないやり方で、お互いにつながって文化を守り育てる方法を手に入れつつあるのです」。
未来に向けて : パンデミック後のリモートワークに備える
Twitter では現在の状況が落ち着いたあとも、このポジティブな流れを止めることなくリモートワーク文化を引き続き推進していく予定だと Christie 氏は話します。具体的には、全社会議の開催数をもっと増やし、Slack のチャンネルに決定事項を残していく予定です。Christie 氏は今後、雇用形態を問わず、より多くのメンバーがリモートで働き始めるようになると予想しています。
「前のような働き方に戻ることはまず考えられません。結果的にはすべてが良い方向に向かうでしょう」