社員 16 倍増のアイレットを支えた Slack のエンパワーメント力

「Slack を活用しながら、会社もそれぞれのメンバーも成長・進化していきたいです」

iret執行役員 エバンジェリスト 後藤 和貴 氏

アイレット株式会社は、AWS、Google Cloud など、クラウドの導入・設計・構築・運用・監視を中心に、顧客のインフラ環境を総合的に支援するフルマネージドサービス「cloudpack」を提供するインテグレーターです。2017 年には KDDI 株式会社の傘下に入り、これまでの導入実績 2,500 社以上、年間プロジェクト 4,300 以上を手掛ける急成長企業です。

社員数がまだ 50 名ほどだったという 2014 年当時、ビジネスチャットやコラボレーションツールがまだ日本であまり浸透していなかった頃から、同社は Slack を導入しています。2022 年には 800 名を超える組織へと急成長を遂げるなかで、社内外のコミュニケーションはもちろん、情報収集や人事、営業など、さまざまな業務効率化の中核となるプラットフォームとして利用してきました。長きに渡り Slack が業務に欠かせない基盤として組織に浸透しているアイレット株式会社の具体的な Slack 活用法について、同社の根幹ビジネスであるクラウド事業を立ち上げた執行役員にしてエバンジェリストの後藤 和貴さんにお聞きしました。

50 名から 800 名へ。急成長を支えた Slack の基本活用

アイレットが Slack を導入した 2014 年頃は、コミュニケーションはメールが主流で、ビジネスコミュニケーションのためのデジタルツールの利用も限られていた時代でした。社員数 50 名の当時から社員 800 名にまで組織も拡大し、今では外部のパートナーや関係者も含め 1,250 名が活用する Slack は、会社の成長を支えてきたツールとして、業務においてもはや無くてはならない存在となっています。

後藤さんは「お客様のシステムを監視運用する業務が重要なビジネスのひとつになっているため、Slack を導入しはじめた当初から、エンジニアを中心に監視ツールなどのインテグレーションに着手しました。過去の社内のコミュニケーションも全て Slack 上に集約し、履歴も残しています。お客様とは一部メールのやり取りも残っていますが、Slack コネクトでつながるケースも増えています」とアイレットでの Slack 導入の経緯と過程について説明しました。

2022 年 11 月現在、アイレットの Slack はカスタム絵文字、チャンネル数ともに 6,000 以上 にものぼります。ただし、チャンネルが乱立すると管理が難しくなるため、チャンネル名のプレフィックス(接頭辞)に関しては 11 種の命名規則を設けました。たとえば、組織内のチームのチャンネルなら「team-」をチャンネル名の頭につけ、それに続く形でどのチームかが分かる名前を加えます。業務であっても趣味などの業務外でも会話自体を目的としたものなら「chat-」、やり取りが生じない機能的なお知らせやアラートなら「notify-」、情報の周知には「info-」、一時的に利用するものなら「tmp-」などです。外部のメンバーが参加する場合は「xteam-」「xnotify-」など、「x(external = 外部)」をつけて簡単に見分けられるようにし、不注意から情報漏洩するリスクを低減しています。

また、情報のサイロ化を防ぐため、オープンなコミュニケーションを推奨し、プライベートチャンネルは基本的に申請制としているため、パブリックな投稿の比率は 80 % と高くなっています。後藤さんは「Slack を導入したばかりの頃に、少し組織間の壁を感じるようなことがあったため、なるべくプライベートのチャンネルは使わないように統制しました。プライベートなチャンネルが必要であれば、その目的を添えて申請するという運用をしています」と基本的なルール運用について説明しました。こうしたシンプルな規定をもうけることによって、会社規模が大きくなってもスムーズに Slack を活用できる組織となっています。

情報収集から人事・営業などあらゆる社内業務に浸透

後藤さんは、あらゆる業務で Slack が役立っているとして、いくつかの部署での具体例を紹介してくれました。

まずは情報収集です。エンジニアやマーケティング担当者などが情報を得るために、情報を取りにいくのではなく、特定のチャンネルに自動的に集まるようにしています。「自社の情報、競合の情報、見るべきブログや Web サイトの更新情報のチェックはすべて自動化して Slack のチャンネルに載せ、タイムリーに対応できるような仕組みを作りました。必要に応じて SNS でアクションをすることもあります」

次に、人事関連の取り組みです。毎月入社する社員向けにフォローやオンボーディングなどワークフローで設定しています。新入社員が入社すると、半日〜1 日かけて情報システム部門や総務部門が受け入れの説明や準備をする必要がありますが、これを定型化して業務の負担を軽減し、誰もが迷うことなくすすめられるようにしています。

同じく人事の別の取り組みでは、社員のモチベーションをチェックするための「人事なんでも相談 bot」を運用しています。たとえば、「チームメンバーと必要な話ができていますか?」「仕事で達成感を得られていますか?」「休日にリフレッシュできていますか?」といった質問を Slack 上で社員個人に投げかけ、リモートワークのなかでのメンタルケアやヘルスケア、労働時間の確認や円滑なコミュニケーションが取れているかどうかなどのチェックに役立てています。

後藤さんは「通常、ワークフローのような新しいツールを導入してカスタマイズする場合はエンジニアが必要なケースが多いのですが、Slack ならプログラミング知識のない人事のメンバーでも簡単に設定できることに驚きました。それぞれのメンバーが自ら業務改善に取り組むという意識も上がり、これも最大の利点のひとつです」と語りました。

営業活動も Slack によって効率化されています。顧客からの問い合わせはほとんどがホームページの問い合わせフォームから行われますが、以前は問い合わせの内容を探す際に CMS 上での膨大な問い合わせリストやメールを検索しなければならず、非常に非効率でした。今では問い合わせフォームの内容が Slack で共有され、そこで営業担当者が割り当てを決めています。問い合わせが来た顧客については、企業情報データベースと連携して、売上高や従業員数、業務内容などの基本情報を自動的に取得できるので、次の営業アプローチをスピーディかつ戦略的に導き出すことができるようになっています。

「誰でも使いやすいワークフローをカスタマイズできる Slack なら、エンジニアでなくともそれぞれのメンバーが自ら業務改善や効率化を実現できます」

アイレット株式会社執行役員 エバンジェリスト後藤 和貴 氏

 

Slack をハブとしてクラウド運用などの主力ビジネスにもフル活用

年間数千ものプロジェクトを展開し、顧客のインフラを監視・運用するアイレットでは、何か問題が生じた場合の対応も複雑化しています。そのため同社では監視業務におけるアラートを受けた際に、「AMS」という独自のツールで自動的に対応するサービスを展開。そこに Slack をハブとして利用することで、社内メンバーへの一次対応依頼を自動化し、スムーズな運用を実現しています。

ほかにも、根幹となる主要事業のいたるところで Slack は中枢となっています。AWS 上で、環境の最適化、耐障害性の向上、セキュリティ対応を行うための機能である Trusted Advisor や、拠点から AWS へのプライベート接続機能である AWS Direct Connect、AWS サポートからの問い合わせ回答、Backlog 課題の更新などの状態を常に監視して、必要があれば Slack を通して担当者に通知するといった自動化も行っています。

「事業面でもさまざまな仕組みの自動化や効率化に Slack が間に入って良い仕事をしています。あらゆるシステムと連携させることができ恩恵を感じています」(後藤さん)

運用担当者が通知を受け取って一次対応する際に、インフラを操作するために必要な権限を申請するシーンにおいても、Slack のワークフローを使って情報を送信する仕組みを作り、その後の対応状況を記載できるフォームも統合しています。

後藤さんは「営業や主要業務である監視運用の自動化・効率化だけでなく、Slack が人と人とをつなぐ窓口になることで、サービスに対するお客様からの信頼性も向上していると感じています」と述べました。

「事業面でもさまざまな仕組みの自動化や効率化に Slack が間に入って良い仕事をしています。あらゆるシステムと連携させることができ恩恵を感じています」

アイレット株式会社執行役員 エバンジェリスト 後藤 和貴 氏

物理的・心理的な壁のないデジタル上の職場を基点に会社もメンバーも成長

Slack は、情報収集や人事・営業活動、メイン事業においての業務の自動化・効率化に寄与することはもちろん、東京・名古屋・大阪と異なる拠点やリモートワークなど、離れた場所で勤務するメンバーの交流にも役立っています。オフィスでの受付手続きのための bot や、出張のお土産の抽選など、これまでオフラインが主流で行われていたやり取りもオンライン上で実現できています。

後藤さんは、Slack が掲げるデジタル空間にある仕事の中枢としての「Digital HQ」のコンセプトに共感していると言います。Digital HQ では、物理的・心理的な壁を取り除き、メンバーやシステム、パートナー、顧客が連携して仕事をスムーズに進めることができます。「Slack は物理的なオフィスをデジタル上に構えるかのような機能も有していると思っています。オフラインでやっていた業務もオンラインでできるようになり、どこにいてもお互いに距離を感じさせないやり取りができるのは Slack のおかげです」

アイレットのパーパスは「技術と探究心で今日の『できない』を明日の『できる』に」です。後藤さんは最後にこれからの展望について次のように語りました。

「Slack は誰でも使いやすいツールのため、単なるコミュニケーションツールを越えてあらゆるメンバーが業務改善やアウトプットの質を高められる環境を得られました。Slack を活用しながら、会社もそれぞれのメンバーも成長・進化していきたいです」

「Slack は物理的なオフィスをデジタル上に構えるかのような機能も有しています。東京・大阪・名古屋の各拠点間でも、距離を感じないやり取りができているのは Slack のおかげです」

アイレット株式会社執行役員 エバンジェリスト 後藤 和貴 氏