ワークフロービルダーを活用した GMOペパボの “無駄なやり取りの減らし方”

「ワークフロービルダーが Slack を別次元のツールに進化させました。職種を問わず誰もが生産性向上に貢献可能なプロセスが生まれています」

GMO Pepabo技術部 コーポレートエンジニアリンググループ サブマネージャー渡辺 悟 氏

GMOペパボ株式会社は「インターネットで可能性をつなげる・ひろげる」をミッションに掲げ、ホスティングや EC 支援、オンラインマーケットなどの個人向けインターネットサービスを提供しています。

同社では従来職種問わず 260 人の従業員がコミュニケーションツールとして IRC を利用していました。しかし、IRC に足りない機能を補完するために非公式なツールが社内に乱立し、内部統制や効率化の観点で課題を感じるようになりました。そして、効率的なコミュニケーションはもちろん、ワークフローやボットでさまざまな業務改善が期待できる Slack を導入することを 2016 年に決定します。

Slack で従業員のコミュニケーションとモチベーションが変わる

GMOペパボでは当時、クライアント・サーバ形式のインターネットチャットツールである IRC(Internet Relay Chat)を活用していました。GMOペパボ 技術部 コーポレートエンジニアリンググループ サブマネージャーの渡辺 悟さんは 2015 年までの状況について「IRC はログが共有された形で保存されるため検索が難しく、過去の内容を踏まえた議論ができませんでした。当時はスマホアプリでの使い勝手もそれほど良くなく、IRC に接続していないとメンションに気づくことができなかったことも不便に感じていました」と振り返ります。

その結果、同社では IRC を補完するためにさまざまなツールを非公式で利用することが増え、社内にコミュニケーションツールが乱立してしまいます。

「IRC では補えない点を補完するために、他メッセージングツールを非公式で利用しているケースがありました。情報保護の観点や内部統制上、将来的に制約をかけないといけないかもしれないとの懸念がありました。制約を設けることはハッピーではないので、ツールの乱立は避けたいと考えていました」(渡辺さん)。

そんな状況を打破すべく新しいコミュニケーションツールを探すなか、同社は Slack に出会います。スマートフォン・クライアント用アプリがあること、オンプレミスでのサーバの保守が不要であること、ボット作成やインテグレーションが容易であることが Slack を採用した決め手だったと渡辺さんは当時を振り返ります。

Slack を全社導入し、特に変化したポイントとして渡辺さんは次の 2 点を挙げています。

1 つは「非同期コミュニケーションの加速」です。Slack にメッセージやショートビデオといった情報をストックすることで、リアルタイムな電話やウェブ会議といった同じ時間に行う同期コミュニケーションではない非同期のコミュニケーションが可能になりました。

GMOペパボでは新型コロナウイルス感染症を考慮し、2020 年 1 月からリモートワークを開始しています。現在の全社的なテレワークを基本とする勤務体制にシフトできた理由の 1 つがこの Slack を活用した非同期的な働き方だそうです。

2 つ目のポイントは「モチベーション」です。企業理念に「もっとおもしろくできる」を掲げる GMOペパボでは、好奇心が旺盛で変化を柔軟に受け入れるメンバーが多く在籍しています。実際に Slack 導入時も、新しもの好きのメンバーたちを中心に機運が醸成されて、全社移行が実施された経緯があります。Slack 導入後のモチベーションの変化について、「IRC と比較して Slack は圧倒的に UI がモダンです。導入後に多くのメンバーのモチベーションが上がったことを覚えています。その後も Slack はどんどん進化して新しくなるので、新しいもの好き集団の我々は 6 年間飽きずに楽しく使っています」と渡辺さんは語ります。

「Slack はどんどん進化して新しくなるので、新しいもの好き集団の我々は 6 年間飽きずに楽しく使っています」

GMOペパボ株式会社技術部 コーポレートエンジニアリンググループ サブマネージャー渡辺 悟 氏

本質的な業務と向き合う時間を作るため、Slack ワークフローを活用

Slack について、渡辺さんが特に高く評価するのが ワークフロービルダーです。「ワークフロービルダーがリリースされたことで、Slack は従来と別次元のものになったと感じています。直接やり取りするよりも効率良く処理できるプロセスを実現でき、業務の生産性の向上を誰もがイメージしやすくなりました」と渡辺さんはその進化を評価します。

Slack を使った業務効率化の際に意識しているポイントとして、渡辺さんは「記憶に頼る仕事をなくす」「有益なコミュニケーションを増やすために無駄なコミュニケーションを減らす」という 2 点を挙げます。

1 つ目の「記憶に頼る仕事をなくす」ことについて、渡辺さんは次のように説明します。「日常生活のあらゆる作業や動作に必要な情報を一時的に記憶する重要な脳の仕組みをワーキングメモリーと言いますが、そのワーキングメモリーを単純で煩雑な作業で無駄に消費するのではなく、より注力すべき業務に活用できるような仕組み作りとして ワークフロービルダーを活用しています。ワークフロー化することで、通知やメンションが来た時以外はその作業を頭の中から完全に消去できます。それによって単純な作業や動作に使っていた時間の分、余白が生まれることになります」(渡辺さん)。

その 1 つが「朝会通知ワークフロー」です。ワークフロービルダーで指定した日時をトリガーとして、その日付になると朝会担当者が記載されたスプレッドシートから担当者を検索し、任意の Slack チャンネルで朝会の開催連絡や担当者、その他にも事前に設定した任意のメッセージをチャンネルに参加しているメンバーに通知する仕組みです。

同社では他にも記憶に頼る業務の削減として、Slack API を使ったボット通知も行っています。Slack API や Google Apps Script(GAS)、スプレッドシートなどを連携させることで、さまざまな情報共有や通知・連絡業務が自動化されています。

たとえば、従業員の入退社時には、その情報が関連部門に共有され、人事に関する今後の予定が通知されます。これによって作業漏れ確認やチェック内容確認を行うことができ、担当者の負担となる単純作業の削減などを実現しています。

続いて、2 つ目のポイントである「有益なコミュニケーションを増やすために、無駄なコミュニケーションを減らす」ことについて、渡辺さんはこう説明します。

「無駄なコミュニケーションとは、問い合わせや作業依頼などで同じやり取りを繰り返すことや、情報をまとめれば一度で完結するようなやり取りのことを指します。こうしたやり取りをワークフロー化することで、関係者が直接対応する必要がなくなったり、非同期でも対応できるというメリットがあります」(渡辺さん)

その実例として、渡辺さんが挙げるのが「アカウント復旧申請ワークフロー」です。同社ではサービスにログインできなくなった際、従来は申請者と担当者との間でアカウントを復旧するために何度も連絡を取り合う必要がありました。

アカウント復旧申請ワークフローでは、申請者がチャンネルでワークフローを起動すると、復旧に必要な情報や確認事項をテンプレートに沿って入力することが求められます。その結果、対応者は過不足なく必要な情報を得た上で処理を実施することができます。その後の作業進捗もチャンネル上で把握できるため、無駄なやり取りが発生しません。

渡辺さんは「申請者は必要な情報をワークフロービルダーのテンプレートに沿って入力するだけで、双方のやり取りは数クリックで完了できます。その後通知される内容には対応案内が記載されているため迷うこともありませんし、必要に応じてスレッドの途中でやり取りも可能です。作業状況も都度メンションで通知され共有できるので、非同期で対応することが可能です」とメリットを語ります。

その他にも、同社では「問い合わせ受付」「問い合わせ受付自動返答」といった業務もワークフロー化しています。無駄なやり取りを減らしつつ、非同期で円滑な対応を可能とする仕組みをどんどん取り入れ、本来の業務に集中できる環境構築を進めています。

「ワークフロー化することで、頭の中から完全に消去でき、通知やメンションが来た時に作業をすればよくなります。それによって作業や動作に使っていた分の時間の余裕が生まれることになります」

GMOペパボ株式会社技術部 コーポレートエンジニアリンググループ サブマネージャー渡辺 悟 氏

ワークフロー化はバックオフィス効率化のはじめの一歩

渡辺さんは「生産性の向上を目指す場合、バックオフィス部門では小さな改善の積み重ねこそが生産性の向上につながると考えています。マクロツールやスクリプトを作成したり、アプリを開発することが多いですが、Slack のワークフロービルダーは構築が非常に簡単です」と語ります。

「まずは単純作業を全て Slack を使ったワークフローに置き換えられないか考えてみる。置き換えることができれば記憶に頼る仕事がどんどん減らせます。そして、ワークフローをはじめとした非同期のコミュニケーションを浸透させれば、組織全体にゆとりが生まれてきます。これが一番のポイントで、無駄なやりとりを減らし、有益なコミュニケーションに時間をかけることができるようになります」(渡辺さん)

最後に、今後の展望として「自社のあらゆる情報を Slack に集約していきたいです。自社で利用するアプリのハブとなり、同期コミュニケーションと非同期コミュニケーションを実現するトリガー、きっかけとなる場所にすることを目指して今後も活用に取り組んでいきます」と渡辺さんは締めくくりました。