Slack ブログのイラスト - Workforce Index 春夏 2024
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高まる期待のなか、業務への AI 活用はまだ始まったばかり―― Workforce Index 調査

Slack チーム一同作成2024年10月16日

概要 : 業務に AI ツールを活用すると、生産性が向上する、従業員の満足度が高まる、といったポジティブな成果がもたらされると考えられます。ただ、企業の経営幹部が AI の導入を急ぐ一方で、従業員による AI の利用はそれに追いついていません。Salesforce のグループ企業である Slack の Workforce Lab が行なった、デスクワーカーを対象とした最新のグローバル調査では、従業員の 3 分の 2 がまだ AI ツールを使ってみたことがなく、93% が業務タスクにおいて AI の出力を完全に信頼できるものとは考えていないことがわかりました。

この記事では、従業員の AI 利用を妨げる主な要因や、Z 世代にみられる意外なジェンダーギャップ、AI 普及のサイクルがまだ始まったばかりだと考えられる理由などについて解説します。

調査でわかったこと

  • AI ツールを事業運営にいち早く取り入れたいと考える経営幹部がこの 6 か月で 7 倍に増加。AI の導入は、インフレなどの経済状況への対応よりも重要な課題になっている。
  • AI ツールを利用しているデスクワーカーのうち、81% が生産性が向上していると回答。また、AI の利用者は、利用していない人と比べて、従業員エンゲージメントと従業員体験で総じて高いスコアを示し、全体的な満足度も 22% 高くなっている。
  • 一方で、デスクワーカーの 3 分の 2 以上が業務で AI を使用したことがないと回答し、およそ 5 人に 2 人が、自分の会社には AI 利用についてのガイドラインがないとしている。
  • 業務関連のタスクにおいて、AI の出力を完全に信頼できると考えているデスクワーカーはわずか 7%。35% のデスクワーカーが、AI の出力をあまり信頼できない、あるいはまったく信頼できないと回答している。
  • AI の利用について性別による差が生じており、Z 世代でその差が最も大きくなっている。AI ツールの利用経験者の割合は総じて若い世代で高いなか、Z 世代の男性は、同世代の女性に比べて、AI ツールの使用経験がある人の割合が 25% 高くなっている。
  • デスクワーカーは平均して 1 日の 3 分の 1 の時間を、価値の低いタスクに費やしていると回答。そして、AI によって節約できた時間の使いみちとしては、スキルアップなどの価値の高い活動よりも、日常的な管理業務の方が 37% も多くなっている。
  • 依然として、AI の普及は減速する気配がない。デスクワーカーの 73% が、AI が大きな話題になっていることは当然のことであり、AI テクノロジーは実際に「大きな影響力をもたらすだろう」と回答。AI ツールの利用経験者ほど、その確信の度合いが高くなっている。

Salesforce のグループ企業である Slack の Workforce Lab が世界中のデスクワーカー 1 万人以上を対象に行なった最新の調査から、ほぼすべての経営幹部(96%)が AI を事業運営に早急に取り入れる必要があると感じていることが明らかになりました。AI の導入を「今後 18 か月以内」に実現したいと考えている経営幹部の割合は、2023 年 9 月から 7 倍になっています(5% から 35% に増加)。経営幹部にとって、AI によるイノベーションは、インフレなどの経済状況への対応よりも重要な対外的課題となっています。

また、デスクワーカーの AI 利用率は、今年 1 月から 23%、昨年 9 月からは 60% 増加しています。現在、デスクワーカーの 32% に AI ツールの使用経験があり、その半数が少なくとも週に一度は AI を業務に利用しています。

AI を利用している人のほとんど(81%)が、AI ツールによって生産性が向上していると回答しています。そして以下のように、AI を利用している人は、そうでない人に比べて、従業員エンゲージメントと従業員体験のすべての指標で高いスコアを示しています。

  • +13% : 必要なメンバー、ファイル、リソースにアクセスできる
  • +18% : ワークライフバランスがとれている
  • +23% : ストレス管理能力がある
  • +24% : 仕事についての全体的な満足度
  • +25% : 柔軟性がある
  • +29% : 仕事に強い情熱を感じている

Workforce Lab 春夏 2024 - AI と従業員エンゲージメント

「データからわかるのは、AI を利用する人は、仕事時間の質が全体的に高まっていることです。生産性が上がるだけではなく、喜びや充実感も大きくなり、より仕事に誇りをもてるようになるのです」と Workforce Lab の責任者、Christina Janzer は話します。「AI を仕事に導入することはさまざまな面でプラスに作用すると、リーダーは認識すべきでしょう」

一方で、データからは、AI ツールの導入を急務だと考える経営幹部と、従業員による AI 利用との間のギャップも浮き彫りになりました。実際にデスクワーカーの 3 分の 2 以上は、まだ仕事で AI を使ったことがないのです。

いったい何が、従業員による AI の利用を妨げているのでしょうか?デスクワーカーは、まずプライバシーとデータセキュリティに関する懸念、続いて、データの質と正確性への不信感を、その要因として挙げています。業務関連タスクでの使用にあたって、AI の出力を完全に信頼できると考えているデスクワーカーはわずか 7% で、35% のデスクワーカーが、AI の出力はあまり信頼できない、あるいはまったく信頼できないと回答しています。

「企業は AI をいち早く取り入れたいと望んでいます。実際、私たちの調査でも、生産性の面で大きなメリットがあることがわかっています。にもかかわらず、リーダーの多くが、従業員にいかに AI 利用を定着させるかをいまだ模索しているのです」と、Slack の CEO である Denise Dresser は話します。「AI は、これからの働き方にまさに劇的な変化をもたらします。企業は簡単な手順を踏むことで、信頼性を保ちながら従業員の AI 活用を促すことができます」

AI 利用促進のカギは「PET = Permission、Education、Training」

仕事での AI 利用を促進するための最初のステップは、わかりやすいガイドラインを定め、AI の利用が許可される範囲(Permission)を明確にすることです。基本的なことだと思われるかもしれませんが、調査ではおよそ 5 人に 2 人(37%)のデスクワーカーが、自分の会社には AI 利用に関するポリシーがないと回答しています。AI の利用範囲を定めている会社では、そうでない会社に比べて、AI ツールを使ってみたことのあるデスクワーカーの割合が約 6 倍になっています。

次のステップは、教育(Education)トレーニング(Training)です。「AI を効果的に使うために必要な教育やトレーニングがある」ことに強く同意するデスクワーカーは 15% にとどまります。想像のとおり、より多くのトレーニングや教育を受けている従業員ほど、AI ツールを利用する可能性が高まります。AI 利用に関するトレーニングを受けている従業員は、そうでない従業員に比べて、AI によって生産性が上がっているとする割合が、最大 19 倍高くなっています。

Workforce Lab 春夏 2024 - トレーニング

教育とトレーニングは、AI ツールに対する信頼を築く基盤にもなります。AI のトレーニングを十分に受けているデスクワーカーは、そうでない人に比べて、業務関連タスクにおいて AI ツールを信頼する可能性が 7 倍高くなっています。

デスクワーカーが AI を使ってみるかどうか、AI を信頼するかどうかについて、もう一つの大きな要素となっているのは「自分が上司から信頼されていると感じているかどうか」です。雇用主から信頼されていると感じているデスクワーカーは、そうでない人に比べて、業務関連のタスクで AI を使ってみたことがある割合が 94% 高く、AI の正確性についての信頼度も大きくなっています。

AI の未来予測 : リーダーのための 3 つのポイント

AI 普及のピークはまだはるか先

AI ブームもそろそろ一息つくのでは、と思っている人もいるかもしれません。しかし、世界中のデスクワーカーの反応からわかるのは、この勢いはまだ始まったばかりだということです。現在、デスクワーカーの 47% が、AI を使って仕事をすることに意欲を示しています(今年の初めの時点では 42%)。さらに、大多数のデスクワーカー(73%)が、AI が大きな話題になっているのはもっともであり、実際に自分たちの働き方に大きな影響を与えるだろうと回答。AI ツールを実際に使用したことがある人ほど、そう考える傾向が強くなっています。

その傾向は、Z 世代やアルファ世代が労働市場に進出するにつれて、ますます強まっていくでしょう。実際に若い人ほど AI に意欲を示しており、18~29 歳の 55% が、AI と自動化によって仕事の一部を処理することに期待を寄せていると回答しています。一方、60 歳以上では、この割合は 33% にとどまります。

Slack の見解 : 「AI の熱は収まる気配がありません。実際に Salesforce でも、労働力戦略に AI を組み入れることで、従業員にも会社にも大きなメリットがもたらされています。より影響力の大きい仕事に集中できるようになることで、従業員の意欲にもビジネスにもよい効果があるのです」(Salesforce Chief People Officer、Nathalie Scardino)

 

AI 利用におけるジェンダーギャップに留意

AI の導入に関して、小さいながらも、まだ男女差がみられています。まず全体として、業務に AI を使用したことのある人の割合は、男性(35%)の方が女性(29%)よりも高くなっています。また、総じて若い世代ほど AI ツールの使用経験者の割合が高くなっているなかで、Z 世代で男女差が最も大きくなっており、18~29 歳の男性は、同年代の女性と比べて、AI ツールを使用したことがある割合が 25% 高いという結果が出ています。

明るい話題の一つは、有色人種のデスクワーカーの間で AI の使用が進んでいることです。業務で AI ツールを使用したことがある白人デスクワーカーが 29% であるのに対して、ヒスパニック・ラテンアメリカ系では 43%、黒人のデスクワーカーは 42%、アジア系アメリカ人のデスクワーカーは 36% となっています。また、ヒスパニック・ラテンアメリカ系とアジア系アメリカ人では、AI 使用における男女差がほとんど、あるいはまったくみられていません。

 

Slack の見解 : 「この先、AI を受け入れていくにあたって、歴史的にテクノロジーの変化に取り残されてきた人々にとってアクセスしやすい環境を提供し続けることがとても重要です。そのなかで、この調査結果には勇気づけられます。あらゆるコミュニティの人々が職場やキャリア、生活において、AI テクノロジーを有意義に活用できるよう、私たちは技術をさらに磨き、サポートを続けていきたいと思っています」(Salesforce Chief Equality Officer、Alexandra Legend Siegel)

 

AI が雑務を増やすリスクへの対応

AI は仕事に変革をもたらすことは確かですが、最新の Workforce Index 調査からは、改善の余地もみえてきました。具体的には、デスクワーカーの多く(64%)が、月に 1 回以上、燃え尽きを経験しています。また、およそ 3 分の 1 の人が仕事において定期的にストレスを感じ、30% は仕事に情熱をもてないと回答しています。また、平均的なデスクワーカーは 1 日の約 3 分の 1 の時間を「価値が低い」あるいは「自分の仕事にとって有意義でない」タスクに費やしていると見積もっています。

価値が低いとされるタスクのトップ 3 は、「不必要な会議やイベント」「重要でないメールの管理」「過剰な文書業務やデータ入力」でした。AI の力で、このようなタスクを最小限にし、より有意義な仕事に集中する時間を確保できれば理想的です。

しかしながら、AI を使うことで節約した時間を何に使うかという質問に対して「管理業務」が回答のトップであり、「イノベーションと創造」「学習とスキルアップ」「同僚との関係構築」は下位という結果が出ています。

Slack の見解 : 「AI を使うことで、多くの仕事時間が解放されるでしょう。でも、せっかく浮いたその時間を、さらなる雑務に使うのはもったいないことです。AI の力を最大限に活かすには、従業員が有意義な仕事に注力できるよう、リーダーがサポートをする必要があります」(Workforce Lab、Christina Janzer)

AI はやわかり

Workforce Lab Workforce Index 春夏 2024 - はやわかり 1

Workforce Lab Workforce Index 春夏 2024 - はやわかり 2

調査方法について

この調査は、2024 年 3 月 6 日~ 3 月 22 日の期間に、米国、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国の 10,045 人のワーカーを対象に実施されました。

調査の運営は Qualtrics 社が行い、Slack および Salesforce の従業員と顧客は対象に含まれていません。回答者はすべてデスクワーカーです。ここでのデスクワーカーとは、フルタイム(週 30 時間以上)の勤務を行い、「データを扱う仕事、情報を分析する仕事、創造的思考を伴う仕事」のいずれかに従事していると申告した人、または次のいずれかの役職についている人です : 経営幹部(社長 / パートナー、CEO、CFO など)、上級管理職(エグゼクティブ VP、シニア VP など)、中級管理職(部長 / グループマネージャー、VP など)、下級管理職(マネージャー、チームリーダーなど)、上級スタッフ(非管理職)、専門職(アナリスト、グラフィックデザイナーなど)。

表現を簡潔にするために、上記の調査対象者を「デスクワーカー」と総称しています。

 

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