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「Slack があったから無事に成功した!」資生堂新ブランド誕生の裏側

 スキンケア、メイクアップ、フレグランスなどを中心とした化粧品事業を展開する資生堂は、「美」のイノベーションを発信する企業として世界中でその商品が愛用され、化粧品だけに留まらない生活の新しい価値を創造しています。その資生堂が 2020 年 6 月、樹木との共生をテーマに新たに立ち上げたブランドが「BAUM」でした。

立ち上げまでのコミュニケーションプラン準備期間はわずか 7 ヵ月。しかもコロナ禍によるプラン自体の変更や修正を余儀なくされた中で 200 以上の制作物とウェブサイトを作成しなければなりませんでした。さらにブランド運営には、ビジネス戦略やコミュニケーション開発、 PR 戦略、店舗開発、SNS の運用に加え、それに伴う膨大な仕事量とコミュニケーションが発生します。これらをどのようにして円滑に進行し、またその状況下でニューノーマルに合わせた新しい関連コンテンツを提供しながら、期日までにブランドの発売にいたることができたのでしょうか。

「BAUM」を立ち上げるにあたり、 Slack の導入と活用がもたらした役割と効果について、BAUM グローバルブランドユニットのマネージャー桑原晋さんに伺いました。

「各状況の整理」「情報共有の高速化」「迅速な決定」3 つの課題をすべて解決

 桑原さんが資生堂に入社したのは 2019 年 12 月。新ブランド「BAUM」の発売開始まで約 7 ヵ月という頃でした。商品やブランドの要は既に決まっていましたが、10 人以下という少人数のチームがビジネス戦略という大きなテーマから SNS の運用という現場の作業まで全てのブランド運営をしており、ひとり当たりの業務量は多く、発売前の決定すべき項目も多岐に渡っていました。そこで重要となったのは、「ひとり一人がもっている仕事の状況をいかに整理し、把握するかでした」と桑原さんは話します。

「ブランドチーム、クリエイティブチーム、ジャパンマーケティングチームの三部門でスクラムを組み、多くの項目を決定していかなければならない状況下でのプロジェクトへの参画でした。通常であればそれほどせわしい状態ではないのですが、就任から 1 〜 2 カ月後にコロナが拡大し、緊急事態宣言の発令がありました。在宅勤務を余儀なくされた中で、迅速かつ効率的に業務を進めるには、『各状況の整理』『情報共有の高速化』『迅速な決定』が重要なカギでした」

桑原さんは当時を振り返りながら、まず「各状況の整理」について「Slack のチャンネルは個々の状況をトピックごとに一元的に管理でき、探している案件がどこにあるかひと目でわかるので、本題に入るまでの時間が一気に短縮できた」と評価。また、「情報共有の高速化」については、オンライン会議ツールなどでの共有がリアルタイムで早いとはいうものの、欠席者への事後伝達などで生じる各メンバーの情報認識の差を同じレベルに合わせる難しさを実感しており、「ログ検索、画像やリンクの貼り付けが Slack 上で簡単にできること、外部招待や『@channel』によって全員への情報通知が一度ですぐにできるところに助けられた」と話します。

そして、「迅速な決定」については、Slack導入前は対面での定例会議とメールコミュニケーションによって進めていましたが、簡単な話であれば絵文字ですぐに返答ができて時間的なコストが大幅に削減できたこと、また、意思決定時に過去の流れややりとりをすぐに検索できるのが便利で、働く時間も場所も非同期とはいえ、かなり早い段階での情報連携ができたことが全体のスピード化に繋がったと評価します。

「連携が必要な各部門が別々のオフィスに点在していたので、ミーティングのための時間の確保や移動を最小限にすることができました。在宅勤務の時期もありましたが、部署やチームをまたぎながら組織横断のコミュニケーションが迅速にとれたのは、Slack があったからこそ。Slack が短期間でのプロジェクト成功を支えてくれました」

すぐに見に行ける情報がコミュニケーションを活性化

 BAUM 立ち上げ後、桑原さんのもとには社内外から「Slack があったからこそ、コロナ禍でも BAUM を無事に発売できた」という声が多く集まり、それが桑原さん自身もうれしく感じていることのひとつだといいます。

「具体的によかった点のひとつは、何といってもチャンネルです。案件ごとのチャンネルが作れるので実際の発話をすぐに見に行けるし、進捗がひと目でわかります。また、返答に使う絵文字は簡単な話をメールでやりとりしなければならないという手間が省け、カスタマイズもできます。カスタマイズのおかげで、対面と遜色ないような、より繊細なコミュニケーションができたと感じています」

過去のコミュニケーションを参照できるログに関しては、「あのときのあれ」を検索できるだけでなく、「とりあえず有用」と思える情報を気軽に投稿しておくことですぐに確認・共有できるのが便利だといい、Slack 上で「いつでも見に行ける」ことがコミュニケーションの活性化につながったと話します。

画像やリンク、ファイルの貼り付けについては、「私たちにとって、消費者となる方がどんな方で何を話しているのかは、とても重要です。メールなどのツールは URL や画像を貼り付けてもクリックするまで中身がわかりませんし、面倒くさいと思ってしまうこともある。でも、Slack なら SNS 上のリンクを貼り付けるとサムネイルで画像や音声を確認できます。こんな便利なツールはないと思いました」

「ひとりじゃない感」が快適で幅広いつながりを生む

 コロナ渦においては、今まで普通に対面でしていた会話ができなくなり、用件でしか人とのコミュニケーションが取れなくなりました。これはチームにとって大きなストレスになっていきました。緊急事態宣言が続く中、桑原さんは、この「ひとりで仕事をしている感」をどうにかして払拭したかったといい、チャンネルごとに外部の人を招待でき、情報共有のチャンネルにおける何気ない会話が「ひとり感」をやわらげ、「安心感」に変えてくれたのではないかと話します。

「外部の人も積極的に Slack に招待し巻き込むことで、進捗の把握はよりスムーズになりました。情報共有のためのチャンネルでは、部署やポジションを超えたつながりが増し、用件のみのドライなやりとりだけではなく、チャットならではの雑談も盛り上がります。それがときに事業やサービスの創出のきっかけになることもあり、雑談の力を再認識しました。また、ここでもその際の絵文字のリアクションは、誰もが気負わずに、楽しく仕事を進める雰囲気を作ってくれました」

そして桑原さんは、より多くのメンバーに Slack を快適に使ってもらうため、誰かが投稿したらとにもかくにも「すぐさま反応する」ようにし、「Slack に書き込んだ件ですが」と言い続けて、「Slack にいけば情報がある」という共通認識を高めるようにしたと話します。

Slack が点在した組織を結ぶ「働く場所」に

 「個人的には、Slack は離れている外部の組織や部署間をつなぐ、「新しい働き方」を実現する新たなオフィススペースになり得るものではないかと感じています。私自身、毎朝 Slack を開いて一日の予定が始まり、Outlook と連携させてスケジュールの管理もしています。チャットは他のコミュニケーションツールでもできますが、各種ツールと繋げられる Slack は拡張性があり、広く展開されるほど効率化が進むプラットフォームだと思います」

 Slack を導入することで課題となっていた「各情報の整理」「情報共有の高速化」「迅速な決定」を解決し、点在する 3 つのチームをまとめて短期間で新ブランド「BAUM」を立ち上げた桑原さん。「Slack は小規模なグループの使用でもその効率のよさがわかります。まずは使ってみることをお勧めします」と笑顔で話してくれました。