アサーティブコミュニケーションは、より自然で対等な意思疎通ができる方法です。対等な意思疎通ができない場合、業務が円滑に進まない、人間関係に支障をきたすなど、さまざまな不都合が生じるおそれがあります。ここでは、アサーティブコミュニケーションの役割やメリット、実践するために必要なポイントをご紹介しましょう。
アサーティブコミュニケーションとはお互いを尊重するコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションとは、自分と相手の双方を尊重するコミュニケーションの在り方を指します。アサーティブ(assertive)は「積極的な」「断定的な」という意味ですが、決して自己主張に終始するようなコミュニケーションの在り方を指しているのではありません。アサーティブコミュニケーションは、相手を尊重しつつ、自分の意見や要望を的確に伝えていくコミュニケーションなのです。アサーティブコミュニケーションへの理解を深めるには、その重要性やトレーニングが必要なポイントを知ることが大切です。
アサーティブコミュニケーションの重要性
誰もが対等に自己表現や自己主張をすることができ、Win-Win の関係を築いていくには、アサーティブコミュニケーションが重要です。多様な働き方が浸透しつつある昨今、コミュニケーションの手段は多岐にわたります。テレワークや時差勤務を導入している企業の場合、従業員全員が常に同じ時間と空間を共有しているとは限りません。こうした環境下で、アサーティブコミュニケーションが必要になってくるのです。
アサーティブトレーニング
アサーティブコミュニケーションが可能かどうかは、生来の性格によって決定づけられるのではありません。アサーティブトレーニングでスキルを高めることによって、アサーティブコミュニケーションを誰もが実践できます。アサーティブトレーニングの 4 つの要素は、頭文字を取って「DESC(デスク)」とも呼ばれます。
アサーティブコミュニケーションの役割
アサーティブコミュニケーションには、主に 3 つの役割があります。アサーティブコミュニケーションを実践することを目的にするのではなく、効果や役割を十分に理解しつつ手段として活用していくことが大切です。
言語の補完
アサーティブコミュニケーションには言語を補完する役割があります。相手に何らかの依頼をする際、必要事項を事務的に伝えるのは好ましくありません。相手がどのような状況や心境で依頼を受けることになるのかを考慮していないからです。アサーティブコミュニケーションを実践すれば、自分の意見を的確に伝えつつ相手の立場や状況に配慮することができます。
信頼関係の構築
お互いがアサーティブコミュニケーションを意識することで、より対等な意見交換をしやすくする役割があります。お互いが自己主張に終始している場合、意見の押し付け合いになりがちです。しかし、アサーティブコミュニケーションを意識すれば相互理解が促進され、信頼関係を構築できるのです。
相手の気持ちや状況の理解
アサーティブコミュニケーションには、お互いが相手への気持ちや状況を理解する役割があります。組織内にはさまざまな立場の人が存在し、担当業務や所属部門、役職によって置かれている状況や心境は異なるでしょう。相手を尊重したコミュニケーションを図りやすくするには、アサーティブコミュニケーションが必要なのです。
アサーティブコミュニケーション 4 つのメリット
アサーティブコミュニケーションのスキルを身につけ、実践していくことにより、多くのメリットを得られます。具体的には次の 4 つのメリットを実感できるでしょう。
社内でのコミュニケーションが活性化
アサーティブコミュニケーションで、社内のコミュニケーションが活性化するメリットがあります。お互いの立場や状況を理解し、相手を尊重したコミュニケーションが実践されることで、意見交換や情報共有が促進されます。建前や忖度を廃して、お互いが本音で話せるようになれば、活気のある職場づくりにもつながります。
上司と部下で良好な関係を構築
アサーティブコミュニケーションは、立場が異なる人同士が良好な関係を構築するうえで役立ちます。特に上司と部下のような上下関係においては、上司からの指示や伝達が一方的になりがちです。部下も自分自身の考えや意見を伝えやすい環境になれば、より良好な関係を構築できるでしょう。
従業員のメンタルヘルスケアに貢献
アサーティブコミュニケーションは、従業員のメンタルヘルスケアに貢献する効果が期待できます。周囲への遠慮から自分の考えや意見を表明できない状態が続くと、従業員のメンタル面に悪影響が及ぶおそれがあります。本音が言えないばかりに、無理のある仕事量を抱え込んでしまうリスクがあることも否定できないでしょう。
生産性が向上
アサーティブコミュニケーションは、組織の生産性向上を実現するうえでも重要な取り組みと言えます。従業員が本音で考えや意見を述べられるようになれば、より適切な役割分担がしやすくなります。各自の強みや得意分野を活かした業務遂行が可能となり、組織全体の生産性が向上するでしょう。議論や提案をより自然体で進められるようになり、新たなアイデアの創出にもつながります。
アサーティブではないコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションには多数のメリットがありますが、実践できない人もいます。アサーティブではないコミュニケーションに以下のような典型例がありますので、自分自身のコミュニケーション傾向と比較し、該当するようであれば改善していきましょう
攻撃的タイプ(アグレッシブ)
攻撃的タイプは、感情的になりやすく、自身の意見や主張を一方的に押し付けがちです。物事を自分の思いどおりに動かそうとしていることが見えるため、たとえ主張していることが正しくても本音では聞き入れたくないと感じる人が少なくありません。
受け身タイプ(ノンアサーティブ)
受け身タイプは、相手の期待に過度に応えようとしたり、相手から嫌われないように振る舞ったりする傾向が強く、本音を言えません。周囲への遠慮から助けを求められないケースも多いため、自身の処理能力を超える業務量を抱え込んでしまうおそれがあります。
作為的タイプ
作為的タイプは、本音を直接的に伝えず、態度や陰口などを通して自己主張します。そのため、一見すると穏やかに見えるものの、内心では不満を抱えている可能性が高いでしょう。不満が鬱積していくことでモチベーションが下がり、パフォーマンスが低下することが懸念されます。
アサーティブコミュニケーションをとるためのポイント
自分自身のコミュニケーション傾向を把握し、アサーティブコミュニケーションへと切り替えていくには、どのような点を意識すればよいのでしょうか。特に重要なポイントを紹介します。
誠実であること
誠実とは、自分自身にも相手に対しても丁寧な姿勢を貫くことを指します。たとえ意見や主張が食い違ったとしても、即座に反論したり相手の考えを否定したりするのではなく、自分の意見と相手の意見を公平に扱うことが大切です。結果として相手を攻撃したり、自分の意見を押し殺したりするのを避けることができます。
率直であること
自分自身がどう思うのかを率直に伝えるのも重要なポイントです。相手の意見や主張を聞く際に、何か裏の意味があるのではないかと勘ぐるのではなく、言葉を素直に受け取ることが大切です。また、個人的な考えを伝える際にも、率直な意見を伝えましょう。
対等であること
立場の違いから生じる力関係に依存することなく、対等な視点で発言し合うことも大切です。相手よりも優位な立場にあることを利用して意見を押し付けたり、反対に弱い立場にあると思い込んで卑屈になったりするのは適切ではありません。お互いに言うべきことは言える関係性を築く必要があります。
自分で責任を持つ
自分の意見に責任を持つことも重要なポイントです。過去に述べた意見や考えについて「気づいていたが言わなかった」と言い訳するのはやめましょう。自身の発言内容に責任を持つことは当然ですが、発言しなかった責任もあることを理解しておく必要があります。
アサーティブコミュニケーションの良い例と悪い例
職場におけるアサーティブコミュニケーションの具体例を紹介します。特に意見や主張の食い違いが生じやすい上司と部下のコミュニケーションについて見ていきましょう。
上司から部下へのコミュニケーション
上司から部下へのコミュニケーションでは、高圧的な表現や意見の押し付けを避け、部下の心境や状況を尊重することが重要です。良い例と悪い例を紹介しますので、どこが問題なのかを考えてみましょう。
良い例では「締め切り時刻を過ぎている」という事実を伝え、相手の状況を尋ねています。悪い例では「なぜ出ていないのか」と締め切りを忘れているかのうように扱い、相手を責めるスタンスになっています。
部下から上司へのコミュニケーション
部下から上司に物事を伝える際には、過度に卑屈になったり建前に終始したりするのは避ける必要があります。ここでは、部下から上司に物事を伝える良い例と悪い例を紹介しますので、どこが問題なのかを考えてみましょう。
良い例では現状を事実ベースで報告しています。ありのままを伝えてしまうと叱責されるのではないかといった懸念や憂慮がないからこそ、率直にコミュニケーションをとることができるのです。悪い例では実態がどうなっているのか、上司は正確に把握することができません。いつまでに報告書を作成できるのか、状況が不明確なままになってしまうのです。
アサーティブコミュニケーションでお互いを尊重した関係構築を
アサーティブコミュニケーションは、健全なコミュニケーションの在り方を維持するうえで重要な考え方です。お互いが誠実、率直、対等、自己責任にもとづくコミュニケーションを意識することにより、信頼関係を構築できます。ご紹介したポイントを参考に、ぜひアサーティブコミュニケーションを組織全体で実践してください。社内のコミュニケーション活性化が促され、活気のある職場づくりに寄与するはずです。
よくある質問
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