概要 :
Slack による最新の「Workforce Index」調査により、AI の導入が急増し、その影響も急拡大していることが示されました。世界中のデスクワーカー 5,000 人以上を対象としたこの調査によると、昨年 11 月時点と比べて AI の日常的な利用が 233% 増加し、この 6 か月間で 2 倍以上になっています。また、AI を毎日利用している人は、まだ利用していない人に比べて、生産性が高いとする人が 64%、集中力が高いとする人が 58%、仕事への満足度が高いとする人が 81% 多くなっています。
調査でわかったこと
- 仕事への AI 利用が本格的に広がりつつある。現在、デスクワーカーの 60% が AI を利用しており、42% は定期的に(週に 1 回以上)AI を利用しています。AI を毎日利用する人は、2024 年 11 月時点と比べて 233% 増加し、わずか 6 か月で 2 倍以上に。日常的な AI 利用が急速に広がっていることがわかります。
- AI エージェントの活用にも勢い。デスクワーカーの 40% が AI エージェントのチャットボットを利用したことがあり、23% が自分の代わりに作業をしてもらうようエージェントに指示したことがあります。
- ほとんどの企業で AI の導入が加速。経営幹部の 61% が自社にすでに生成 AI を導入済みだとし、93% が年末までに導入予定だと回答しています。AI エージェントについては、52% の経営幹部がすでに導入済みだとし、加えて 38% が年末までの導入を計画しています。
- デスクワーカーは生産性と効率性の面で AI に期待を寄せ、毎日 AI を利用している人が最大の効果を実感している。AI を毎日利用している人は、AI を利用していない人に比べて、生産性が非常に高いとする割合が 64%、集中力が非常に高いとする割合が 58%、仕事への満足度が非常に高いとする割合が 81%、それぞれ高くなっています。
- 専門スキルを持たないデスクワーカーも、AI を使って「バイブコーディング」を行っている。AI 利用者のほとんど(96%)が、これまでは自分ではできなかったタスクを AI を用いて遂行しており、30% の人がこれを生産性向上の最大の理由として挙げています。
仕事での AI 利用の真価がいよいよ現実に
大きな期待と憶測が飛び交う時期を経て、仕事での AI 利用の真のメリットがようやく見えはじめてきました。Slack の Workforce Lab が世界中のデスクワーカー 5,000 人を対象に実施した最新の Workforce Index 調査で、AI を日々の業務フローに取り入れている人は、真の競争優位性を獲得しつつあることが明らかになりました。
AI の利用は急増しており、今ではデスクワーカーの半数以上が AI を利用するようになっています。AI を利用しているデスクワーカーの割合は、2024 年 11 月から 2025 年 4 月の間に 36% から 60% へと増加。42% が定期的に(週に 1 回以上)AI を利用しています。日常的な利用も急速に広がっており、AI を毎日利用する人の割合は 2024 年 11 月と比較して 233% 増加し、わずか 6 か月で 2 倍以上になっています。さらに、AI にタスクを任せることに期待する人の割合も 29% 増加しています(41% から 53%)。AI エージェントの導入も勢いを増しており、デスクワーカーの 40% に AI エージェントを用いたチャットボットの利用経験があり、23% が自分の代わりにタスクを遂行するようエージェントに頼んだことがあると回答しています。
会社レベルでは、ほとんどの組織が AI を順調に導入しています。経営幹部の 61% が自社はすでに生成 AI を導入済みだとし、93% が年末までに導入予定だと回答しています。AI エージェントについても同様の傾向がみられ、経営幹部の半数強(52%)がすでに自社で導入済みだと回答し、加えて 38% が今年中の導入を計画しているとしています。
デスクワーカーが AI を利用する理由のトップは、生産性と効率性の向上であり、そのメリットを最も実感しているのは、AI を日常的に利用している人です。AI を日常的に利用する人は、AI を利用していない人に比べて、生産性が非常に高いとする割合が 64%、集中力が非常に高いとする割合が 58%、仕事への満足度が非常に高いとする割合が 81%、それぞれ高くなっています。さらに、ワークライフバランスが非常に良好であるとする割合が 68%、仕事に関連するストレスを管理する能力が非常に高いとする割合が 59%、それぞれ高くなっています。
「AI に期待されていたことが現実になろうとしています」と Slack の CEO である Denise Dresser は話します。「AI を毎日使う人は、目に見える優位性を獲得しようとしています。つまり、生産性が向上し、ストレスが減り、充実感が増すのです。単なる効率化ではなく、仕事の進め方や仕事に対する人々の意識が大きく変わろうとしています」
AI の真のメリットとは?仕事のスピードアップから新しいスキルへの拡張へ
AI は時間を節約するツールだと宣伝されることがよくあります。確かにそのとおりなのですが、AI を日常的に使う人にとってのメリットはそれにとどまりません。パワーユーザーは、単に仕事をスピードアップさせたり、面倒な作業をこなしたりするためだけに AI を使うのではなく、最も注力すべき「ディープワーク」を強化するために AI を利用しています。
日常的に AI を使うユーザーにとっての、生産性向上面での AI の主なメリット
- 情報にすばやくアクセスできることで、広範囲にわたる調査の必要がなくなる
- 文章作成やコミュニケーションの支援により、時間と労力を節約できる
- アイデアのブレインストーミングを行って、創造性の壁を超えるのに役立つ
- 反復的または単調なタスクを自動化して、より複雑な仕事への時間を確保できる
- リアルタイムのフィードバックを得て、その場でパフォーマンスを高められる
- さまざまなツールを統合し、データの流れを自動化して、業務フローを効率化できる
- 自分の専門分野以外の仕事もこなせるようになり、同僚への依存度を下げられる
- 会議にライブで出席する必要性が減り、自分で使える時間が増える
Salesforce の Account Executive である JT Garnett は、すぐに対応してくれる、信頼できるアカウントプランニングパートナーとしての Agentforce に価値を感じています。具体的には Agentforce を利用して、顧客のビジネス環境をすばやく理解し、顧客の立場になって話をするための知識を得ています。「その業界の動向や課題、収益源などについてのデータを抽出するのに役立ちます。営業エージェントが情報を簡潔にまとめてくれるので、最初の段階からお客さまに適切な質問ができます」
AI を利用している人のほとんど(96%)が、AI を使って「バイブコーディング」、つまり、これまでは自分ではできなかったタスクを遂行したことがあるとしています。そして、30% の人(毎日 AI を利用している人の 38% を含む)が、これを生産性向上の最大の理由として挙げ、これにより専門的な支援を得るために同僚に依存することが減ったと答えています。
バイブコーディングとはもともと、正式なトレーニングを通じて習得したプログラミング言語の代わりに、AI ツールを使って会話形式のプロンプトでコーディングを行うことを指す概念でした。今回の調査データから、この概念がより広い分野へと進化していることがわかりました。あらゆる部門のデスクワーカーが、AI を用いたこの「感覚的な」アプローチをさまざまな専門タスクに適用しはじめているのです。AI を使うことで、スプレッドシートの分析、パフォーマンスレポートの生成、デザインのモックアップ制作といった仕事を、専門家に頼ることなく進められるようになりつつあります。
「このあいだ、プレゼン用のグラフィックを作成するのに、デザイン面での助けが必要になったことがありました」と話すのは、Slack の Workforce Lab 責任者兼 VP of Research を務める Lucas Puente です。「これまでならデザインチームに依頼していましたが、今回は AI を使ったところ、ものの数秒で必要なものを作ってくれたのです。すべてを自分ひとりで簡単にできるようになったことで、まさに力を得たように感じました。多くの人がこのような方法で AI を利用して、これまでは技術的、専門的な知識が必要だったタスクに、自分のコンフォートゾーンを超えて取り組んでいる姿を見るのは本当にクールなことですね」

これまでは技術的、専門的な知識が必要だったタスクに、自分のコンフォートゾーンを超えて取り組んでいる人の姿を見るのは本当にクールなことですね
AI 活用をリードする中心は Z 世代からミレニアル世代へ
デスクワーカーの 5 人に 3 人は少なくとも時々 AI を利用し、5 人に 2 人は週に 1 回、5 人に 1 人は日常的に AI を利用しています。今回の調査では、AI を頻繁に利用している人ほど、その価値を大きく引き出していることがわかりました。とくに AI を日常業務に取り入れている人はそれが顕著です。
「興味深いことに、AI を時々使うだけでは、目立ったメリットを得るのに十分でないことが、今回の調査からわかりました」と Puente は話します。「カジュアルユーザー(AI の利用が週に 1 回未満の人)は、AI を使わない人と比べても、ほとんど、あるいはまったく結果に差がありません。週に 1 回利用する人になると得られるメリットが増えますが、最大のメリットを得ているのは AI ツールを毎日の業務フローに取り入れている人です。このレベルになると、集中力、生産性、仕事の満足度の向上、ストレスの軽減といった効果が顕著に報告されるようになります」
では、AI の活用をリードしているのは誰でしょうか?意外かもしれませんが、それはミレニアル世代です。デスクワーカーのなかで AI を日常的に利用している割合が最も高いのは 28〜43 歳の世代(33%)で、Z 世代(28%)を上回っています。また、AI のパワーユーザーは男性に多い(男性 24%、女性 18%)ほか、組織階層の上位に位置する人ほど、AI を日常的に利用する人の割合が増える傾向もみられます(経営幹部で 43%、上級管理職で 35%、中級管理職で 23%、一般従業員で 10%)。リーダーシップ層での活用に勢いがあるのは心強いですが、同時に大きなチャンスがまだ眠っているともいえます。つまり、アクセス性やトレーニング、サポートの提供を拡充して、あらゆる役職や属性の人が仕事で AI を活用してメリットを得られるようにする必要があります。
「AI の導入は加速しています。AI がもつ変革力をパワーユーザーが実証している様子を見るとワクワクしますね」と Salesforce で VP of Workforce Innovation を務める Ruth Hickin は語ります。「綿密な活用支援を行うことで、その効果を組織の隅々まで届けることができるでしょう」
組織として AI 導入をリードしているのは、大企業です。従業員数 1,000 人以上の組織で働くデスクワーカーの 30% が AI を日常的に利用しているのに対し、中規模企業ではその割合が 22%、小規模企業では 14% にとどまります。その主な理由として、大企業では AI のガイドラインが整備されている割合が 44% 高くなっていることが挙げられます。これは導入を促すうえで、明確な権限、教育、トレーニングが重要であることを示唆しています。

綿密な活用支援を行うことで、AI の効果を組織の隅々まで届けることができるでしょう
リーダーがとるべきアクションとは?
💡AI の使用をただ許可するだけでなく、奨励して支援する
これまでの Workforce Index 調査から、AI に関する規範が不明確だと、人々の AI 利用が進まないことが示されています。今回の調査データでは、デスクワーカーの 29% が自分の会社は正式なガイドラインを出していないと回答し、半数(50%)が AI の利用が明確には推奨されていないと回答しています。これは重要なポイントです。AI の利用を積極的に推進している会社の従業員は、パワーユーザーになる可能性が約 3 倍高くなるからです。
「規範のなかには自然発生的に生まれるものもあれば、意図的に作られるものもあります」と指摘するのは、ノースウェスタン大学の機械工学教授で、Center for Human Computer Interaction + Design の共同設立者である Elizabeth Gerber 氏です。「リーダーは、その行動がどれくらい望ましいものであるかを説明し、何が期待されるかを明確にすることで、その規範を受け入れてもらえるよう意図をもって人々を説得することができます」
reMarkable では、経営幹部が AI の活用支援に優先的に取り組んでいます。同社の Chief Technology Officer の Nico Cormier 氏はこう話します。「当社では、AI の使用をただ許可するだけでなく、奨励して支援しています。新しいツールを試したり実験したりすることが推奨されていると感じれば、チームは AI をスマートに仕事に活用する方法をより早く見つけられます。AI は人間らしさを奪うものではなく、人間が最高の仕事に集中できるよう力を与えてくれるものです」
💡百聞は一見に如かず
これまで、信頼をいかに得るかが、とくに AI エージェントのような新しいツールを導入する際の課題とされてきました。今回の調査では、信頼は慣れによって生まれることが示されています。AI を日常的に利用する人は、データの保護から正確性、意思決定までのさまざまな面で AI エージェントに高い信頼を寄せる割合が 2 倍以上高くなっています。実際に体験してみることが、信頼を築く最も効果的な方法の 1 つであることを示していると言えるでしょう。
ヨーロッパに拠点を置くグローバル決済サービスプロバイダーの Worldline は Slack に組み込んだ AI エージェントを利用しています。同社はこのようなツールへの信頼構築を、計画的かつ体系的なプロセスで行ってきました。クラウドサービス部門でオフィス変革の責任者を務める Julien Scotté 氏はこう説明します。「LLM やハルシネーションの管理、データプライバシーの監視など、AI をめぐる包括的なガバナンスのレイヤーを構築してきました。当社のモデルが一般のウェブに公開されることはなく、信頼できる社内ソースからのみ情報を取得するようになっています」
Worldline は、信頼性をさらに高めるために、フィードバックループの仕組みを用いてパフォーマンスを継続的に調整しています。「エージェントが応答するごとに、ユーザーに回答の精度を評価してもらっています。そのデータは記録され、エクスペリエンスの継続的な改善のために利用されます」と Scotté 氏。「そのツールが日々の業務フローにおいて便利で信頼できるものになるにつれて、AI への信頼性も高まっていくことがわかっています」
AI の未来とは?リーダーのための 3 つの予測
🔮 予測 : AI は雇用を減らすのではなく、雇用の形を変える
AI は仕事を奪うのではないかという懸念に反して、今回の調査では、ほとんどの経営幹部は採用を減らしてはおらず、ただその方向を転換していることが示されています。つまり、仕事が消滅するのではなく、役割が進化しているのです。調査では、経営幹部の 53% が技術系人材の採用拡大を計画しているほか、58% がエントリーレベル人材の採用拡大を予定し、61% が AI に特化した職種を追加する予定だと回答しています。エージェント時代への備えとして最も重要な戦略の 1 つは、AI のスペシャリストをチームに直接迎え入れることです。
「1990 年代にパソコンが一般家庭に普及すると、ワープロを使えることが履歴書に書かれるエントリーレベルのスキルになりました」と Elizabeth Gerber 氏は解説します。「それと同じように、AI を使えることが、これからのエントリーレベルのスキルになるでしょう。2 年前には AI スキルを磨くことに関心をもつ大学生はほとんどいませんでしたが、今では出会う学生のみんなが、何を身につけておくべきかと私に尋ねてきます」

AI を使えることが、これからのエントリーレベルのスキルになるでしょう。
🔮 予測 : AI エージェントを、仕事を奪う存在ではなく、サポート役と位置づける企業が優位に立つ
エージェント型の AI が仕事に浸透していくなか、経営幹部の 84% がチームの管理方法に大きな転換が必要になると考えています。ただ、エージェントを実際にどのように利用するかについては、一致する意見はほとんどみられません。一方、デスクワーカーの期待はより明確です。デスクワーカーは、人間の代替でない、協働するパートナーとしての AI を求めています。回答者の 3 分の 1(33%)は、自分の仕事を高めてくれるエージェントを希望し、完全な自動化を望む人は 13% にとどまりました。これは、AI エージェントを人間の代替ではなく、人間をサポートするシステムとして位置づける企業が、信頼を獲得し、導入を推進して、真の価値を引き出す可能性が高いことを示唆しています。
カナダの不動産スタートアップ企業 Wahi は、不動産仲介業者のネットワークをサポートするために Slack に一連の AI エージェントを導入した際、人間の役割を置き換えるのではなく、それを強化することを目的に据えました。「見込み客と実際に会い、物件を案内し、アドバイスをするといった、現場での不動産仲介担当者の役割は依然として必要です」と同社のエンジニアリング部門を率いる Rémi Flament 氏は説明します。「AI エージェントが担うのは、人間が本来の仕事に使える時間を増やすことだけです。顧客記録の更新やリアルタイムでのマーケット情報の提供といった、反復的でミスも発生しやすい業務を AI エージェントが代行することで、担当者は顧客との関係構築や案件の成約に集中する時間を増やせます」
🔮 予測 : AI は職場のつながりを弱めるのではなく、強化する
AI によって従業員が孤立したり、人間同士の交流が減ったりするのではないかと懸念する声も聞かれるなか、今回の調査では、それとは異なる結果が示されました。AI を日常的に利用する人は、あまり利用しない人に比べて「AI は同僚とのつながりを感じさせてくれるのに役立つ」と回答する割合が 2 倍以上高くなっているほか、職場への帰属感も AI を使っていない人に比べて 62% 高くなっています。Z 世代では半数(50%)が、AI を使っても同僚への質問やチームでのコラボレーションの頻度は変化しないとし、さらに 29% は AI によって実際に関わりが深まったと回答しています。AI は人間のコラボレーションに取って代わるどころか、コラボレーションの促進役として機能し始めているようです。AI が計画的に導入されている場合はとくにそれが当てはまるでしょう。
Salesforce の Senior Account Executive である Haley Gault も、AI を日々の業務フローに取り入れて以来、まさにそれを実感しているといいます。「Agentforce のおかげで、本当に成果の上がること、つまり、お客さまとの関係を深め、ニーズを予測し、速やかに取引を成立させることに集中できます。反復的な作業をエージェントに任せることで、あらゆるやり取りに共感や創造性をもって対応でき、戦略的思考をさらに深められるのです」
調査方法について
この調査は、2025 年 4 月 9 日から 5 月 1 日までの期間に、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国、米国の 5,156 人のワーカーを対象に実施されました。
調査の運営は Qualtrics 社が行い、Slack および Salesforce の従業員と顧客は対象に含まれていません。回答者はすべてデスクワーカーです。ここでのデスクワーカーとは、フルタイム(週 30 時間以上)の勤務を行い、「データを扱う仕事、情報を分析する仕事、創造的思考を伴う仕事」のいずれかに従事していると申告した人、または次のいずれかの役職についている人です : 経営幹部(社長 / パートナー、CEO、CFO など)、上級管理職(エグゼクティブ VP、シニア VP など)、中級管理職(部長 / グループマネージャー、VP など)、下級管理職(マネージャー、チームリーダーなど)、上級スタッフ(非管理職)、専門職(アナリスト、グラフィックデザイナーなど)。