Enterprise Grid移行から2ヶ月、約7割が毎日Slackbotで自己解決するAIプラットフォームへ
事例要約
カルテットコミュニケーションズは、名古屋に本社を置く中小企業向けのデジタルマーケティング支援企業です。組織拡大が進む中、クローズドなDM文化と営業のナレッジ共有が組織として体系化できていない現実が長年の壁でした。まず全社Slackで文化を作り直し、続けてSalesforceで営業基盤を整えてきました。
2026年5月にSlackのEnterprise Gridへ移行してからは、100名の実稼働メンバーのうち約7割がSlackbotを日常的に活用しています。さらに商談の文字起こしを起点にAgentforceが要約・議事録・チャーンリスク検知までを自動で走らせ、商談終了から約20分で顧客の不穏な兆しがSlackに届く仕組みを実装しました。AIの入り口をSlackに一本化する構想が動き始めています。
カルテットコミュニケーションズについて
株式会社カルテットコミュニケーションズは、名古屋に本社を置くデジタルマーケティング企業です。東京・大阪・福岡に拠点を持ち、Yahoo!、Google、Metaといった主要媒体で表彰実績を重ねてきました。売上の6〜7割は創業以来15年続くインターネット広告代理・Webマーケティング支援事業が占めます。中小企業向けにピンポイントで刺す「ランチェスター型」の広告運用に強みを持ち、約4年前にSalesforceパートナー認定を取得してからは、DX製品の導入・活用・定着支援を第二の柱として展開しています。集客のマーケティング支援を起点に、MA・SFA・CRM・AIまでフルファネルで中小企業を支える体制が特徴です。
カルテットコミュニケーションズの挑戦
「精神力ではなく仕組みで」。拡大期の組織が越えるべき、3つの壁。
2010年代半ば、若手中心の組織だったカルテットコミュニケーションズには、成長期特有の”チームとしての未成熟さ”がありました。Skype等での1対1のクローズドなやり取りが常態化し、自律的な連携を阻んでいたのです。経営と現場、双方がまだ「開かれた組織づくり」の経験を積んでいる段階でした。従業員が60名を超えたころから、業績の伸びに天井を感じるようになりました。毎月数百件規模のリードを獲得できていたものの、商談化率は低く、大半が埋もれてしまっていたのです。案件管理はExcelベースの簡易的な仕組みにとどまり、先回りした進捗管理を行うところまでは至っていませんでした。毎月の営業実績も結果報告が中心で、日々のプロセスを仕組みとして可視化・管理する基盤とは言えない状態だったのです。感覚に頼った経営から脱し、データに基づく営業管理へ移行すること — それが、SFA基盤整備を急ぐ最大の理由でした。
Salesforceを導入したあとにも、別の壁が残りました。Web広告事業の受注には、予算、期間、媒体、施策方針など、商談項目として埋めるべき情報量がもともと多く、営業にとってSalesforceへの入力は「受注処理のための事務作業」という位置づけになりがちでした。結果として、BANT(CH)や商談の障壁、ネクストアクションといった、本来は日々の商談進捗管理にこそ活きるはずの情報が、リアルタイムには更新されにくいという状態が続いていたのです。SFAが情報の起点になっていなければ、その先にあるAIも分析も動きません。この壁を越えるには、”入力の手間をかけずに商談情報を更新できる仕組み”そのものが必要でした。
Salesforceがカルテットコミュニケーションズをどのようにサポートしたか
Agentforceが商談を「読み解き」、20分後にはSlackへ届く
商談の文字起こしデータをSalesforceに取り込むと、Agentforce for Salesが自動的に動き出します。議事録の生成、商談要約、顧客満足度評価、そしてチャーンリスクの検知までを一連のワークフローで処理し、閾値を超えたケースは即座にSlackへ通知されます。


商談終了からおおよそ20分後には、担当者の手元に議事録データに基づいた「顧客の離反予兆」が届く仕組みが動いています。これにより担当者は商談上のリスクに早期対応できます。また営業側は顧客に送る議事録共有の下書きを自動で受け取れるようになり、二重入力の負担も薄れました。人手では実現できなかった「気づきの速度」が、日常業務のなかに組み込まれています。

Slackbotが、社内のAIの入り口になる
同社の実稼働メンバーは約100名で、およそ7割が日常的にSlackbotを利用しています。バックオフィスへのヘルプデスク照会、過去事例の検索、進捗確認、社内規程の参照など、これまで先輩や上司の時間を細切れに奪っていた問い合わせが、Slackbot経由で自己解決へと置き換わりました。
特にコーポレート部門では利用率が100%に達し、社内問い合わせを受けるメンバーからは「本当に助かっている」との声が上がっています。Slackという既存の入り口を活かすことで、多くの社員が新しいツールを覚えるコストなくAIに触れられるようになりました。
定型業務は「スキル」に閉じ込め、心理的負荷を下げる
Slackbotのスキル機能で、日々の定型業務をひとつずつ自動化しています。マネージャー向けのメンバー別Slack活動レポート、Google Meetの議事録を毎日18時に自動でSlack canvasへリスト化する仕組み、GmailとSlackを横断して未対応タスクを検知する「抜け漏れチェッカー」など、さまざまなスキルが活用されています。

コーポレート部門では、毎週10件以上の顧客向け案内文作成をスキル化し、体感2時間かかっていた作業を約1時間へと半減しました。「地獄の作業」と呼ばれていたコピー&ペーストが消え、100点の仕事に求められる心理的負荷も軽くなっています。
これまで一件一件、Slackのチャンネルを検索して、案内文をコピー&ペーストして、というのを毎週やっていました。正直、地獄の作業でした。Slackbotのスキルにしてからは、その時間が2時間から1時間に減っただけでなく、『微妙にミスがあったらどうしよう』という心理的な負担がなくなったのが、いちばん大きい変化です。
他社にはないSalesforceの価値
自律的に動くAgentforceと、日常に溶けるSlack。ふたつが同じデータの上で噛み合う。
Agentforce最大の価値は、明確なトリガー設計にあります。Salesforce上のデータが更新された瞬間を起点に、要約・分析・通知までを人の手を介さず走り切ります。この「自律性」こそ、他のツールでは届かない領域でした。文字起こしデータのコピー&ペーストや、資料の指定といった手数を挟むことなく、業務フローの中に静かに組み込まれていく点が、Agentforceを選んだ最大の理由になっています。
一方でSlackは、営業だけでなくコーポレートも、パートナーも顧客も、日常的に触れる基盤です。Slack Connectで顧客とのプロジェクトチャンネルまでつなぎ、そこにAgentforceの分析結果が落ちてくる構造は、他のSFAとチャットの組み合わせでは組み立てにくいものでした。SalesforceとSlackが同じデータレイヤーの上で噛み合うからこそ、「AIの入り口をSlackに一本化する」という構想が現実の設計として立ち上がっています。
AI活用の「適材適所」:Slack、Gemini、Claudeを使い分ける組織の知恵
同社では、全社的なAI活用において、ツールを闇雲に増やすのではなく「目的」に応じた使い分けを徹底しています。その戦略は「Slackをハブとし、作業の性質に応じてGeminiとClaudeを使い分ける」という明確なものです。


Geminiは、明確な参照先がある情報の精査
「このドキュメントを基に要約してほしい」など、特定の資料や議事録といった明確なソースがある場合の「精査」に適しています。Google Workspaceとの高い親和性を活かし、情報の正確性と文脈を重視したまとめを行う際のパートナーです。
Claudeは、アウトプットを生み出す「デリバリーエンジン」
提案資料の構成案、コーディング、画像生成など、具体的な「成果物」をゼロから創出したい場合に活用します。個人の業務において、完成度を追求する際の「エンジン」として機能しています。
「使い分け」がもたらす自走する組織文化
「曖昧な疑問はSlack」「確実な参照ならGemini」「成果物ならClaude」。この指針を共有することで、社員は迷うことなく、最も効率的な手法で業務を遂行しています。特定のツールに固執せず、目的から逆算して最適な道具を選ぶ適材適所なAI活用文化こそが、同社のパフォーマンスを底上げする鍵となっています。
Slackを核とした「UI統一」戦略
カルテットコミュニケーションズが体現しているのは、単なるAI導入ではなく、組織の日常的なコミュニケーション基盤を前提とした「AI活用のデザイン」です。
AIの入り口をSlackという共通の場に一本化し、誰もが迷わずアクセスできる環境を整える一方で、GeminiやClaudeといった専門性の高いツールについては、作業の目的に応じた適材適所を徹底しています。
「入り口の統一」と「高度な使い分け」。この二軸を両立させることで、現場の心理的なハードルを取り払い、組織全体の生産性を底上げする。これこそが、同社の次世代のワークスタイルを支える核心的な戦略といえるでしょう。
定量効果(The Results/Key Number)
-50% 週次顧客案内業務の工数削減
70% Slackbot 日常利用率
100% コーポレート部門の利用率
20分 商談後チャーンリスク検知までのリードタイム
2ヶ月 Slackbot全社浸透までの期間













