自社の Dropbox や Google Drive でファイルを探すのは、まるで干し草の山から針を探し出すような作業です。
たくさんの情報リソースは企業の成長に役立つ一方で、簡単に見つけられないと逆効果になります。だからこそ、企業はチーム全体のナレッジベースを改善して、情報を収集、整理、そして共有するためのプロセスを整備することが重要です。
ようこそ、ナレッジマネジメント(情報管理とも呼ばれる)の世界へ。
ナレッジマネジメントの実践が 1990 年代に始まった当初は、主に情報技術の分野に焦点が当てられていました。現在の主な目的はイノベーションとコラボレーションです。IT 部門だけでなく、企業全体のリーダーが、チームが使うツールにますます注目するようになっています。
Technology Services Industry Association によると、70% 以上の企業が、効果的なナレッジマネジメントを実践することで生産性を 20% 以上高められると予測しています。ここでは、組織的なナレッジマネジメントプロセスがどのようなものであり、チームメンバーの生産性向上にどのように役立つかについて、順に説明していきます。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントの目的は、組織内で「貴重な知識や情報を持っている従業員」と「それを求める従業員」を結びつけることです。
この目標を成し遂げるために、企業は次の 4 つができるようになる必要があります。
- ナレッジを取り込む
- ナレッジへのアクセスを向上させる
- ナレッジ環境を充実させる
- ナレッジをアセットとして管理する
一般的に、どうやって従業員のナレッジベースを充実させるかをリーダーが考える時、2 つのナレッジカテゴリーについて考慮する必要があります。1 つは「明らかなナレッジ」、もう 1 つは「暗黙のナレッジ」です。
明らかなナレッジは伝えるのも理解するのも簡単です。これは、データ、ハウツーガイド、メモなどの事実に基づいた資料で構成されます。明らかなナレッジは誰にでも共有してもらうことができるため、それを中心としたシステムも比較的簡単に作ることができます。
一方、暗黙のナレッジは経験的かつ直感的なノウハウであり、簡単に伝えられるものではありません。このカテゴリーには、文化的信念、価値観、態度などが含まれます。
組織的学習の専門家である Jerry L. Wellman 氏によると、暗黙のナレッジは業務を進めるうえでの突破口になりうるため、一般に明らかなナレッジより価値が高いと考えられています。とはいえ、暗黙のナレッジを体系化して他者に共有することは簡単ではありません。ここで、職場でナレッジを広める方法を一部紹介します。
- 詳細な研修資料と 30 日間のプラン
- 全社的なメンタープログラム
- チームリーダーとの 1 対 1 の週次面談
- 部門の営業時間
- タウンホールミーティング
- 会議やコラボレーションを容易にするソフトウェアとツール
ナレッジマネジメントツールとシステムの種類
ナレッジマネジメントシステムは、ナレッジを保存し管理するために使うすべてのもので、ファイルや文書、メール、インスタントメッセージなどがあります。基本的に、組織に関する重要な情報を伝えるコミュニケーションならどんな形のものでも含まれます。
優れたナレッジマネジメントシステムを使うと、ナレッジの要約、保存、検索を簡単に行えるようになるだけでなく、組織内での学習を促進することができます。ここで、よく使われるおすすめのシステムをいくつかご紹介します。
ドキュメントマネージャー
ナレッジを整理するには、一般的に、文書、ビデオ、PDF などの形式のコンテンツ作成を伴います。Google Drive や Dropbox のような安価なツールは、コンテンツをフォルダに分けて整理し、社内の誰もが閲覧できるようにするのに役立ちます。
ただしこれらのツールは、検索機能に制限がある可能性があります。各種ドキュメントマネージャーの長所と短所を比較検討する際には、会社の規模を考慮してください。
コンテンツデータベース
大企業ではナレッジ共有を文書で行う場合が多いですが、それを主な方法として拡大するのは難しい場合があります。例えば Confluence などの社内 Wiki ソフトウェアを使用すると、あらゆる形式のコンテンツを含めることができ、保存やアクセスを効率よく行えるようになります。
コラボレーションソフトウェア
ドキュメントマネージャーやコンテンツデータベースは大規模なナレッジマネジメントの場合に有効ですが、日々の情報共有に関しては不十分です。
コラボレーションソフトウェアとインスタントメッセージングプラットフォームを使用すると、明らかな情報と暗黙の情報の両方を簡単にリアルタイムで共有できます。これによりコラボレーションが改善されるだけでなく、時間的制約がある情報でも大規模に広めることができます。
効果的なナレッジマネジメントが生産性にもたらすメリット
Slack が行った調査「Future of Work」によると、80% の従業員が自社の意思決定方法についての情報をもっと知りたいと感じ、また、回答者の 87% が、組織の透明性を今後さらに高めて欲しいと考えていることがわかりました。具体的には、ナレッジワーカーは、会社、同僚、競合相手についての理解を深めたいと考えています。
ナレッジを共有して意思決定に応用する方法が不透明だと、たいてい従業員のナレッジが均一でなくなり、成長とイノベーションの機会を失うことにつながります。一方全員が同じ認識を持っている場合は、明らかなナレッジ・暗黙のナレッジ両方において、みんなで協力して組織のナレッジベースを改善していけるのです。
ここで、あらゆる組織におけるナレッジマネジメントの主なメリットを見ていきましょう。
より深いインサイトを得られる
正しい情報を持つことは、ビジネスにおける正しい意思決定に不可欠です。それは明らかなナレッジか暗黙のナレッジかを問いません。しかし、その情報を少数の担当者のみが独占していると、イノベーションにつながるインサイトや機会が、その担当者が考えられるものだけに制限されてしまいます。
リーダーが組織全体、特に経験や文化に多様性を持つ組織においてナレッジ共有を拡大すると、ユニークで潜在的な価値を持つアイデアが次々と生み出される力強い流れを作ることができます。
プロセスの効率が向上する
あらゆるビジネスは、リーダーと従業員の両者が毎日行う無数のプロセスで構成されています。しかし、1 人の従業員が常にほかより質の高い仕事をしていたり、顧客から受け取るフィードバックがほかより高評価であったりする場合は、その従業員からほかの従業員にテクニックやプロセスを共有してもらう絶好の機会かもしれません。
適切なナレッジマネジメントシステムがあれば、全員が自分の仕事をできる限り効率的に進めるために必要な情報を得ることができるのです。
重要な目標に対する見解を統一できる
短期的な結果をもたらす目標でも、全社で取り組む長期的な目標でも、その目標に関する十分な情報がなければ、従業員は完全にその目標のために動けるようにはなりません。
優れたナレッジマネジメントシステムが整っていれば、組織全体の従業員が重要な目標に対して統一した見解を持つよう動機付けることができます。また、従業員にはその目標を達成するのに必要なリソースを提供することも可能になります。
コラボレーションを促進し、仕事上の関係を改善する
職場において多様性は価値のある要素です。しかしその価値は、各自が多様な経験、価値観、信念を他者と共有するためのチャンネルを持っていなければ発揮されません。
Slack の調査「Future of Work」によると、91% の従業員が同僚への親近感を深めることに前向きだとわかっています。職場で適切なツールを使用して暗黙のナレッジを収集、整理、および共有することで、従業員同士がより有意義な関係を築ける環境を作ることができようになります。その結果、メンバー間の信頼性が高まり、チーム全体の満足度と生産性が向上します。
ナレッジマネジメントシステムをうまく構築するには
情報管理は、組織の生産性とコラボレーションを向上させるのに役立ちます。ただし、その有効性を最大化するためには戦略を立てるのがおすすめです。その方法をいくつかご紹介しましょう。
コラボレーション文化を築く
効果的なナレッジマネジメントシステムを構築するうえで大きな妨げとなるのは、共有することに積極的でない企業文化です。このような文化を持つ企業の従業員は、変化を自然に受け入れることができず、なかには暗黙のナレッジを共有したくないと考える人もいるかもしれません。
ナレッジマネジメントシステムを作って物事が改善していくことを期待するだけでは不十分です。リーダーには自分たちの決定や体験の透明性を高めることが求められています。さらに、リーダーには組織のあらゆるレベルでコラボレーション文化を促していくことも必要です。
専門家を決める
組織のナレッジマネジメントシステムの門番役には、1 人の従業員または 1 つのチームを任命すべきと考えるかもしれません。しかし、すべての部署の複数のレベルに専門家を置くことも考えられます。
時間をかけて、チーム全体に最適な情報を提供できる内容領域専門家を特定してください。その後、専門家が自らの知識を組織内で定期的に共有するためのプロセスを確立していきます。
有意義なものに焦点を当てる
組織のナレッジベースの構築はなかなか骨の折れることです。そのため、すべての情報を共有することに焦点を当てるのではなく、イノベーションと生産性をどちらも向上できるタイプの情報をまずは優先しましょう。そのうち、あらゆる情報共有ができるようになるでしょう。
決めたツールにこだわらない
ビジネスの規模やニーズは時間とともに変わるため、ナレッジマネジメントに適したツールを見つけるのは難しい場合もあります。使っているツールがあまりしっくりこない場合は、そのツールにこだわらないでください。
現在のニーズにぴったりなものがどれか、今後拡大できそうなものはどれか決めるためにさまざまなツールを試してみましょう。
ナレッジマネジメントが働き方の未来を作る
イノベーションとコラボレーションを推進するためのナレッジマネジメント活用が高まるにつれて、リーダーが全社的な透明性を高めていくことがより重要になります。これには、会社の財務や戦略に関する情報だけでなく、過去の経験から得た教訓も含まれます。
競争力と従業員エンゲージメントの両方をキープしたい企業にとって効果的なナレッジマネジメントシステムを確立することは、生産性を高めて成功するうえで欠かせないものだと言えるでしょう。