RaphaëlMazoyer_McDonald's(JP)

世界に散らばるメンバーが育んだ日本マクドナルドのモバイルアプリ

現在日本に約 3000 店舗あるマクドナルド。誰もが一度は足を運び、公式モバイルアプリを利用された方も多いのではないでしょうか。実際、国内では人気 SNS アプリと肩を並べるダウンロード数を誇り、毎日数百万人がアクセスする、実店舗販売型としては日本で最も利用されているアプリとなっています(ニールセン調べ)。店舗検索はもちろん、クーポンが届いたり、事前注文や店舗の利用に対してのフィードバックもすることができ、コロナ禍においては、デリバリー注文機能の活用が飛躍的に伸びています。

このように革新的で便利なマクドナルドのアプリですが、実は少し前までこれらの機能は別々のアプリに備えられ、利用者が全ての機能を活用するには、公式アプリと合わせて合計 4 つのアプリをインストールしなければなりませんでした。日本マクドナルド株式会社マーケティング本部でデジタルマーケティング担当として執行役員を務めるラファエル・マズゥワイエさんは当時を振り返り、「お客さまにとって使い勝手がよいといえず、社内的にもリソースが最適化されていないという観点で見過ごすことができませんでした」と話します。

2019 年秋、ラファエルさんは、マクドナルドのブランドプロミス「おいしさと Feel-good なモーメントをいつでもどこでもすべての人に」のもと、半年以内でアプリを統合するプロジェクトを立ち上げました。そこで、世界各国、社内外の複数のメンバーと短期間でのアプリの統合を達成するための鍵となったのが、Slack の存在でした。

チームが一気に繋がりスピードとモチベーションが向上

 ラファエル・マズゥワイエさんは、デジタルマーケティングの担当者として 2019 年夏にマクドナルド社に入社。ちょうどモバイルオーダー用のアプリ「モバイルオーダー&ペイ」を立ち上げたばかりの時期でした。当時、同社にはすでに公式アプリの他に、店舗利用の感想をフィードバックしてもらう「KODO」と、注文を受けて配達する「マックデリバリー」があり、「どれも便利なアプリですが全体の統一感がなく、アプリを統合してお客さまとブランドとの関わりをシンプルにし、快適にアプリを使っていただきたかったのです」と、ラファエルさんは言います。

とはいえ、マクドナルド社のような世界各国のベンダーと協働する組織にとって、アプリの統合は容易なものではありません。スイス、東京、中国、オーストラリア、ニュージーランド、そしてインドに拠点を置く各国の担当会社との多言語での調整に加えて、社内の多部署間でも盛んなコミュニケーションが必要になるからです。

さらに、わずか半年という限られた時間で、複雑な状況のなか複数のチームが連絡を取り合い同時に意思決定をするには、スピードとモチベーションの維持が不可欠です。その全てを実現するのは容易なことではありませんが、マクドナルドにとって Slack の利用は離れた場所でもチームを繋ぐ大きな助けとなりました。「幸運だったのは、すでに Slack が少しずつチームに浸透していて他社のメンバーを招待する環境が整っており、アプリ統合に関わるメンバーが自然と Slack を使ってくれたことでした」とラファエルさん。「常にスピードとモチベーションを与えてくれた」という Slack によって得られた効果を、さらに深掘りしてくれました。

文章と会話の融合でコミュニケーションが円滑に

 Slack ではすべてのコミュニケーションが文字として残るため、口頭の会話のようなチャットのやりとりの中にも「説明責任」が明確に残ります。それらを確認するための履歴の検索機能も優れているので、添付ファイルやメッセージを含めたすべての情報をチャンネル、発言者、期間を絞って追うことができ、 「書面でのコミュニケーションから得られる正確さに利点がある」とラファエルさんは話します。

一方で、絵文字での感情表現やメールのように形式ばる必要のない発言のしやすさは、コミュニケーションに優れた柔軟性を与えてくれます。 Slack がこうした柔軟性と説明責任を併せもったツールであることは、マクドナルドのアプリ統合に向けてチームが一丸となるための、迅速で円滑なコミュニケーションづくりに大いに役立ったといいます。

Slack コネクトで複数組織とのやりとりがフラットに

次にラファエルさんが着目したのは、Slack コネクトの利用でした。Slack コネクトは、パートナーやお客様など、社外のワークスペースとチャンネルを共有できる便利な機能です。一度チャンネルを共有しておけばベンダー側が必要とするメンバーをマクドナルド側を介さずにチャンネルに追加できるため、複数の組織をまたいで外部のメンバー同士がセキュリティを保ちながら直接やりとりできるようになりました。同じチャンネルで情報をリアルタイムで共有しているため、対応時間やミーティングの回数が減ったり、ひとつひとつのやりとりをラファエルさんやマクドナルド側のメンバーが承認する必要がなくなったことで、レビューと承認の所要時間が少なくなるなど、そこからさらに多くのメリットが生まれました。

こうしたプロセスの効率化ができると、仕事は迅速に進みます。「 Slack コネクトには、必要に応じてマクドナルド側にこうした会話の追跡と介入させる機能があるため、常に透明性と安心感が手もとにありました。そして想像していた以上にリソースの軽減に役立ったのです」と、ラファエルさんは話します。

 実際に Slack コネクトの導入によってメンバー同士のコミュニケーションはスムーズになり、アプリの統合がスピードアップしていきました。

初心者 にもやさしい UI でチーム力が向上

もうひとつ、 Slack がアプリ統合のプロジェクトに欠かせないツールとなった理由は、その利便性にあったといいます。Slack のチャンネルを使うと、チームごとにメッセージやツール、ファイルを共有でき、仕事がテーマごとに整理されて煩雑さがなくなります。ラファエルさんは、「検索機能があるのでメールのやりとりで起こりがちな『必要なコメントが埋もれて探せない』、『cc への追加の手間や追加忘れ』といった煩わしさもなく、『外部に不要な内容を送る』といった恥ずかしい失敗もなくなりました」と話します。

さらにチャンネルの中でひとつの投稿に対し深掘りしたり、コメントしたいときはスレッドが役に立ちます。スレッドは同じチャンネル内で複数の話題があっても平行してやりとりができ、@ を使ったメンションをつけることで直接相手に返事ができるなどのメリットがあります。また、スレッドをフォローしたり見直したいスレッドを未読にできる機能や、組み込まれている音声通話やビデオ通話を使っての会話も便利です。Zoom のようなほかのツールと連携しながら Slack を使えば、会議の幅も広がるでしょう。そんなふうに仕事を進める中、Slack のチャンネル上に表示されるメンバーのアイコンは、目標に向かい一緒に働く仲間の存在を実感できるラファエルさんにとっての楽しみでもあったそうです。

わかりやすくシンプルなアイコンを多様した Slack は初心者でも入りやすく、リテラシーの差やツールの慣れに関係なく扱えます。ラファエルさんは、「チームやメンバーのまとまりとモチベーションが日々高まっていったのは、 Slack の使いやすさ、快適さのおかげです」と話してくれました。

コミュニケーションツールのあるべき姿を再認識

コミュニケーションツールに求められる要素とは何でしょうか。

ラファエルさんの「半年以内にアプリを統合する」という離れ業は、スピードと柔軟性、透明性、説明責任、検索性能、全体把握のどれが欠けても成し遂げられなかったといえます。世界各国の複数のチームとそのメンバーは、これらを備えた Slack コネクトをセキュアな環境のもとでフルに活用し、それぞれが主体的に、柔軟に動いて組織形成と意思決定を行いました。そしてマクドナルド社は、「今、なにが起こっているのかを正確に把握」しながら安心して舵をとっていたのです。ラファエルさんは、「ルールや規制も多く、構造化された上場企業でのデジタル化は難しいものですが、それが Slack によって達成できました」と話します。

さらにラファエルさんは「組織のコミュニケーションに適したツールがあるかどうかで、私のマーケティング能力が変わる」と断言します。コミュニケーションツールは、毎日意識されずに一日中使われていますが、それがストレスなく快適に使われているかどうかで、チームのモチベーションに影響を与える大きな要因となるからです。

「デジタル化と組織の変革のため、利用できるツールをどのように活用すれば働き方を改革でき、組織の目標を達成できるのか。 Slack のようなコミュニケーションツールの重要性を常に意識して考えることをみなさんにお勧めします」というラファエルさんの言葉どおり、マクドナルドは Slack というツールを有意義に活用し、世界中のメンバーがひとつになることで、短期間でひとつのアプリを作り上げるという偉業を達成しました。こうして統合を果たしたマクドナルドのアプリは、2020 12 月に App Store で 4.6 というユーザーからの高い評価を獲得。マクドナルドとアプリの統合に関わった全ベンダーの Slack を通じたコラボレーションは、見事に実を結びました。