Slack で縦割り文化を脱却した SOMPO システムイノベーションズ

「知識や情報の共有だけではなく、決定や判断に至るまでの経緯が蓄積されていくことで、Slack の中にチームの価値観やカルチャーが刻まれていきます」

SOMPO System Innovations代表取締役社長 社長執行役員内山 修一 氏

損害保険ジャパンと日立製作所が共同出資したジョイントベンチャーとして、損保ジャパンの基幹システムの刷新と IT 体制の強化を担う SOMPO システムイノベーションズ株式会社。革新的な事業を進める一方で、縦割り、階層構造の組織に働き方が縛られていることを課題に感じていた同社では、その課題を解決し、オープンかつフラットなカルチャーに組織を変革するために Slack を導入しました。

Slack を使うきっかけとなった出来事や、導入初期の停滞期をどのように切り抜けたのか、そして、Slack というデジタル拠点を通じて新しいカルチャーの定着に成功するまでの経緯を、代表取締役社長 社長執行役員の内山 修一さんがリーダーの視点で語ってくれました。

縦割りの組織を変えるためのコミュニケーション改革

DX を阻む要因とも言われる『2025 年の崖』に対して、老朽化・複雑化したシステムの刷新と、質の高い IT 体制の構築に取り組む SOMPO システムイノベーションズ。お客さまに最高品質のサービスを提供し続けることを念頭にした損保ジャパン全体のミッションの中で、同社が主となって大規模なプログラムが進行しています。

その革新的企業において代表取締役社長 社長執行役員を務める内山さんは、就任当初、「DX の土台作りをミッションに持つ会社なら、既存の概念にとらわれず、柔軟でイノベーティブな働き方をしているに違いない」と想像していたと言います。しかし、現実は違いました。開発パートナー含めて 2,000 名を超える大きな組織での取り組みであり、何人もの管理者のレビューを経ないと他部署と情報共有を行えないなど、働き方が縦割り、階層構造の組織に縛られていたのです。

「システム開発が業務の中心ということもあり、設計やテストなどの効率化は進んでいたのですが、膨大なコミュニケーションの改善には手つかずの状態でした。例えば、意思決定プロセスが複雑なため、マネージャーも現場も、承認作業自体をいかに締め切りに間に合わせるかに意識が集中。アイデアを練ったり、プロダクトを磨き上げたり、本来、力を注ぐべきことが二の次になるような状態に陥りがちでした」と内山さんは話します。

このような状況を変えたい。オープンかつフラットな働き方で従業員の可能性を引き出し、誰もが働きやすいと感じるカルチャーに組織を変革したい。そう考えた内山さんは、まず社長室を廃止し、ドレスコードフリーを取り入れた後、全社員との 1 on 1 やグループでの意見交換など、様々な施策にチャレンジしました。そして、その過程で抜本的なコミュニケーションの改善策として、ある若手社員から提案されたツールが Slack でした。

「Slack を使ってみたい」のひとことをきっかけに、内山さんはすぐに社内での検討を始め、全社での Slack 導入を決断します。

Slack 浸透に向けたリーダーとしての取り組み

真のオープンコミュニケーションを目指し、Slack の導入を決めた SOMPO システムイノベーションズですが、長年の文化を変えるのは容易ではありません。当初は様々な課題に直面しました。

「オープンでフラットとはいっても、具体的にどのような行動をすればいいのかイメージできない。『忙しい中、新しいツールの使いこなしに割く時間はない』と、そもそも変化や新しいモノへの抵抗感がある人も一定数存在しました」と内山さんは当時の状況を振り返ります。

そこで同社が取った策が「Slack ファンを作る」「投稿しやすい雰囲気を作る」「リーダー自らやってみる」の 3 つです。

まず Slack の使いやすさ、楽しさを実感してくれるファンを作るために、意欲のある人・チームでパイロット運用を実施し、効果を感じやすいユースケースを試しました。「具体的には、コミュニケーションコストの改善のために、前後のやりとりを含む一連の会議の流れを全て Slack に置き換えました。また、全てパブリックチャンネルとし、オープンなコミュニケーションの効果を感じてみるという試みも行いました。このようなトライを通じて、少しずつ成功体験を積み上げました」と内山さんは紹介します。

次に投稿しやすい雰囲気を作るために行ったのが、全員参加型のチャンネルを作ることです。全社に向けた情報発信や雑談などを通じて、カジュアルでスピーディーなやりとりを全員が目の当たりにする機会を作り、パブリックチャンネルへの投稿に対する心理的ハードルを下げる試みをしました。

そして最後は、リーダーが自ら新しい文化の体現者になること。「企業のカルチャー変革を志すわけですから、リーダーの役割は重要。もちろんボトムアップでスムーズに進めば、そんな必要はありませんが、きっかけとなる『浮力』を得るために、私をはじめリーダー陣が率先して Slack を利用しました」(内山さん)

社員同士の自発的な取り組みを通じて効果が倍増

Slack の全社導入から約 1 年が経過し、今や同社では内山さんの後押しが必要ないほどに社員同士のコミュニケーションが発展。各自が Slack を利活用することで、新しい文化が定着しはじめています。

「新たなつながりによる刺激や助け合いで、1 + 1 が 2 以上になる創発」「多様な情報にアクセス可能になり、より自律的に判断・行動しやすくなった」「伝言不要で詳しい人同士の直接会話ができ、仕事のスピードが格段に上がった」「Slack 内に社員の知識・知恵が自然に蓄積され、広く活用可能になった」といった社員の声が、その変化を裏付けています。

「当初こそリーダーが体現者となり、文化の変革をリードしようと意気込みましたが、すぐに現場主導で Slack の利用が拡大。様々な成果につながっています。例えば『タスク管理、みなさんはどうやっていますか?』と呼びかけると、部署を超えてアドバイスが集まったり、そこから新たな課題が見つかり、別の方法をみんなで考えるなど、Slack が『創発』の場所になっています」(内山さん)

また、内山さんが本社の経営陣と行った会議の内容を Slack で共有すると、そこに社員からコメントが寄せられることも珍しくありません。スレッドに笑いの「W」の文字を使ったコメントが投稿されるなど、役職の階層構造に縛られていた以前では考えられない、様々な壁を超えた距離の近いコミュニケーションが生まれているそうです。

システム開発においても、約 800 名が参加する大規模なチャンネルでテストに関する情報共有を一斉に行えるようになり、リーダー経由の伝言ゲームがなくなって関係者同士が直接話し合えること、その情報を全員が見られることにより、大きな効率化につながっています。一部の有識者に暗黙知として偏りがちだった経験や知識が、個人ではなく全員の形式知として蓄積され、技術者のスキルアップにも貢献しています。

「ひとつの呼びかけに部署を超えてアドバイスが集まったり、そこから新たな課題が見つかり、別の方法をみんなで考えるなど、Slack が『創発』の場所になっています」

SOMPO システムイノベーションズ株式会社代表取締役社長 社長執行役員内山 修一 氏

 Slack で広がっていく組織を超えたカルチャー変革

さらに、カルチャー変革の側面として、内山さんはこのような効果を挙げてくれました。「チームのチャンネルの場合、知識や情報の共有だけではなく、決定や判断に至るまでの経緯が蓄積されていくことで、Slack の中にチームの価値観やカルチャーが刻まれていきます」その結果、新しい社員がチームに加わる際のオンボーディングにも役立つと言い、内山さん自身もメリットを実感しているそうです。

現在、SOMPO システムイノベーションズの Slack 活用は、データ上で可視化した利用状況を見ても、情報ややりとりが一定の場所に偏らないネットワークが広がり、内山さんの理想としていたオープンでフラットなかたちに近づいてきています。「Slack でのコミュニケーションを通して余計なことが削ぎ落とされ、価値の提供やゴールといった目指すところにストレートに動きやすい。社員のエンゲージメントの向上にもインパクトを与えていると思います」(内山さん)

次のステップでの目標は、変革の範囲を社外にも広げ、Slack コネクトでグループ会社や取引先ともつながり、その成果をもっと大きくしていくこと。「組織の壁を超えた思わぬつながりにより、色々な場所で新しい取り組みが進むと、それに比例して、1 + 12 以上に少しずつ増えていく。そうした出来事を重ねていくためには、多様性のあるつながりが求められます。それをサポートしてくれるツールが Slack です」と内山さんは語ります。

Slack を活用した SOMPO システムイノベーションズのコラボレーションとカルチャーの変革に向けた挑戦はこれからも続いていきます。

「Slack でのコミュニケーションを通して余計なことが削ぎ落とされ、価値の提供やゴールといった目指すところにストレートに動きやすい。社員のエンゲージメントの向上にもインパクトを与えていると思います」

SOMPO システムイノベーションズ株式会社代表取締役社長 社長執行役員内山 修一 氏