簡単に言えば、非同期型コミュニケーションとはリアルタイムで行われないコミュニケーションを指します。チームメンバーが必要に応じて情報を共有すると、ほかのメンバーは都合のよいタイミングでそれを読んだり反応を返したりできるのです。非同期型コミュニケーションには、次のようなものがあります。
- ショートメッセージ
- インスタントメッセージ
- メール
- 指示や説明を加えたスクリーンショット
- 録画された動画
- Slack をはじめとするコラボレーションツール
あらゆる規模の企業が部分的または完全にリモートワークへと舵を切った今、非同期型コミュニケーションの重要性は特に高まっています。Globalization Partners による 2021 年の調査によれば、今後もリモートワークを認める予定と回答した企業は、およそ 63%。新型コロナウイルスのパンデミックの間、多くの企業がオフィスでのやり取りを仮想環境で再現しようとしましたが、ビデオ会議だけが長期的に持続可能な解決策というわけではありません。対面での業務に復帰した人にとっても、非同期型コミュニケーションツールは、生産性の向上とダウンタイムの削減に役立つのです。
非同期型コミュニケーションのメリット
リモートワークを採用している職場では特に、非同期型コミュニケーションが数多くの問題を解決してくれます。
- 時差に関する問題の解消 : リモートワーカーが会社とは異なるタイムゾーンの地域に住んでいたり、お互いに遠く離れていたりするのも今では珍しくありません。こうした場合には、全員に都合のよい会議時間を調整するよりも、非同期型コミュニケーションを使ってそれぞれが可能な時間にやり取りする方が便利です。
- さまざまなスケジュールに対応 : 完全に対面での業務に戻った職場でも、柔軟なスケジュールで働く従業員は増えています。非同期型コミュニケーションなら、誰もがそれぞれの勤務時間に合わせてメッセージを送ったり、反応を返したりすることができます。
- ソーシャルディスタンスの維持 : パンデミックは今後もしばらく続くでしょう。しかしパンデミックにかかわらず、人の多いオフィスでは風邪やインフルエンザといったウイルスが広まりやすいものです。物理的な会議室に人を押し込むやり方よりも、非同期型コミュニケーションの方が人との距離を取りやすくなります。
- 時間の節約 : 対面で行うのがベストという業務もあります。しかし、リアルタイムのコミュニケーションに頼っていては生産性が下ってしまう業務の方が多いのです。対面での会議にはダウンタイムがつきもの。そしてビデオ会議では、障害やフリーズが発生して再起動しなければならないこともあります。非同期型コミュニケーションにはこうした落とし穴を避けられるうえ、記録が文字で残るので、あとから会話の内容を振り返るのも簡単です。
- インクルージョンの促進 : 多くの人の前で話すのが好きという外向的な人ばかりではありません。リクエストに応じたり、プレゼンを行ったりする前に、時間をかけて考えをまとめたい人もいるのです。非同期型コミュニケーションならこんなプレッシャーとも無縁です。その場で答えたい人は即答し、ゆっくり考えたい人は時間をかけることができます。たいていの非同期型コミュニケーションは文字で行えるので、内気な人がスポットライトを浴びながら話す必要もありません。
もちろん、非同期型コミュニケーションは正しく効果的に導入して初めてしっかりと機能します。そうでなければ、チームメンバーはこのテクノロジーを理解できないまま、返答し忘れたり会話を的外れな方向に進めたりすることになりかねません。そこでベストプラクティスをいくつか紹介します。これらを実践することで、非同期型コミュニケーションの効率性と有用性を、存分に引き出すことができます。
ベストプラクティス
社内トレーニングの実施
非同期型コミュニケーションの導入とはつまり、職場に新しいテクノロジーを取り入れるということです。チームメンバーがその使い方を知っていると決めてかかるのは禁物です。特に充分使いこなせる人となると少ないでしょう。トレーニング用のドキュメントや動画を用意し、誰かが質問に答えられるようにしておきましょう。
目標を常に意識
達成したい目標は何か、そしてそのために非同期型コミュニケーションがどう役立つのかをよく考えましょう。次に、期待どおりの成果を挙げられるよう、ポリシーと手順をしっかりと決めておきます。例えば、週に 1 度はメンバー全員がデータを同期するようにするとか、各チームに週ごとの成果報告を提出してもらうといったことが考えられます。新しいツールを導入する前に、それが目標達成にどう役立つかをまとめ、トレーニング期間中はそれを優先しましょう。
テクノロジーに関するルールの作成
非同期型コミュニケーションチャンネルをはじめとしたテクノロジーツールを職場でどう使うのか、基本的なルールを決めておくのもおすすめです。例えば、新着メッセージへの応答は必ず翌日の業務時間終了までに行うといったようなルールです。バーチャルな休憩所を設置して、本題からはずれた会話はすべてそこに誘導するのもよいでしょう。たいていの場合は、個人のスマートフォンなどのデバイスで非同期コミュニケーションチャンネルにログインするので、会社のデータを保護するために新しいセキュリティ手順を導入する必要もあるでしょう。
徹底した透明性の実現
コミュニケーションの場が非同期型チャンネルに移った当初は、信頼感が低下しやすくなります。一部のメンバーまたはメンバー全員がリモートワークをしている場合はなおさらです。メンバー全員に対して、常に高い透明性を保つことを忘れずに。
強力なコラボレーションツールの利用
ショートメッセージなどのツールは非同期型コミュニケーション戦略の一環として使えるものですが、だからと言ってそればかりに頼るのもよくありません。Slack のような強力なコラボレーションツールならカスタマイズオプションが豊富に用意されています。そのため、コラボレーションを促進しながら、自社に合う方法でコミュニケーションを整理できます。
絵文字の活用
「了解です」「賛成です」といった短いメッセージでスレッドを埋めてしまうのではなく、絵文字リアクションで意図を簡潔に伝えてもらうようにしましょう。絵文字を使えば会話の流れがすっきりし、画面スクロールも最低限で済みます。
フィードバックの収集
社長が自分の正体を隠して現場で働くというテレビ番組が示すように、現場の業務は経営陣の想像とはかけ離れているものです。チームメンバーにひととおり新しいツールを使ってもらったら、フィードバックを共有してもらいましょう。同時に職場のコミュニケーションについて、またどうすればそれを改善できるかについて、考えを語ってもらいましょう。
同期型コミュニケーションが必要な場面
特にリモートワークに関して、非同期型コミュニケーションのメリットは数えきれませんが、面と向かって会話するのがベストという場合もあります。どの職場にもそれぞれ違いがありますが、以下のような場合に会社側が使うのは、たいてい同期型コミュニケーションです。
- 機密情報の伝達 : 従業員の勤務評価や企業買収をはじめとする機密性の高い状況は、対面で進めるのが一般的です。対面が難しい場合であっても、非同期型のメッセージよりビデオ会議の方が適切でしょう。どちらにしても、あとからチャットやメールで会話の内容を確認しておくのは、スマートなやり方です。
- 人材の採用と解雇 : 可能であれば、採用面接は昔ながらのやり方で行うのが理想的です。面接官も候補者もお互いのボディランゲージなど、言葉以外の要素を判断材料にできるからです。同様に、やむを得ず誰かを退職させる場合には、質問の機会として最後のミーティングを設け、敬意を示したいものです。
- 大きな方向転換 : 会社全体にせよひとつのチーム内にせよ、抜本的な大改革がある場合には、関係者全員をミーティングに集めましょう。こうした状況ではあっという間に噂が広がるものです。早めの行動でゴシップを防ぎましょう。
すべてを 1 つに統合
オフィスコミュニケーションの総合的な目標は、ものごとを円滑に進めることです。非同期型であろうと同期型であろうと、コミュニケーションが目指すものは同じです。しかし、非同期型コミュニケーションというやり方に慣れておらず、導入方法がよくわからないというリーダーは多いのです。
時間をかけて徐々に慣れていき、実践のなかでプランを微調整していきましょう。上記のベストプラクティスを参考にしつつ、必要に応じてリアルタイムのコミュニケーションを使い分けてください。特に、機密性の高い状況や重大な影響がある状況の場合などです。非同期型コミュニケーションが生産性を向上させる一方、時間と費用の節約にもつながるということは、実際に運用してみれば実感できるはずです。