何十年か前に親がベビーシッターを雇う時は、緊急連絡先の電話番号、子どもの食べ物の好み、寝る前の習慣などを紙に書いて共有していました。要するに、シッターのために子どもに関するすべての「ナレッジベース」を 1 か所にまとめていたのです。
最近の親は、「これがスマホの番号です。必要な時はメッセージを送ってください」と言うだけでしょう。
今の職場では、ナレッジマネジメントとナレッジベースの最適化において同じような変化が起こっています。すべてを文書化して最新の状態に保つのは、必要な時に質問に答えられるようにするよりも時間と労力がかかることにナレッジワーカーは気づきつつあるのです。
なぜ私たちは、自分が知っていることを書いて広めるよりも、同僚が連絡しやすいようにする方がよいと考えるのでしょうか。Slack の調査からは、いくつかの要因が見えてきました。
ナレッジマネジメントに変化が起こっている理由
どの組織も、ナレッジの管理には苦労しています。多くの組織は、情報を一元化できるナレッジベースまたはナレッジマネジメントシステムを求めており、実際に Wiki、SharePoint、Confluence、Google サイトなどを使っています。
これらのツールは使いやすく、仕事の効率を高めます。理想とするのは、どの従業員も自分の質問に対する答えを自分ですぐに見つけられる状態です。このように、すべての情報が集約され一貫した方法で管理されたものを一貫性ベースのナレッジマネジメントシステムと呼んでいます。
ただ、企業は本当にこの状態を実現できているのでしょうか?Slack が最近行った実地調査によると、現代の職場はさまざまな戦術を駆使していることがわかりました。ナレッジベースは変わらずあるのですが、従業員は次のような疑問を持っています。
- どんな情報を持っているか
- どこに保存されているか
- どうやってアクセスするのか
- この情報は信頼できるか、最新の状態か
- 責任者は誰か
- 情報が間違っている場合、誰に言えばよいか
- 自分が更新してもいいのか。そしてそれに時間を使う価値はあるか
このようにナレッジマネジメントツールによって回答よりも疑問の方が多くなる場合、従業員はどのように仕事を進めるのでしょうか?
ナレッジの一貫性から可用性へ
私たちは、一貫性ベースのナレッジマネジメントに代わるものを可用性ベースのナレッジマネジメントと呼んでいます。このモデルでは、情報を集約して一貫した方法で管理しようとするのではなく、一緒に仕事をする人の力を借りて、必要な情報をその場で見つけたり集めたりします。
このナレッジマネジメントの進化は、いくつかの要因によるものです。なかでも特に大きなものを 6 つ紹介します。
ナレッジベースを最適化 : リポジトリからスイッチボードへ
現代の組織では、一貫したナレッジベースリポジトリではなく、いつでも利用できるナレッジベーススイッチボードにより価値を感じるようになっています。スイッチボードモデルにも問題はあります(「まずは検索、質問はそれから」というのはよくある不満です)。それでも、わかっていることが 1 つあるとすれば、工夫に富む従業員は仕事を進める方法を見つけるということです。
調査方法
Slack のこの調査活動は、2018 年 11 月 1~7 日にデンバーで実施された経験的混合法による質的調査から派生したものです。Slack ではフォーカスグループを 3 回実施し、合計 20 人のナレッジワーカーが参加しました。また、従業員数 10 人から 4,900 人までの 8 社にインタビューとコンテキスト調査を実施しました。調査結果は、これらの活動から得た文字起こし、メモ、ビデオの帰納的主題分析を行った結果です。