エグゼクティブサマリー : Salesforce の BaseCamp Agent は、Slack 上に導入された AI 搭載の社内サポートソリューションです。17,000 人を超える従業員に質問への回答をすばやく提供して支援を効率化し、従業員サポートを変革しています。Salesforce で使われているエージェントのなかでもトップ 3 の利用頻度を誇る BaseCamp Agent により、従業員は情報を見つける時間を短縮し、成果を生み出す仕事に集中できるようになっています。
こんな経験はありませんか?ちょっとした疑問への答えを得るために、ナレッジベースをくまなく調べたり、リンクを探し回ったり、同僚に質問したりしているうちに、気がつけばかなりの時間がたってしまった……。福利厚生の利用や出張予約の方法、新しいパフォーマンス目標の設定方法など、必要な情報を探すのに貴重な時間が費やされ、重要な仕事に集中できなくなっていることはないでしょうか。
Salesforce の社内でも、こうした課題が生じていました。内部のナレッジが何十ものポータルやシステムに分散していたことで、従業員は情報を探すのに苦労していました。詳細を説明するサポート記事が提供されていたものの、文章が長く、「Google グループを作成する方法は?」といった基本的な質問でさえも、答えを得るまでに長い時間がかかっていました。
もっと効率的な方法が必要なことは明らかでした。
入り組んだ複数のポータルを 1 つのサポート窓口に集約
そこで Salesforce の Business Technology チームが、従業員サポートの簡素化に着手しました。出発点として選ばれたのは人事部門のユースケースです。そして同チームは従業員サクセス(ES)チームと連携して、BaseCamp Agent を生み出しました。これは Slack 上に導入された AI 搭載の社内サポートソリューションで、職場で日々発生するあらゆるトピックの質問に対して、正確な答えをすばやく提示できるよう設計されています。
このエージェントは、ビジネステクノロジー、従業員サクセス、法務、営業など、Salesforce の 7 部門のサポートコンテンツを集約。Data Cloud を活用して、従業員がすでに業務で使っている Slack 上で情報を提示します。これにより、従業員はすべてのサポートコンテンツに 1 か所でアクセスできるようになります。
パスワードのリセットでも、経費の清算でも、福利厚生の手続きでも、Salesforce の従業員は知りたいことを Slack 上で質問するだけで、BaseCamp Agent が内容を解釈して、正確で実用的な回答を返してくれます。エージェントが対応できる範囲を超える場合は、問い合わせに必要な情報をエージェントが収集し、リクエストを適切なチームに転送します。ユーザーがフォームを探し回ったり、推測に頼ったりする必要はありません。
早い段階で成果を出し、導入を加速
導入以来、以下のように BaseCamp Agent の利用は急速に広がりました。
- 17,000 人のユーザーが利用
- 65,000 以上のセッションを実行
- 7 部門のサポートに対応
- 24 時間 365 日いつでも即座にアクセス可能
なにより重要なのは、従業員が時間を節約できることです。エージェントの導入により、最初の数か月で、従業員サクセス関連の手動でのケース対応が前年比で 5% 減少。頻繁に質問される内容を記録することで、継続的な改善も促されています。これにより、従業員サポートの全領域での 96% 以上のセルフサービス率と、およそ 99% のエンゲージメント率を達成しています。このようなエクスペリエンスの向上に伴って、Slack の満足度スコアも上昇傾向にあります。
BaseCamp Agent によって、ナレッジを一元化し、日常的なサポート業務を自動化することで、従業員は時間を取り戻し、社内プロセスに煩わされることなく、成果の大きい仕事に集中できるようになっています。
今後の展望
BaseCamp Agent はこれからも進化を続けていきます。トレンドになっている質問の提案や、チケットの自動管理、Einstein Search Answers との緊密な連携といった新機能の開発がすでに始まっています。より多くのデータやフィードバックが蓄積されていくことで、エージェントは継続的に学習・改善を重ね、より適切な結果をすばやく提供し、サポート範囲をさらに広げていくことができます。
その裏では、担当チームがナレッジの内容を管理し、どのサポート記事においても、仕事を遂行するのに「必要十分な情報」が提供されるようにしています。つまり、従業員がスムーズに仕事を進めるのに役立つ、明確で最新のコンテンツが優先的に提供されるようになっています。
BaseCamp Agent は、従業員サポートに対する考え方の「サービス」から「エクスペリエンス」への転換を象徴するものです。Slack 内にいたまま信頼性の高い回答が得られることで、従業員は仕事を円滑に進め、ツールやシステムの切り替えを減らし、本来やるべき仕事により多くの時間をかけられるようになります。
独自のエージェントの構築を検討しているチームへのアドバイス
エージェントは、一度構築すれば終わりではありません。エージェントは、自社のビジネスのニーズに合わせて成長する「生きもの」です。重要なのは、目的を明確にし、従業員の声に耳を傾けて、改良や自動化を続けていくことです。
業務フローに Agentforce を組み込むことを検討しているチームのために、私たちが BaseCamp Agent の構築と拡張を通して学んだことをいくつか共有します。
- 頻繁に行われるタスクから始める。パスワードのリセットや出張の予約、福利厚生の手続きなど、従業員が最も頻繁に行うタスクを特定することから始めるとよいでしょう。それらのニーズを中心に、ナレッジと自動化の戦略を立てます。どの記事も、1 つのタスクを遂行するのに役立つ、明確なものにする必要があります。
- 必要十分な情報にとどめる。長すぎる記事はユーザーを圧倒してしまうため、従業員が次のアクションを実行するのに必要十分なだけの情報を含めるようにしましょう。的を絞った短い文章にすることで、エンゲージメントが向上し、解決時間の短縮につながります。
- 拡大する前に、ナレッジを整理する。Agentforce は、統合・整理されたナレッジベースの情報を用いることで、最高のパフォーマンスを発揮します。複数のシステム間のコンテンツをまとめ、明確で一貫性のある分類方法でタグ付けしましょう。重複するポータルや古いコンテンツを除くことで、エージェントとユーザーの混乱を防げます。
- 引き継ぎを自動化する。すべての疑問が Slack 上で解決されるわけではありません。人間の担当者に引き継ぐ場合に、あらかじめ必要な情報を収集できるようなフローを設定しておきましょう。そうすることで、サポートチームは従業員と何度もやり取りすることなく、問題をすばやく解決できます。
- フィードバックループを回す。Slack の絵文字リアクションや、使用状況の分析、利用後のアンケートにより、何がうまくいっていて、何がそうでないのかを追跡します。そうして得られた情報をコンテンツオーナーに定期的に共有することで、ナレッジの溝を埋め、記事をよりわかりやすくし、さらに自動化できる部分を発見できます。
- 改善を続ける。BaseCamp Agent は完璧な状態でリリースされたわけではなく、今も進化を続けています。実状に即した期待値を設定し、小さく始めて、短いスパンで学習・改善を繰り返すとよいでしょう。エージェントの利用が増えるほど、その質も高まってきます。
Salesforce がどのように Agentforce in Slack を大規模に活用しているかについて、詳しくはこちらをご覧ください。