売上の最大化には、必要なあらゆるデータを可視化し、役職や部署を越えチーム一丸となって継続的に取り組むことが求められています。2022 年 10 月 20 日に開催したイベント「Slack Sales Innovation 〜『勝つ』営業組織のための Digital HQ 〜」では、営業組織の強化のノウハウや Slack 活用術が共有されました。
開催レポート前編では、ベストセラー書籍「無敗営業」の著者である TORiX 株式会社の代表取締役 高橋 浩一さんによる、目標達成できる営業チームが持つ 3 つの共通言語の解説と、チームに共通言語を浸透させる Slack 活用方法など、Opening Keynote の様子についてお伝えしました。
後編となる本レポートでは、SmartHR 社や Salesforce 社におけるチームセリング、Slack と連携する Salesforce Sales Cloud で実現する営業プロセス変革、そして顧客との継続的な関係構築を目指すコクヨ社の Slack 導入の舞台裏の 3 つの Breakout Session の内容をお届けします。
Slackのオープンなコミュニケーションをチームセリングに活用する SmartHR
株式会社SmartHR 執行役員 VP of Sales 中尾 友樹さん
株式会社セールスフォース・ジャパン
エンタープライズ首都圏 第二営業本部 執行役員 第二営業本部長 佐野 匠
株式会社セールスフォース・ジャパン
Slack 事業統括 ビジネスグロース本部 第五営業部 部長 花房 洵也
Breakout Session 1 では「マネジメント視点で考える勝てる営業組織、『チームセリング』の重要性」と題して、Slack と Salesforce を組み合わせた営業改革を推進している株式会社SmartHR の執行役員 VP of Sales 中尾 友樹さんを迎え、株式会社セールスフォース・ジャパンの営業部門でリーダーを務める 佐野 匠、Slack 事業統括 ビジネスグロース本部で部長を務める花房 洵也と共に、勝つための営業組織を実現するマインドセットや具体例が共有されました。
SmartHR は、人事労務や人事データ管理の SaaS を主軸として展開する企業です。労務管理クラウドとして 4 年連続シェア 1 位、登録社数は 50,000 以上、99 % の顧客が継続利用するサービスを提供しています。コロナ禍のなかでも成長しており、2020 年 3 月には 228 人だった社員は、2022 年 9 月には 700 人、そのうち営業職は 32 人から 122 人と、2 年半で 3.8 倍に増えました。
SmartHR は急成長するなかで、非対面での円滑なコミュニケーションが必須でした。中尾さんは、新人の営業担当に対する入社後のオンボーディングをはじめ、顧客の課題解決からクロージングまで全ての営業プロセスにおいても Slack が役立ったと振り返ります。
「営業担当が困っているときに、Slack でセールス全体に質問できるようになったことは大きな変化です。それまではオフラインで上長に相談するしかありませんでしたが、Slack 上で呼びかければ、幅広くナレッジを集め、時間も短縮できます」(中尾さん)
SmartHR では Slack を積極的に利用しており、1,000 以上あるパブリックチャンネルで 1 万以上のカスタム絵文字が作成されるなど、オープンかつフラットに意見交換できる文化を醸成できているといいます。
また、セールスフォース・ジャパンでも、Slack が Salesforce の傘下となって以降、これまで以上に利用が促進されています。従来の営業チームのコミュニケーションはメンバーからの報告書が中心で、前後の背景をとらえることが難しかったため、「Slack なら、案件で起きている営業担当の上司と部下や SE とのやりとりまで見ることができ、背景や危機感、困りごとを察知して、すぐにフォローすることができます」と佐野からも Slack 活用のメリットが述べられました。
加えて、チームには大規模な提案を行うための 30〜40 名のメンバーが参加するチャンネルもあり、そこに Slack コネクトで顧客も参加し、提案スピードを高めています。「従来メールのやりとりでは 3 日ほどかかっていた訪問日程の調整がおよそ 5 分で終わる。2 営業日以上の商談期間短縮につながるわけです。また、オンラインではお客様の要求を正確に把握することが難しいので、資料も 50 % の出来の段階で Slack で共有するようにしています。そして、お客様に意見をいただき、共創していくような提案スタイルです」(佐野)
SmartHR では、Salesforce をはじめ、メモツールや Twitter、ワークフロー、経費精算、勤怠のシステムとも Slack を連携し、生産性を高めることで無駄を省き、営業機会を増やしています。「仕事を始めるときは、まず Slack を開きます。本当にオンライン上の職場といえるプラットフォームで、Salesforce などのシステムも一元管理して、クイックに反応できます」(中尾さん)
本イベントレポート前編で紹介した TORiX の高橋さんの講演では、顧客の要望の本質を深掘りすることが共有されましたが、中尾さんは社内であっても本質をとらえることは重要だとし「オフラインの場では肩書きなどが邪魔してなかなか意見を言えないこともありますが、Slack でのフラットでオープンなコミュニケーションによって、解像度の高い情報を得られ、本質を捉えられます。このことが我々の成長の起爆剤になっていることは間違いありません」とコメントしました。
Slack と Sales Cloud 連携で営業プロセスを変革する
株式会社セールスフォース・ジャパン
マーケティング本部 プロダクトマーケティング ディレクター 秋津 望歩
株式会社セールスフォース・ジャパン
Slack ソリューションズエンジニアリング本部 プリンシパルソリューションエンジニア 稲葉 洋幸
Breakout Session 2「営業プロセスの変革を加速する Slack × Sales Cloud」では、顧客中心の営業活動へシフトチェンジする方法について株式会社セールスフォース・ジャパン マーケティング本部で Salesforce のプロダクトマーケティングディレクターを務める秋津 望歩が、Slack のプリンシパルソリューションエンジニアを務める稲葉 洋幸と共に、企業統合を経てさらに強化されていく Slack と Salesforce のシステム連携と、それによって実現できる営業プロセスの変革について紹介しました。
Slack は、会話のテーマごとの文章や絵文字、ファイル、ビデオなどを使ったメッセージのやりとりによってコミュニケーションを円滑にします。また、資料作成やデータ入力などの生産活動も、Slack とさまざまな外部システムを連携することで、アプリ切り替えの時間や手間が短縮され、無駄を削減できます。これら日々の業務で発生する「コミュニケーション」と「生産活動」、この双方において仕事全体を効率化させるのが Slack です。
一方、Salesforce は、クラウドベースの CRM(顧客管理システム)や SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)など全方位でサービスを提供しています。「Customer 360」と呼ばれるプラットフォームには、マーケティング、セールス、コマース、サービス、IT など、顧客を成功へ導くあらゆる支援ができるサービスのポートフォリオが用意されており、2021 年 7 月からは Slack もその総合サービスに加わっています。
Salesforce の営業支援システムである Sales Cloud では、営業担当者個人の能力向上、営業組織力の強化、データに基づく営業の仕組みを提供しています。蓄積されたデータを AI によって分析することで顧客アプローチの最適化や意思決定を支援します。
ここからは、Slack と Sales Cloud を連携することで、どのように顧客中心の営業活動へシフトしていくのかについて掘り下げました。
たとえば、引き合い〜商談化の段階では、Sales Cloud から Slack への通知を行うことで、引き合いがあった顧客についてすぐに知ることができます。そして、そのまま Slack 上で同じようなニーズに対する提案資料を検索し、これを参考に商談に活かすなど蓄積したデータの活用が可能です。商談においては、Slack コネクトで顧客と密接に連絡できるようにしておけば、メールでのやりとりよりもはるかに素早く反応でき、情報もオープンなので社内の協力も得やすくなります。見積書を出す段階においても Slack 経由で Sales Cloud に内容を登録すれば、上司やメンバーに対してシームレスな承認依頼が可能です。
営業チームのリーダーは、営業メンバーが対応している各プロジェクトの Slack チャンネルを確認することで、場所や時間を気にせずいつでもリアルタイムな状況を把握でき、必要に応じてアドバイスすることもできるでしょう。また、Sales Cloud 内の状況を可視化するダッシュボードを Slack で共有し、チーム内での議論をスピーディにすすめることもできます。
また、こうした取り組みに対する成果を判断するためには、ダイエットで毎日体重計に乗るのと同じように、日々の中で定点観測し、変化に対するアクションをこまめに取ることが重要です。小さな変化を放置せず対応することで大きな損失を回避し、営業活動の成功率や効率性を上げていくことが継続的な成長をもたらすのです。
営業チームとして成果を高めるには、個々のメンバーが生み出す価値を引き上げるために、より効率的に営業活動を行う必要があります。単純作業や報告が上がるまでの待機にかかる時間を削減できれば、空いた時間でより多くの商談や顧客対応が可能となります。
Slack は、あらゆる場所をオフィスに変える 「Digital HQ(会社を動かすデジタル中枢)」 です。業務の起点となるプラットフォームとして Slack を活用することで、組織の壁を越え、働く時間や場所も柔軟に、生産性を向上できます。そこへ、営業の状況をリアルタイムに集計・観測できる Sales Cloud を組み合わせることで、顧客中心の営業活動で生み出される価値をより高めていくことができるはずです。
顧客と良質な関係継続を目指すコクヨによる Slack 導入の舞台裏
コクヨ株式会社 経営企画本部 DXデザイン室 室長 三宅 健介 さん
株式会社セールスフォース・ジャパン
Slack 事業統括 カスタマーサクセス本部 本部長 相川 仁夫
株式会社セールスフォース・ジャパン
Slack 事業統括 カスタマーサクセス本部 シニアプリンシパルサクセスマネージャー 河村 育子
Breakout Session 3 「顧客との新しい関係構築 —継続的なつながりで実現する LTV の最大化」では、商談のクローズ・受注後の顧客との関係強化をテーマに、コクヨ株式会社 経営企画本部 DX デザイン室 室長の三宅 健介さんをお招きし、Slack のカスタマー・サクセス本部 本部長を務める相川 仁夫、同部署でシニアプリンシパルサクセスマネージャーを務める河村 育子とともに、カスタマーサクセス担当者と連携した Slack 導入について、顧客側の視点も交えたリアルな舞台裏を伺いました。
営業活動においては、既存顧客との関係性をいかに継続させられるかが重要です。新規顧客からの売上を上げるには、既存顧客からの売上に比べ、5 倍のコストがかかると言われるほどです。また、さまざまな分野でサブスクリプションビジネスが浸透しており、顧客がサービスを乗り換える、スイッチングコストも低下しています。こうした時代背景を受けて、昨今の営業組織において、既存顧客と密接にやりとりし、エンゲージメントを高めるカスタマー・サクセスという存在が注目されるようになりました。
カスタマー・サクセスは、顧客を成功に導くために、適切なタイミングで適切な支援を提供し、解約リスクを最小化するきめ細かな活動が必須です。一方で、事業全体としてはより多くの顧客との契約を結ぶことが求められるため、効率の良い顧客対応をできるかどうかが鍵となります。
Slack の営業担当者やカスタマー・サクセス担当者は、Slack コネクトを使って顧客と常につながり、顧客の求めにすぐに応えられるよう体制を整えています。リアルタイムに対応できなくても、音声や動画を残せる「クリップ」機能を使った非同期コミュニケーションも活用することで、接触頻度を高めることができます。
多くの顧客に対応するために、チャンネル参加者に対して一斉に情報を発信するほか、顧客の属にあわせた情報提供を行っています。そして、担当者自身も Slack 上で顧客に利用状況を伝える資料作成と配信を自動化したり、社内の情報共有において報告のライブラリ化をしたりするなど、効率化を進めています。さらに、コミュニケーションプラットフォームとして顧客が Slack を有効活用できるよう、顧客同士が生の声を伝えて交流するユーザーコミュニティの構築と活性化もサポートしています。
文具やオフィス家具、事務機器を提供するコクヨでは 2022 年 1 月から Slack を導入し、4 月には本社 2,500 人、7 月にはグループ企業の 2,000 人が利用を開始。2022 年 10 月現在でアクティブユーザーは 4,677 人と使用率も右肩上がりに上昇し、週 4 回以上 Slack を使うパワーユーザーも 7 割と浸透しています。
コクヨでは、これまでの IT ツール導入において、カスタマー・サクセス担当の伴走経験はありませんでした。三宅さんは、Slack のカスタマー・サクセス担当から他社事例などのノウハウ提供を受けたり、意見交換をしたりしていくうちに、導入のモチベーションが高まったといいます。
「Slack 導入に際し、ワンチームになって一緒に動いていただいている感覚がすごくあります。エベレストに登るときのシェルパのような存在で、非常に心強く前進するサポートをしていただいています」(三宅さん)
Slack のカスタマー・サクセス担当は、コクヨ社内に組織された 200 人近い Slack アンバサダーとも Slack コネクトでやりとりをし、利用促進をサポートしました。そこでは Slack 側の担当者もまるでコクヨチームの一員であるかのような一体感と信頼感が醸成され、今では、社員の 7 人に 1 人が Slack コネクトを使って外部のパートナー企業とも連携しながら仕事をしている状況だといいます。Slack コネクトで常に取引先とつながっていることによって、関係性も自然と強化され、持続的に密なやりとりを実現できています。
これまでコクヨでは、コミュニケーション面を中心に Slack の利用が促進されてきましたが、今後は Salesforce などのシステム連携を進めていく計画です。三宅さんは「さまざまな業務が Slack を起点に始まってそこで完結するように、業務をより効率化する点において効果を発揮するパワフルなツールになっていくと思っています」と期待を寄せています。
人と人、人とシステムのつながりを強化し、営業成果に貢献する Slack
前編でご紹介した TORiX 株式会社の高橋さんの講演では、営業チームには、「クイックレスポンス」「本質に向けて『深掘り』せよ」「10 分電話商談でキャッチボール」の 3 つの共通言語と、その実行状況の計測に基づく仮説検証が重要であることが示されました。Slack は、これらの活動を支援する機能を持ち、チームセリングを実現する有用なツールです。
SmartHR やセールスフォース・ジャパンの Slack 活用事例では、オンボーディングや各種システム連携による業務効率化などによって、営業チームを強化できることが実証されました。さらに、Slack 自身によるコクヨへのカスタマー・サクセス担当の事例では、Slack コネクトによる継続的なつながりによって信頼関係を構築し、効率的に顧客生涯価値を最大化できることがわかりました。
Slack が日本を含む主要 10 カ国で行った調査では、Slack を活用することで、商談の成約率を 28 % 向上、営業の生産性を 28 % 向上させることができたという結果が出ています。Slack は、人と人、人とシステムのつながりを強くし、スピーディーな営業活動と売上拡大をもたらす新しい職場(Digital HQ)として、これからの営業組織のあり方も大きく変革させるプラットフォームとなることでしょう。
Opening Keynote では、TORiX 株式会社の高橋浩一さんをお招きし、最強のチームセリングを実現する「共通言語」について語っていただき、その活動に貢献する Slack の機能や活用方法について紹介しました。その様子をまとめたイベントレポート前編もぜひご覧ください。
イベントレポート前編はこちら。