ボストンが大雪に包まれたある日、ほとんどの企業が在宅勤務に切り替えていたなか Zipcar の本社はお祝いムードに包まれていました。地域の学校や組織にテクノロジーについて学んでもらう Pi Day (円周率の日)キャンペーンが無事に終わったからです。ソーシャルメディアにはファンや顧客からキャンペーンについての好意的なメッセージが山ほど寄せられました。
同社で Senior Brand and Marketing Manager を務める Lindsay Wester 氏のチームでは、優れたアイデアは社内のどこからでも、誰からでも生まれるものだと考えています。実際、最近の Pi Day キャンペーンがまさにそうでした。
今年のキャンペーンの準備期間はわずか 2 か月しかありませんでした。そこで社内の知恵を結集すべくマーケティングチームが活用したのが Slack です。チームが社内の #general
チャンネルでキャンペーンのアイデアを募ってみると、数時間後には魅力的なキャンペーンの企画が集まりました。それだけでなく、エンジニアリング、デザイン、IT、運営などさまざまな部門から 45 人もの人がプロジェクトに協力したいと自ら申し出てくれたのです。
「どんな企業でもサイロ化の罠にはまり、各部門のなかだけで仕事を進めてしまうことがあります。当社ではプロセスの最初から最後まで Slack を活用したことで、チームを越えた連携が実現し、プログラムを加速することができました」
キャンペーンアイデアがリアクションで加速
Zipcar では、メンバーは自分が関わるチームやプロジェクトによって複数の Slack チャンネルに参加する一方で、社内の全員が参加して最新状況や質問を投稿できる全社チャンネルもいくつかあります(#general
や #corporate-live
など)。
そうした全社チャンネルにキャンペーンのアイデアが続々と寄せられると、各自が気に入ったアイデアに絵文字リアクションを追加していきました。その後 Wester 氏はプロジェクトの共同リーダーを務める Content Developer Manager の Jonathan Prusik 氏とともに、アイデアを取りまとめ、1 つの案を採用しました。
採用されたのは、エンジニア発案のソーシャルメディアキャンペーンです。もし Raspberry Pi Zero W ミニコンピューターが当たったら何を作るかというクリエイティブなアイデアを募集し、優秀者 314 人に実際に贈呈するというものです。さらに楽しく学べるよう、Zipcar のエンジニアによる Raspberry Pi Zero W の活用ヒントを「ビルダーガイド」としてまとめました。これはキャンペーンの肝になる部分です。しかしそのガイドを制作するには、マーケティング、エンジニアリング、デザインなどの部門間でさまざまな調整が求められます。
そこで Prusik 氏は、プロセスを効率よく進めるためにプロジェクト専用の #PiDay
チャンネルを作成。45 人のキャンペーン協力者をそこに集めることで、役割とタスクをスムーズに分担することができました。
Pi Day のメンバーは、このキャンペーンを進めると同時に、別のチャンネルで各自チームのプロジェクトを進めていました。Prusik 氏によると、プロジェクト関係者が 1 つのチャンネルに集まることで、全体の制作ワークフローの管理がはるかに簡単になり、効率的に進めることができたそうです。
ここで、#PiDay
チャンネルのワークフローがどんなものなのか、その一例を紹介しましょう。
- ビルダーガイドの内容について、デザイナー、エンジニア、マーケティングチームのメンバーがチャンネルで意見を出し合って決めたあと、メンションを使って各メンバーにタスクと役割を割り当てます。
- デザイナーは、ガイド制作を進めるために別のチャンネルでグループを組み直します。その際、Projectplace を Slack チャンネルに連携させることで、プロジェクトのステータスについて通知が届くようにします。
- デザイナーは作業が終わると、
#PiDay
チャンネルにファイルをアップロードするかファイルへのリンクを投稿し、エンジニアやマーケティングチームのメンバーをメンションして意見を求めます(チャンネルの会話をフォローしているメンバーは、このやり取りからプロジェクトの状況をすぐに把握することが可能です)。 - 一方、GitHub も Slack に連携させているため、エンジニアは完成したビルダーガイドを GitHub に公開後、コミットイベント、プルリクエスト、Issue イベント、デプロイメントステータスに関する通知を受け取ることができます。
「業務ごとに運用するワークフローが、Slack で 1 か所にまとまったのです」と、Wester 氏は話します。「1 か所でディスカッションが切れ目なく続くことで、各自が必要に応じて会話に出入りしつつ状況を把握でき、全員で同じゴールを目指しやすくなりました」。
大雪で出勤できなくても Slack で全員集まって成功を祝福
このキャンペーンには 1,000 件を超える応募があり、楽しいアイデアを出した 314 人に対して Raspberry Pi Zero W ミニコンピューターが贈られました。その後ほとんどのメンバーが大雪で出勤できないなか、チームは #PiDay
チャンネルに集まってキャンペーンの成功を祝いました。
Wester 氏によると、過去にマーケティングチームがキャンペーンを進めるのに採用したプロセスと比べると、今回のキャンペーンでは Slack によって「よりオープンで、押しつけがましくなく、結果的にきわめて効果的な」コミュニケーションが実現できたということです。