Slack コネクトを使ってグループ連携を強化するトヨタ・コニック・プロ

「Slack コネクトという基盤の上で、情報共有がリアルタイムにできることで、グループ全体のシナジーが強化されていると感じています」

TOYOTA CONIQ Proコーポレートデザイン本部 コーポレート デザイン部 総務ユニット光武 宏 氏

株式会社デルフィスを前身とするトヨタ・コニック・プロ株式会社は、2021 年 1 月にトヨタ自動車と電通グループの出資によって発足されました。同社はトヨタ自動車およびトヨタグループなどのマーケティングサービス・コンサルティング事業、モビリティサービス事業などを手がけています。

同社の発足当時は新型コロナウイルスの影響で出社が難しい時期であったため、新しいメンバーも含めての円滑な業務開始にはリモートでのコミュニケーションが不可欠でした。しかし、当時はメールに依存したコミュニケーションであったため、効率の面で課題を感じていたといいます。

そこで同社は、業務の効率化や社内の一体感の醸成を目的として、新たなコミュニケーション基盤に Slack を導入します。同社 コーポレートデザイン本部 コーポレートデザイン部 総務ユニット 主任の本間 英治さんと光武 宏さんに、どのように Slack 導入を進めたのかについてお話を伺いました。

リモート下での新会社発足という難題。社外への拡張性が決め手に

新型コロナウイルスの影響下での新会社発足ということもあり、同社の IT を担うコーポレートデザイン部では、新たにトヨタ自動車と電通グループから合流する社員も含め、どのようにリモート環境で社員同士がコミュニケーションを活発に行うかについて検討をはじめます。

当時、同社では前身であるデルフィス時代より導入しているクラウド型のコミュニケーションアプリがありましたが、社員の利用率は低く、日常のやり取りはメールが中心となっていました。新会社のスタートと同時に、新しい顔ぶれで円滑にプロジェクトを進めるためには、メールに代わる新たなコミュニケーションツールが必要でした。

「リモート環境で新しいメンバーも含めて業務をスタートしていくには、メールのような時間がかかる情報共有ではなく、スピード感を持って、オープンに情報共有ができる新しいツールが必要でした」と光武さんは当時を振り返ります。

また、新会社となってからは他のトヨタグループ企業との連携もいっそう強くなったという同社では、活発なコミュニケーションを社外とも実施していく必要がありました。そこで、オープンなコミュニケーションを社外にも拡張可能であることが決め手となって、Slack 導入を進めることになります。

「リモート環境で新しいメンバーも含めて業務をスタートしていくには、メールのような時間がかかる情報共有ではなく、スピード感を持って、オープンに情報共有ができる新しいツールが必要でした」

トヨタ・コニック・プロ株式会社コーポレートデザイン本部 コーポレート デザイン部 総務ユニット光武 宏 氏

トライアル導入で問題点を徹底的に潰した 3 ヶ月

そのような背景から、新会社発足にあわせて、2021年1月から新たなコミュニケーションツールとしてSlack を全社導入することが決まります。

全社導入に向け、本間さん、光武さんの 2 名を中心にプロジェクトチームを結成。約 200 名を対象に、3 ヶ月のトライアルを実施します。社員数約 600 名の同社では、3 分の 1 となる規模でしたが、「あえて大きな規模で実施し、多くのフィードバックを得ることで本番稼働時の問題をできる限り潰しておこうと考えました」と光武さんはその狙いを話します。

このトライアル期間に、コーポレートデザイン部が重点的に取り組んだのが、セキュリティの確保と安定した運用の確立です。

不用意な情報流出や悪意のある第三者のアクセスを防止するため、Slack の利用は会社貸与端末に限定とするほか、同社の ID 管理基盤である Azure AD と連携させることで、シングルサインオンを実施するといったセキュリティ対策を行いました。

「自社の情報漏洩防止は現代の IT 部門が取り組むべき要諦の 1 つです。IT を担う部門としてはセキュリティ管理に不安のある状態は見過ごせません」(本間さん)

また、トライアル時はユーザー登録を社員が手作業で行っており、作業の負担やミスの発生に課題を感じていました。例えば、万が一社員退職時にアカウントの無効化を忘れてしまった場合、退職後も社内情報にアクセスができてしまうといったリスクがありました。

こうした運用面について光武さんは、「Slack の担当者が、Azure AD と連動させることで社員の退職時に Slack のアカウントを連動して無効化するというアイデアを、トライアル中に考えてくれました。入社時の登録作業もこれによって不要になったので、本番稼働時には体力的にも精神的にも負担の少ない、安全な運用体制が整えられました 。このようなアドバイスをもらえる体制は心強いサポートでした」と語ります。

こうしたトライアル導入における検証を経て、Slack は 2021 年 5 月にいよいよ本番稼働を開始します。

Slack コネクトでコンテンツ制作のグループ連携が加速

トヨタ・コニック・プロでは、Slack の本番稼働と同時に、社外の情報共有として Slack コネクトの利用を開始します。

Slack コネクトの利用開始前には、社外と共有する情報に関するガイドラインを設定し、社員が安全な情報共有への意識を高めるための工夫を行ったといいます。それにより、同社ではセキュリティ面のリスクを取り除きながら、社内だけでなく、社外との情報共有のスピードも向上させていきます。

「Slack コネクトは、接続する外部の取引先ごとにアクセスできる情報の権限が設定できるため、セキュリティ面でも安心感がありました」(光武さん)

同社において、現在 Slack コネクトのメリットを最も感じているのが、コンテンツ制作時のグループ間の情報共有だといいます。

トヨタのような得意先でもありグループ企業でもある会社のコンテンツを企画・編集する際には、グループでの連携が欠かせません。従来は社内外のやり取りに電話やメールを利用していたため、調整に時間がかかってしまうことも多くあったといいます。しかし、今では Slack コネクトを利用することで、社内だけではなく社外も含めた関係者全員にタイムリーな情報共有が可能となっています。

光武さんはこのような Slack コネクトを利用したグループ間の情報共有について、次のように語ります。「Slack コネクトという基盤の上で、情報共有がリアルタイムにできることで、グループ全体のシナジーが強化されていると感じています。今後は Slack コネクトの連携先をさらに増やしていきたいと考えています」。

情報がオープンになることで、スピーディな引継ぎと一体感醸成を実現

もうひとつ、メールと Slack の違いについて光武さんが挙げたのは情報のオープン性です。

「メールの場合、情報は受信者にしか届かないうえに、1 つのメールで複数のテーマが議論されることもありますが、Slack ではテーマ別にチャンネルが整理されているため、過去のいきさつも含めてすぐに知りたい情報にアクセスできます。今まではプロジェクトに新メンバーが入った際には引き継ぎの打ち合わせを何時間も行う必要がありました。しかし、Slack であれば『このチャンネルのやりとりを見ておいて』のひと言で、ほぼ終了です。この差はかなり大きいと思います」と光武さんは説明します。

また、情報がオープンであることで、社内の組織の壁を壊す効果も生まれているといいます。

例として本間さんが紹介してくれたのは、社長と社員が直接コミュニケーションできるチャンネルです。そのチャンネルでは、社員と、他取締役を含めた経営陣が直接自由に質疑応答でやり取りしているそうです。

「経営層と社員や、社員同士の距離が近くなったと感じています。経営層とのコミュニケーションに対する社員の心理的なハードルが全体的に下がり、社内の一体感が生まれています。これは、他のビジネス向けツールと違い、使いやすさと遊び心がある Slack だから起こったことだと思います」と本間さんは Slack のもたらした変化について話します。

今後のさらなる推進力として、業務効率化に期待

同社では、以前別のツールを導入する際に使用を強く推奨した結果、浸透しなかったという経験があったため、コーポレートデザイン部門では今回は既存のツールから Slack への強制移行を社員に求めなかったといいます。

その結果、Slack を導入して約半年の時点で、約 7 割の社員が週 4 で利用しているという効果が出ており、同社において Slack はすでに標準的なコミュニケーションツールとしての地位を確立しつつあります。

これについて本間さんは、「あくまで選択肢のひとつとして Slack に任意で移行できるようにしたところ、Slack の利用は急拡大しました。使いやすいものには人が自然と集まることを実感しています」と話します。

最後に今後の展望について伺うと、光武さんは「業務効率化という原点に立ちかえり、Slack をハブとしてファイルの共同編集や勤怠管理、ワークフローなど、他の業務アプリケーションとの連携を考えていきたいと思います」と意気込みを語ってくれました。

Slack 導入によって、新会社における社員の一体感だけではなく、グループ会社間とのセキュアでリアルタイムな情報連携をも実現したトヨタ・コニック・プロ。今後の新しいプロジェクトにも、更なる推進力が加わることが期待されます。

「あくまで選択肢のひとつとして Slack に任意で移行できるようにした結果、Slack の利用は急拡大。使いやすいものには人が自然と集まるのだなと実感しました」

トヨタ・コニック・プロ株式会社コーポレートデザイン本部 コーポレート デザイン部 総務ユニット 主任本間 英治 氏