突然ですが、ちょっとタイムマシンに乗って過去に戻り、典型的な医師の診察室をのぞいてみましょう。連絡にはファクスや電話が使われ、患者さんの重要な情報は付箋に手書きされて申し送りされている――実はこれ、2024 年の今にも見られる風景なのです。
このようにコミュニケーションが一元化されていない状態では、電話はしょっちゅう行き違いになり、連絡ミスも生じやすくなります。でも、Paramjit "Romi" Chopra 医師の診察室はそんな問題とは無縁です。ハーバード大学で教育を受けた放射線科医であり、MIMIT Health と CIMSS Innovative Solutions の創設者で CEO を務める Chopra 氏は、Slack を利用して医療の成果を向上させ、患者さんと医療提供者の間に、より強固でスピーディーなつながりを確立しています。
米国シカゴ都市圏を拠点とする MIMIT Health は、複数の専門分野をカバーする医師のグループです。侵襲性を最小限にした治療と再生医療に重点を置き、骨盤内うっ血症候群、膝関節炎、子宮筋腫、末梢動脈疾患といった病状に、患者ファーストの治療を提供しています。
MIMIT Health は、AI 搭載型のビジネスの基本システムである Slack を活用して、患者さん中心の医療を重視した、総合的なヘルスケア環境を整備しようとしています。予約スケジュールの調整や、手術報告の効率化、費用請求に関わるトラブルの解決といった管理業務を、Slack の AI とワークフローに任せることで、同社の医療専門家はより多くの時間を患者さんのサポートに使えるようになります。
「重要なことを SMS やメール、口頭で伝達することがなくなりました。チームは Slack のことをスーパーパワーだと言っていますよ」と Chopra 氏は話します。「より良い医療をより早く、より手頃な料金で患者さんに提供できるようになります。Slack は医療のエコシステム内で連携するのに理想的なプラットフォームですね」

「Slack があることで、ケアを効率的に調整できます。連絡や最新情報の伝達、業務の割り当てを、すべて 1 か所で管理できるため、業務のスピードが格段にアップします。患者さんに何か問題が生じたときにも、数日ではなく、数分で解決できるのです」
Slack と Salesforce Health Cloud のインテグレーションで医療の成果を最大化
以前から Salesforce を愛用していた Chopra 氏は、2023 年に Slack を導入。それ以来、医療を「いち早く届ける」という同氏のミッションの実現に Slack が活躍しています。カギを握るのが、Slack と、Salesforce Health Cloud、Data Cloud、その他の技術スタックとのシームレスな連携。これがスピーディーな医療提供の力になっています。
Salesforce Health Cloud がリアルタイムの医療データを集約するハブとなることで、医療従事者は実用的なインサイトを得て、個々の患者さんに合ったケアを迅速に提供できます。さらに、Health Cloud を Slack と連携させることで、チームメンバーは Slack の各チャンネルからすべての患者さんのデータや文書に直接アクセスできるようになり、医療提供時の調整がさらにスムーズになります。
また、Salesforce Maps と Slack のインテグレーションは、患者さん宅への往診時や他施設への訪問時に、医師や医療従事者が連携するのに役立ちます。医療従事者が Salesforce Maps の情報を更新すると、Slack のチャンネルを通じて臨床業務センターに通知が届き、必要に応じて支援を提供できます。
「Slack は見事なシステムです。簡単な操作ですぐに記録を引き出せますから」と Chopra 氏。「Salesforce のページから、その患者さんに関する Slack チャンネルを直接確認できます。事前承認から投薬、費用に関するサポートまで、すぐに協力して対応できるのです」
Chopra 氏のチームは Slack と Salesforce Health Cloud のインテグレーションによって、これまで数週間かかっていた問題をわずか数分で解決できるようになりました。たとえば、ある患者さんに 700 ドルの請求が誤ってなされた際にも、ケアチームと収益サイクルチームが Slack 上で力を結集し、問題をただちに解決できました。
「診療所や病院から届いた請求書に問題があった場合、これまでは指定の番号に電話をかけた後、問題が解決されるまで数日から数週間もやり取りを繰り返す必要がありました」と Chopra 氏は振り返ります。「[But in our case]Slack なら、窓口の担当者が Slack に届いたメッセージを確認して、間違いを特定し、それを修正するだけなので、15 分もあればすべて解決です。これが Slack のパワーです」
ワークフローの自動化と Slack AI により、ワンクリックで患者さんのジャーニーを効率化
Chopra 氏は、医師としての多くの臨床経験から、管理業務がしばしば患者さんの治療に使える時間を奪ってしまうことを身をもって知っていました。Google Cloud と The Harris Poll 社による最近の調査でも、臨床医は週に平均 28 時間を、報告書の作成などの定型作業に費やしていることがわかっています。
MIMIT Health は、ユーザーが自ら自動化プロセスを構築できるワークフロービルダーを活用して、このようなパソコン作業の多くを解消。本来のミッションの実現に向けた重要な仕事のための時間を確保できるようにしています。
具体的には、Slack チャンネル内で実施項目の承認を効率化するワークフローを構築。チェックマークの絵文字でメッセージにリアクションすれば、自動的にワークフローの次のステップに進める仕組みにすることで、承認をめぐって何度もメールをやり取りする必要がなくなりました。
「患者さんを診察しているその場で、Slack チャンネルに最新情報を送信できます」と Chopra 氏は説明します。「医療秘書が会話を聞き取って記録を作成し、その後、私が実施項目を確認して、チェックマークの絵文字で承認します。チームメンバーはそのマークがワークフローの次のステップに進む合図だとわかっているので、効率的に物事が進みます」
患者さんのカルテに手術報告を記録する際にも、ワークフローは力を発揮します。Slack を導入する前は、患者さんの電子カルテを探し出して確認し、適切な人から署名をもらうプロセスに時間がかかっていました。今ではそのような記録は Salesforce Health Cloud 内の治療エピソードとしていつでもアクセスできます。さらに Slack Sales Elevate を使えば、医師が Slack 上で直接、記録を閲覧・更新することも可能です。
手術が行われた後、Chopra 氏は Slack チャンネルで、患者さんの電子カルテへのリンクを受け取ります。そこから報告書の内容を確認し、問題がなければ、チェックマークの絵文字でメッセージにリアクションします。そうするだけで、タスクが完了したことがケアチームに自動的に通知されます。
Chopra 氏によれば、これまでは手術報告 1 件あたりの処理に 20〜30 分かかっていましたが、Slack を導入した今では 1 分もかからず完了できるようになったといいます。このワークフローだけでも、MIMIT Health はフルタイム従業員約 25 人分の管理業務から解放され、100 万ドルを超える経費の節約になっています。
また、同氏のチームは Slack canvas も活用。アラートやメモ、患者さんが希望する言語など、詳細な情報の共有に役立てています。履歴データの多い患者さんの場合には、Slack AI の要約機能を利用して、診察前にすばやく重要な情報を収集しています。
「25 年間診ているある患者さんの場合、チャンネルに保存されている診療エピソードはおよそ 150 件に上ります。Slack AI にたずねれば、関連文書まで含めて、その患者さんの履歴のまとめがすぐに手に入るのです」
Agentforce のエージェントで個別化医療を大規模に変革
早くから AI を活用してきた MIMIT Health は、CIMSS Innovative Solutions と提携して Agentforce を導入。Salesforce プラットフォームのエージェントレイヤーである Agentforce を使うことで、企業はあらゆる事業領域で自律型の AI エージェントを構築・展開できるようになります。Agentforce 上に構築されたエージェントは、人間の介入なしで、問い合わせの内容を理解して、回答を提供。それぞれの役割に応じたビジネス知識をもとに、エージェントがタスクを実行することもできます。
MIMIT Health はすでに、次のような方法で従業員の仕事を支援するために、エージェントを Slack に導入する取り組みを始めています。
- 文字起こし : AI による医療音声の文字起こしを利用することで、手書きのメモを減らし、文書の質を高められます。詳細な記録があれば、医師はより多くの情報にもとづいた提案ができ、診療予約後のケアの調整も充実します。
- 医療費請求の最適化 : CIMSS Innovative Solutions との提携により、エージェントが請求書の作成や異議申し立てなど、収益サイクルにおける課題を効率的に処理します。
- 医師の導入研修 : Agentforce が医師の資格認定や研修のプロセスを効率化することで、ダウンタイムを削減し、収益化までの時間を短縮します。
- 効率的な予約スケジューリング : カスタマイズされたエージェントが、患者さんと医師の予約作成や、医療記録の確認、個別化したサポートの提供を支援します。
定型業務を Agentforce に任せることで、医療従事者は、1 日の中で患者さんと向き合う時間を増やせます。管理業務の負担が減ることで、MIMIT Health の医療スタッフのやりがいが向上し、疲労も少なくなると Chopra 氏は考えています。
「人がひとりの人間として望むこと、それはできるだけ長生きし、生活を楽しみ、自分の可能性を存分に発揮することではないでしょうか。配慮の行き届いた基本的な医療を受けるために、自宅を売ることを望む人などいないはずです。Slack があれば、私たち医療従事者は、その願いの実現をより速く、より安価に、より良い形でサポートできます」
Slack で、より良い治療を、よりシームレスに
Chopra 氏は、もとより複雑である患者さんのジャーニーに、新たなテクノロジーが加わることで、患者さんにとって(時には医療従事者にとっても)さらに事態が難しくなるおそれがあることを認識しています。それに対し、Slack は物事を複雑にするのではなく、患者さん中心の医療を重視した、総合的なヘルスケア環境を整えるのに最適なプラットフォームだと Chopra 氏は考えています。また、その使い勝手の良さから、長くメールやファクスを使ってきた医療従事者でさえ、一度 Slack を使うと、もうかつての方法には戻れなくなるとも言います。
Slack は、Chopra 氏による医療をいち早く届ける取り組みのすべてのステップを、しっかりとサポートしています。
「つねに患者さんを中心に考えることで、より良い医療をより早く、より手頃な料金で提供できます。患者さんとのつながりを維持し、成果に向けて取り組む私たちにとって、Slack は連携のための最高のプラットフォームになっています」