Slack による調査「Future of Work」 によると、「自分の組織でどのように意思決定がされているかをもっと知りたい」と回答した人は 80% にも上りました。また理想的な職場の一番の要素として、回答者の 50% が「コラボレーションが行われていること」を挙げています。従業員にとってよりよい職場を作るためには、組織内の壁をなくして透明性を高め、自由にアイデアを共有できるコラボレーション文化を育てる必要がありそうです。
そこで今回は、それを実現する方法として、協調的なリーダーシップスタイルを紹介していきたいと思います。
協調的なリーダーシップスタイルとは?
協調的なリーダーシップスタイルをとる人は「どんな状況でも常に正しい答えがわかる人などいない」ということを知っています。組織が成長していくためには、全員を巻き込んだ形の幅広いリーダーシップスタイルが必要です。
「協調的なリーダーシップとは、大きな意思決定が求められる時や、大規模な仕事が始まるという時に、リーダーである自分が持つ情報が一番少ないことはよくあると理解することです」と語るのは Slack で Vice President of Product Engineering を務める Michael Lopp です。「できるだけ多くの情報を自分のもとに集める方法を探し、得た情報に基づいてよい決定を下さなければなりません。あるいは、自分では決定せずにチームのほかの誰かに委ねるほうがよい場合もあります。十分な情報を持っている人のほうが良い決定ができるからです」。
協調的なリーダーシップスタイルはチームメンバー同士の関係を深め、信頼関係を築くのに役立ちます。そして信頼関係が確立されていれば、メンバー全員が自身の肩書や経験のレベル、在籍期間にかかわりなく「自分の意見を聞いてもらえる」「組織の中でリーダーとして認められている」と感じられるようになるでしょう。
「協調的なリーダーは全体の意見を把握する責任があります。『この議論はバランスが取れているか』『すべての意見は出ただろうか』などを考えなくてはいけません」
職場で協調的なリーダーシップスタイルを促進する方法
協調的なリーダーシップスタイルは、それぞれの仕事に対する責任感をメンバーに持たせることでチームに活気を与え、アイデアやイノベーションが生まれる余裕のある環境を創り出します。こうすることで、誰でもアイデアを思いついたら自由に共有できるようになります。ここからはこのような協調的なリーダーシップスタイルを実践する方法をいくつかご紹介しましょう。
1. アイデアはどこからでも出てくるとわかっておく
Pixar の共同創業者である Ed Catmull 氏は自著『ピクサー流 創造するちから』のなかで、「自由にアイデアを提案できないと感じている人が組織内にいれば、それはリーダーの責任です」と語っています。「想定していなかったところから出てきたアイデアを過小評価してはいけません。インスピレーションはどこからでも生まれる可能性があり、実際にそうなのです」。
一番若い社員から経営層まで、誰もが自由にアイデアを共有でき、そしてそのアイデアが検討・採用される可能性があると思える環境を作りましょう。そのためには、自分のアイデアを共有することに慣れていないメンバーを巻き込むことが必要になります。
Lopp もまた、「会議では、誰が発言していないかに意識を向けて、『あなたはこれについてどう思う?』と聞く必要があります」と言います。「協調的なリーダーは全体の意見を把握する責任があります。『この議論はバランスが取れているか』『すべての意見は出ただろうか』などを考えなくてはいけません」。
リーダーは、発言することに慣れていないメンバーに対して意見を出すよう勧めるべきだと Lopp は言います。それが、大きな成功につながる可能性があるからです。「一番おとなしい人が、最も革新的で、深いアイデアを持っていることがわかることも多いんです」。
2. フィードバックを喜んで受け入れ、改善に活かす
リーダーの要件の 1 つは、自分が改善すべき点を認めることです。同様に協調的なリーダーシップでは、メンバーがチームの改善点について考え、指摘できるようにすることが必要です。
「メンバーは、異議を唱えたり、疑問を呈したり、『これではうまくいかない』と発言したりできる状態であるべきです」と話すのは、Slack で Vice President of Global Workplace and Real Estate を務める Deano Roberts です。
協調的なリーダーシップは、経営層やマネージャーがチームからのフィードバックをオープンに受け止め、組織を強化するためにそのフィードバックを活かすことができるかどうかにかかっています。そしてメンバーも、フィードバックを共有するのは損だと思うのではなく、報われると感じる必要があります。
これについては Catmull 氏も著書のなかで「相手や階層に関係なく、誰もが非難されることを恐れずいつでも話せるようになるべきです」 と書いています。
協調的なリーダーは、チームに対してフィードバックやアイデアを伝える際に最も効果的なコミュニケーション方法を伝えます。さらにリーダーはもらったフィードバックを受け止め、それを活用して、組織内にポジティブな変化をもたらします。こうすることで、日々の業務に対する責任感がチームに生まれ、さらにほかの分野でもコラボレーションが加速しやすくなるのです。
3. コミュニケーションのプロセスをシンプルにする
コラボレーションとコミュニケーションは、パフォーマンスが高いチームを作るのに重要な意味を持っています。個人やチーム、マネジメント、経営層の間でコミュニケーションの壁が存在する状況では、協調的なリーダーシップスタイルの実現は絶対に不可能です。
協調的なリーダーシップを機能させるには、効果的なコミュニケーションツールを導入してアイデアの共有やプロジェクト進行、重要な課題へのフィードバックをシンプルにすることです。場合によってはほかの部門とコラボレーションする際に使うさまざまなコミュニケーションスタイルを重視することもあるでしょう。
協調的なリーダーシップは信頼関係ありき
「信頼とはスイッチオンで得られるものではありません。時間がかかるのです」と、Lopp は指摘します。「正しいことを行い、適切な期待値を設定することはできるでしょう。ただそれよりも、何年とまではいかなくても何か月もの間にわたるチームへの接し方や、仕事の進め方における一貫性こそが、信頼につながるのです」。
この記事で紹介したアイデアを実行して協調的なリーダーシップが育ちやすい環境を作れば、信頼とコラボレーションが生まれ、いずれ組織の成長と成功につながることでしょう。