プロジェクトが失敗すると高くつくものです。しかし進捗状況を管理すれば、起こりうる問題を想定し、プロジェクトが予定どおりに進むよう必要な対策を講じることができます。
プロジェクトマネジメント協会発行の 2020 年版「Pulse of the Profession」 によると、一般的に企業はプロジェクトが思うように進まないことで、投資全体の 11.4% を無駄にしているとわかりました。また、健全なプロジェクトマネジメントの重要性を軽視している企業のうち、67% はプロジェクト進行に完全に失敗した経験があるようです。
どのプロジェクトにも共通して、メンバー、タイムライン、予算、品質基準、リスク、関係者の満足度などの変動要素があり、それらは互いに影響し合います。そんなプロジェクトを計画どおりに進めるのはプロジェクトマネージャーの仕事であり、その鍵となるのがプロジェクト管理です。
プロジェクト管理のメリット
プロジェクト管理とは、計画に対して進捗を監視するプロセスを指します。その目標は、遅れや脱線(またはそれらにつながる要因)を見つけ次第速やかに対応して、プロジェクトを計画どおりに進めることです。
適切に行えば、次の 3 点が実現します。
スケジュールどおりの進行
進捗状況を日次、週次、または月次で追跡すれば、マイルストーンへの到達状況を把握できます。プロジェクトの遅延を予測できれば、次のような手を打てるでしょう。
- メンバーの増員
- プロジェクト規模の縮小
予算上の制約や厳しい品質要件によってこれらの対応が難しい場合は、顧客やプロジェクトスポンサーと納期の延長について話し合ってみましょう。
予算オーバーの回避
プロジェクトが失敗に終わる主な原因の 1 つは、予算の超過です。例えば、Statista のデータによると、世界中で企業資源計画(ERP)の導入プロジェクトが予算を超えた割合は、2011 年と 2017 年が 74%、2012 年から 2016 年が 50% 以上、2020 年が 66% となっています。
一般的に、プロジェクトには不確定要素や見込み違いが発生するものであり、スムーズに進むことはありません。しかしプロジェクト費用の場合、こまめに把握して細かく管理すれば、予算オーバーを回避できるでしょう。
リソースの最大活用
タスクの担当者や遅れを把握すれば、必要なリソースの調整が可能になります。例えば、特定タスクの担当者として A さんは最適ではないかもしれません。B さんがフル稼働している一方で C さんは待機しているという状況もあるでしょう。
メンバーの負荷を見える化すれば、タスクを均等に割り当てたり、必要なタイミングや場所でサポートを提供したりできるようになります。
プロジェクトの進捗を管理するには
プロジェクト管理は、複数のアプローチを組み合わせて行います。
プロジェクト定例会議
毎日または毎週、定例会議を設けましょう。対面でも、ビデオ会議でも構いません。定例会議では、タスクの最新状況のほか、メンバーが抱えている問題や進捗に影響しそうなリスクについて話し合います。
Slack の活用
Slack は Zoom や Microsoft Teams Calls とシームレスに連携できるため、全員が同じ場所にいないチームに最適です。会議の開始や参加のためにアプリを切り替える必要はありません。
1 対 1 のミーティング
チームのメンバーと個別に話し合う機会を設けましょう。メンバーとの関係を深められるだけでなく、各メンバーが目指す目標や期待がチームの方向性と揃っているか確認する場として役立ちます。
Slack の活用
直接会えない場合でも、Slack のデフォルトのメッセージ機能を使えば、プライベートなメッセージや 1 対 1 のビデオ通話が可能です。
タイムシート
メンバーが各タスクに費やしている時間をタイムシートに記録しましょう。そうすれば、プロジェクトマネージャーは次のことができるようになります。
- どのタスクにどのメンバーが適しているかを理解
- メンバーの空き状況を把握し、タスクを均等に配分
- 追加のトレーニングが必要なメンバーを特定
- 遅延を予測
- コストを算出
Slack の活用
Slack を TrackingTime や Quidlo Timesheets などの時間管理ツールと組み合わせれば、スケジュールの管理や共有も簡単です。
タスクの更新
適切なタイミングでタスクを更新すれば、プロジェクトの完了率、品質ガイドラインの順守状況、サポートが必要なメンバーを把握できるほか、支出が予定どおりか、プロジェクトの全体目標が効率よく伝わっているかも確認できます。
Slack の活用
Slack を Asana、Wrike、Flow などのタスクマネジメントツールと組み合わせれば、Slack から離れずに関連タスクやプロジェクトの最新状況を共有するのも簡単です。
進捗報告
週次や月次の進捗報告を行えば、前の週や月に順調だったことやそうでなかったことを振り返って検証することができます。得られた学びは未完了のタスクに生かせるでしょう。
Slack の活用
Slack はファイルやドキュメントの共有やコラボレーションをサポートしており、Google Drive、OneDrive、Dropbox などのクラウドストレージツールと連携できるため、レポートのアップロードや確認が 24 時間 365 日どこからでも可能です。
プロジェクト管理によく使われる手法と指標
プロジェクトマネージャーはさまざまな手法、ツール、指標を使って進捗状況を管理します。よく使われるのは次のようなものです。
マイルストーン
マイルストーンとは、プロジェクトタイムライン上において、プロジェクトにプラスまたはマイナスの影響を与えうる重要な地点を指します。例えば、各フェーズの開始日や終了日、重要な成果物の完成、顧客の承認などです。
完了率
Microsoft Project、TeamGantt、Teamwork などのプロジェクトマネジメントツールのガントチャートを使うと、個々のタスクレベルで進捗状況を把握できます。毎週、プロジェクト全体の完了率はタスクの開始や完了に応じて自動的に調整されます。
出来高
出来高(EV)とは、計画に対してタスクがどのくらい完了したかを表す指標です。出来高は、完了率とプロジェクトの総予算を掛けて算出します。
例えば予算が 10,000 ドルで完了率が 40% の場合、出来高は 4,000 ドルです。
- EV = 完了率 x 総予算
- EV = 40% x 10,000 ドル
- EV = 4,000 ドル
ただし、出来高を正しく評価するには、次に挙げるほかの指標も計算する必要があります。
スケジュール差異(SV)
SV とは、予定の進捗状況と現状との差を表す指標です。SV がマイナスの場合、プロジェクトに遅れが生じています。スケジュールどおりに進んでいればゼロ、スケジュールよりも進んでいる場合はプラスです。
SV は、出来高から計画値(PV)を引いて算出します。計画値とは、予定されているタスクの完了にかかる予算額のことです。
- SV = EV – PV
例えば現時点までの計画値が 5,000 ドルの場合(その時点までにプロジェクトの 50% が完了している必要がある)、SV の計算方法は次のとおりです。
- SV = 4,000 ドル – 5,000 ドル
- SV = –1,000 ドル
この場合、SV がマイナスなのでプロジェクトは遅れています。
コスト差異(CV)
コスト差異とは、その時点でのコストの予実差です。コスト差異は、EV から実コストを引いて算出します。CV がマイナスの場合、そのプロジェクトは予算オーバーです。予算どおりであればゼロ、予算を下回っている場合はプラスになります。
例えば、AC が 4,500 ドルだとします。
- CV = EV – AC
- CV = 4,000 ドル – 4,500 ドル
- CV = –500 ドル
この場合、SV がマイナスなのでプロジェクトは予算オーバーです。
スケジュール効率指数(SPI)
SV と同様、SPI はスケジュールに対するプロジェクトの進み具合を表す指標ですが、その程度も示します。SPI は、EV を PV で割って算出します。先ほどと同じ例で見てみましょう。
- SPI = EV/PV
- SPI = 4,000 ドル/5,000 ドル
- SPI = 0.8
この場合、プロジェクトには 20% の遅れが生じています。
コスト効率指数(CPI)
CV と同様、CPI はコスト効率を表す指標ですが、差異の推定値も示します。
- CPI = EV/AC
- CPI = 4,000 ドル/4,500 ドル
- CPI = 0.89
この場合、プロジェクトは予算を 11% オーバーしています。
プロジェクト管理こそ成功の鍵
プロジェクトの失敗はさまざまな理由から発生します。タイムラインの不備、予算の超過、質の低い成果物、エンドユーザーからのクレーム、非効率的なプロセス、ミスコミュニケーションなど、例を挙げればきりがありません。だからこそ、プロジェクトの成功には進捗管理が非常に重要なのです。適切な手法、ツール、指標を用いてプロジェクト管理を進めれば、チームのアクションを最適化できるだけでなく、問題の芽に気づくことさえ可能です。