CyberAgent は、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業の 4 つの事業から成り立っており、主要子会社だけでも 50 社以上を数えます(2020 年 10 月)。同社でコラボレーションツールとして広く活用されている Slack ですが、時には、様々な部署で別々に Slack を運用することで、課題が出てくるケースもあったようです。今回は CyberAgent 技術本部 大倉 香織さんに、Slack を活用して社内外のコミュニケーションを改善した事例を伺いました。
Slack Enterprise Grid を導入する前の状況は?
2014 年から 2015 年にかけて Slack の使い勝手の良さを知った CyberAgent の開発者が、次々とチームごとに導入。2019 年時点ではメディア事業部内だけでも 7 つの Slack ワークスペースが並行して存在していました。そのため 1 人あたりの Slack のワークスペース参加数が、平均「4 つ」という状態に。
- Slack ワークスペース が乱立。参加していない社内の人とのコミュニケーションが「不可」に
- 複数の Slack ワークスペース に参加するため、複数アカウントが必要に
- 上記の結果、アカウント管理が適切に行えないことも
という課題を抱えていました。そこで、2019 年 10 月末に Slack Enterprise Grid を導入。2020 年 2 月から 4 月に大規模なワークスペースの移行を行いました。
- 従来の独立したワークスペースを活かしつつ、誰とでもコミュニケーションが取れる状態に
- 1つのアカウントで、重複していた分を削減
- セキュリティポリシー、アカウントの管理を統一化
を Slack Enterprise Grid で実現しました。
100 以上の社外パートナーともセキュアにつながる
CyberAgent では、Slack をコラボレーションを実現するビジネスプラットフォームとして利用。社内メンバーは 3,605 人、社外パートナー(ゲストとしてログイン)は 1,463 人、ワークスペースは34 、Org 全体チャンネル数 11、Public マルチワークスペース数が 2,183 と、大規模でありながら、事業を横断しての技術共有や連携が活発におこなわれています。
また当社では、複数のパートナーやベンダーと安全な接続とコラボレーションを可能にする、Slack コネクトも利用して、131 もの外部組織(オーガナイゼーション)と連携しています。
ワークフロービルダーを活用し「申請も Slack で。」
大倉さんが担当するメディア事業部では、Slack 全般の問い合わせを、#slack-media-helpdesk というヘルプデスクにまとめています。また日々発生する業務については、Slack のワークフロービルダーを活用。ワークフロービルダーとは、日常的に発生するプロセスを自動化するカスタムワークフローを、簡単に構築できるようにする、視覚的でコーディング不要なツールです。わずか数分で、様々なタスクがシームレスに実行できます。
メディア事業部ではSlackに関する申請だけでも現在 10 個のワークフロービルダーを活用しています。今回はそのなかから、外部との接続を可能にする Slack コネクトを申請したい人に向けた使い方についてご紹介いただきました。このワークフロービルダーを通じて申請することで、Slack コネクトの利用申請とともに、あわせて必要になってくる NDA (Non Disclosure Agreement : 秘密保持契約書)の有無も確認できるようなプロセスにしています。
ヘルプデスクのチャンネルにワークフロービルダーのショートカットを設定し、クリックすると、「社員番号」「氏名」「部署名」「NDA 契約の有無」「連携したい会社の会社名」など申請に必要な項目を記したフォームが表示されます。入力が完了したら、自動的に申請者には完了メッセージが流れます。
申請が完了したら自動的にヘルプデスク担当者のチャンネルにメッセージが流れ、申請が行われたことが通知されます。これにより、複数の担当者がコラボレーションして対応することができて、すばやいレスポンスが可能になっています。
With コロナで加速した、Slack での社外コラボレーション
最後に大倉さんから、今年7月に実施した、社外パートナーとの情報を一元化するためのプロジェクトについてもご紹介いただきました。このプロジェクトが実施される前は、社外パートナーは複数の Slack ワークスペースにゲストでログインして、プロジェクトに関わる特定の CyberAgent 担当者とだけ、コミュニケーションを取っていました。新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、オフラインでのコラボレーションもできたので、この方法でも成り立っていたのです。
しかし、新型コロナウイルス感染症拡大以降、社外パートナーからは「オンラインのコミュニケーションをどこで取ったら良いかわからない」「複数のワークスペースに情報が分かれているため、情報に気づきにくい」という声があがりました。
そこで大倉さんがコミュニケーションを再設計して、ワークスペースを、「社外パートナー専用」と、CyberAgent の担当者が参加する「プロジェクト別のワークスペース」にわけて、立ち上げ直しました。これにより、社外パートナーは、専用ワークスペースを見に行けば、自分宛て、もしくは自分の会社宛ての情報をすぐに見つけることができるようになったと言います。
社内外から、うれしい反応
一元化のプロジェクトを実施したあとには、大倉さんのもとには、次々とうれしい声が寄せられました。社内からは、「アカウント管理が不要になった」「オンラインのコミュニケーションをどこで取ればよいか、わかりやすくなった。情報格差がなくなった」「効率的に情報にたどりつけるようになった」など。
社外パートナーからは、「緊急対応のときも、すぐに対応や連絡ができる体制になった」と評判は上々のようです。
「役員にイイね!」ができるぐらいのカジュアルさが Slack の魅力と語る、大倉さん。とはいえ、Slack を展開するときには、Slack チャンネルを盛り上げてくれそうな旗振り役を立てたり、仕事とは関係ない雑談チャンネルを設けたり、という工夫も行っているようです。企業において、オンラインコラボレーションが重要になったいま、CyberAgent の社内外を加速させるコミュニケーションの在り方は、多くの企業にとってお手本になりそうです。