新型コロナウイルスのパンデミックを契機として企業がリモートワークに舵を切った時に、ほとんど見落とされていたことがあります。それは、非同期型の会話はリアルタイムでは行われないということです。リモートワークが定着した今こそ、この非常に価値の高いビジネスコミュニケーションの形態を活用することで、生産性を大きく高めていく時ではないでしょうか。
職場にとっての付加価値
リモートワークの移行が始まったばかりの頃は、多くの企業がオフィスでのやり取りをそのまま仮想環境に移しただけという状況でした。つまり、同期型のリアルタイムコミュニケーションを強化して、対面での会議だけでなく、休憩スペースでの雑談のような顔を突き合わせたおしゃべりまでも再現しようとするケースが多く見られたのです。しかし、これにはいくつか問題があります。組織によっては、次のようなことに直面する可能性があります。
- 時差に関する課題 : リモートワーカーのなかにはオフィスから数千キロも離れた場所で仕事をしている人もいます。時差があるなかで会議を設定するのは容易ではありません。
- 勤務スケジュールの違い : 全員がオフィスの近くに住んでいる場合でも、リモートワーカーは柔軟な勤務スケジュールを取り入れる傾向があります。午前中に生産性が上がる人もいれば、夜遅いほうが力を発揮できる人もいます。配偶者や子どもが自宅で仕事をしたり授業を受けていたりするケースも多いでしょう。リアルタイムのコミュニケーションを行うには、全員に都合のよい時間帯を確保する必要があるのです。
- テクノロジーのトラブル : テクノロジーのトラブルは、面接中の人であっても有名なニュース番組の出演者であっても、誰にでも起こり得る問題です。すべてが順調に進んでいても、突然画面がフリーズしたり、音声が聞こえなくなったり、会議への再接続が必要になったりすることがあるのです。非同期的な方法では対応できない内容であればトラブルに対処する価値もありますが、1 日中会議を詰め込んだ状態では生産性が下がります。
非同期型コミュニケーションはどのような職場でも価値あるものですが、リモートワーク環境では不可欠なものです。リモートワーカーが自分のスケジュールに合わせて情報を受け取り、理解し、対応できるようになれば、さまざまな課題が解決されます。また、議論した内容の記録も残ります。記録を参照すれば会話の内容を確認できるので、あとから同僚や上司の手を煩わせることがなく、さらに時間の節約になります。
非同期型コミュニケーションのツール
非同期型コミュニケーションには、さまざまな形態があります。ここでは、一般的なツールを一部ご紹介します。
- メール
- 録画されたビデオ
- 指示や説明を加えたスクリーンショット
- Slack をはじめとするコラボレーションツール
- インスタントメッセージやショートメッセージ
非同期型コミュニケーションの導入方法
非同期型コミュニケーションには非常に価値がありますが、活用するには論理的で持続可能な導入計画を立てることが重要です。採用するツールとその用途がビジネスの全体的な目標に役立つものであることを確認する必要があります。
- チームに合ったツールを選ぶ : 現在職場で用いられているコミュニケーション手段と、最も一般的なコミュニケーションの種類について考えてみてください。そのようなメッセージのやり取りを非同期の形で円滑化してくれるツールを選びましょう。
- 期限を設定する : 非同期型メッセージは即時のやり取りではないため、応答の期限を設定する必要があります。よくあるのは、翌営業日の終わりまでにメッセージへの回答を求めるというものです。
- 社内トレーニングを実施する : 新しいテクノロジーを進んで使いたいと思う人もいます。とはいえほかの人より先に使い始めた人でも、新しいツールを最大限に活用する方法を理解しているとは限りません。トレーニングのための文書と動画を用意し、誰かが質問に答えられるようにしておきましょう。
- 試行錯誤を重ねる : Slack をはじめとする非同期型コミュニケーションツールには、カスタマイズのためのオプションが豊富に備わっています。プロジェクトごとに専用チャンネルを設定したり、メールを連携させたり、絵文字を使って会話スレッドに優先順位をつけたりすることもできます。思い切って色々試し、自分のチームにぴったりの使い方を見つけてください。また、ベストプラクティスを実践することもできます。「OK」や「いいですね」のような短いメッセージの代わりに、全員が絵文字リアクションを使うようにお願いすれば、もっと効率化できるかもしれません。あるいは、本題と関係ない会話に線引きするのもよいでしょう。
成功を測る基準
非同期型コミュニケーションの取り組みがうまく機能しているかどうかを判断するには、どうすればよいでしょうか?この取り組みの大きな目標は 2 つあります。
- スピードの向上
- リモートワークの統合
プロジェクトがより迅速かつスムーズに進行し、リモートワークのメンバーが自分もチームの一員だと感じられているようであれば、その取り組みは成功です。その他多くの取り組みと違って、非同期型コミュニケーションの成功を測るのに多くのデータは必要ありません。従業員の不満や提案にしっかりと耳を傾け、プロジェクトの流れから目を離さないことです。電話やビデオ会議などの同期型コミュニケーションが必要になったら、迷わずに利用しましょう。
非同期型コミュニケーションを活用することで、全体的な生産性を高めながら、リモートワークに関連する多くの課題を最小限に抑えることができます。ツールを慎重に選び、全員のスピードアップを図り、プロジェクトの流れを把握しましょう。そうすれば、さらに持続可能なリモートワークをすぐに実現できるはずです。