DX という言葉をビジネスシーンでしばしば耳にするようになりました。デジタル化や IT 化とどう違うのか、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、DX の定義や取り組むべき理由、成功させるためのポイントについて解説します。DX の実現に向けて取り入れたい技術にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
DX とはデジタルトランスフォーメーションのこと
DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用し、生活をより豊かなものに変革することを指します。2004 年にウメオ大学(スウェーデン)の元教授であるエリック・ストルターマンが提唱した概念で、本来はビジネスに限らず生活全般のデジタル変革をあらわす言葉です。
経済産業省が 2018 年9 月に公表した「DX レポート」では、日本企業のデジタル化が進まなければ国際的な競争優位性を失い、2025 年から 2030 年の 5 年間で年間 12 兆円もの経済的損失が生じると予測しています(2025 年の壁)。ビジネスにおいても DX は喫緊の課題であり、国を挙げて DX 推進に取り組もうとしているのです。
※経済産業省「DX レポート ~IT システム「2025 年の崖」克服とDX の本格的な展開~」
DX における具体的な取り組み
独立行政法人情報処理推進機構の「DX 白書 2023」では、DX に関する取り組みを次の 4 つの領域に分けています。
DX とデジタル化・IT 化との違い
DX と混同されやすい概念として、「デジタル化」や「IT 化」が挙げられます。デジタル化や IT 化が DX 推進の一端を担っているものの、デジタル化や IT 化に取り組むだけでは DX とはいえません。
DX とこれらの概念がどう違うのか、きちんと整理しておくことが大切です。
デジタル化 : 業務の効率化とプロセスの進化
デジタル化には、大きく分けて「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」という 2 つの概念があります。
デジタイゼーションとは、従来アナログで行っていたことをデジタルにして効率化を図ることを指します。ペーパーレス化やビデオ会議などが典型例と言えます。
デジタライゼーションとは、効率化を図るために業務フローや情報のやりとりをデジタル化することを指します。クラウドを活用したリモートワークの実現や AI の活用がデジタライゼーションの一例ととらえてください。
デジタル化は DX を進めるための手段となることはあっても、DX の目的そのものではありません。デジタル化と DX を混同しないように注意しましょう。
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IT 化 : IT ツールの導入で業務効率や生産性向上を図る
IT 化とは、IT ツールの導入を進めることを指します。既存の業務などを IT ツールに置き換えることで、業務効率や生産性の向上を図ることが主な目的です。
IT 化を進める過程でデジタイゼーションやデジタライゼーションが実現するケースも少なくないことから、IT 化とデジタル化は表裏一体の関係にあると言えます。ただし、IT 化もデジタル化と同様に、DX 推進のための手段であり、目的ではない点に注意が必要です。
DX に取り組むべき理由
近年、多くの業種で DX が注目されています。なぜ、企業は DX に取り組むべきなのでしょうか。主な理由として、次の 3 点が挙げられます。
ビジネスの多様化
デジタル技術の進歩に伴い、従来は存在しなかった新たなビジネスモデルが登場しています。スマートフォンの位置情報を活用したライドシェアやグルメ宅配サービスなどは、まさしくデジタル技術によって実現したビジネスモデルです。
こうした新たな潮流に乗り、ビジネスモデルの多様化に対応していくには DX 推進が欠かせません。
IT システムの老朽化
デジタル技術は急速に進歩していく一方で、企業では既存の IT システムを活用し続けているといったケースは少なくありません。老朽化が進む IT システムは「レガシーシステム」と呼ばれ、新たなビジネスモデルの確立を阻む原因のひとつとなっています。時代のニーズに応える事業を推進していくためにも、DX 推進が求められているのです。
消費者の細分化・多様化
誰もがインターネットを手軽に利用できるようになった現代では、消費者の行動様式やニーズの細分化・多様化が進んでいます。マスを対象としたビジネスからパーソナライズしたサービスの提供へ、モノ消費からコト消費へと、消費者が企業に求める要素は大きく変化しました。
時代のニーズに合ったサービスを提供していくうえで、DX 推進は避けて通れない道と言えるでしょう。
DX を成功させるためのポイント
続いては、DX を成功させるためのポイントをご紹介します。次に挙げる 4 点は、いずれも DX の成否を左右する重要な要素です。DX に取り組む際には、これらのポイントを意識しておく必要があります。
DX 人材の確保
DX 推進の中心的な役割を担う人材(DX 人材)の確保は、DX 成功に向けた土台となる要素といえます。具体的には、次のポジションで活躍できる人材を確保する必要があります。
ただし、日本国内では、これらの人材が慢性的に不足しているのが実情です。外部から採用するだけでなく、在籍している従業員の人材育成やリスキリングを通じて、DX に必要なスキルを身につけてもらうことも視野に入れる必要があります。
新たな開発手法の導入
時代のニーズに応える新たな開発手法を導入することも大切です。一例として、「デザイン思考」と「アジャイル開発」が挙げられます。
デザイン思考とは、ユーザー視点から本質的な課題を探り、プロダクトのコンセプトやビジネスモデルに反映させていく考え方のことです。DX 推進では、目的とするゴールから逆算して施策を講じていく必要があることから、デザイン思考がよく用いられます。
アジャイル開発とは、仕様を先に固めておくウォーターフォール型の開発と対をなす概念です。機能単位で優先順位を決めて開発を進めるため、柔軟な仕様変更に対応しやすいメリットがあります。実現したい理想像から逆算して仕組みを決めていく DX と、相性の良い開発手法です。
デジタルデータの活用
デジタルデータを活用したデータドリブン経営への転換も、重要な課題のひとつです。従来の「KKD(勘・経験・度胸)」にもとづく経営では立ち行かない時代になりつつあります。無闇にデータの収集を進めるのではなく、必要とするデータの種類を見極め、活用方法や結果を見据えて適切に使いこなしていくことが大切です。
全社(組織)的な DX の推進
DX は、一部の部署や従業員だけが実践しても効果は限定的です。取り組むのであれば、全社を挙げて DX を推進していく必要があります。具体的には、次のプロセスで進める必要があります。
全社的に DX を推進するには、経営層も含めた社内関係者の理解が不可欠です。DX 推進を通して目指す変革の在り方を、組織内で共有しておくことが求められます。
DX を実現するために取り入れたい技術
次に、DX 推進を支えるための中核的な存在となりうる技術を紹介します。これらの技術を活用すること自体が目的ではないものの、DX を実現するうえで重要な役割を担うことになるはずです。
IoT
IoT(モノのインターネット)とは、さまざまな機器をインターネットに接続して通信を可能にする技術です。機器がオンライン化することで、自動制御や自動認識、遠隔計測といった仕組みを実現できます。
例えば、製造現場の機器を IoT 化すれば、離れた場所から稼働状況を把握することも可能です。工程管理を遠隔地で行うこともできるため、労働力不足の解消にも効果が期待できます。
AI
AI(人工知能)の活用も急速に広がりつつあります。大量のデータを学習したうえで情報のパターンを認識し、初見のデータを識別できる機械学習を活用することで、人間よりも迅速かつ正確な判断が可能になるからです。
近年では、対話型 AI「ChatGPT」の登場により、人にとって自然な文章の生成を AI が担うようになりつつあります。正確性や情報の鮮度などに課題を抱えているものの、近い将来、ChatGPT が問い合わせ対応などの顧客フォローを担っていくことになるかもしれません。
クラウドコンピューティング
クラウド上に置かれたソフトウェアやデータの活用により、ツールやサービスの導入・運用のハードルが急速に下がっています。必要に応じてサブスクリプションサービスを契約することで、求める機能をすぐに使い始められるのです。
クラウドサービスであれば、アップデートやシステムメンテナンスもベンダー側で対応してもらえるため、従来は保守運用に費やしていた時間・労力を、より生産性の高い業務に投入できるようになるでしょう。
5G
大量のデータの高速通信を可能にする 5G も、DX を実現するうえでカギを握る技術といえます。
例えば、製造現場の業務プロセスに関するあらゆるデータをセンサーで収集し、ビッグデータとして活用していく「スマートファクトリー」を実現する場合、大量のデータを安定的にやりとりできるネットワークが不可欠です。5G は DX で必要とされる通信環境を実現する規格として注目されています。
サイバーセキュリティテクノロジー
デジタルデータの改ざんや漏えいを防ぐ技術のことをサイバーセキュリティテクノロジーといいます。DX 推進によって現状よりもはるかに多くのデジタルデータを扱うにあたり、データの信頼性をいかにして確保するかが問われることになります。
IoT やクラウドコンピューティングといった仕組みを活用していくうえで、必ず押さえておくべき技術と言えるでしょう。
DX の推進に Slack を活用
DX 推進に向けて取り入れたいツールのひとつに、プロダクティビティプラットフォームの「Slack」が挙げられます。Slack をDX に活用できるシーンや、具体的な機能について見ていきましょう。
デジタルワークプレイスとして活用できる
Slack は、リモートワーク環境や外出先でもコミュニケーションが可能なツールです。メッセージ機能のほか、ハドルミーティングやビデオ会議といったさまざまな手段で離れた場所にいる相手とコミュニケーションをとることができます。
また、Slack コネクトの活用により、社外パートナーともスムーズな連携が可能です。現在開発中の Slack 向けの ChatGPT との連携を今後活用できるようになれば、生成 AI を業務に導入したい企業にもおすすめです。
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各種デジタルツールとの連携
Slack は、Salesforce やプロジェクト管理ツール、採用管理ツールといった各種デジタルツールと連携させての活用が可能です。Slack 上で各ツールを操作できるため、複数のツールを用途ごとに立ち上げたり、切り替えたりしながら作業を進める必要がありません。Slack を軸に作業を進められれば、業務効率化・生産性向上に寄与することができます。
グローバルスタンダードのセキュリティ
Slack は、ISO や SOC といった国際的なセキュリティ認証を取得しています。グローバルスタンダードのセキュリティにより、やりとりされるメッセージや保存データが厳重に保護されているのです。
DX に欠かせないセキュリティ対策に不安を抱えている事業者さまも、Slack を活用することで強固なセキュリティレベルを実現できます。
DX の課題
続いては、DX を推進するうえで課題となりやすい点を解説します。これから DX に取り組む企業にとって、次の 2 点をいかに乗り越えていくかがポイントとなります。
IT システムの構築
長年使い続けてきた IT システムは、さまざまなシステムと複雑に紐付いているといった理由から、安易に改修・変更できないことが想定されます。場合によっては、システムの一部を改修したり再利用を試みたりするよりも、IT システムを刷新したほうが合理的かもしれません。
新たに導入するシステムは中長期的に活用していくことも踏まえ、一貫性のある仕組みを構築していくことが大切です。
IT 人材の確保と育成
DX 推進に必要なシステムを開発・導入するにあたり、内製だけでは対応できず外注を行う可能性があります。その際に外注先への開発・運用の依存度が高まることで、システムがブラックボックス化するリスクも想定されます。多少時間がかかったとしても、 IT 人材を自社で確保・育成していくための計画を立てておくことをおすすめします。
DX の定義を正しく理解し、効果的な DX 推進を
DX 推進は、業種を問わずあらゆる企業にとって喫緊の課題です。一方で、デジタル化や IT 化と混同することなく、ビジョンを持って DX を推進していくには、社内の理解を得ることが欠かせません。
今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひ DX 推進のビジョンを策定し、実行に移すためのプランを立ててください。 DX の実現に向けて早めに動いておくことで、企業としての競争優位性を獲得できるはずです。
よくある質問
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