クレーム対応・クレーム処理と言う場合の「クレーム」には、主に「苦情」という意味が込められています。しかし、クレームは本来、苦情に限らずより幅広い意味があることをご存じでしょうか。
今回は、クレームの本来の意味や基本的な対応手順のほか、クレーム対応で注意すべき点について解説します。クレームを受けた後の対応にも触れていますので、顧客対応を改善するうえでお役立てください。
クレームは本来、請求する・主張するという意味
クレーム(claim)には元々、「請求する」「主張する」といった意味があります。近年では、クレームという言葉を使わない企業も増えつつある点に注意が必要です。クレームという言葉の意味について整理しておきましょう。
クレーム=苦情ではない
クレームという言葉には本来、苦情という意味はありません。お客様が何らかの請求や主張をすることを指して、クレームと呼ぶのが本来の使い方です。日本では長年にわたり「クレーム=苦情」という意味で使われてきましたが、本来の意味とは異なる点に注意してください。
実際、企業においても、苦情を意味する言葉としてクレームが使われなくなってきています。言葉の意味やニュアンスは時代とともに移り変わっていくことがありますが、クレームもまさにその一例と言えます。
クレームとコンプレインの違い
近年、お客様から不満や苦情の声が上がることを、「コンプレイン(complain)」と呼ぶ企業が増えています。コンプレインは「不満」「不平」「苦情」という意味を表す英語のため、苦情を指し示す言葉としてはコンプレインのほうが適しているからです。
なお、この記事で解説するクレームは、コンプレインに相当するニュアンスと捉えてください。
クレームへの対応手順
お客様からクレームを受けた際の、基本的な対応手順について解説します。クレームへの対処には臨機応変な対応が求められるとはいえ、基本的な対応手順を押さえておくことは重要です。
1. 顧客の話を聞く
クレームを受けた際にまずやるべきことは、お客様の主張に耳を傾けることです。お客様がなぜ怒っているのか、どのような点に不満を感じているのかを丁寧に聞き取り、原因を見極める必要があります。
苦情をわざわざ伝えてくるお客様には、よほど伝えたいことがあるはずです。話をまともに聞いてもらえない・取り合ってもらえないと感じると、火に油を注ぐ結果にもなりかねません。まずは、誠心誠意相手の話に耳を傾ける姿勢を示し、「聞いてもらえる」と感じてもらうことが大切です。
2. お詫びする
クレームの内容によっては、サービスの仕組み上、致し方ないケースやお客様の勘違いにもとづいているケースもあるはずです。ただし、いずれにしてもお客様に不快な思いをさせてしまったことに変わりはありません。お客様が不快に感じているという事実に対してお詫びしたうえで、事実確認を行う旨を伝えましょう。
注意点として、事実確認ができていないことに関して安易にお詫びするのは適切ではありません。お客様としても、「謝ってほしい」わけではなく、「改善を図ってほしい」「再発防止策を講じてほしい」といった思いがあるはずです。誠実に対応するためにも、この時点では「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」といったお詫びにとどめるのがポイントです。
3. 事実確認
お客様に対応した担当者や現場の業務フローなどを確認し、お客様が主張している内容が事実かどうかを確認しましょう。実際に担当者の対応や業務フローに不備が見つかった場合には、お客様の指摘は正当なものであり、企業として改善すべき点を教えてもらえたことになります。こうしたケースでは、「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」とお礼を伝えるべきです。
一方で、お客様自身の勘違いが苦情の原因だった場合、事実はどうであるかを丁寧に説明する必要があります。お客様が「言い訳をしている」と感じることのないよう、事実を理路整然と伝えるのがポイントです。
4. 質問
お客様が不満を感じている点と、何が解決されれば不満が解消されるのかをあらためて確認します。お客様に質問することにより、不満を感じた点がきちんと伝わっていること、解決しようとしていることを伝えることが大切です。
お客様の口から「そうですね」「その通りです」といった言葉が発せられれば、ここまでの対応が適切だったことを確認できるのではないでしょうか。
5. 解決策の提示
お客様の不満を解消するための解決策を提示します。主な解決策は下記の3点です。
ただし、なかには現状の業務フローや社内ルールでは、解決策を示すのが難しいケースもあるはずです。担当者レベルで判断できない場合には、上長に報告したうえで対応を委ねる(エスカレーション)などして、曖昧な回答をしないことが大切です。
クレームには適切な対応が求められる
クレーム対応は、企業としての対応能力が問われる場面と言えます。クレーム対応が適切であれば、顧客からの信頼が向上し、企業やブランドに対してより好意的な支持者となってくれる場合もあるでしょう。
反対に、クレーム対応が不適切であれば企業イメージが急激に悪化し、「あの会社の商品はもう買いたくない」といった感情を抱かせる原因にもなりかねないのです。クレームへの適切な対応に必要な仕組みや環境を整えるには、次のポイントを押さえておく必要があるでしょう。
クレーム対応のルールを設定する
クレーム対応を担当者任せにするのではなく、組織としての対応ルールを設定しておくことは、適切なクレーム対応には重要なポイントです。クレーム対応時の基本方針を定めたうえで、責任の所在を明確にする必要があります。
例えば、初動対応として担当者が対応すべき範囲や初動対応では、お客様にご納得いただけない場合の報告先などを、あらかじめ明確にしておきます。担当者ごとに対応がまちまちにならないよう、基本的なルールを周知しておくのがポイントです。
クレームに対応するツールやシステムを設定する
適切にクレーム対応を行うには、過去にどのようなクレームが発生したか、クレームに対して誰がどのように対応したのかを記録するためのツールやシステムを活用することも有効です。
過去に発生したものと同種のクレームであれば、しかるべき対応を参照することができます。また、特定の担当者や部門に偏ってクレームが発生していないか、データをもとに分析する際にも役立ちます。
クレームに対応するスキルを向上させる
適切なクレーム対応には、クレームに対応するスキルを組織全体で向上させていくことも重要です。商品知識を十分に身に付けることや接客態度の改善、クレーム対応の基本的なルールへの理解を促すなど、継続的に実施していくべき施策と言えるでしょう。
クレームを完全にゼロにすることは難しいため、クレームが発生した場合の対応能力を高めるという視点を持つことが大切です。
クレームを受けた後の対応
クレーム対応ではクレーム発生時の対応が注目されがちですが、実はクレームを受けた後の対応こそがカギを握っています。下記に挙げるポイントを押さえて、クレーム対応能力を組織的に高めていきましょう。
最適な対応の検討
クレームを受けた後に考えるべきことは「同じような苦情が今後一切発生しないようにする」ための対策を講じることではなく、同様の苦情が今後も起こり得るものと捉えて、最適な対応を検討することです。しかるべき対応が明確に定められていることは、接客担当者の心理的負担を減らす意味でも必要な対策と考えてください。
クレーム対応マニュアルを作成し、定められたフローに従って対応することにより、クレーム発生時の対応をより的確かつ迅速に行うことができます。よほど特殊なケースを除き、大半のクレームは今後も同様の事態が生じ得るものとして対策を講じておくことが大切です。
再発防止
クレームの内容によっては、担当者や企業側に落ち度があったことが明らかな場合もあるでしょう。こうしたケースでは、再び同じクレームが発生するのを防ぐための対策を講じておく必要があります。
不備や不適切な対応があれば早急に是正し、必要に応じて担当者の指導なども検討しなくてはなりません。
未然防止
発生したクレームと似たような苦情が出てくる可能性を考慮し、未然防止に取り組むことも大切です。
例えば、ある商品に関する説明不足がクレームにつながった場合、別の商品でも同様の説明不足が生じていた可能性があります。クレームが発生した商品に関してのみ対応を講じるのではなく、将来的に発生し得るクレームを予測して先手を打っておくことも重要です。
情報共有
クレームを受けた担当者だけなく、関係者や他店舗にもクレームの内容や対応策を共有するのも大切なポイントと言えます。現状ではクレームが発生していない店舗でも、潜在的に不満を抱えている顧客が存在することは十分にあり得るからです。クレームに関する情報共有を促進することが、顧客満足度の向上にもつながっていきます。
過去のクレーム対応事例をナレッジとして共有するには、 Slack のチャンネルや Slack canvas などの活用が効果的です。関係者がクレームの事例に触れることによって、クレームが発生した場合にどう対処すべきかを想定するためのケーススタディにもなります。
悪質・理不尽なクレームへの対応策も必要
クレームのなかには、悪質性の高いものや理不尽な要求も含まれている可能性があります。クレーム対応で誤解してはならないのは、「お客様第一」とは限らないという点です。担当者に不要な心労をかけないためにも、悪質・理不尽なクレームに対しては毅然とした態度で臨む必要があるでしょう。
クレームへの対応手順を検討する際には、こうした悪質・理不尽なクレームや不当要求があった場合の対応策を、併せて検討することも重要です。対応をお断りして良い線引きが明示されていれば、従業員は安心して業務に取り組めるはずです。
クレームへの適切な対応は、仕組みづくりがポイント
クレームはどのような企業・業態でも起こり得る事態であり、担当者任せにしないことが重要です。基本的な対応手順を決めておくのはもちろんのこと、クレームを受けた後の対応を丁寧に行い、組織全体としてクレーム対応能力を向上させていく必要があります。
今回ご紹介したポイントを参考に、ぜひクレーム対応のための仕組みづくりを強化してみてください。
よくある質問
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