2022 年に創業 75 年を迎える石屋製菓株式会社では、「しあわせをつくるお菓子」を企業理念に、看板商品の「白い恋人」をはじめとする高級洋菓子の製造・販売のほか、北海道観光で人気の「白い恋人パーク」や「イシヤカフェ」の運営を行っています。
これまで 1 拠点で事業を展開していた同社ですが、2017 年ごろより道内外に新しい拠点を増設し、従業員数も急速に増加します。これにより、拠点間のコミュニケーションや、情報共有の難しさが課題となりました。そんなとき、基幹システムの刷新プロジェクトに Slack を活用したことがきっかけとなり、従業員が部門の壁を超えて、効率的にコミュニケーションができる基盤として Slack を社内に浸透させることを決定します。経営管理部情報システム室 平野 光一郎さんと、人事部人事課の福田 和也さん、同課 松橋 宏和さんに、Slack の導入プロセスや活用状況を伺いました。
急激な拠点拡大で顕在化した情報共有の課題
北海道産の良質な原材料を使った洋菓子が人気の石屋製菓は、地元北海道だけでなく、土産物や贈り物として道外の顧客からも愛される老舗です。2017 年からは北広島市の新工場や北海道外の営業所を新設し、それに伴って従業員数も増加していました。
規模の拡大によって情報共有にタイムラグや格差が生まれていると感じた平野さんは、コミュニケーションのインフラを整備する必要性を感じていきます。
当時、石屋製菓における社内外のコミュニケーションはメールが中心で、宛先の確認や文面の調整に時間や労力が割かれていました。また、有益な情報発信であっても、メールでは受信した人に共有範囲が限られてしまい、全社の情報の蓄積には繋がりにくい状況でした。そのため、拠点や部署によって情報にばらつきがあり、それによって非効率な業務も発生していました。
人事労務を担当する福田さんが当時困っていたのが勤怠に関する問い合わせでした。「勤怠処理について周知が徹底されておらず、情報確認や不備による差し戻し対応がかなり多く発生していました。自分が長期休暇をとった後にはメールが 300 件近く溜まっており、それらを処理するだけで半日かかることもありました」
こうした状況を打破すべく、平野さんは上司と共に、コミュニケーションの基盤となるシステムの検討を開始します。様々なツールを試し、まずは情報システム室内で Slack を利用していくことに決定しました。
「Slack は UI がシンプルで誰でも使いやすいため、気軽に招待しやすく、社内で展開しやすいのではないかと考えました。また、メールのわずらわしさを解消するだけではなく、Google スプレッドシートなど外部サービスとの連携によって、業務効率化の推進も期待できそうだと感じました」とその理由について平野さんは話します。
そこから、平野さんは情報システム室内だけではなく、他部署とのやりとりでも Slack を使うことで、少しずつ社内の利用者を拡大していきます。
部門横断プロジェクトでの活用を経て Slack は全社に拡大
同社で Slack が社内全体に浸透する大きなきっかけとなったのが、基幹システムの刷新プロジェクトです。このプロジェクトは、製造部門や品質管理部門、購買部門などの製造過程に関わる全部門が参画する大規模なものでしたが、そこで行われる部門間での情報共有や、進捗報告に Slack を利用したのです。
平野さんは「メールを使ってのやりとりとは違い、Slack はチャンネルを設置して関係者を招待できるので、毎回送信者を確認する必要がありません。また、プロジェクトメンバーの追加や変更があっても、Slack なら新しいメンバーをチャンネルに追加するだけで経緯が共有できます。Slack がなかったら、プロジェクトの進行はこれほどスムーズには進みませんでした」とプロジェクトにおける Slack の貢献を強調します。
このプロジェクトを経て、 Slack の利用者が同社の約半数に及ぶ 300 名を超えたことから、平野さんは同社社長 石水氏に Slack が業務にもたらす有用性を主張し、無事全社導入が決定します。
「Slack がなかったら、プロジェクトの進行はこれほどスムーズには進みませんでした」
作業時間が 1/10 に削減できた業務も!各部門での Slack 活用
石屋製菓では、Slack を使って、従業員それぞれが自らの業務改善に繋がる取り組みを実施しているといいます。
人事部では、勤怠に関するやりとりを Slack 上で構築した仕組みに移行させました。これまでは勤怠変更の依頼はメールで受信していたため、確認が追いつかずシステムへの変更反映が事後になってしまうことも多かったそうです。福田さんは「当社はシフト勤務のため、休みやシフト、出社時間の変更が頻繁に起こります。 Slack を活用し、勤怠変更専用のチャンネルを設けたことで、埋もれた情報を探す必要がなくなり対応が迅速に行えるようになりました」と変化について話します。
また、勤怠の締め作業では大きな時間削減効果が見られています。「従来は紙の資料を突き合わせ、 6 人体制でも 1 週間毎日遅くまで残業をすることで終わらせていた作業が、Slack のワークフローを活用することで、以前の 1/10 程度まで省力化できています」(福田さん)
情報システム室では、クリップ機能を活用して問い合わせに対して動画で対応しています。「よく、IT 関係の問い合わせで『システムの使い方がわからない』『アクセスができない』といったものがあります。知識の前提も人によって違うため口頭や文面で使い方を説明するのは大変ですが、クリップ機能を使えば見本を動画で共有することができ、視覚的に理解してもらうことができます」と平野さんはクリップ機能のメリットを話します。
松橋さんはリモートワークにおけるコミュニケーションに Slack のハドルミーティングを活用しているそうです。「社用携帯を持っていない人もいるので、ちょっと話したいときにはハドルミーティングでサッと話すことが多いです。別アプリを立ち上げたり会議の設定をしなくても良いので、カジュアルな相談にちょうどいいですね」
「口頭や文面で使い方を説明するのは大変ですが、クリップ機能を使えば見本を動画で共有することができ、視覚的に理解してもらうことができます」
組織に欠かせないコミュニケーションインフラとして、コラボレーションを促進
Slack の本格導入に当たって、平野さんはオープンなコミュニケーションであることを最も大切にしたといいます。「従業員が自由に必要な情報にアクセスし、気軽に情報共有できるような環境が重要だと考え、プライベートチャンネルの作成は機密情報を取り扱うグループの管理者のみに制限するという基本ガイドラインを設けました」
結果として、社内行事の写真やちょっとした雑談が Slack 上に投稿され、拠点や部署を超えた何気ない交流が生まれています。最近では、社長をはじめとした経営層の情報共有も促進され、役職や部門を超えた全社的なコミュニケーションが活発化し、組織としての一体感も醸成されています。
今後の活用の展望について、松橋さんは次のように話します。「人事部では、入社前の疑問解消や、会社の雰囲気を感じてもらうことができる場として、内定者とのコミュニケーションを Slack 上で行うことを計画しています。他にも、今後導入する e ラーニングシステムについての案内や問い合わせも Slack を使って推進していきたいと考えています」
また、平野さんも「Google Workspace をはじめとする外部アプリとの連携など、Slack をハブにした便利な活用方法をもっと社内に周知し、業務効率化の底上げを図っていきたいと思っています。また、定常的にやりとりのあるパートナーやお客様とは、より積極的に Slack コネクトを利用して効率的にプロジェクトを進めていきたいです」と社内外の利用拡大について語ります。
現在、石屋製菓では Slack はコミュニケーションインフラとして、業務を進めるにあたって欠かせない存在になっています。拠点や部署を超えたコラボレーションによって、石屋製菓の更なるビジネス展開の加速が期待されます。