ダイバーシティ&インクルージョンとは?メリットや課題などを紹介
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ダイバーシティ&インクルージョンとは?メリットや課題などを紹介

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業が増えつつあります。ダイバーシティ&インクルージョンを実現するメリットや課題、関連する法律・制度についてわかりやすく解説します。

Slack チーム一同作成2024年5月26日

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業が増えつつあります。ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性をさらに発展させたもので、今後ますます注目されていくでしょう。

今回は、ダイバーシティ&インクルージョンの定義や注目されている背景、実現するメリットや課題についてわかりやすく解説します。ダイバーシティ&インクルージョンの導入手順や、関連する法律・制度も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、個性と能力に応じた活躍の場のこと

ダイバーシティ&インクルージョンとは、個性と能力に応じて活躍の場が用意されていることを指します。ダイバーシティには「多様性」という意味があります。年齢や性別、国籍、文化、価値観といったバックグラウンドを問わず、さまざまな人がお互いを認め合い、尊重し合える状態のことです。
そして、インクルージョンは「受容」を表しています。多様な人々がお互いを認め合うだけでなく、各自が個性や能力を発揮して活躍できる状態を表す言葉です。

ダイバーシティ&インクルージョンを直訳すると「多様性と受容」ですが、総じて個性を認め合うとともに、積極的に活かしていくことになるのです。

ダイバーシティとインクルージョンの相互関係

ダイバーシティとインクルージョンは、相互に補完し合う関係です。企業がダイバーシティを意識してマイノリティを雇用しても、雇用された方々が真の意味で各自の能力を発揮できる環境ではないかもしれません。
反対に、特定の人種などを重視して雇用した場合、企業が求める条件に該当せずインクルージョンを満たせないかもしれないのです。

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンとの違い

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンは、ダイバーシティ&エクイティに「Equity(公平)」を加えた概念です。真の意味で多様性を認め合い、受容していくには、あらゆる人に公平なチャンスが与えられなければなりません。多くの人とは異なる点があるという理由でチャレンジできる業務に差が生じたり、同じ仕事をしていても待遇や評価が異なったりすることがないよう、さまざまな配慮が必要になるという考え方が反映されています。

ダイバーシティ&インクルージョンが注目される背景

近年、ダイバーシティ&インクルージョンが注目されている背景には、どのような要因があるのでしょうか。主な理由として、「労働人口の減少」「新しい価値観」「グローバル化」が挙げられます。

労働人口の減少

ダイバーシティ&インクルージョンが注目されている理由のひとつに、労働人口の減少があります。日本国内の労働力が不足していくことがわかっている以上、何らかの対策を講じなければなりません。多様なバックグラウンドを持つ人々が働きやすい環境を整えることは、人材を確保するうえで必須といえます。

新しい価値観

新しい価値観が浸透しつつあることも、ダイバーシティ&インクルージョンが注目されている理由のひとつです。消費者の価値観が多様化・細分化した昨今においては、マジョリティ(多数派)をターゲットとした商品企画やマーケティング施策が通用しにくくなっています。企業としての感応度を高めていくには、多様な従業員が能力を発揮できる環境が必要なのです。

グローバル化

グローバル化が急速に進んでいることも、ダイバーシティ&インクルージョンが注目されている要因のひとつです。ビジネスにおけるステークホルダーが日本人だけとは限らなくなっており、多様な文化的背景や価値観を認め合うことの重要性が増しています。国内外を問わず受け入れられる、商品・サービスを供給し続けていくことが重要です。

ダイバーシティ&インクルージョンの具体例

ダイバーシティ&インクルージョンは、どのような場面で実現が求められているのでしょうか。具体例なケースを見ていくことで、自社のダイバーシティ&インクルージョン実現の参考にしてください。

女性の雇用促進

女性の雇用促進は、ダイバーシティ&インクルージョンに欠かせない具体例です。女性活躍推進法の施行以降、女性を積極的に雇用する企業が増えつつあります。ですが、単に女性の従業員が増えればよいというものではなく、性別にかかわらず能力を公平に認め、いきいきと働ける職場環境が必要です。

外国人の雇用促進

外国人の雇用促進も、ダイバーシティ&インクルージョンの具体例です。国内の労働人口が減少していく中、外国人の雇用を強化する必要性が高まっています。生まれ育った国や地域を問わずお互いを認め合って働ける環境を整備することで、優秀な外国人を従業員として採用できるのです。

高齢者や障害者の雇用促進

高齢者や障害者の雇用促進も、ダイバーシティ&インクルージョンの具体例です。高齢者雇用安定法や障害者雇用促進法を順守し、高齢者や障害者が各自の知識やスキルを活かして働ける環境を整えることが重要です。

LGBTQ への理解

LGBTQ への理解を促していくことも具体的な取り組みひとつです。LGBTQ の方々が差別されたり、偏見を持たれたりすることのないよう、社内規定に差別禁止に関する項目を設けたり、相談窓口を設置するケースがあります。

子育て支援

子育て中の従業員が働きやすい環境を整えることも、ダイバーシティ&インクルージョンの具体例です。産休や育休の取得を促進したり、託児所などの仕組みを提供したりするといった取り組みが想定されます。
また、長時間勤務が困難であることを理由に不当な扱いを受けることがないよう、十分配慮することも重要なポイントです。

介護と仕事の両立

ダイバーシティ&インクルージョンの具体例として、介護と仕事を両立可能な環境を整えていくケースもあります。必要に応じて在宅勤務や時短勤務を選択できる勤務体制にするなど、各従業員の状況に合わせて柔軟に対応できる仕組みを整えていきます。

ダイバーシティ&インクルージョンのメリット

ダイバーシティ&インクルージョンを推進することによって、企業や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて見ていきましょう。

優秀な人材を確保

多様な人材が活躍できる企業には、優秀な人材が集まりやすくなるメリットがあります。性別や年齢をはじめ、あらゆる属性やバックグラウンドが受容される組織であれば、男女を問わず管理職に登用されたり、出身国にかかわらず能力を正当に評価されたりする可能性が高いからです。

イノベーションの創出

多様な人材が能力を発揮する機会を得られることにより、イノベーションの創出につながるメリットもあります。さまざまな属性やバックグラウンドの従業員がアイデアを出し合うことにより、新たなビジネスチャンスが生み出されるのです。

社員のモチベーション向上

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、社員のモチベーション向上にも寄与します。社員の個性を尊重し、強みを発揮する場を提供することは、社員の自己肯定感が高まるからです。自己成長を志向する社員が増えれば、生産性の向上も期待できます。

個々のスキルアップ

従業員がスキルアップを図りやすくなることも、ダイバーシティ&インクルージョンのメリットです。多様性と受容を重視することで、従業員は自分の強みを見極めることができます。結果として適材適所に配置されることが多くなり、業務を通じてスキルを高められる社員が増えていくのです。

信頼関係を構築

多様性が尊重されれば、信頼関係を構築できるメリットがあります。お互いのバックグラウンドが異なることを認め合い、尊重し合えれば、意見や考え方の違いにも寛容になれるからです。

離職率の低下

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は、従業員の離職率低下にも寄与します。誰もが能力を発揮して活躍し、お互いを尊重し合うことにより、自然と職場の雰囲気も良好なものになるからです。

監督機能の向上

経営層や管理職層に多様性がもたらされることで偏った見解や判断にもとづく意思決定が行われなくなり、企業運営に対する監督機能が向上するメリットがあります。多角的に物事を検証できることは、健全な組織運営に欠かせないポイントなのです。

株価への好影響

ダイバーシティ&インクルージョンへの積極的な取り組みは、企業イメージを向上するメリットがあります。株主を含むステークホルダーが好感を抱くようになり、株価上昇などの好影響をもたらす可能性も十分にあるでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンの課題

ダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、さまざまな課題を乗り越える必要があります。想定される主な課題は下記のとおりです。

変革への抵抗感

従来の考え方や価値観を変革することに対して、抵抗感を覚える従業員も現れるケースが想定されます。長年にわたる社会通念などが、無意識のうちに先入観や固定観念(アンコンシャス・バイアス)となっていることも少なくありません。

多様性を受け入れられない

さまざまな誤解や偏見などが原因で、多様性を受け入れられない従業員もいることが考えられます。本心から納得して多様性を認め合えるよう、誤解や偏見を解消していくことが大切です。
また、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みが、従業員にとって心理的な負担やストレスとならないよう注意しましょう。

コミュニケーションの課題

価値観が異なる従業員同士の間で、コミュニケーション上の食い違いが生じる可能性があります。文化的背景や言語の違いなどにより、お互いにとっての「当たり前」が通用しない場合があるからです。
相互理解を深めていくには、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっていることを前提としたコミュニケーションが求められるでしょう。

多様な働き方への認識

全員が同じ働き方をしない場合、多様な働き方への認識に温度差が生じる可能性があります。
例えば、在宅勤務が可能な従業員と出社する必要がある従業員との間で、不公平感が発生するといったことは十分に想定されるでしょう。このようなケースでは、業務量を調整するなど、不公平感を軽減するための配慮が求められます。

ダイバーシティ&インクルージョンの導入手順

ダイバーシティ&インクルージョンを導入するには、どのような手順で進めればいいのでしょうか。経済産業省が公開している「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」に沿って解説します。

経営戦略への組み込み

ダイバーシティ&インクルージョンの推進は特定の部門に一任するのではなく、経営戦略に組み込んだうえで計画的に進めていく必要があります。具体的な KPI(重要業績評価指標)の設定やロードマップの策定を行い、責任を持って進めていくことが大切です。

推進体制の構築

ダイバーシティ&インクルージョンを推進していくための体制を構築します。経営層が指揮をとり、推進チームを創設しましょう。役割分担や他部門との連携方法を決めるなど、具体的な推進体制を整えることが大切です。

ガバナンスの改革

ダイバーシティ&インクルージョンを推進していくためのチームに、ジェンダーや国際性含む構成員を入れ、多様性を担保するとともに監督機能を高めます

環境・ルールの整備

就業規則や人事制度を見直し、環境・ルールの整備を進めます。必要に応じて現場へのヒアリングを実施し、ジェンダーや国籍などの属性にかかわらず活躍できるようにするのがポイントです。

管理職の意識改革

管理職の意識改革を行います。管理職研修を設け、ダイバーシティ&インクルージョンへの理解を深めるとともに、各自が無意識に抱いている先入観や固定観念に気づいてもらうことが大切です。

従業員の意識改革

従業員の意識改革も重要なポイントです。管理職向けの研修プログラムを従業員向けにアレンジし、共通認識を形成させます。また、ダイバーシティ&インクルージョンが実現することで、従業員が得られるメリットを正確に理解してもらいましょう。

※経済産業省「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン

ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律や制度

続いては、ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律や制度について解説します。法令を遵守するとともに、活用できる制度は積極的に活用しましょう。

くるみん

くるみんとは、次世代育成支援対策推進法にもとづき、子育て支援に取り組む企業を厚生労働大臣が認定する制度です。認定企業は自社の会社案内やウェブサイトなどにくるみんマークを掲載できますので、企業イメージの向上や人材獲得に寄与する制度といえます。

女性活躍推進法

女性活躍推進法は、働きたいと考えている女性が活躍しやすい社会を実現するために制定された法律です。女性の採用や昇進などの機会を積極的に提供することや、仕事と家庭の両立がしやすい環境の整備などが盛り込まれています。従業員が301人以上の企業には、女性の働き方に関する現状把握と行動計画の策定が義務付けられている点に注意が必要です。

障害者雇用促進法

障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)は、障害者の雇用を推進するための法律です。障害者を雇用するにあたって必要な設備投資を行う場合は、負担軽減に役立つ「障害者雇用納付金制度」の利用も可能です。

高年齢者雇用安定法

高齢者雇用安定法は、働きたい高齢者が安定的に働き続けられる社会を実現するために制定された法律です。2021 年 4 月に改正され、定年を70歳に引き上げることや定年制の廃止などが努力義務とされています。

中小企業緊急雇用安定助成金・雇用調整助成金

中小企業緊急雇用安定助成金と雇用調整助成金は、いずれも従業員の雇用維持に努める企業に支援するための助成金です。
中小企業緊急雇用助成金は、休業または出向を行った中小企業の休業手当などを一部助成します。雇用調整助成金に関しては、経済上の理由などで事業の縮小を余儀なくされた事業者が、雇用の維持を図る場合の休業手当などが助成の対象です。

パートナーシップ制度

パートナーシップ制度とは、同性のカップルを婚姻と同等のパートナーとして承認する制度のことです。地方自治体などが設けている制度のため、効力は自治体によって異なります。
また、企業が独自に社内規定においてパートナーシップ制度を創設するケースも見られます。同性のパートナーを配偶者と同等の扱いにできる制度や結婚祝い金を贈呈する制度など、企業によって取り組みはさまざまです。

ダイバーシティ&インクルージョンを実践する企業のポリシー例

ダイバーシティ&インクルージョンを実践すべきとわかっていても、なかなか実現させるのは難しいかもしれません。そこで、クラウド型ソフトウェアを取り扱う、セールスフォース社のポリシーを参考にしてみるといいでしょう。

同社では、社会の多様なコミュニティを反映させた、よりインクルーシブな職場と世界を築くことを目標に掲げています。
例えば、機会均等ポリシーとして、人種、宗教、肌の色、国籍、性別、性的指向、性自認または性表現、トランスジェンダーなどに対して、差別を行わない方針を維持しています。

ダイバーシティ&インクルージョンへの理解を深めよう

ダイバーシティ&インクルージョンは、今後ますます企業に求められていく方針のひとつとなっていくでしょう。優秀な人材を獲得し、企業としての競争力を高めていくためにも、多様性と受容を着実に浸透させていくことが重要です。
今回ご紹介した導入手順を参考に、ぜひダイバーシティ&インクルージョンの推進を検討してください。

よくある質問

ダイバーシティ&インクルージョンを推進することは、優秀な人材確保や社員のモチベーション向上に寄与するほか、個々の社員のスキルアップや信頼関係の構築にもつながります。また、離職率低下に結び付くことに加え、企業の運営体制に対する監督機能の向上も見込める点がメリットです。企業のイメージアップにもつながることから、株価にも好影響が期待できます。
子育て支援に取り組む企業を認定する「くるみん」や、従業員の雇用維持に努める企業を支援する「中小企業緊急雇用安定助成金」「雇用調整助成金」、同性カップルを婚姻と同等のパートナーとして地方自治体などが承認する「パートナーシップ制度」などの制度を利用可能です。また、ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律として、女性が活躍したい社会の実現を目指す「女性活躍推進法」や、障害者の雇用を推進する「障害者雇用促進法」、働きたい高齢者が安定的に働き続けられる社会の実現を目指す「高齢者雇用安定法」などが挙げられます。

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うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。

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