組織とは、共通の目的を達成するための集団のことを指します。その最大のメリットは、1 つの目的に協力しながら向かうことで、相乗効果を発揮できること。このメリットが十分に発揮できるかどうかは、組織コミュニケーション次第と言ってもいいでしょう。
最近では従来型の縦割りの組織に加え、より変化の激しい社会に対応したティール組織など、新しい組織のあり方も提唱されています。企業の規模やフェーズによって組織の理想的なあり方は異なるため、ティール組織の考え方を取り入れるにしても取り入れるべき側面やその度合いも異なるでしょう。しかし、変化に対応しながらビジネスを成長させるためのヒントとしては、参考にできる部分が大いにありそうです。
ティール組織に限らず、今後どのように組織変革を進めていくべきか、そしてそのために組織コミュニケーションをどのように変えるべきかは、多くの企業が模索していることではないでしょうか。組織変革支援のスペシャリストによると、「自社組織のあり方が良くない」と感じていても、「具体的にどこをどう変えたらいいのか」を明確に指摘するのは難しいことが多いようです。また問題を認識していても、それが組織にとっての本質的な問題かはわからない場合も多いとのこと。しかし問題が何であれ、根本的な改善ための取り組みとして共通することが「コミュニケーションの再設計」だと言われています。
今回は、変化の大きい現代の組織でありがちな 3 つの状況と、各状況に合った組織コミュニケーションのあり方をご提案したいと思います。
多様な働き方を実現する組織コミュニケーション
働き方改革に取り組む企業が増えるなか、フレックス制やテレワーク、時短勤務など、働き方の多様化が進んでいます。異なる環境、状況の従業員が仕事をすることで、企業にとってはより多様な人材を活かすことができ、また従業員はより自分のライフスタイルに合った働き方ができるようになります。
しかし、テレワークでは対面のように気軽に声をかけづらいですし、時短勤務者には勤務時間外の議論や決定事項をもれなく共有する必要があります。加えて、組織のビジョンをしっかりと浸透させ、組織としての連帯感を感じられるような配慮も重要になってきます。
そんな状況でおすすめなのが、いつでも、どこからでもアクセスでき、使いやすいオンラインプラットフォームを活用した組織コミュニケーションです。オンラインプラットフォームをコミュニケーションのハブにすることで、オフィスはもちろん、自宅、カフェ、移動中の電車内でも、どこにいても組織内の最新情報を確認できます。また、時短勤務の場合でも、プラットフォーム上で議論や決定内容を共有しておけば、後から自主的にキャッチアップを済ませることができます。できる限り情報をオープンにし、各メンバーが組織やチーム全体としての動きを把握できるようにしておけば、常にチームで同じ方向に向かって連携しやすくなるでしょう。
人材の入れ替わりに影響されない組織コミュニケーション
同じ会社で長い年月、時には定年まで勤め上げていた従来の働き方と異なり、最近では数年でメンバーが入れ替わることも珍しくありません。また、外部の人材を一定期間チームのメンバーとして迎える、ということもあるでしょう。そのため企業には、短い準備期間で人材に力を発揮してもらう必要があります。
そんな状況での組織コミュニケーションにとって大切なのが、新メンバーがスピーディに準備を整え、力を発揮できる環境を用意することです。例えば、組織のビジョンや目標、また実際の業務に必要な情報を 1 か所に集約し、各自が自分で学べる環境を整えておきます。そうすれば加わったばかりのメンバーでも自主的に情報収集できるので、新人に対して同じ説明を繰り返したり、必要な情報共有が抜け落ちたりするのを防ぐことができます。またオンライン研修コンテンツや、すべての新メンバーに確認してほしいことなどもあらかじめ用意しておくと、新メンバーが速やかに現場で活躍するための後押しとなるはずです。
こうしたプラットフォームの活用は、人材が組織を離れる状況を考えてもおすすめです。オープンにコミュニケーションをとっておくことで、引き継ぎ作業も効率的に行えるほか、情報が個人の受信メールに保存されていたために取り出せなくなる、といったリスクを防ぐことができるからです。仮に、コミュニケーションをとっていた全員がチームを離れたとしても、ツール上に履歴を残しておけば「誰が何を考えてどういう議論を経てどんな結論になったか」まで、引き継いだメンバーがいつでも確認することができるため、業務スピードが落ちることがありません。
従業員が自ら判断して動くための組織コミュニケーション
「従業員は言われたことはやるけれど、なかなか自律性を持って動いてくれない」と思うことはありませんか?変化の激しい今の時代、顧客のニーズや価値観も目まぐるしく移ろい、多様化するなかで、すべてをトップダウンで進めるとタイムリーな対応にはどうしても限界が生じます。スピーディに仕事を進めるには、メンバーが自律性を持って動けることが重要になってきます。
従業員が自ら判断して動けるようにするためには、情報をオープンにし、一人ひとりが判断できる環境を整えることが大切です。これまでマネージャーが抱えていた情報にも従業員がアクセスできるオープンな組織コミュニケーション環境があれば、従業員が自分で考えて動けるようになります。
実際に創業 130 年を超える老舗企業が、情報をオープンにすることで「上からの命令で動く組織」から「自分たちで考えて機動的に行動できる組織」へと進化した例もあります。さらに、情報をオープンにしたことで現場からの情報が集まりやすくなり、それが意思決定スピードを 4 倍にまで加速させたといいます。
変化する社会において、組織にとっての問題点も刻々と変化するなか、問題を見極めるのが難しく感じるのも当然かもしれません。組織としての問題を把握するために大切なのは、まず「組織としての目標やビジョンを明確にする」ことだと経営コンサルティングの専門家は述べています。現状と目標とのギャップこそが、その組織にとっての問題点だからです。組織としてのあるべき姿を明確にすることで、それにフィットした組織コミュニケーションのあり方も具体化しやすくなるでしょう。