近年、サブスクリプション(サブスク)というビジネスモデルをよく耳にするようになりました。定額制やレンタル・リースなどとどう違うのか、疑問に感じている方もいるでしょう。
今回は、サブスクリプションサービスの概要とメリット・デメリットについて解説します。ビジネスモデルや課金方式について検討している事業者の方は、ぜひ参考にしてください。
サブスクリプションサービスは使い放題のサービスのこと
サブスクリプション(subscription)とは、元々「定期購読」を表す英語です。新聞や雑誌には古くからある定期購読の仕組みは、まさしくサブスクリプションサービスといえます。
サブスクリプションサービスとは、契約期間中は対象のサービスを自由に利用できる、いわゆる「使い放題」サービスのこと。近年ではオンラインサービスのほか、自動車や家電といった分野でもサブスクリプションサービスが提供されています。
サブスクリプションサービスと似たサービスとの比較
サブスクリプションサービスは、類似するビジネスモデルと混同されがちです。サブスクリプションサービスへの理解を深めるためにも、ほかのサービスとの違いを押さえておきましょう。
定額制・月額制
定期的に一定の金額を支払うことにより、利用を継続できるサービスを定額制または月額制といいます。本来は購入して利用する商品やサービスを、一定額を支払えば必要な期間だけ利用可能です。
サブスクリプションサービスの場合は商品やサービスが継続的にアップデートされるのに対して、定額制・月額制は契約後のアップデートはありません。商品やサービスの内容が固定されているのが定額制・月額制の特徴です。
リカーリング
リカーリング(Recurring)とは、サービスなどの利用状況に応じて料金が発生する従量課金制のことです。スマートフォンのデータ使用量や通話料などをイメージすると、わかりやすいでしょう。
利用状況に関わらず一定額がかかるサブスクリプションサービスとは異なり、使った分だけ請求される点が特徴です。
リース
リース(lease)とは、長期にわたる貸借契約のことです。リース期間終了時には、借りていた機器等を返却することが前提となっています。サブスクリプションサービスでは、一定額を支払えば提供されているすべてのサービスが利用できるのに対し、リースの場合は契約している製品のみ利用可能です。
また、多くのサブスクリプションサービスがいつでも解約できる一方で、リースは原則中途解約ができなかったり、解約した場合には違約金が発生したりする場合がある点も異なります。
レンタル
レンタル(rental)とは、短期間での貸借契約のことです。数時間から数日間といった単位で契約できるため、必要なときだけ手軽に利用できます。リースと同様に返却が前提となっているため、レンタルした商品の交換や購入には対応していません。
契約期間中はあらゆるサービスが使い放題となるサブスクリプションサービスとは異なり、レンタルした商品のみ利用できる点が特徴です。
シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミー(Sharing Economy)とは、有形・無形を問わず資産やスキルを共有する仕組みの総称です。空いた時間を利用して家事代行に携わったり、利用していない部屋を民泊として貸し出したりできる仕組みとして注目されています。
サブスクリプションサービスが継続利用を前提としているのに対して、シェアリングエコノミーは必要なタイミングで都度借りるのが一般的です。また、シェアリングエコノミーでは仲介業者を挟む場合があるものの、基本的には個人間での貸し借りとなります。提供されるサービスの質は貸主によって異なる点が、サブスクリプションサービスとは異なる点です。
サブスクリプションサービスのメリット
サブスクリプションサービスのメリットには、どのようなものがあるでしょうか。ユーザー側・販売者側の双方からご説明します。
ユーザー側のメリット
ユーザーにとって、サブスクリプションサービスを利用する主なメリットは下記の 4 点です。
- 初期費用を抑えられる
サブスクリプションサービスの費用は定額のため、初期費用を抑えてサービスを利用できます。また、本来は高額な商品であっても、サブスクリプションサービスなら少額で手軽に試すこともできます。購入をためらっている商品があるような場合、実際に体験してから購入するといったことも可能です。
- 好きなときに解約できる
サブスクリプションサービスの中には契約期間の定めがなく、ユーザーにとって都合の良いタイミングで解約できるものがあります。複数のサービスを定期的に乗り換えて試すなど、類似サービスを比較しやすくなるのは大きなメリットです。
- 維持・保管・管理の必要がない
提供されるサービスは事業者側が運用するため、ユーザー自身が維持・保管・管理する必要がありません。買い切り型の商品・サービスと比べて、ユーザーの負担を軽減できるメリットがあります。
- 興味や業務の幅を広げやすい
少額でさまざまな商品・サービスを試せることは、興味の範囲や業務での活用の幅を広げるチャンスといえます。嗜好や用途に合っているか確証が持てない商品・サービスであっても、試しに使ってみることで選択肢が増えるでしょう。導入するサービスを比較検討する時間を短縮でき、興味や業務の幅を広げやすくなることは、サブスクリプションサービス特有のメリットといえます。
販売者側のメリット
次に、販売者側から見たサブスクリプションサービスのメリットを見ていきましょう。
- 継続的な収益が期待できる
サブスクリプションサービスの利用者が増えることで、定期的に一定の売上がもたらされます。販売者にとって、安定的・継続的な収益源を確保できることは大きなメリットとなるでしょう。長期的な売上の見通しを立てやすくなり、安定した収益の確保につながります。
- 新規参入しやすい
サブスクリプションサービスは、有形・無形商材を問わず導入可能なビジネスモデルです。買い切り型の商品・サービスにサブスクリプションサービスを加えることで、既存顧客の取り込みや新規顧客の獲得につながる可能性があります。既存の遊休資産を活用して新規参入しやすい点がサブスクリプションサービスの特徴です。
- 継続的なサービス改善ができる
継続的にサブスクリプションサービスを利用してもらうことにより、サービス改善を図るための豊富なヒントを得られます。ユーザーにアプローチするためのタッチポイントも確保しやすいため、新機能や新サービスの案内も自然な形で進められるでしょう。
- ユーザーのデータを収集しやすい
サブスクリプションサービスの継続利用者が増えることによって、ユーザーのデータを「点」ではなく「面」で収集しやすくなります。ユーザーの行動やニーズを分析する精度が高まり、より効果的な改善策を講じやすくなるでしょう。
サブスクリプションサービスのデメリット
数多くのメリットを得られるサブスクリプションサービスですが、デメリットとなりかねない面もあります。ユーザー側・販売者側の双方から、サブスクリプションサービスのデメリットを見ていきましょう。
ユーザー側のデメリット
まずはユーザー側から見た場合のデメリットを紹介します。下記の 3 点はユーザーにとってサブスクリプションサービスの利用を見合わせる理由になりうるため、導入時には注意が必要です。
- 長期間の利用が損失につながる可能性がある
商材によっては、長期間利用し続けることによって損失につながるおそれがあります。特に、有形商材の場合、定期的に買い換えたほうが故障などのリスクが低く、より機能が充実した製品を利用できる可能性も高まるでしょう。「使い放題」のメリットを活かしづらい商材は、ユーザーにとって、サブスクリプションの恩恵を感じにくいという点には注意が必要です。
- 使わなくてもコストがかかる
サブスクリプションサービスは、利用状況に関係なく定額のコストがかかります。まったく使っていないサービスであっても費用が発生し続けることから、契約していることを忘れてしまい、コストがかさんでいく原因になりがちです。
- 不要な機能・サービスが含まれている場合がある
ユーザーにとって、不要な機能やサービスが料金に含まれていることも想定できます。実際には、一部の機能しか活用していない場合、本来は不要な費用を支払い続けることになるかもしれません。あらゆるサービスが使い放題になることはメリットとなる反面、ユーザーにとって必要な機能を取捨選択しにくいというデメリットにもなりえます。
販売者側のデメリット
サブスクリプションサービスは、販売者側にとってもデメリットとなり得る面を持ち合わせています。次に挙げる点は、サブスクリプションモデルを導入する際に慎重に検討する必要があるでしょう。
- 収益化に時間がかかりやすい
サブスクリプションモデルを採算ベースにのせるには、一定数以上のユーザーを確保する必要があります。サービス開始直後は、まとまったユーザー数を確保することが困難なケースも少なくないため、収益化に時間がかかりがちです。開発費などの回収期間を試算し、資金計画を立てておく必要があります。
- 継続的なサービス改善が必要
サブスクリプションモデルを成立させるには、ユーザーの離脱を抑えるための工夫が必須です。いつでも自由に解約できる柔軟性の高さが仇とならないよう、継続的なサービス改善に取り組むことが求められます。市場ニーズやユーザーニーズの調査を継続的に行い、サービス改善に努めることが大切です。
- カスタマーサクセスへの注力が求められる
少額で利用できるサブスクリプションサービスは、常に競合他社との競争にさらされています。ユーザーは容易に他社サービスとの比較ができるため、カスタマーサクセスへの注力が求められるでしょう。ニーズの充足に気を配り、ユーザー体験を向上させていく必要があります。
- ブランド価値が低下する可能性
ブランドイメージによっては、サブスクリプションサービスの導入がブランド価値の毀損につながるおそれがあります。安く手軽に利用できることは、所有欲を満たしたいというユーザーのニーズとは相容れない場合もあるからです。サブスクリプションモデルの導入に際しては、自社のブランドイメージとの親和性を十分に考慮することが重要です。
- 新規商品やサービスの開発にコストがかかる可能性がある
ユーザーの離脱を防ぐには、常に新規商品やサービスを供給し、ユーザーを飽きさせない工夫を凝らすことが求められます。新規商品・サービスの開発には必然的にコストがかかるため、常に一定の先行投資が必要になるでしょう。サブスクリプションモデルの導入時には、商品・サービスの開発コストも加味して戦略を練る必要があります。
ビジネスに有効なツールの多くはサブスクリプションサービスを導入している
近年は、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツール、 CRM や SFA といったビジネスツールを利用する企業が増えてきていますが、こうしたツールの多くはサブスクリプションサービスです。ビジネスツールにはさまざまな機能が備わっているものも多くありますが、基本的な機能を低コストで利用できるプランから、高度な機能が利用できるプランまで、段階的に料金を設定しているサービスも少なくありません。
例えば、コミュニケーションツールの Slack なら、基本的な機能を試すことができるフリーから、すべての機能を利用できる Enterprise Grid まで、用途に合わせて幅広いプランがあります。詳しくは料金プランのページをご確認ください。 自社がどのような機能を必要としているのかを見極めてプランを選ぶことで、無駄なコストをかけることなく生産性の向上や業務の効率化を実現できるでしょう。
ユーザー・販売者双方にメリットのあるサブスクリプションサービスを検討しよう
サブスクリプションはユーザー・販売者の双方にとってメリットのあるビジネスモデルです。一方で、他のビジネスモデルにはない手軽さや柔軟性が裏目に出るケースも少なくありません。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひサブスクリプションサービスのメリットを活かしたビジネスモデルを検討してください。
よくある質問
HOME > Slack 日本語ブログTOP > 変革 > サブスクリプションとは?その概要とメリット・デメリットを解説