着物や切手、ブランド品など、高価格帯商材のリユースセレクトショップ「バイセル」を運営する株式会社 BuySell Technologies。「人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる。」をミッションに、テクノロジーを活用しながら循環型社会への貢献を目指しています。
同社取締役 CTO を務める今村 雅幸さんは、IT 企業や E コマース業界などでエンジニア・CTO 職を経験した後、2021 年 4 月に BuySell Technologies に入社しました。人と人とのつながりを重視する同社において、従来のチャットツールによるクローズドなコミュニケーションでは成長に限界があると感じた今村さんは、Slack への移行を決断します。段階を踏みながら社内へと徐々に浸透を図り、オープンなコミュニケーション文化を根付かせた今村さんに、導入の背景とその具体的な方法についてお話を伺いました。
クローズドなコミュニケーションからの脱却を目指して
BuySell Technologies では、全国の拠点に在籍する査定員が出張訪問して買取りを行い、自社サイトや EC モールをはじめ、国内外問わずさまざまな店舗やオンラインショップなどで販売を行っています。幅広い販路を持ち、リユース品の買取・販売にかかわるすべての事業を手掛ける同社では、社内のメンバーはもちろん、グループ企業や取引先企業とも日々綿密なやりとりが発生します。そのため社内外を問わず、関係者同志のコミュニケーションや各種情報システムの円滑な連携は不可欠でした。
今村さんは「人と人、人と情報のスムーズなやりとりが、コミュニケーションのあるべき姿です。しかし、クローズドなコミュニケーションツールによって分断が生じていました」と Slack 導入前の課題について語ります。
当時、社内や取引先とのコミュニケーションは、クローズドなグループチャットを中心に展開されていて、誰がどこでどんな会話をしているかがわからず、お互いの状況を把握しにくい状態でした。今村さんは、こうした情報のサイロ化が、社内外のシナジー効果や業務の効率化を阻み、今後の事業成長にも影響を及ぼすのではないかと危機感を募らせていました。そこで、「人と人」、そして「人と情報」の連携を活性化できる、オープンなコミュニケーションツールとして、前職でも利用していた Slack の導入を検討しました。
それまでのコミュニケーションツールと Slack を比較した結果、組織全体に情報を流通させることができる点や、必要な情報をメンバーが自ら検索できる点、外部システム連携による生産性の向上が見込める点、社外ユーザーとのやりとりも管理しやすい点など、あらゆる観点で Slack が優れていると評価できました。
「Slack は必要な情報を自ら検索でき、組織全体に共有・ナレッジ化もできる、オープンコミュニケーションを加速させるための仕組みがたくさんあることが決め手でした」(今村さん)
検討の結果を受け、課題解決には Slack 導入が有効であると判断した今村さんは、具体的な導入に向けて着手します。
「Slack は必要な情報を自ら検索でき、組織全体に共有・ナレッジ化もできる、オープンコミュニケーションを加速させるための仕組みがたくさんあることが決め手でした」
4 段階の Slack 運用で課題を解消、ツールの移行もスムーズに
1,000 人近くのメンバーが在籍し、社外の関係者とも頻繁にやりとりしている BuySell Technologies において、コミュニケーションツールを従来のものから完全に移行するためには、計画的に運用を進める必要がありました。そこで今村さんは、Slack へのスムーズな導入・浸透のため、現状の管理者やユーザーが感じている課題を整理することから始めます。
まず、管理側の課題洗い出しのために、グループチャットの数や連携するシステム、社外ユーザーの利用状況を調査しました。ユーザー側の意見も取りまとめ、オープンコミュニケーションに対する抵抗感や、取引先との調整の困難さ、過去のやりとりが見られなくなることへの不安などの具体的な声を集めました。その結果を受けて、2021 年 8 月から 11 月の 4 カ月の間に、「移行説明と情報収集」「環境準備」「移行期間」「正式移行」と、1 カ月ごとに段階を分けた移行スケジュールを策定しました。
今村さんは「社員の協力や理解は不可欠ですので、しっかりと準備して進めていきました」と前置きし、各段階で行ったことを以下のように説明しました。
1 カ月目は社員への移行説明と情報収集の段階としました。オープンなコミュニケーションの大切さをトップダウンで宣言したのち、各部門に対して Slack の導入目的や既存ツールとの機能比較などを説明し、社員の理解を深めていきました。機能が豊富で自由度の高い Slack を誰もが使いこなせるように「コミュニケーションは原則パブリックチャンネルで行う」「チャンネルの命名規則」といった基本ルールの周知も徹底しています。まずは少ないルールでシンプルな機能から Slack を試してもらい、オープンコミュニケーションの良さや利便性を実感してもらうためです。同時に、移行後の業務に支障がないよう、今後も引き継いだ方が良いポイントのヒアリングや、必要なチャンネルや連携について丁寧に情報収集しました。
次に 2 カ月目の環境準備の段階では、全社への浸透を図るため各部門から Slack アンバサダーの選出が行われました。Slack へ全社員を招待した際に混乱が起こらないよう、サポート体制を万全にするためです。アンバサダーによって、Slack を誰でもより便利に使えるようにガイドラインを全社に周知しながら、同時にアンバサダーメンバーからの改善提案も募りました。集まった意見の中から、運用をよりシンプルにする自動化の仕組みが用意されるなど、Slack 環境の事前整備が行われました。
3 カ月目からは、従来のコミュニケーションツールから Slack への移行期間となりました。Slack を利用開始すると自動的に FAQ のチャンネルにも招待され、誰でもすぐに利用上の疑問を解決できる体制をとりました。また、Slack 社のサポートによるユーザートレーニングも実施しています。ここからゲストアカウントや Slack コネクトによる外部ユーザーの招待も始まり、移行が進んでいきました。
そして 4 カ月目には体制も整い、Slack への正式移行となりました。オープンなコミュニケーションの利点をより享受できるよう、従来のツールの利用は停止して Slack への切り替えを促しました。過去ログを Slack に移行することはせず、管理部門へ過去履歴の情報提供を依頼するというルールとしました。当初こそ従来のツールにある履歴が見られないことへの不安の声があったものの、実際には特に大きな問題は生じませんでした。今村さんは「意外に過去のログを見たいという要望は少なく、正式移行から 1 年経ったあとも、わずか数件でした」と実情を語りました。
こうして浸透度合いに合わせて段階ごとに分けた移行を進めたことで、社員からの抵抗や問題も少なく、Slack の利便性を感じてもらいながら、着実に浸透へつなげていくことができました。
オープンな文化の浸透で多くの相乗効果を実感
Slack への正式移行の後も、今村さんたちはオープンなコミュニケーションの大切さと、それを実現するためのガイドラインを周知し続け、移行から 1 年ほど経た頃には、ほとんどのメンバーがアクティブに Slack を活用するようになっていました。
「80 % のメッセージが Slack のパブリックチャンネルで交わされています。導入後の調査結果を見てもコミュニケーションのサイロ化は解消され、オープンかつ密接に情報をやりとりする文化が作られていると実感しています」(今村さん)
オープンコミュニケーションの定着は、同社の従業員の多くがメリットとして感じており、ポジティブに捉えられています。今村さんは「社内のアンケートによると、7 割以上が『情報共有しやすくなった』、8 割近くが『他部署を含めた状況把握がしやすくなった』と回答しました。移行後に 7 割以上のメンバーが 『Slack に変えてよかった』と答えています」と説明しました。
Slack によって対話をオープンにしていくことで、他部門の状況も把握しやすくなり、全社のコミュニケーション活性化へとつながっています。さらに情報共有の促進や外部システム連携によって業務効率もアップし、問題解決や意思決定のスピードも改善されました。今村さんが当初感じていた社内外のシナジー効果や効率化も、Slack 導入によって促進されたといえそうです。
「80 % のメッセージが Slack のパブリックチャンネルで交わされています。導入後の調査結果を見てもコミュニケーションのサイロ化は解消され、オープンかつ密接に情報をやりとりする文化が作られていると実感しています」
Slack で社内外のつながりを強化し、さらなる成長を目指す
クローズドなコミュニケーションによる人や情報の分断を解消し、オープンな組織へと変革を遂げたBuySell Technologies。一連の Slack 導入プロセスを通して、新しいカルチャーを定着させるためには、段階に応じた運用で着実に浸透させること、そして『言い続ける・やり続ける』ことが効果的だと実証しました。Slack へのスムーズな移行によって、社内外のつながりも強化され、コラボレーションの活性化を実現した同社は、次の成長へ向けたさらなる Slack 活用を目指しています。
今村さんは今後について「Slack の社内への浸透は進みましたが、まだまだ活用の余地があります。さらに生産性を高められるよう、自動化など、業務効率化という観点でも Slack を最大限に活用していきたいです」と展望を述べました。
「人を超え、時を超え、たいせつなものをつなぐ架け橋となる」という同社のミッションを実現していくために、Slack によるオープンコミュニケーションもその成長とともに新しいフェーズへと進化を遂げていきそうです。