中小企業がグローバル経済を支える背骨であるとしたら、Xero はその調子を整えるカイロプラクターのような存在です。企業の財務状況を整理し、顧客や金融機関との円滑なやり取りを実現します。世界中の中小企業とアドバイザーが、Xero の使いやすいクラウドベースの会計ソフトを利用しています。
Xero は、Amazon の出品者から非営利団体、カフェ、スタートアップ企業に至るまで、あらゆる業種の中小企業に対し、世界 180 か国以上でサービスを展開しています。ICT ベンダーを評価する IDC MarketScape は、Worldwide SaaS and Cloud-Enabled Small Business Finance and Accounting Applications 2020 Vendor Assessment(SaaS およびクラウド対応中小企業向け財務会計アプリケーション 2020 ベンダー評価)で、Xero をリーダーに位置づけました。
ニュージーランドのウェリントンに本拠地を構える Xero の従業員は 3,000 人を超え、同社の顧客基盤と同様グローバルに広がっており、オーストラリア、カナダ、香港、シンガポール、英国、米国、南アフリカといった世界各地の支店で勤務しています。2017 年後半まで、Xero の各チームはYammer、Flowdock、Google ハングアウト、Skype など、さまざまなメッセージングツールを利用していました。ただ、こうした状況ではチームの枠を超えたコラボレーションを可能にする基盤が形成されず、収集された情報が縦割り構造の中に分散する結果となっていました。IT 部門の社内アプリケーションスペシャリスト、Grant Foster 氏は、「これまでは、どの事業部門でも使える包括的なコミュニケーションツールに出会えなかったのです」と述べています。「古くて使うのが面倒だけれども、必要に迫られて仕方なくツールを使っているというような状況でしたね」。
コラボレーションと会話のための一元化されたプラットフォームが必要だと考えた Xero の IT チームは、Slack をまず製品チームで導入してみることにしました。それからわずか 3 か月後には、Slack が Xero 社全体に導入され、社内の部署間コミュニケーションツールとしての地位が確立されました。
「これまでは、どの事業部門でも使える包括的なコミュニケーションツールに出会えなかったのです」
社内の障壁を打ち破り、顧客の問題解決をスピードアップ
中小企業の財務に関しては、数分を争うような事態も珍しくありません。Xero のカスタマーエクスペリエンス(CX)チームには、顧客からのあらゆる質問に対応できるよう訓練を受けた、多彩な分野のスペシャリストがそろっています。このチームはこれまで、ガイダンスやドキュメンテーションを主にメールで共有していました。Lead Workflow Coordinator を務める Matt Simpson 氏によれば、メールが行方不明になることもあったようです。「メールはあちらこちらに散逸してしまっていました」。
現在、CX チームはスペシャリストグループ別に 30 ~ 40 件の Slack チャンネル(チームがメッセージ、ファイル、ツールを共有できるデジタルスペース)を活用するようになり、顧客サポートのフローも効率化され、スムーズになりました。顧客対応中にアドバイスが必要になると、エージェントは専用チャンネルで @coreseniors とメンションします。すると、オンライン状態のベテランメンバー全員に通知が届きます。通知を受けると、対応できるメンバーはまず絵文字リアクションを使って自分が対応中であることを示し、それから問題解決のためのスレッドを開始します。「これで、エージェントは次の顧客の対応に移ることができます」と Simpson 氏は言います。「その結果、お客様への返答に要する時間が短縮されます。これは本当に大きな成果ですね」。
Lead Workflow Coordinator である Simpson 氏の業務には、CX チームがサービスレベル契約で定められた応答時間を確実に守れるようにすることも含まれます。多くの場合そのために必要なのは、実際に顧客に対応するエージェントと、問題解決に必要な専門知識を提供するスペシャリストとの間を取り持つことです。Slack 導入以前には、ここが深刻なボトルネックとなることがありました。Simpson 氏の不在時には指揮系統が不明確になることがあり、使いにくい Yammer グループチャットに質問が積み上がってしまうこともありました。
Slack の活用でこの状況が変わり、Simpson 氏は社内のどんな質問や問題も漏れなく拾い上げて対応できるようになりました。その立役者の 1 つが、カスタムボット Kevbot です。まず、現在のワークフローコーディネーターが誰かを、ダイレクトメッセージで Kevbot に尋ねます。 すると Kevbot がワークフロ ーコーディネーターを指示してくれるので、ユーザーが時間のかかる検索にいらだつこともありません。また、このボットはキーワードを認識して担当者を適切なスペシャリストにつなげる役割も果たします。
Kevbot のおかげで Simpson 氏は落ち着いて仕事に取り組むことができ、不在の時でもワークフローが着実に実行されるようになっています。「見逃している質問がないか、3 時間も 4 時間もチャットを遡って探し出す必要はもうなくなりました」と同氏は言っています。
「オンラインでいつでもメンバーに質問ができ、適切なタイミングで適切な人に連絡がとれるので、業務を進めていくうえでも安心感がありますね」
カスタムツールで社内のインシデントを迅速に解決
2019 年 1 月後半の多忙なある日、世界中の Xero オフィスのプリンターがダウンしました。でもこの時は過去のインシデント発生時と違い、大あわてで対応リソースを招集する必要はありませんでした。代わりに IT チームは Slack のカスタムツール、Multivac を立ち上げました。
Multivac は、PagerDuty インテグレーションと Xero のインシデント管理ワークフローの双方を管理しています。インシデントが発生すると、Multivac はチャンネルを新規作成し、適切なメンバーをチャンネルに集め、Jira 経由でインシデント担当責任者を割り当てます。その後、CX のリーダーも参加し、問題のトリアージが始まります。このツールのおかげで、インシデント管理チームはユーザーをパニックに陥らせることなく、それほど時間をかけずにタスクを完了できます。「以前の Xero にはなかったツールですね」と Foster 氏は述べています。
定型的な IT 関連のリクエストを管理するため、Foster 氏は Slack と Zendesk を統合しました。従業員が #hello-it
チャンネルで支援を求めたものの、チームがスレッドですぐに回答できない場合には、リクエスト送信者が Slack から直接 Zendesk のチケットを作成できます。アプリケーション間でコンテキストを切り替える必要がなくなり、ワークフローを中断する必要も減ります。
一方で、ちょっとしたリクエストに対しては、簡単な絵文字リアクションで対応状況を示します。毎回新規メッセージで返信するのではなく、目(👀)の絵文字で IT チームが内容確認中であることを知らせ、レンチ(🔧)で問題に対応中であること、さらにチェックマーク(✅)で解決済みであることを知らせるという仕組みです。
Slack チャンネルでジョイントキャンペーン参加企業と連携
南半球で最大の農業イベント Fieldays には、毎年、ニュージーランドの農業およびテクノロジー分野の専門家たちが集まります。Fieldays の勢いを活用するため、Xero では Xero for farming(農業向け Xero)の幅広いマーケティング戦略の一環として、農業系テックアプリプロバイダーの PaySauce および Figured とパートナーシップを締結しました。3 社は協力して農業法人向けにエンドツーエンドの財務管理ソリューションを提供しています。
キャンペーンの実施を調整するため、Xero の New Zealand Events Manager である Caitlin Powell 氏と Xero の New Zealand Partner Marketing Manager である Justine Wallendorf 氏が活用したのが、Slack チャンネルです。「Slack の導入前は、グループ全体にメールを送信するか、各社の担当者に個別に電話をする必要がありました。全員に集まってもらうこともありました」と Wallendorf 氏は言います。こうした方法は時間がかかり、出張費もかさみます。この状況を変えたのが Slack です。「チャンネルを使えば、必要な時にメッセージを確認するだけで済みます」と同氏は述べています。
複数のパートナーとキャンペーンを実施する際に問題となるのは、どのようにしてすべての関係者の意識をそろえるのかという点です。Slack では参加者全員が同じデジタルスペースに集まるので、全員が同じ認識を共有でき、意思決定がスピードアップします。
一例として、Xero、PaySauce、Figured のマーケティングチームと営業チームは、共有されたチャンネルで連携しながら、キャンペーンアセットを作成し、プロジェクト管理を進め、成果物の承認を実施しました。チームが協力して営業用の情報シートを作成すると、その下書きがチャンネルで共有され、確認されました。各社のマーケティングと営業のリーダーがチャンネルに参加してアセットを手早く確認し承認できるため、承認のための時間のかかるやり取りから関係者全員が解放されました。
「Xero for farming ジョイントマーケティングキャンペーンは、概念実証の役割を果たしました」と Wallendorf 氏は言います。「Xero には、Xero と統合できる 800 を超えるアプリのエコシステムがあります。ですから、ほかのアプリパートナーとの間でもこのように Slack チャンネルで連携して仕事を進める大きな機会があります」。
Xero では、Slack を導入したおかげで、社内のインシデント管理やジョイントマーケティングキャン ペーンの立ち上げなど、定型的なプロセスの自動化、チーム間の透明性の向上、問題解決時間の短縮を実現できました。チャンネルベースのメッセージプラットフォームである Slack を導入したことで、組織内外でのコミュニケーションの仕組みが一変し、230 万人に及ぶ Xero の契約者によりよいカスタマーエクスペリエンスを提供する基盤ができました。