勤怠管理の課題や解決策とは?多様な働き方のマネジメント方法を解説
変革

勤怠管理とは?目的や重要性、テレワークにおける管理のポイント

勤怠管理では、企業の労務管理を正しく行うことが大切です。勤怠管理の意義やテレワークなどの多様な働き方にマッチした勤怠管理の方法について解説します。

Slack チーム一同作成2022年12月7日

働き方改革の推進やリモートワーク(テレワーク)の普及で注目が高まっている勤怠管理。どのような業界のどのような規模の企業であれ、従業員の労働時間は給与計算などの基礎情報であり、正確に把握し管理する必要があるものです。しかし、その適切な管理方法は、時代とともに変わりつつあります。

ここでは、勤怠管理の目的や管理する具体的な項目のほか、テレワークなどの多様な働き方に合わせた勤怠管理の方法について解説していきます。

勤怠管理とは?

勤怠管理とは、企業や事業所(使用者)が従業員(労働者)の勤務状況を適切に把握し、管理することを指す言葉です。勤怠には、「出勤と欠勤」という意味があります。

具体的には、従業員の始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働時間、有給休暇の取得状況などの勤怠情報を把握し、法令や就業規則に則った働き方ができているかどうかをチェックすることです。

勤怠管理が注目されている背景

近年、勤怠管理が重要視されている背景には、政府が推進する働き方改革への対応があります。働き方改革関連法では、労働基準法や労働安全衛生法などが見直され、特に時間外労働の削減が進められています。

さらに、テレワークの普及に伴って、在宅勤務で就労する従業員の勤怠情報を正しく把握する必要性も生まれています。

勤怠管理の目的

勤怠管理の目的には、主に下記の 3 つがあります。これらの目的をクリアし、コンプライアンス遵守を実現することは、企業が社会的責任を果たす意味でも重要です。

  • 従業員の労働時間の把握

労働時間を正しく把握し、労務管理をします。また、年次有給休暇と振替休暇の付与や、取得状況なども正確に管理します。

  • 正確な賃金の計算

勤怠情報をもとに正しく賃金を計算し、従業員に支払います。

  • 従業員の健康管理

従業員の健康管理は、超過勤務の早期発見や防止とリンクしています。メンタルヘルスの不調などを防ぐことも含まれます。

勤怠管理はなぜ必要?

従業員の勤怠管理を行うことは、企業の責任であり義務です。労働基準法により、企業は従業員の労働時間を適切に管理する責務を有しています。

労働基準法には、「使用者は、各事業場に賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省命令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない」という規定があります。ここで出てくる「賃金台帳」は、労働者の最後の賃金について記入した日から、 3 年間保存しなければなりません。

労働基準法では、使用者が労働者を雇用したら、「労働者名簿」「出勤簿等」などの法定帳簿を作成し、保存することも義務付けています。

賃金台帳、労働者名簿、出勤簿の 3 つの帳簿は、「法定三帳簿」と呼ばれ、従業員の労務管理を適切に行うために必要な書類です。

なお、労務管理とは、労働基準法の規則に則って従業員の働く環境を整えることを指します。勤怠管理は労務管理の一環として、従業員の勤務状況を管理することです。

勤怠管理の対象や管理すべき項目とは?

勤怠管理は、一般的に労務を担当する部署が行います。労務部や労務課を設けている企業もあれば、人事部が担当している場合もあるでしょう。企業規模が小さければ、総務部で担当することもあります。

ここでは、勤怠管理を行う企業に関する条件や、勤怠管理を行う対象となる従業員の区分や項目について、具体的に押さえておきましょう。

勤怠管理を行うべき企業

厚生労働省が策定している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」というガイドラインがあります。同ガイドラインによると、労働時間把握の対象となる事業場は、「労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第 4 章)が適用される全ての事業場」です。

これは、農林水産業などの一部(労働基準法第 41 条によって労働時間の規定が適用されない事業場)を除いた、すべての企業が対象であることを示しています。従業員数の多い少ない、企業規模の大小などは関係ありません。

勤怠管理の対象は、原則すべての従業員

対象となる従業員については、同ガイドラインに「いわゆる管理・監督者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者」と記されています。

これも、原則としてすべての労働者が対象ということです。正社員、契約社員、アルバイト・パートなどの雇用形態は関係ありません。

なお、除外されている管理・監督者とは、一般的に部長、工場長など労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者を示しています。

また、みなし労働時間制とは、実労働時間の把握が難しい業務に適用される労働時間制度です。労働時間制度には、「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」があり、これらに該当する場合は、実際に働いた時間とは関係なく、所定労働時間や当該業務を行うために通常要する時間働いたものとみなして賃金が支払われます。

管理するのは労働時間と休憩時間

勤怠管理で管理するのは、大きく分けると従業員の労働時間と休憩時間の 2 つです。労働時間や休憩、休日については、労働基準法によって規定されています。

  • 労働時間

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと。使用者は原則として、 1 日に 8 時間、 1 週間に 40 時間を超えて労働者を労働させることはできません。これを、「法定労働時間」と呼びます。

  • 休憩時間

休憩時間とは、労働者が休息のために労働から完全に解放されることを保障されている時間です。使用者は、労働時間が 6 時間を超える場合は 45 分以上、 8 時間を超える場合は 1 時間以上の休憩を与えなければいけません。

休憩時間中は、労働時間のような使用者の指揮命令下にあってはならないというルールもあります。また、企業は休日を必ず 1 週に 1 日(もしくは 4 週間に 4 日以上)与えることとしています。これを、「法定休日」と呼びます。

管理すべき勤怠に関する項目

ほとんどすべての企業に、従業員の勤怠管理を行う義務があります。では、具体的に勤怠管理は、どのような項目を管理すればいいのでしょうか。主な項目について詳しく紹介します。

始業・終業時刻

労働時間を適正に管理するために、まず従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認して記録します。これは、使用者の責務とされています。始業時刻と終業時刻は、 1 分単位で記録・管理しなければなりません。

労働時間

労働時間は、単に 1 日何時間働いたかを確認するだけではなく、始業時刻と終業時刻の記録をもとに算出します。

また、前述したように、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間です。実際に作業に従事していなくても、例えば制服に着替えている時間や研修に参加している時間も労働時間に含まれます。

休憩時間

休憩時間は、労働基準法で次のように規定されています。

  • 1 日の労働時間が 6 時間を超えて 8 時間以下の場合は、少なくとも 45 分の休憩が必要
  • 1 日の労働時間が 8 時間を超える場合は、少なくとも 1 時間の休憩が必要

たとえ作業をしていなくても、必要であればすぐに作業に取りかかれる状態で待機している時間は「手待ち時間」と呼ばれます。例えば、販売員が客のいない時間に待機する時間などは手待ち時間にあたり、労働として算出するべき時間です。

時間外労働時間

時間外労働時間とは、「 1 日 8 時間、週 40 時間」の法定労働時間を超えて労働した場合の時間のことです。いわゆる、残業時間を意味しています。

時間外労働に対しては、通常賃金の 25 %以上の割増率での賃金支払が義務付けられています。例えば、通常 1 時間あたり 1,000 円で働いている労働者には、時間外労働 1 時間につき 1,250 円以上を支払う必要があります。

深夜労働時間

通常、深夜労働時間とは、 22 ~ 5 時の深夜時間に労働した場合の時間のことです。深夜労働に対しては、 25 %以上の割増率での賃金支払が義務付けられています。

なお、深夜労働が時間外労働であった場合(時間外労働が深夜時間に及んだ場合)には、割増率は 50 %以上となります。

休日労働時間

休日労働時間とは、 1 週間に 1 日(もしくは 4 週間の間に 4 日以上)与えるべきとされている法定休日に労働した場合の時間のことです。

休日労働に対しては、 35 %以上の割増率での賃金支払が義務付けられています。

年次有給休暇取得日数・残日数

年次有給休暇とは、使用者が 6 ヵ月以上継続勤務した労働者に対し与える有給休暇のことで、労働基準法により義務付けられています。継続勤務期間ごとに最低限の付与される日数は、下記のとおりです。

  • 一般の労働者に与えられる年次有給休暇
一般の労働者に与えられる年次有給休暇

 

  • 所定労働日数が少ない労働者に与えられる年次有給休暇

※週所定労働日数が 4 日以下かつ、週所定労働時間 30 時間未満の労働者
※週以外の期間によって所定労働日数が定められている場合は、 1 年間の所定労働日数が 216 日以下の労働者

 

有給休暇の取得の時期は、基準日(休暇を付与した日)から 1 年以内と規定されています。

また、従業員ごとに何日間の有給休暇をいつ付与し、いつ取得したかについての記録を管理帳簿に記載することも義務付けられています。

遅刻や早退の回数と時間

遅刻や早退の回数と時間も記録して管理します。遅刻や早退が多いようなら、その従業員に対し注意や指導をするなどの対応が必要です。これらを怠って放置していると、始業時刻や終了時刻を守っている従業員に対して、不公平感が生じます。社内の規律を保つためにも、勤怠不良の背景を把握するなど、適切な対応を行いましょう。

また、給与の算出においても不都合が生じる場合もあります。あらかじめ遅刻や早退の定義を定め、賃金控除をする旨を就業規則等に明記し全社員に周知するなど、抑止のための対策を検討してください。

欠勤日数

休日や休暇以外に、体調不良などで欠勤した日数も記録・管理します。従業員が遅刻、早退、欠勤をした際に、労働がなかった時間分の賃金を給与から差し引くことを、「勤怠控除」と呼びます。

月給制であっても、 1 ヵ月に定められた勤務時間を満たさなかった場合は、「ノーワーク・ノーペイの原則」にもとづき、働かなった時間分の賃金は実情を踏まえて減算します。

勤怠管理にはどのような方法がある?

勤怠管理をどのような方法で行うか、どのようなツールを使うかは企業の判断に任されています。ここでは、勤怠管理の 3 つの方法について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを紹介していきましょう。

紙の出勤簿

紙の出勤簿(出勤管理表)を使うのは、最もアナログな勤怠管理方法といえます。出勤簿とは、カレンダー仕様の紙のフォーマットに、始業・終了時刻、労働時間、休憩時間、時間外労働時間などの勤怠情報を書き込むというもの。この出勤簿を用いた勤怠管理では、従業員が手書きで書き込んで自己申告するというスタイルが多いようです。

紙の出勤簿を使うメリットは、記入が簡単でコストもかからず、 1 枚のシートですべてまとめて管理できることなどが挙げられます。

ただ、従業員本人による手書きの自己申告方式では、客観的かつ正確な労働時間の把握は難しくなる場合があります。簡単にいえば、不正申告による労働時間の過剰申告が生じるおそれがあるのです。

前出の厚生労働省のガイドラインには、自己申告制を導入する際は「実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること」と記されています。自己申告制は企業の事情などによりやむをえない場合には認められますが、その場合は勤怠情報が正しいことの裏付けが必要ということです。

テレワークでは、メールで勤務開始などを報告する方法、 Excel などに従業員が出退勤時刻を入力する手法を採用している企業もあります。しかし、これらも自己申告制であることに変わりありません。客観的な記録とはいえない点に注意が必要です。

紙のタイムカード

タイムカードは、タイムレコーダーに紙の打刻シートを差し入れて、始業時刻や終業時刻を記録するものです。これまで、多くの企業で導入・運用されてきた実績があり、現在もさまざまな現場で使用されています。従業員にとっては、特にわずらわしい手間もなく、企業側も比較的導入コストが低いというメリットがあります。

一方、タイムカードには打刻漏れや不正打刻などの問題もあり、完璧とはいえません。また、給与計算をするときに集計作業を行いますが、手作業での転記を伴うのでミスが起きる可能性もあります。直行直帰や出張など、出社を伴わない労務では、リアルタイムに打刻できないこともデメリットのひとつです。

勤怠管理において、タイムカードは通常、概ね客観的な記録と認められています。しかし、より正確な勤怠管理の必要性が高まっている現在、必ずしもベストな方法ではないかもしれません。タイムカードは事実上、時代遅れなものとなりつつあります。

勤怠管理システム

紙のタイムカードに代わって現在主流になっているのが、勤怠管理システムを用いた勤怠管理です。

勤怠管理システムとは、従業員がパソコン、スマートフォン、タイムレコーダーなどを使って始業・終業時間などを打刻し、打刻時に IC カードや生体認証、 GPS などを使うことで客観的かつリアルタイムな記録を残せるシステムのこと。

集計・分析機能を備えている場合も多く、コンプライアンス遵守の条件を満たした労働時間の把握や管理が可能になるのはメリットといえるでしょう。

デメリットはほかの方式に比べ、導入や運用にコストがかかったり、従業員に新たな操作を覚えてもらったりすることです。しかし、労働時間を最も正確に把握し管理できる方法であることは間違いなく、最も現代にマッチした方法と認識されています。

テレワークにおける勤怠管理のポイント

勤怠管理システムは、テレワークとの親和性が高いことも特徴です。パソコンやスマートフォンで打刻ができるので在宅勤務でも勤怠管理がしやすく、不正や記入ミスの抑止にも有効です。従業員全員の出退勤を自動的に集計してくれるため、労務管理担当者の集計やチェックにかかる手間も低減できます。

しかし、出退勤の状況のみを把握しても、テレワークではそれぞれの従業員の就業状況まではわかりません。そのため、勤怠管理システムでの始業・終業時刻の把握に加えて、ビジネスチャットやウェブ会議などを用いてコミュニケーションをとるようにすれば、従業員が就業している様子をリアルタイムに、より詳しく知ることができます。

就業状況を把握しながら、メンバー同士の連携もスムーズになり、業務効率化やチームワークの強化などにつながります。

法令遵守や従業員の多様な働き方を支援するうえでも適切な勤怠管理は重要

勤怠管理は、企業が従業員の労働時間と休憩時間を把握し、管理するのが基本です。勤怠管理と聞くと、従業員がサボらずに仕事をしているかどうかを監視するといったイメージを持つこともありますが、決してそうではありません。

働き方改革の見地からすれば、勤怠管理は従業員が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を選択できる環境を整える仕組みのひとつです。法令を遵守し、時代に即した勤怠管理ができるよう、システムの導入なども候補に入れ、勤怠管理の方法を検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

勤怠管理の対象は、原則としてすべての従業員です。正社員、契約社員、アルバイト・パートなどの雇用形態は関係ありません。管理すべき項目は、大きく分けると従業員の労働時間と休憩時間の 2 つです。労働時間や休憩、休日については、労働基準法によって規定されています。勤怠に関する項目は、始業・終業時刻、労働時間、休憩時間、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間、年次有給休暇取得日数・残日数、遅刻や早退の回数と時間、欠勤日数など多岐に渡ります。
テレワークでは、勤怠管理システムを用いるのが有効です。パソコンやスマートフォンで打刻ができるので在宅勤務でも勤怠管理がしやすく、不正や記入ミスも防げます。従業員全員の出退勤を自動的に集計してくれるため、労務管理担当者の集計やチェックにかかる業務工数の低減が可能です。勤怠管理システムでの始業・終業時刻の把握に加えて、ビジネスチャットなどを用いてコミュニケーションをとるようにすれば、従業員が就業している様子を詳しく知ることができます。就業状況を把握しながら、メンバー同士の連携もスムーズになり、業務効率化やチームワークの強化などにもつながるでしょう。

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うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。

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