2019 年から 2020 年にかけて、働き方が大きく変わりました。2019 年 4 月には「働き方改革関連法」が制定され、同年夏には 2 回目の「テレワーク・デイズ」キャンペーンも実施。この時にまだ「働き方改革」に馴染みがなかった人でも、2020 年の緊急事態宣言を受けて多くの企業がテレワークに移行したことで、働き方の変化を感じたのではないでしょうか。
ただ、「多様な働き方」とはテレワークだけで実現できるものではありません。そもそもテレワークとはあくまで手段の 1 つ。「働き方」とは企業に決めてもらうものではなく、自分が決めて選択していくという意識を従業員が持たなければ、1 人 1 人の働き方を本当の意味で働き方改革をすることは難しいでしょう。
そこで提案したいのは、企業として従業員の考えを知るためのアンケートです。各自にとって一番いい働き方とはどういうものかを調査することで、従業員自身が自分にとって一番いい働き方とは何かを考えるきっかけになりますし、企業は従業員の考え方を把握することができます。そうして初めて、企業は働き方改革を実現するための手段を用意できるようになり、従業員はそこから選択することができるようになると言えます。
この記事では、その調査を通して従業員自身に考えてもらいたい 3 つのポイントと、それを受けて考えられる制度やツールについてご紹介したいと思います。
働き方改革のために会社が知っておくべき 3 点
1. 従業員にとって「働く」とは?
働き方改革を考えるうえでまず明らかにしたいのが、自社の従業員が「働くこと」に対してどのような価値観を持っているのかということ。ここで押さえたいのは以下の 3 点です。
- 自分にとって仕事とは何か
- なぜその企業で働くのか
- 1 週間のうち仕事に費やしてもいい時間はどのくらいか
価値観が多様化している今、全員が仕事に対して同じように捉えていることはありえません。「宝くじに当たったらもう仕事はしたくない」という人もいるでしょうし、「仕事は自分が生きる意義」だという人もいるでしょう。
また、同じ企業に勤めているとはいえ、その企業を選んだ理由も「お金のため」「社会的承認欲求を満たすため」「人生をかけて成し遂げたいことができるため」など、さまざまでしょう。ここで気をつけたいのは正直な答えを引き出すこと。そのためには匿名で実施するほうが良いかもしれません。
さらに、「仕事に費やしたい時間」についても、「今のルールに関係なく自由にできるなら」という前提で聞いてみましょう。「仕事の事情は最優先されるべき」という考えは、これまで当たり前のように定着してきましたが、本来そんなルールはありません。家族との時間、趣味の時間、勉強する時間、1 人でリラックスする時間、睡眠時間など、人生にはいくつもの大切な時間があります。改めて、従業員の人生における仕事の位置づけを考えてもらい、その考えを共有してもらいましょう。
2. 働く時間をどういう風に配分したいのか?
次に把握したいのが、従業員が「働く時間をどのように配分したいと思っているか」についてです。例えば「別居婚で毎週末家族に会うための移動時間が必要」という人には週 4 日勤務がちょうどいいかもしれませんし、仕事をしながら学校に通いたい場合は週 5 日時短勤務するのがいいかもしれません。子供を保育園に迎えに行って寝かしつけたあとに仕事をしたい場合など、夕方までオフィスで働き、その後夜に自宅で働きたいという人もいるでしょう。また、朝に頭が冴える人もいれば夜に集中できる人もいます。
時間を制約する事情がない従業員に考えてもらいたいのは、「ワークとライフを切り替えたい派」なのか、それともワークライフインテグレーション派、つまりワークをライフの一部と捉えて生活の合間に仕事をし、仕事の合間にも生活をしたいのかという点です。わかりやすく言うと、前者は「退社後は一切仕事をせず、仕事とは関係のない時間を過ごしたい」という考え方、後者は「仕事の合間にジムに行ったり、リラックスしたりするし、プライベートの時間でも仕事をすることは厭わない」という考え方です。働き方改革のためには既存の制度に囚われず、自分が本当に成果を出せる形態が何なのか、改めて個人が考えることが大切です。
3. 自分に合った休み方とは?
働き方とセットで考えたいのが「休み方」。スマホの普及でいつでもどこでも「つながる」状態になっている今、1 人 1 人が自分にとってベストの休み方を考えて実践できるようにする環境を整えることが大切です。
例えば、休暇には仕事のことを一瞬も考えたくない「つながらない派」もいれば、仕事をしながらでも頻繁に旅行をしたいという「ワーケーション派」もいるでしょう。各自が理想の休み方を考えてこそ、充実した働き方が実現するのです。
働き方改革を実現する手段とは?
従業員 1 人ひとりが自分にとって理想の「働き方」を考え、それを企業に共有することで、企業は働き方改革を実現するための選択肢を考えられるようになります。その選択肢とは、主に時間と場所に関するものが中心になるでしょう。ここでその例を挙げてみます。
時間に関する選択肢の例
- 時短勤務の対象者を広げる
- 週休 3 日以上を認める
- 1 日の業務時間を分割することを認める
- ワーケーション中など短期間の時短勤務を認める
場所に関する選択肢の例
- 場所の制限なくテレワークができるようにする
- コワーキングスペースなどとサテライトオフィスを契約する
- すべての会議にリモートで参加できるようにする など
また、どれを選んでもスムーズに実践できるようにするためにはツールの見直しも欠かせません。ポイントは、デバイスや場所を問わずに使えるものを揃えること。次のようなツールをはじめ、必要ツールを洗い出してみましょう。
- コミュニケーションツール
- オンライン会議ツール
- ファイル管理ツール
- プロジェクトマネジメントツール
ツールが決まったら、その使い方についても決めていく必要があります。特に見逃されがちだけど大切なのが、邪魔されたくない時間をお互い把握できるようにしておくこと。お互いの働き方・休み方を尊重して働くためにはぜひ押さえておきたいポイントです。
生き方の多様化に合わせ、働き方自体も大きく多様化しています。従業員が自分にとってベストな生き方・働き方を明確にすること、そして会社はそれに応えてなるべく多くの選択肢を用意しておくことが、本当の働き方改革のスタートだと言えるでしょう。