テレワーク(リモートワーク)という言葉が、コロナ禍を経て急速に広まりました。テレワークを取り入れたいと考えているものの、業務の生産性低下を懸念している事業者さまは多いのではないでしょうか。
今回は、テレワーク環境下で課題になりがちな生産性の低下について、具体的な原因と解決策をわかりやすく解説します。テレワークに課題を感じている事業者さまや、テレワークを導入予定の事業者さまはぜひ参考にしてください。
テレワークで生産性は下がる?
結論からお伝えすると、テレワークへ移行することによって必ずしも生産性が下がるとは限りません。テレワークの長所を引き出すことができれば、むしろ生産性の向上につながる場合もあるのです。
生産性の低下を回避するには、テレワークの特性を理解したうえで適切な対策を講じておく必要があります。
テレワークの概要と種類
テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用することで、場所を問わず柔軟に働くワークスタイルのことです。Tele(離れて)とWork(仕事)が組み合わされた造語で、オフィス以外でオフィスと同様の働き方を実現することを指します。
コロナ禍に多くの企業が導入した在宅勤務は、テレワークの一種です。在宅勤務以外にも、出張先のホテルやカフェで仕事を進めたり、コワーキングスペースやシェアオフィスを活用して業務に取り組んだりする働き方もテレワークに含まれます。テレワークは大きく分けて、下記の 3 つの種類があります。
企業におけるテレワークの現状
総務省の「令和 3 年通信利用動向調査の結果(概要)」によると、日本国内の企業のうち、テレワークを導入している企業は全体の 51.9% です。また、総務省の「平成 30 年版 情報通信白書」によると、生産性の向上を図るためにテレワークを導入した企業のうち、生産性向上に「非常に効果があった」と回答した企業は全体の 28.5%、「ある程度効果があった」と回答した企業は 53.6% と、およそ 8 割の企業が効果を実感しています。
一方、日経BP総合研究所イノベーション ICT ラボ「働き方改革に関する動向・意識調査」の結果によると、テレワークへの移行によって生産性が下がったと感じている人の割合は、2020 年 4 月時点では 62.9% に達していたのに対し、2022 年 10 月時点では 35.5% に減少していたことから、テレワーク環境下における生産性低下の課題は改善傾向であると言えるでしょう。
※総務省「令和 3 年通信利用動向調査の結果(概要)」
※総務省「平成 30 年版 情報通信白書」
※日経 BP 総合研究所イノベーションICTラボ「働き方改革に関する動向・意識調査」
テレワークの利用率が高い業務
日常的にパソコンやスマートフォンといったデジタル機器を扱う機会が多いオフィスワークは、テレワークとの親和性が高いのが特徴です。ですが、テレワークはあらゆる業務内容に適しているとは限りません。国土交通省が公表した資料によれば、テレワーク利用率の高い業務は、研究職、営業職、管理職、専門・技術職となっています。
反対に、サービス業のように直接人と接することに意義のある業務や、現地で大型機械類を操作する必要がある業務などでは、テレワーク利用率が低いという結果です。
※国土交通省「令和 4 年度 テレワーク人口実態調査(概要)」
テレワークの生産性に関わる課題
テレワークへ移行することで、生産性が向上することもあれば、低下することもあります。このような差が生じるのは、テレワーク環境には生産性の低下につながりかねない課題が潜んでいるからです。
テレワークの生産性に影響を及ぼしやすい課題は、下記の 7 つになります。
コミュニケーションが困難
テレワークの生産性に大きな影響を与えやすいのが、コミュニケーションの難しさです。オフィスであれば気軽に周囲の従業員と言葉を交わしたり、上司への報告・連絡・相談を行ったりしていた方も、テレワーク環境下ではコミュニケーションがとりづらいと感じるようになるケースは少なくありません。
業務管理が難しい
業務管理の難しさは、テレワークの生産性を低下させる要因のひとつです。テレワーク環境下ではお互いが離れた場所で就業するため、各自が現状どのような業務に取り組んでいるのか、担当業務がどの程度進んでいるのかを視覚的に確認できません。業務の進捗管理が難しく、不便に感じるケースも多いと考えられます。
業務に集中できない
テレワークのなかでも在宅勤務の場合、仕事とプライベートを明確に切り分けられないことが想定されます。慣れ親しんだ生活空間で仕事を進めることになるため、業務に集中できないケースも少なくありません。特に子供やペットがいる場合は、仕事時間であることを理解してもらうのが難しい場合もあります。
評価制度がテレワーク用ではない
評価制度がオフィスに出社することを前提に設計されている場合、テレワーク環境下でのパフォーマンスを適切に評価できない可能性があります。
上司が部下の様子を直接確認できないため、業務のプロセスに対する評価が抜け落ちてしまいがちです。そうなると従業員は「成果さえ出せば良い」と考え、プロセスの振り返りや検証がおろそかになり、生産性の低下を招く原因になります。
設備や環境の問題
設備や環境の問題が、生産性を低下させる原因になることがあります。オフィスでの就業環境と比べると、テレワークでは設備や環境が不十分な可能性があります。
例えば、インターネットの回線速度がオフィスよりも遅いといったケースです。
長時間労働の増加
仕事とプライベートの境界が曖昧になることで、労働時間の増加につながる要因にもなります。自宅にいながら業務が完遂してしまうため、延々と仕事をし続けてしまう可能性も否定できません。
結果としてメリハリのない働き方になってしまい、全体として生産性が低下するおそれがあります。
モチベーションの低下
テレワーク環境下では、基本的に 1 人で業務を進めることになるため、チームの一体感を感じたり、同僚から刺激を受けたりする機会が不足しがちです。自分自身がチームや部門に貢献できているのか、上長は仕事ぶりを評価してくれているのかを実感しにくくなり、モチベーションの低下を招きかねません。モチベーションが低下すれば業務効率が低下し、結果として生産性も下がっていく可能性が高くなります。
テレワークで生産性を上げるには?
テレワークで生産性を上げるには、具体的にどのような対策を講じる必要があるのでしょうか。取り組んでおくべき 8 つの対策をご紹介しましょう。
コミュニケーションの向上
テレワークで生産性を上げるには、コミュニケーションの向上を図るための対策を講じ、さまざまな連絡方法や情報共有の手段を用意しておくことが重要です。チャットやビデオ会議をいつでも利用できるようにするほか、データの受け渡しをスムーズに行える仕組みを整えておく必要があります。
労務管理や評価制度の見直し
労務管理や評価制度をテレワークに対応したものへと見直していくことも、テレワークで生産性を上げるためには大切です。出退勤の報告方法のほか、休憩時間の扱いや在宅勤務で発生しやすい「中抜け」の扱いなどを決めておく必要があります。
また、長時間労働を防ぐには働いた時間や成果物のみで評価するのではなく、途中のプロセスを評価できる仕組みを整えることが大切です。
例えば、プロジェクト管理ツールやタスク管理ツールを活用し、各従業員がどのような業務に取り組んでいるか、進捗状況はどうなっているのかを随時確認できる仕組みを構築することをおすすめします。
集中力の維持
テレワークで生産性を上げるために、集中力を維持しやすいよう、工夫を凝らすのも重要なポイントです。定期的に立ち上がって体を動かすことを推奨したり、ごく短時間でもお互いの進捗確認のためのビデオ通話や音声通話の機会を設けたりすることで、メリハリのある働き方を実践しやすくなります。
ペーパーレス化の推進
ペーパーレス化を推進することで、テレワークでの生産性が上がります。テレワークの環境下で紙の書類を扱うことは、生産性低下を招く直接的な原因になりかねません。紙での保存が法律で義務付けられている書類を除き、大半の書類はペーパーレス化しましょう。
サテライトオフィスの導入
在宅勤務だけでなく、サテライトオフィスでのテレワークも視野に入れて検討しておくのも、生産性を上げるにはおすすめの対策です。従業員によっては、自宅では集中できないという方もいることが想定されます。自宅から通える範囲にサテライトオフィスがあれば、自宅とは異なる仕事専用の空間で業務に取り組めるでしょう。仕事とプライベートの切り分けがしやすくなることも、サテライトオフィスを取り入れるメリットと言えます。
1 on 1 の実施
ビデオ会議ツールを活用した 1 on 1 の実施も、テレワークの生産性向上に寄与します。直接的に業務と関わるやりとりだけでなく、従業員の状況や困っていることを気軽に話せる機会を設けることは、各自の不安を解消するうえで有効です。また、1 on 1 にはコミュニケーションを活性化させる効果もあります。適度に雑談も取り入れながら 1 on 1 を実施することで、相互理解の促進や信頼関係の強化につながるでしょう。
作業中の負担を軽減
テレワークの生産性を向上させるには、作業中の負担を軽減する対策も重要です。体への負担を軽減するために仕事用のデスクやチェアを購入する費用を補助するなど、快適なテレワーク環境の構築をサポートしていくことをおすすめします。
IT ツールの導入
テレワークの生産性向上に欠かせないのが、IT ツールの適切な活用です。コミュニケーションを活性化させるためのビジネスチャットやビデオ会議ツール、データの受け渡しに利用するクラウドストレージ、出退勤をペーパーレスで管理するための勤怠管理システムなど、導入が必要な IT ツールをリストアップしておくことをおすすめします。
Slack をテレワークに活用
テレワークの生産性向上に効果的な IT ツールのひとつに、インテリジェント プロダクティビティプラットフォームの「Slack」があります。テレワーク環境下での Slack 活用例を見ていきましょう。
報告や共有は、事前準備としてチャンネル投稿やクリップで行う
報告事項や共有事項を伝える際には、あらかじめ Slack のチャンネル投稿やクリップで行うことで共通認識を形成しやすくなります。テレワーク環境下ではお互いに背景情報が不足しやすいことから、事前に資料などに目を通しておくことで報告・共有したい情報の趣旨を把握しておく重要性が高まるからです。
クリップであれば音声や映像を手軽にシェアできるため、テキストコミュニケーションで不足しがちなニュアンスを伝えたり、視覚情報も含めて共有化を図ったりしやすくなります。チャンネル投稿やクリップを利用すれば、相手が都合の良いタイミングで確認できる点も大きなメリットです。
ワークフロービルダーやアプリ連携を活用して、定例会議や定型業務を Slack に置き換える
Slack には、定型業務を自動化できるワークフロー機能が備わっています。数多くの外部アプリとも連携できるため、既存の業務アプリと連携させることで Slack を軸とした自動化の仕組みを構築可能です。
例えば、定例会議で報告事項を共有していたのであれば、定例会議を Slack に置き換えられます。日々の活動結果などの集計を自動化し、共有する仕組みをワークフロービルダーで構築してみてはいかがでしょうか。
突発的な対応や簡易な相談は、ハドルミーティングを使ってクイックに対応する
お互いが物理的に離れた場所で就業するテレワークでは、突発的な事態への対応や簡単な相談事もハードルになりがちです。Slack では、音声通話やビデオ通話が可能なハドルミーティングを利用できるため、こうした状況下で気軽に相談できます。
なお、チャンネルやダイレクトメッセージから、ハドルミーティングへと直接移行することも可能です。テキストメッセージのやりとりでわかりにくい点が出てきた際には、その場でハドルミーティングに切り替えることで疑問点や不明点を解消できます。タイムラグを最小限に抑えたやりとりが実現するため、テレワークの生産性向上に効果的です。
クリップやテキスト投稿などを活用し、円滑にコミュニケーションをとる
Slack のクリップやテキスト投稿を活用することで、働く場所や時間帯が異なるメンバーとも円滑にコミュニケーションを図れます。
電話を利用する場合、時間帯やタイミングを合わせる必要があります。Slack の場合、クリップやテキスト投稿であればお互いにとって都合の良いタイミングで送信し、相手が確認できる時に見てもらえるのです。お互いの状況が見えにくいテレワーク環境だからこそ、クリップやテキスト投稿の長所を引き出せます。
社外とのミーティングも Slack を活用する
Slackは社内だけでなく、社外とのコミュニケーションに活用できます。社内外の関係者をチャンネルに招待することで、随時情報共有が可能なスペースを確保できるからです。
社外関係者とのミーティングを Slack 上で実施すれば、遠隔地の関係者とも手軽にやりとりできます。
テレワークの特性を把握して、生産性の低下を防ごう
テレワークは、オフィスに出社するワークスタイルとは大きく異なる点があります。テレワークの特性を把握したうえで、生産性の低下要因への対策を講じておくことが大切です。
今回ご紹介したテレワークの生産性に関わる課題や生産性向上のための取り組みを参考に、ぜひ快適で生産性の高いテレワークを実現してください。
よくある質問
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