リモートワークという働き方が、コロナ禍を経て一般的になってきました。リモートワークにはさまざまなメリットがあり、これから導入したいと考えている企業も多いのではないでしょうか。
今回は、リモートワークの定義や種類、導入するメリットやデメリットを解説します。リモートワークを導入する際に必要な準備と併せて見ていきましょう。
リモートワークとはオフィス以外の場所で働くこと
リモートワークとは、オフィス以外の場所で働くこと全般を指しています。リモート(遠隔)という言葉が使われているように、本来はオフィスで取り組む仕事を出社することなく行うという意味があります。自宅での就業のほか、カフェやサテライトオフィスといった場所での就業もリモートワークに含まれます。
日本のリモートワークの現状
総務省の「令和4年通信利用動向調査」によれば、2022 年時点でリモートワークを導入している企業は全体の 51.7 % にのぼります。2021 年時点での導入率は 51.9 % だったことから、導入率そのものに大きな変化は見られません。
テレワークを導入している企業のうち、在宅勤務を実施している企業は全体の 91.3 % となっており、大半の企業において「リモートワーク=在宅勤務」と考えてよいでしょう。
※総務省「令和4年通信利用動向調査」
リモートワークとテレワーク、在宅勤務との違い
リモートワークとテレワークは、ほとんど同じ意味ととらえて差し支えありません。
テレワークとは、電話やメール・チャットなどを活用して離れた場所で仕事を進めることを指します。総務省では「テレワーク」で用語を統一しているものの、オフィス以外の場所で就業するリモートワークと同じ意味です。在宅勤務は自宅で就業することを指しますので、リモートワークの一形態と考えてよいでしょう。
リモートワークは社会に役立つ
リモートワークの導入は、さまざまな面で社会に役立ちます。通勤や出社が困難な事情を抱えている人が自宅で働くことができれば、新たな雇用の創出につながるはずです。また、オフィスを使用する人数が減れば、消費電力量の削減にも寄与します。総務省によれば、リモートワークを導入することで、従業員 1 人あたりの消費電力量を 14 %削減できるともいわれているのです。
また、みずほ総合研究所によれば、リモートワークによる通勤時間の削減には約 4,300 億円の GDP 押し上げ効果があると試算しています。
※総務省「平成23年版 情報通信白書」
※みずほ総合研究所「テレワークの経済効果 普及のカギは業務の見える化とテレワークの権利化」
リモートワークの種類
リモートワークは主に 4 種類のワークスタイルに分類できます。それぞれのワークスタイルの特徴を見ていきましょう。
フルリモートワーク
オフィスに出社することなく、すべての業務をリモートで進める働き方です。会議やミーティングをはじめ、業務上必要な連絡などはチャットやビデオ会議ツールを活用して行われます。
ハイブリッドリモートワーク
オフィスへの出社とリモートワークを組み合わせた働き方です。1 週間のうち数日は出社、残りの数日は自宅で就業するといったワークスタイルを想定します。リモートワークの長所と対面コミュニケーションの長所をどちらも得られる働き方と言えるでしょう。
テンポラリーリモートワーク
家庭の事情で通勤できない場合などに限り、一時的にリモートワークを取り入れるスタイルです。災害やパンデミック発生時に、安全確保の手段として活用されることもあります。
外部委託型リモートワーク(リモートアウトソース)
外部委託先のフリーランスなどがリモートワークを実施するパターンです。打ち合わせの際などに限りオフィスへ出向くこともあるものの、委託先の外部スタッフは基本的にオフィス外で業務を進めます。
テレワークの種類
リモートワークとテレワークの意味はほとんど同じですが、テレワークに関しては就業場所や雇用形態によって「雇用型」と「自営型」に分けることができます。両者の主な特徴は次のとおりです。
雇用型テレワーク
企業の従業員など、組織に雇用されている人がテレワークに従事することを指します。自宅で就業する在宅型テレワーク、カフェや交通機関の利用時にモバイル端末を活用して仕事を進めるモバイル型テレワーク、レンタルオフィスやサテライトオフィスを利用する施設利用型テレワークなどが代表的な例です。
自営型テレワーク
フリーランスなどの自営業者が、自宅やレンタルオフィスなどでテレワークに従事することを指します。企業と雇用契約を締結するのではなく、案件単位で業務を請け負うのが一般的です。自営型テレワークの働き方や就業場所は SOHO(Small Office Home Office)とも呼ばれます。
リモートワークのメリット
リモートワークを導入することにより、企業・従業員ともにさまざまなメリットがあります。リモートワークの主なメリットは次のとおりです。
通勤など移動時間の削減ができる
リモートワークは、オフィスへの出社が不要になることで、通勤をはじめとする移動時間を削減できるメリットがあります。在宅勤務であれば通勤時間は 0 分となることから、浮いた時間を休息や自由時間にあてることも可能です。
ワークライフバランスが向上する
リモートワークで通勤時間が削減されれば実質的な拘束時間が短縮できるため、プライベートの時間をより多く確保しやすいメリットがあります。ワークライフバランスが向上すれば、従業員の満足度も高まるでしょう。
優秀な人材を確保しやすい
リモートワークを導入することで、優秀な人材を確保しやすくなる点もメリットです。多様な働き方を実践している企業には、優秀な人材が集まりやすい傾向があります。人材採用における優位性が高まることから、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
離職防止になる
リモートワークで従業員の満足度が高まれば、離職率の抑制にもつながるメリットがあります。心身の疲労やストレスに起因する離職を防ぐ意味でも、リモートワークの導入は有効な手段となり得るのです。
DX や業務改善が可能
リモートワークを推進する場合、DX(デジタルトランスフォーメーション)が促されるメリットがあります。リモートワークは、ワークフローのデジタル化やコミュニケーション手段の整備が求められるため、必然的に DX が促され、業務改善が進むのです。
オフィスコストや通勤手当を削減できる
リモートワークを導入するメリットには、オフィスコストや通勤手当を削減できるということも挙げられます。リモートワークに従事する従業員が増えれば、オフィスの規模縮小も現実的な選択肢となるでしょう。オフィスコストや従業員に支給する通勤手当の抑制につながるため、トータルでコスト削減を実現できます。
BCP 対策ができる
リモートワークの導入は、自然災害や感染症といった緊急事態が発生した際の BCP(事業継続計画)対策としても有効です。オフィスに出社することなく業務を進められるため、緊急事態発生時にも平常どおり業務を進めやすくなります。
ブランドイメージが向上する
リモートワークの導入で、ブランドイメージが向上することもメリットです。従業員が働きやすい環境を整備し、多様な働き方を実現している企業は、従業員を大切にしているイメージを与えることができるでしょう。
集中できる環境を作れる
集中しやすい環境を提供できることは、リモートワークを導入するメリットのひとつです。1 人で集中して作業を進められる業務には、リモートワーク環境が適しているケースが少なくありません。
従業員の居住エリアが自由になる
各自が好きな場所に住めることも、リモートワークの大きなメリットです。特にフルリモートワークであれば通勤が不要となるため、従業員は日本各地や海外での就業も可能になります。
営業効率の向上
リモートワークで営業活動をオンライン化することにより、営業担当者の移動時間や出張経費を削減できます。また、営業効率が向上することにより、利益率の向上にも寄与するでしょう。
空いた時間で自己投資できる
リモートワークで通勤時間が削減されれば、従業員はプライベートな時間を確保しやすくなります。空いた時間を自己投資にあて、スキルアップや知識の習得に役立てることも可能です。
育児や介護との両立も可能
育児や介護のために通勤が困難な従業員も、リモートワークであれば業務に従事できます。ライフステージの変化や家族の事情による離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。
ペーパーレス化になる
ペーパーレス化ができるのも、リモートワークのメリットです。リモートワーク環境下で物理的な紙の書類をやりとりするのは得策ではありません。必然的にペーパーレス化を推進することになり、用紙や印刷代の削減、書類を保管するスペースの削減にもつながります。
リモートワークのデメリット
リモートワークにはメリットだけでなく、デメリットとなる面もあります。次に挙げる点については、リモートワーク導入時に防止策を検討しておく必要があるでしょう。
仕事とプライベートの切り分けが難しい
リモートワークは仕事とプライベートの切り分けが難しいというデメリットがあります。特に在宅勤務の場合、仕事とプライベートの境界が曖昧になる可能性があります。常に仕事を進められる環境になるために、気が休まらない、プライベートの時間を仕事に費やしてしまうなど、自己管理が大変になる場合もあるのです。
コミュニケーション不足が発生
リモートワークのデメリットには、従業員が別の場所で就業することでほかの従業員と会話を交わす機会がなくなる点が挙げられます。業務上の連絡だけでなく、些細な雑談なども交わせなくなることで自分が排除されていると感じやすくなり、メンタルに不調をきたす従業員が現れるおそれもあります。
労務管理方法の変更が必要
リモートワークは勤務開始時刻・終了時刻をどのように管理するかも問題になりがちです。クラウド勤怠管理システムを活用するなど、リモートワーク環境に適した労務管理の仕組みを取り入れる必要があります。
長時間労働になるケースもある
リモートワークで自宅が職場になると、長時間労働が常態化する可能性もあります。いつでもすぐに業務を進められる環境は、裏を返せば常に仕事をしていることも可能になるのです。
運動不足になる
リモートワークで通勤する必要がなくなると、運動不足になりやすいというデメリットがあります。意識的に体を動かす時間を作らなければ、自宅から一歩も出ることなく仕事を続けてしまうこともあるかもしれません。運動不足にならないように、体を動かすようにしましょう。
セキュリティ面のリスクが高まる
リモートワークで自宅のインターネット環境を使用する場合、セキュリティ面のリスクが高まる可能性があります。セキュリティ対策ソフトやフリー Wi-Fi の利用制限など、仕組みとルールの両面からセキュリティ対策を講じる必要があるでしょう。
リモートワークを導入するための準備
リモートワークをスムーズに導入し、メリットを最大限得るためにはどのような準備をすればよいのでしょうか。リモートワーク導入時に必要な準備について解説します。
導入目的の明確化
リモートワークをなぜ導入するのか、目的を明確化しておくことが大切です。解決したい課題や期待している効果によって、フルリモートにするかハイブリッドにするか、テンポラリーにとどめるべきかを判断する必要があるでしょう。
コミュニケーションツールなど必要なツールの準備
コミュニケーションや情報共有を図るためのツールを準備しておくこともリモートワーク導入の重要なポイントです。チャットツールやビデオ会議ツールなど、離れた場所でも適宜連絡を取り合えるツールを用意しましょう。
勤務ルールの徹底
リモートワークを導入するなら、出退勤の時刻や休憩時間の設定、勤務時間中に中抜けが発生した場合の扱いなど、勤務ルールを明確にしておく必要があります。そのうえでルールを周知徹底し、各従業員がルールどおりに勤務する体制を築いていきましょう。
勤怠管理方法の設定
リモートワークの勤怠管理をどのような手段で行うべきか、運用方法も含めて検討することも必要です。勤怠管理システムを導入するのであれば、自社の就業規則に合わせて初期設定を行わなくてはなりません。有給休暇の申請方法など、ワークフローの仕組みと併せて必要な準備を整えておくことが大切です。
評価制度の見直し
リモートワークでは各従業員の勤務態度などを直接確認できなくなるため、評価のあり方を見直しておく必要があります。成果をもとに評価する方法もありますが、成果に至ったプロセスも含めてバランスよく評価するほうが得策でしょう。日々の進捗状況やコミュニケーションの様子を可視化するには、プロジェクト管理ツールやチャットツールを導入するのがおすすめです。
交通費やインターネット費用などの調整
リモートワーク導入するなら、不要となる経費と新たに発生する経費について、算出方法や支給方法を決めておくことが大切です。オフィスに出社しなくなると、交通費の支給が不要となります。一方で、インターネットの回線使用料や携帯電話料金、電気代など通信費、光熱費の一部を勤務先が負担する必要があります。
Slack でリモートワークのコミュニケーション不足を解消する
リモートワーク環境下でのコミュニケーション不足の解消には、コミュニケーションツールとしても知られるインテリジェント プロダクティビティプラットフォームの「Slack」を活用できます。Slack は、短文の会話形式によるやりとりがしやすいため、あらたまった挨拶文などを省略したカジュアルなコミュニケーションが可能です。また、文字でのやりとりだけでなく、音声通話やビデオ会議を Slack 上で行えます。Slack の canvas を活用すれば、文書や画像、動画を1ヵ所にまとめ、社員の知識やナレッジを会社の資産として蓄積し、会社全体で活用していくこともできます。リモートワークで生じやすいコミュニケーション不足を、Slack で解消してみてはいかがでしょうか。
リモートワークの長所を最大限に活かすための準備を整えよう
リモートワークは業務効率化や生産性向上に寄与する、合理的なワークスタイルと言えます。一方で、コミュニケーションのあり方や評価方法など、オフィスに出社して就業していたときとは異なる課題が発生しやすいのも事実です。今回紹介したメリットやデメリットを踏まえて、リモートワークの長所を最大限に活かすための準備を整えましょう。リモートワークがうまく機能するようになれば、多様な働き方の実現へと近づくことができるはずです。
よくある質問
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