業務に活用するツールやアプリについて調べていると、「クラウド」という言葉をよく見かけます。何気なく使っている言葉ですが、そもそもなぜクラウドと呼ぶのか、仕組みはどうなっているのか、詳細を把握していない人もいるでしょう。
今回はクラウドの種類や活用するメリットについて、わかりやすく解説します。業務で利用する具体的なクラウドサービスもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
クラウドとは外部サーバーに接続して利用するサービスのこと
クラウドは、正式には「クラウドコンピューティング」と呼ばれる仕組みです。アプリやツールをインストールすることなく、外部事業者のサーバーに接続して利用するサービスを指します。
クラウドという言葉の由来には諸説ありますが、データの保存場所などをユーザーが意識することなく利用できる様子が、まるで「雲(クラウド)」の向こう側のサービスのように感じられるというのがよく知られている説のひとつです。
オンプレミスとクラウドの違い
オンプレミスとは、自社で運用するシステムの総称です。クラウドサービスを利用せず、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアを自社で保有・管理することを指します。従来はオンプレミス型のシステムが一般的でしたが、クラウド型サービスの台頭によってクラウドとオンプレミスを区別するようになりました。
オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッドクラウド
ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスとクラウドが混在している環境のことです。自社で管理していたサーバーなどの機器を、外部事業者が提供するサービス・機器へと移行することを「クラウド化」といいます。
クラウド化を進める際、すべてのシステムをオンプレミスからクラウドへと完全に移行できないケースは少なくありません。両者が混在していることで、お互いのメリット・デメリットを補完し合える場合もあります。
クラウドの種類
クラウドと一口にいっても、実はさまざまな種類のサービス形態があります。主なクラウドサービスとして知られているのは、下記の 4 種類です。
SaaS(Software as a Service)
SaaS とは、インターネット経由でソフトウェアを提供する形態のサービスです。 Gmail などのウェブメールや Microsoft 365 のような文書作成・表計算ソフトなどは、いずれも SaaS に該当します。インターネットを介して利用するため、ソフトウェアを端末にインストールする必要がない点が大きな特徴です。
PaaS(Platform as a Service)
PaaS は、インターネット経由で開発環境を提供する形態のサービスです。 Amazon が提供する Amazon Web Services(AWS)や、 Microsoft が提供する Microsoft Azure といったプラットフォームは、いずれも PaaS の代表的なサービスといえます。インターネットを介して利用するため、開発環境を自社で構築する手間を削減できることが PaaS を利用するメリットです。
IaaS(Infrastructure as a Service)
IaaS は、サーバーやネットワーク、セキュリティシステム、ストレージなどのインフラ機能をインターネット経由で提供するサービス形態です。自社でサーバーやネットワーク環境を構築することなく、利用する OS やメモリ容量といったリソースを自由に拡張・縮小できます。 IaaS を活用して自社にサーバールームを置かない「サーバーレス」なども、 IaaS によって実現可能です。
HaaS(Hardware as a Service)
HaaS は、サーバー、ネットワーク回線、ストレージなど、システム構築に必要なハードウェアを提供するサービス形態です。先述の IaaS とほぼ同じ意味で使われることもありますが、 IaaS が OS も含めて提供する場合があるのに対して、 HaaS は OS の提供を含まないサービスとして区別されていることがあります。
クラウド環境の違い
クラウドサービスで提供される環境には、大きく分けて「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」があります。両者の違いを押さえておきましょう。
パブリッククラウド
パブリッククラウドとは、事業者が提供するクラウドサービスを、複数のユーザーが共有する仕組みのことです。自社独自の環境を構築しないため、複数社が同じサービスを共同利用している状態となります。一般的なクラウドサービスはパブリッククラウドと考えてください。何らかの事情でパブリッククラウドが利用できない場合に限り、後述するプライベートクラウドを活用します。
プライベートクラウド
特定のユーザー向けに構築されたクラウド環境のことを、プライベートクラウドといいます。パブリッククラウドの一部を、 VPC(Virtual Private Cloud)と呼ばれる専用環境として提供するのが一般的です。独自の環境にカスタマイズできるため、柔軟なサービス設計に対応できます。
また、企業ごとのセキュリティポリシーを適用した設計にできることから、セキュリティ要件が厳しい業界・企業にも対応しやすいのも特徴です。
クラウドを利用するメリット
クラウドを利用することによって、どのようなメリットを得られるのでしょうか。クラウドの主なメリットとして、下記の 4 点が挙げられます。
導入コストの削減
クラウドサービスの導入時には、オンプレミス型システムのような機器の購入やシステム構築の必要がありません。サービス提供事業者と契約を締結すれば、基本的にはすぐに利用を開始できます。
また、社内に機器を置かないため、サーバーなどの維持・運用・監視に必要なコストも削減可能です。初期費用・維持費用を抑えられる点は、クラウドを利用する大きなメリットといえるでしょう。
運用管理の負担削減
クラウドサービスの運用は、基本的にサービス提供事業者が行います。ソフトウェアのインストールをはじめ、アップデート作業やセキュリティの確保といった運用管理をサービス提供事業者に任せられるのです。ユーザー企業は運用管理の担当者を最小限の人数でまかなうことができ、負担を軽減できる点もメリットといえます。
時間や場所を問わず利用できる
クラウドサービスはインターネット経由で提供されるため、インターネット環境さえ整っていれば時間や場所を選ばず利用できます。外出先やリモートワーク環境下でもアクセスできるため、働く環境の自由度が増すのが大きな特徴です。事業所の増設や移転時にも柔軟に対応できることは、クラウドサービスのメリットといえるでしょう。
高いセキュリティレベル
クラウドサービスの中には堅牢なセキュリティレベルを実現しているものや、オンプレミス型システムと比較しても遜色ないセキュリティ要件を満たしているサービスもあります。オンプレミス型システムに十分なセキュリティ対策を施すコストや手間を鑑みると、あらかじめ高いセキュリティレベルを達成しているクラウドサービスを導入するほうが合理的なケースは少なくありません。
高いセキュリティレベルを備えたクラウドサービスを利用することで、自社の機密データがしっかり保護されるという点も、クラウドサービスを利用するメリットです。
クラウドを利用するデメリット
さまざまなメリットを得られる反面、クラウドサービス特有のデメリットもあります。具体的には、下記の 2 点を慎重に判断したうえで、クラウドサービスの導入を検討する必要があるでしょう。
社内システムとの連携ができない可能性がある
クラウドサービスは、提供事業者が用意した仕様・環境で利用するのが一般的です。既存の社内システムに合わせてカスタマイズできる範囲は限られているため、場合によっては社内システムとの連携ができない可能性があります。
クラウドサービスを導入する際には、連携が必要な社内システムとの互換性の有無を確認しておくことが大切です。
管理や運用コストが高くなる可能性がある
クラウドサービスは料金体系が事業者ごとに異なるため、用途によっては管理・運用コストがかさむ可能性があります。従量課金制のサービスの場合、利用するデータ量によっては月額費用が高額になることも珍しくありません。また、用途に応じて複数のオプション機能を付加した結果、想定以上の追加費用がかかることも考えられるのです。
クラウドサービス導入時には、初期費用だけでなく中長期的な管理・運用コストも加味して検討する必要があります。
セキュリティレベルが合致しない可能性がある
先述のように、高いセキュリティレベルを搭載しているクラウドサービスがある一方で、利用したいクラウドサービスが自社のセキュリティレベルと合致しない可能性もあります。
一般的に、クラウドサービスは、提供事業者が仕様は環境を整備します。そのため、求める機能は備えているが、セキュリティレベルが満たされていないという状況も考えられるでしょう。
クラウドサービスを利用するということは、社外にデータや情報を保管するということです。該当するクラウドサービスが、自社が求めるセキュリティレベルを備えているか、サービスを導入する際には、導入担当者が、個々のサービスのセキュリティレベルをしっかりと見極めることが重要です。
業務で使用する具体的なクラウドサービス
業務でよく利用されるクラウドサービスとして、代表的なものを種類別にご紹介します。自社の用途や解決したい課題に応じて、適したクラウドサービスを選定しましょう。
コミュニケーションツール
コミュニケーションツールは、社内外のコミュニケーションの活性化に役立ちます。代表的なものとして下記の 3 点が挙げられます。
クラウドサービスであればソフトウェアを端末にインストールする必要がなく、インターネット環境のみで利用可能です。パソコンやスマートフォン、タブレットなど、端末の種類を問わず手軽にコミュニケーションを図ることができます。
データ共有ツール
データ共有ツールは、これまで社内サーバーに保存していたデータを、クラウド上に保存するためのツールです。主なツールとしては、下記のようなものがあります。
クラウド上に保存したデータは、時間や場所を問わずアクセス可能です。保存したデータを都度ダウンロードすることなく、クラウド上で直接編集できるツールもあります。データのやりとりやバージョン管理に要していた時間・手間を削減できるため、業務効率化にもつながるでしょう。
基幹システム
基幹業務を管理するシステムにも、クラウドサービスを活用できる場合があります。主なシステムには、下記のようなものが挙げられます。
特に、勤怠管理や会計に関しては、法改正などに伴い運用方法の変更を余儀なくされるケースは少なくありません。クラウドサービスであれば、サービス提供事業者側が法改正にも適時対応していますから、担当者の負担軽減につながります。こうした点も、クラウドサービスを活用するメリットといえるでしょう。
マーケティング・営業活動支援ツール
マーケティングや営業活動を支援するクラウドサービスも、多数提供されています。下記のようなビジネスツールが例として挙げられます。
顧客データや販売データの分析に役立つだけでなく、メール配信など見込み顧客へのアプローチに活用することもできます。マーケティング施策や営業活動の強化に注力したい企業におすすめです。
業務効率化システム
クラウドツールを活用して、業務効率化を図ることもできます。
ツールによっては RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの機能により、定型業務を自動化できるものもあります。ヒューマンエラーの発生を抑え、生産性を高めるうえで有効なツールといえるでしょう。
Slack なら幅広い活用方法がある
クラウドツールにはさまざまな種類・機能がありますが、 1 つのツールを複数の用途に活用できるケースもあります。 Slack はコミュニケーションツールとして、チャットだけではなく、ビデオ会議などができるほか、各種ビジネスツールと連携して業務効率化を図るなど、さまざまな活用方法があります。
また、国際的なセキュリティおよびデータプライバシーポリシー基準を満たしており、特定の業界における規制にも対応しています。
Slack が基準を満たしているセキュリティおよびプライバシー基準には、下記のようなものがあります。
セキュリティレベルが高く、幅広い業界で活用できるクラウドサービスとして Slack の導入をぜひご検討ください。
クラウドサービスの利用でコスト削減・業務効率化を図ろう
クラウドサービスはオンプレミス型システムに代わる新たな選択肢として、業界を問わず活用シーンが広がっています。運用コストの削減や多様な働き方への対応、高いセキュリティレベルの実現など、クラウドを活用するメリットは非常に多いといえるでしょう。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひクラウドサービスの導入・活用をご検討ください。自社の用途に合ったクラウドサービスを導入することで、コスト削減や業務効率化の効果を実感できるはずです。
よくある質問
HOME > Slack 日本語ブログTOP > 変革 > クラウドとは具体的にどんなサービスのこと?種類やメリットも解説