ディップ株式会社は「バイトル」などの人材サービスとDXサービスを展開し、コロナ禍においても好調に業績を推移させ、顧客数も増大を続けています。
これまでも携帯ツールやスマートフォンとの連携にいち早く取り組み「夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在」をモットーに先進的なデジタル化の取り組みを行ってきた同社ですが、それに伴う業績の向上と拡大の中で浮上してきた課題のひとつが、組織全体での情報共有とコミュニケーションの効率性・密度をどう担保するかでした。Slack 導入の陣頭指揮を執った次世代事業統括部 統括部長 進藤 圭さんによると、同社の社員の 7 割はフィールドセールスを行う営業担当者で、電話とメール、そして対面が主なコミュニケーション手段であったと振り返ります。
「電話は即時的な対話を行いたい場合には便利ですが、内容が記録に残らないという口頭ならではの問題があり、メールは文字情報は残るものの対話のスピードが遅く、宛先内だけの限られたメンバーに情報が閉じてしまうという問題があります。ゆえに本来的には、電話とメールの中間に位置するメッセージング系ツールに組織内のコミュニケーションをすべて寄せるのが理想となっていました。当社の場合、ツールの使い分けに関する統一ルールがなく、しかも、使用するツールの種類も部署ごとにバラバラで、管理面においても効率性の低下やセキュリティリスクが懸念されていました」
こうした課題を抱えた中で、新型コロナウイルス感染性の流行が深刻化し、全社的なリモートワーク体制をとったことで「チームや会社、そして顧客との対話・情報共有を円滑にするためには、どのコミュケーションツールを使うべきかの的確な判断が必要となりました」と進藤さんは明かします。
「オンラインのオフィス」をつくりたい。その想いからディップが選んだのが、Slack を全社統一のコミュニケーション基盤として採用し、業務の中心に置いて機能させるという方針でした。
「9 割の社員が在宅勤務の中、『オンラインのオフィス』でみんなで仕事をする、という観点での選択肢は Slack に絞られました」
Slack 全社導入から 3 カ月後、驚きの定量・定性調査結果!
上記の判断の下、ディップは 2020 年 11 月に全社員による Slack の使用をスタートさせました。その導入効果はすぐに現れ、導入初月に Slack のアクティブユーザーが全社員の 90% を超え、 3 カ月後には社内メールが月間で 800 万通削減、さらに会議件数が 1,500 件削減されたと、ディップ社内での Slack 活用・定着化を推進している次世代事業統括部 dip Robotics PdM課 リーダーの西野 翠さんは明かします。社内アンケートでは、社員の 97 % から「業務・コミュニケーションが効率化された」という回答があり、88.2 % が「自身の業務スピードがアップした」、79.4 %が「業務上のアウトプットが増えた」という結果が得られたといいます。
【 Slack 導入 3 か月後の活用・定着度アンケート結果(ディップ社内調査)】
97%
業務・コミュニケーションが効率化された
88%
自身の業務スピードがアップした
79%
業務上のアプトプットが増えた
コミュニケーションツールの導入・定着化には苦戦をする企業が少なくありません。ディップではどのような取り組みが効果的に実を結んだのでしょうか。
圧倒的な定着化スピードの理由のひとつに、西野さんはまず Slack の使いやすさを挙げます。
「UI(ユーザーインタフェース)の完成度が高く、誰でも簡単に使える点は、当社が Slack を選んだ理由のひとつであり、結果的に社内での浸透を早めた一因といえます。また、絵文字がかわいいのも大変評判がよくリモートでも賑やかになりますね。他社製品との比較検討もした際に、UI、システム連携共に優れていたのが Slack でした」。
同社では、API を通じて多種多様な外部システムを容易に統合できるという Slack の特長を生かし、さまざまな施策がとられています。例えば、打刻システムの入力と業務開始・終了報告の手間を解消するため Slack での一括登録ができるアプリを開発したり、内製のCRM とも連携をさせて Slack に通知が届くようにしてメールよりもリアルタイムな指示やコミュニケーションを実現しています。加えて、Slack を通じた社外組織とのセキュアなコミュニケーションを実現する「Slack コネクト」を有効に活用し、すでに 250 を超えるチャンネルが社外共有ワークスペースで運用されているといいます。こうした Slack の統合性・拡張性を生かしたシステム作りも、導入効果に大きく寄与したといえるでしょう。
「出勤打刻など Slack に業務を集約することによって『ツールの窓口はひとつ』になり、営業部門が自身の営業活動により集中できる好循環を構築しています」
ボトムアップとトップダウンの両輪により、Slack 活用が短期間で社内に定着
コミュニケーション手段が乱立していた環境の中で Slack 全社導入に踏み切ったディップにおいて、さらなる定着化に向けた意気込みを表しているのが、その社内体制です。
ディップでは Slack による業務変革の最終責任を COO が背負い、各営業部門を率いるすべての執行役員が担当部門での Slack の早期定着をミッションとして担ったといいます。それと同時に各現場で得意分野を持った社員がアンバサダーとなり、 Slack 活用の勉強会や Slack での情報提供を通して一人ひとりをサポートしました。この「トップダウン」からの推奨と「ボトムアップ」からの支援の両輪が、営業部門での Slack 定着化の一番の決め手になったと進藤さんは説明します。
「ある営業部門の執行役員は、営業の成功事例やノウハウについて先輩と後輩がやり取りする『営業知恵袋』というナレッジ共有の仕組みをチャンネルで展開、社内のすべての営業担当者が参照し、質問もできるようにしました。これによって自分のチーム以外の営業に関しても、知識や手法を全員で共有し、連携することができ、営業担当者がこぞって Slack の活用に乗り出しました」。
また、別の執行役員は会議のアジェンダを事前に Slack にアップすることを部内のルールにしました。これにより、Slack の利用率を高めると同時に、実際の会議では短時間でより深いディスカッションをすることができ、会議の濃密化と短縮化も実現したといいます。
「Slack のチャンネル構成や検索性能は、日常の営業活動の効率化に加えて、新人教育やオンボーディングのナレッジストックとしても広く重宝されています」
Slack によるディップ流「繋がりっぱなし」営業スタイル
上述のとおり、Slack はすぐにディップ社内に定着し、全社員に有効活用されていますが、とりわけ営業部門はその効率化を享受しているようです。
中でも特筆すべきは、クライアントとの折衝において Slack を活用し、「メール以上電話未満」という状態でいつでもコミュニケーションがとれる関係性を構築する「繋がりっぱなし営業」というディップならではの手法です。「軽いやり取りは早いレスポンスでこれまで以上にクライアントとの連絡が取りやすくなり、さらに深く会話をしたい時には Slack からそのまま Web 会議に突入できるという柔軟な機能は、非同期でもクライアントへの繊細なケアを可能にしています。ディップ営業社員の顧客志向とうまくフィットし、これまでの営業スタイルから確実に新しい働き方へと移行しているのがわかります」と、進藤さんは説明します。
ツールによって組織の文化が一変することはないものの、優れたツールを使えば、組織が元来持つ強みや良質なカルチャー、さらには個人の能力を増幅させ、新しいムーブメントを引き起こすことができると実感しているといいます。
「例えば、 Slack を使って上司ともリモートで『つながっている状態』を作りお客様との商談に臨むことで、『値引き交渉』といったリアルタイム性を求められる場面においても Slack 上で商談中に承認を得るという『上司による同行の仮想化』が実現できています。承認を得るだけなら電話でもできますが、予測不能なクライアントの要望に対して、『その場』でアドバイスをもらえるのは、経験の浅い営業にとってはとても心強いはずです」。
さらにディップでは、もともと営業同士がメールなどで励まし合う文化がありましたが、Slackでのオープンなやりとりでそれがより活発化されました。「営業知恵袋」チャンネルの利用で営業トークでの悩みや、他社への営業事例もチームを越えて営業全員が気軽に投稿・共有できるようになり、Slack の導入後に月の売上の最高記録を達成した部門もあるといいます。
まだ、先の見えないコロナ禍ではありますが、ディップはオンラインに適応した営業スタイルとカルチャーで、これからも新天地を求める求職者と求人者にとって、優れたサービスを提供してくれるのは間違いありません。
「リアルタイム性、スピード感共に、営業現場においては対面と変わらないくらいのコミュニケーション密度を図れています。リモート環境下においても、もっとも望ましい営業スタイルができつつあります」