「社会・産業の構造変革」と「新たなライフスタイル創出」であなたと世界を変えていく。現在、株式会社 NTT ドコモは、従来から展開してきた通信事業だけでなく、お客さま企業や社会の DX 支援、そして、新しい生活価値やライフスタイルの創出を事業の中心に据えています。その中で、後者の役割として、電子ウォレットやオンラインコンテンツ等の新たな生活スタイルの開発を担っているのが、スマートライフ事業です。
NTT ドコモで長年インターネットビジネスに携わり、執行役員 スマートライフ推進部長を務める尾上 健二さんは、そんな「スマートライフ」とは対極にある、組織の壁に阻まれたコミュニケーションや、オフィスに色濃く反映されているクローズドな文化に課題を感じていました。
この状況を打破するために、尾上さんが注目したのが Slack です。若手中心の導入推進チームを設置し、自らも積極的に働きかけながら、Slack による働き方の改革を実施。オープン&フラットなコミュニケーションの変革に成功し、1 ヵ月あたり 1 万 3,000 時間、6,000 万円相当の業務改善効果につなげました。文字通り Slack 浸透の立役者である尾上さんに、その道のりを語っていただきました。
組織の壁が情報共有を阻むクローズドな環境を打開
NTT ドコモにおけるスマートライフ事業は、利用者の生活をより充実させるためのサービスやアプリなどを提供していくビジネスです。多くのパートナーと協力しながら、動画配信サービスなどの映像・エンターテインメント、暮らしに役立つ情報やポイントサービスなどを提供するライフサポート、そして、金融・決済、ショッピング、オンラインで指導が受けられるヘルスケアなど、多様な分野のサービスやアプリを提供しています。
これらの事業を通じて、新しい生活価値やライフスタイルを創出する戦略を束ねているのがスマートライフ推進部(当時)です。しかし、生活の重要な一部である仕事の進め方については、部内でもさまざまな課題を抱えていました。
現在では多くの従業員がリモートワークをしていますが、新型コロナウイルスが発生する以前のリモートワーク率は約 1 割未満。会議やミーティングはオフィスでリアルに行うのが当たり前で会議室はいつも予約でいっぱいでした。また、コミュニケーションはメールが中心で、確認と返信に追われて大切な情報が大量のメールの中に埋没してしまうこともしばしば。その中でも、尾上さんが最も課題に感じていたのが人間関係です。「幅広い領域をカバーするために、スマートライフビジネス領域には 2 つの本部と 9 つの部署が存在しますが、各部署が独立しており完全にクローズドな環境。部署をまたいだ情報共有ともなると、なかなか前に進まない状況でした」と尾上さんは振り返ります。
そんな時、元同僚の職場を訪問したことをきっかけに、尾上さんは解決の糸口を見出します。
「『クローズドであることは悪である』といわんばかりに、幹部と若手社員が Slack 上で雑談をしているのを目の当たりにし、深く感心しました。同時に Slack ならスマートライフ推進部の課題を解決できるのではないかと大いに期待しました」と尾上さんは言います。
若手中心の推進チームで定着を促進。業務改善効果が劇的にアップ
Slack の豊富な機能によるオープンなコミュニケーションでスマートライフ推進部を改革する。強く決意はしたものの、組織に長らく染み込んできたやり方を変えるのは簡単なことではありませんでした。「新しいツールを使ってみたいと考える人もいれば抵抗勢力もいる。そのような状況を打破し、変革を推し進めるには、やはりリーダーの力が重要。私自身が普及の牽引役になることを決めました」(尾上さん)
まず尾上さんが行ったのが導入推進チームの設置です。Slack のようなオープンなツールに肯定的で、親和性の高い若手中心のチームを作り、通常であれば総括担当や総務部門を通して行う作業を「好きにやっていい。面倒なことは俺が引き受ける」と伝えて、普及と定着のための取り組みを一任しました。「自由にやらせたおかげで若手たちはのびのびと普及をリードしてくれました」と、尾上さんは話します。
もちろん尾上さん自身もスマートライフ推進部のメンバーに直接働きかけました。自身のチャンネルを作り、誰でもオープンにコメントができるようにして、様々な人と Slack 上でコミュニケーションを行う。また、ある時はスマートライフ事業部の部員に「1 ヵ月 Slack だけでコミュニケーションを行ってみよう」と Slack 強化月間を提案したと言います。「部長の私が強く訴え過ぎてしまうと、反発やプレッシャーを誘う可能性もあるため、良くない場合はやめてもいいという前提のトライアル的な呼びかけを意識しました」(尾上さん)
このような取り組みの結果、スマートライフ推進部では Slack のコミュニケーションが段々と定着。「約 700 人の従業員が、部署の壁を超えたオープンな情報共有を通じて、効率的かつ柔軟な働き方を実践し、大幅な業務改善を実現しています。Slack 導入により、ひと月あたり 1 万 3,000 時間、6,000 万円相当の業務改善効果につながったと試算しています」と、尾上さんはその成果を説明します。
「部署の壁を超えたオープンな情報共有を通じて、効率的かつ柔軟な働き方を実践し、大幅な業務改善を実現しています」
成功体験を共有しながら Slack 活用を NTT ドコモ全体に拡大
Slack による改革に取り組んだのはスマートライフ推進部だけではありません。コロナ禍によって急遽働き方の見直しを余儀なくされたこともあり、NTT ドコモ全体としても Slack の定着に取り組んでいます。
部内での若手主導による Slack 推進の一方で、各部門のリーダーに対しては、尾上さん自らが積極的に語りかけ、トップレベルでの浸透を進めることで、自部署から他部署、本部、支社へと段階を追い、全社において Slack の利用拡大を進めていきました。
「各部で導入の責任者を務めているリーダーによる座談会を開催して、うまくいったこと、困っていることを共有するなど、全社を横断した施策も定期的に実施しました。『ダイレクトメッセージでのやりとりに追われている』というリーダーには『それだと Slack の良さが出ない。パブリックチャンネルを作ってオープンにすべき』とアドバイスして、私も自身の経験を積極的に共有しました」と尾上さんは言います。
各部門での推進活動の結果、NTT ドコモ全体では、3 万 2,000 人が Slack を利用。231 のワークスペースで月ごとに 600 万メッセージがやりとりされるようになりました(2022 年 3 月末)。「今では投稿総数の 60 %がパブリックチャンネルのオープンな環境で読まれています。話題も仕事だけでなく、育児やキャリアプラン、副業など、様々なテーマに及んでおり、長年の課題だったクローズドな環境が解消されつつあると手応えを感じています」(尾上さん)
オープンなコミュニケーションによって企業カルチャーが変革
さらにオープンなコミュニケーションは、すでに社外にも波及。NTT ドコモは、パートナー企業とも Slack コネクトで連携し、実に 154 の組織、1,900 名の社外メンバーが Slack でつながっています。「グループ内においても、北海道から沖縄まで広がる全国各地のメンバーとあらゆるチャンネルでやりとりがあり、これまではほとんど接点のなかった状況が一変して、さまざまな交流が生まれています」(尾上さん)
役割や職種に関わらず個人同士がつながりを持つことができ、社内外を超えてマルチにつながれることに大事な価値がある、と尾上さんは主張します。また、異動時にチャンネルを見ることで過去の業務を把握できたり、テキストや音声で場所や時間にとらわれない働き方ができたりすることも Slack の利点であると言います。
このように、NTT ドコモは Slack によって時間、役職、空間、組織の壁を壊し、職場文化のトランスフォーメーションを達成しました。「単なるツールを導入したのではなく Slack を通じてオープン&フラットな働き方と新しいカルチャーを取り入れたのだと感じています。そのことを社会へと発信しながら、立ち止まることなく変革を遂げていきたいですね」と尾上さん。社内外 3 万人超がつながる不可欠な Digital HQとして、Slack によって広がったオープンなコミュニケーション環境は、 NTT ドコモの企業文化とビジネスを強力に支えています。
「北海道から沖縄まで広がる全国各地のメンバーとあらゆるチャンネルでやりとりがあり、これまではほとんど接点のなかった状況が一変して、さまざまな交流が生まれています」