歯科医院や動物病院を開業する際に必要なことは何でしょうか。専門教育を受け、十分な訓練を積んだスタッフをまず雇わなければなりません。加えて、診療所を構え、最新鋭の設備を導入するための元手も必要になるでしょう。
そのための資金調達は、わかりにくいうえ、時間もかかり、ストレスを感じやすいプロセスです。そこでデジタルファイナンス企業 Provide の出番です。Fifth Third Bank 傘下の同社は、診療所の購入・開設から、設備や不動産の取得、拠点の拡大まで、あらゆる段階でスムーズでストレスの少ない融資サービスの提供を目指しており、2013 年の創業以来、業界最大手の一角としての地位を確立しています。
「大企業の多くはまだ気がついていないようですが、Slack と自社の技術スタックをうまく連携させることで、チームのアウトプットが 2 倍にも 3 倍にもなるのです」
Provide ではリモートやハイブリッドで働くチームメンバーが、診療所の立ち上げ・入手・拡大といった医療従事者の夢の実現をサポートしています。そこで大きな役割を果たしているのが Slack です。Provide の Chief Business Officer を務める Andrew Bennett 氏は、自身が 2015 年に 3 人目のメンバーとして入社してから現在に至るまで、Slack は同社のプロダクティビティプラットフォームとして重要な存在であり続けていると語ります。
「Slack は長年にわたり、当社にとって貴重なコミュニケーションツールなのはもちろん、業務運用ツールとしても欠かせないものになっています。私たちの経験からいうと、Slack を技術スタックの一部として活用すれば、2~3 倍の規模の見込み融資先を管理できるようになります。実際、Slack のおかげで当社は変革を実現できました。それは決して誇張ではありません」
Slack で融資プロセスを効率化
融資プロセスには、さまざまなチーム、文書、システムが関わってきます。その中で全員の方向性をそろえ、タイトなスケジュールを守っていくことは簡単ではありません。Provide は当初から、業界最高水準の顧客・従業員体験を実現するためには、プロセスを効率化できるテクノロジーを慎重に選ばなければならないと考えていました。
そして最終的に選択したのが、専用の Slack チャンネルとワークフロービルダーの組み合わせです。具体的には、社内の融資創出システムと Slack を連携させ、案件固有のチャンネルを自動的に作成するようにしました。関係するメンバーはこのチャンネルを使って、進捗の把握やファイルの確認、共通の情報にもとづいた共同作業を行えます。加えて、ワークフロー機能により、資金調達プロセスの進行に応じてチャンネルが更新され、あらゆる情報をリアルタイムで確認できるようになっています。
「引受、融資、インサイドセールス、契約締結などの担当者が、参加すべき案件のチャンネルに自動的に追加されます。このため、もし取引の過程で問題が生じた場合でも、文書で裏付けられた精度の高い意思決定をスピーディーに行えます」と Bennett 氏は話します。「メールやソフトウェアのニュースフィードだけに頼っていたら、このように情報源を一元化するのはずっと難しかったでしょう。また当社では、Slack チャンネルにピン留めされたメッセージを自動的にまとめる仕組みも構築しています」
Bennett 氏によると、こうした自動化により、同社では作業時間が年に約 1 万時間も削減されました。社内の効率化を実現できただけでなく、より多くの見込み案件を処理できるようになり、従業員の満足度や顧客サービスの向上にもつながっています。
「優れたサービスを提供するには、融資・バンキングチームとの適切な連携が欠かせません。つまり、取引に関わる誰もがリアルタイムで状況を把握できることが重要です。チームで認識が共有されていれば、顧客に同じことを二度たずねたり、フィードバックを送るのに何週間もかかったりといったことはなくなるでしょう」
エンジニアのための透明でオープンな文化を育む
Bennett 氏から冗談交じりに「Slack の伝道師」と呼ばれているのは、同社の融資創出システムを開発し、Slack の主要なインテグレーションの設計も行っている Chris Caselas 氏です。Provide の Head of Technology として、エンジニアや IT スペシャリストへのサポートを担う同氏のミッションにも、Slack は欠かせない存在となっています。
「自社の実装システムと Slack をつなぐインテグレーションを構築したことで、透明性がぐっと高まりました。Slack チャンネルを使って会話をできる限りオープンにすることで、誰もがやり取りを確認でき、場合によっては会話に参加できるようにしています」
同氏のチームでは、会社の事業向けに、複数の機能をまとめた「エピック」を構築することがよくあります。エピックのプロジェクトが開始されると、リーダーが作業負荷を管理する専用の Slack チャンネルを作成し、社内の関係者が参加してコラボレーションできる仕組みになっています。
「私たちは常にエンジニアに投資し、全員にここで働き続けたいと思ってもらえるような環境を作ろうとしています。その一環としてチームが仕事を進めるのをサポートするうえで、Slack が大きな役割を果たしているのです」
Provide のエンジニアリングチームは、#the-war-room(作戦室)チャンネルにおいて、エラーや重大な問題に対処するためのインテグレーションも導入しています。オープンなスペースであるこのチャンネルは、経験の浅いエンジニアが試行錯誤を重ねられる、トレーニングの場としても活用されています。問題が発生すると、Slack ハドルミーティングを使って、音声・ビデオ通話や複数人での画面共有ですばやく話し合えるため、会議に時間を取られることもありません。
優れた従業員体験を創出
Provide では、Slack で業務の効率化や透明性の向上を図るだけでなく、さまざまなお祝いや趣味・関心のチャンネルを設けて、前向きでつながりを感じられる社内文化も育んでいます。例えば、#celebrations でその月の記念日や誕生日を全社でお祝いしたり、#plantparents で新しく育て始めた植物を紹介したり、#ownership-dreams-in-action(オーナーの夢を実現)で新たに融資を受けた人に賛辞を贈ったりなど、従業員は Slack チャンネルで有意義な会話を楽しんでいます。
Provide にとって、忘れられない Slack の活用例として、2022 年にテキサス州オースティンで行われた全社的なオフサイトイベントが挙げられます。互いに直接会ったことのない従業員が大半を占める同社にとって、このイベントは大きな意味を持つものでした。Slack チャンネル #austin(オースティン)が作成されるとすぐに、自己紹介をしたり、小旅行を企画したり、チームで実施したアドベンチャーの写真や動画を共有したりなど、活発なやり取りが始まったのです。
「#austin チャンネルは、楽しい雰囲気でいっぱいでした」とふり返るのは、Provide で Head of Marketing and Culture を務める Jess Ehler 氏です。「はじめまして!という挨拶や、アクティビティへの参加呼びかけ、出来事のリアルタイムのレポートなどであふれていて、スマートフォンを通してそのエネルギーが伝わってきました。本当に信じられないほどの勢いで、チームの絆が深まっていったんです」
さらに、Provide は新メンバーのオンボーディングにも Slack を活用して、優れた成果をあげています。2022 年に 100 名以上の従業員を新規採用した同社は、「入社したばかりの従業員にいかに必要な情報を伝えるか」という、急成長する企業に共通する課題に直面していました。それを解決するシンプルな方法が Slack チャンネルでした。新メンバーは入社初日から #new-hires(新規採用者用)チャンネルに追加され、そこでほかの新入社員と交流したり、重要な情報がまとめられた記事やピン留めアイテムにアクセスしたりできます。
「絵文字リアクションを見れば、メンバーがどれだけその投稿に注目しているかがわかります」
Provide にとって Slack を利用するもう 1 つのメリットは、従業員のやり取りの状況をモニタリングできる点です。「絵文字リアクションを見れば、メンバーがどれだけその投稿に注目しているかがわかります」と Ehler 氏は語ります。「任せて!と支援の意思を示したり、お互いの成功を称え合ったりなど、メンバー間でオープンなコミュニケーションが頻繁に行われているのがわかります。まるで Slack の絵文字に当社のコアバリューが凝縮されているかのようです」