宮城県仙台市を拠点に、仙台育英学園高等学校と秀光中学校を運営し、青森・宮城・沖縄県にも広域通信制校舎を擁する学校法人仙台育英学園。2023 年4 月には沖縄県に仙台育英学園沖縄高等学校(2022 年は設置認可申請中)が新設される予定です。多彩なカリキュラムで特色のある教育活動を目指す同学園は、教職員の業務だけでなく、生徒の学びにおいてもデジタルツールを積極的に活用しています。その中でも生徒間のコミュニケーションにおいて、同学園設置校では Slack を正式ツールとして導入し、学習や部活動に役立てながらさまざまな成果につなげています。仙台育英学園で Slack の活用をサポートする教職員 4 名に、それぞれの視点から見た学園内のツール活用例や、今後の展望について話を伺いました。
デジタルのメリットを生徒中心のコミュニケーションにも
1905 年の設立以来、宮城県初の男子校の共学化や総合コース制への変換、IBMYP・DP 校としての認定など、学校教育において多くの新しい試みを続けている仙台育英学園は、現在 2050 年を視野に入れ、「グローカル(現実空間)」「メタバース(仮想空間)」「ユニバース(宇宙区間)」を意識して、これからの時代に向けた先進的な教育や学習環境構築を推進しています。スポーツや文化活動の強豪校として部活動が盛んなことでも広く知られる同学園ですが、併設型中高一貫教育を行う「秀光中学校・秀光コース」をはじめ、仙台育英学園高等学校においては現代社会に欠かせないデジタルスキルを学ぶ「情報科学コース」など、生徒の個性に応じたカリキュラムを展開する7 つのコースを用意しています。また、イノベーティブな学習環境を提供するため、デジタルツールを幅広く取り入れた授業にも力を入れています。
そのような同学園も、生徒が利用すべきコミュニケーションツールに関しては課題を抱えていました。
学園生活には、教職員間、教師と保護者・生徒間、生徒間の 3 種類のコミュニケーションが存在します。このうち、教職員や保護者といった実務的なやりとりが発生する前者 2 つは専用ツールですでにデジタル化していましたが、学校生活のメインともいえる生徒を中心とするコミュニケーションは、紙のプリントのようにアナログのままだったり、個人で利用しているアプリに委ねたりするなど、特定のツールが定まっていない状況でした。そこで、生徒中心のコミュニケーションの活性化や学びの機会の創出のため、学園主導で適切なツールを検討し始めました。
「社会の動向を見ても、ビジネスチャットやビデオ会議などのデジタルツールがコミュニケーションの効率を高めることは間違いありません。生徒中心のコミュニケーションも同様のツールを使って効率化を図ることで、学びの質を高めたいと考えました」と加藤 聖一 常務理事はツール導入のきっかけを振り返り話します。
しかし、生徒たちが日常でも使用している SNS のようなツールは、便利である一方、不適切な使い方をするとトラブルにつながる場合があります。個人のアプリ上で仮にトラブルが起こった場合、学校側が発生を把握しサポートするのは困難ですが、公式なコミュニケーションツールを定めておけば、トラブルを未然に防いだり、解決を助けたりすることが行いやすくなることに加えて、トラブルの責任の境界を明確にすることもできます。さらに、学校生活を通じてデジタルコミュニケーションツールの適切な活用を学ぶことは、今後生徒たちが社会で活躍する上で大きな糧となっていくと考えたのです。生徒用コミュニケーションツールに最適なツールとして比較検討を重ねた結果、同学園は Slack の採用を決定します。
学生主体の発信を促進する先進的な学習プラットフォームの構築
仙台育英学園が Slack を生徒用の公式ツールとするにあたってまず評価したのが、Slack がパブリックチャンネルによるオープンでインタラクティブなコミュニケーションを基本にしていることでした。情報が平等に可視化されるため、生徒同士はもちろん、生徒と教職員のコミュニケーションにおいても、双方向のやりとりができると期待しました。
また、デバイスや OS を選ばずに使用できることも、評価のポイントになったといいます。「高等学校だけでも 3,000 人以上の生徒が在学しており、コースの特性に応じた Own PC・タブレット端末を選定しています。もちろん生徒が個人で使っているスマートフォンもさまざまです。Slack であれば、違いを気にすることなく利用できます」と、秀光コース 小保内 陽大 教務部長は話します。また、小保内 教務部長は他のアプリケーションとの連携についてもポイントとして挙げています。「全授業をオンラインで実施することで有名なアメリカの大学があるのですが、そこでは講義の配信だけでなく、学生同士のディスカッションやグループワークなどの全てがデジタル上の学習プラットフォームで行われています。教育の新しい可能性を追求する取り組みとして、私たちもそうしたメソッドを取り入れ、Slack を中心に他のツールと連携させることで、同じように先進的な学習環境を提供できるのではと考えました」
Slack が多言語に対応していることも、留学生を毎年 100 名以上受け入れ、英語をはじめとする他言語教育に力を入れている同学園にとって最適と判断したといいます。
「Slack を中心に他のツールと連携させることで、先進的な学習環境を提供できるのではと考えました」
生徒の学びが蓄積され、教員の負担軽減にも効果
同学園は、2020 年にまず一部のコースで試験的に Slack を導入。「分からないことがあった時に質問がしやすくなった」「情報を伝えるスピードが早くなった」「クラスや学年を超えてコミュニケーションができる」など、アンケートを通じて得た生徒の反応で成果を確信し、全校導入に踏み切りました。
現在では学業や部活動などで Slack を活用したコミュニケーションが図られています。オープンな環境を活かしてクラスや学年を超えた交流が生まれ、絵文字によるリアクションによって発信者と受け手の双方向のやりとりが活発になるなど、これまでにはなかった生徒中心のネットワークが次々と発展しています。
「例えば、生徒が授業に関する質問を Slack 上に投稿すると、教員だけではなく上級生が回答することもあります。下級生の助けになっているのはもちろん、上級生にとっても復習や学習の基礎固めを行う機会になっているようです。学年を跨いだ学習コミュニティが形成されています」(小保内 教務部長)
[product_ui id="4505289165121" description="" /]また、Slack には情報が蓄積されるため、同じポイントでつまずいた生徒は過去の情報を参照して自主的に学習できます。これによって教員も 1 対 1 で何度も対応する必要がなくなり、指導の効率化にもつながっています。授業の質の向上や、生徒との対話といった活動により多くのリソースを割き、深く向き合えるようになっているそうです。
同学園では、部活動でも Slack が積極的に活用されています。練習メニューといった日々の連絡に加えて、遠征中のメンバーが試合中の写真や動画を遠征に参加していないメンバーに向けて発信するなど、コミュニケーションの活性化やチームワークの強化にもつながっています。「部活動の指導にも Slack は役立っています。全国制覇を成し遂げたライフル射撃部では、Slack 上で撮影した動画を共有し、それを見ながらフォーム作りや改善のアドバイスを行ったりもしています」ライフル射撃部 加藤 芳己 顧問は話します。
[product_ui id="4331119456499" description="" /]さらに、仙台育英学園ではデジタル授業への挑戦にも積極的に取り組んでいます。「情報科学コースでは、カリキュラムの中で生徒が作成した動画作品を Slack 上で共有しています。さらにオンラインアンケートの仕組みと連動させて、各作品への人気投票や意見交換をするといった企画も実施しています。また、企業のビデオ会議のような要領でオンラインのホームルームを開いたり、モバイル端末を併用して学習の利便性を向上させるなど、実用的なツールの活用も幅広く取り入れています。デジタルツールを使って、限られた授業の時間を有効に使うという新しい授業方式の先駆けとなりそうです」情報科学コース 日野 彰 教務部長は言います。
「Slack に質問と回答が残ることで、指導の効率化にもつながっています。そのリソースを授業の質の向上や生徒との対話に充てる事で、仕事により深く向き合えるようになっています」
Slack を通じて情報化社会に必要なスキルを習得
このように同学園では、Slack を生徒中心のコミュニケーションに活用し、先進的な教育環境の下で個々の自主性を育んでいます。Slack 上での生徒同士の情報発信の方法や自由な発想によるツールの扱い方に、教職員が学びを得る場面も多いそうです。今後も運用を続けることで、少人数のクラスや大規模なコース全体など、用途や目的に応じてのベストプラクティス創出を期待しているそうです。
学園のICT環境を取り仕切る加藤 聖一 常務理事は「Slack は生徒の目線に近いやりとりが可能なツールだと感じています。将来的には在校生だけでなく、卒業生たちや受験生とのコミュニケーションにも Slack でのやりとりを活用していきたいと考えています」と、今後の展望について語ります。
「生徒たちが将来どのような社会を生きるのか。それを踏まえた教育を実践することは私たちの重要な使命です。さまざまな企業や団体で広く利用され、多様なイノベーションを支えている Slack は、社会に出た後も使う機会が多いツールになるはずです。学園生活で Slack ならではのオープンでインタラクティブなコミュニケーションに慣れ親しみ、生徒たちが民主的文化国家の形成に貢献し世界平和と人類の福祉増進にも寄与する人材になってくれることを期待しています。」加藤 聖一 常務理事は Slack 活用によって目指すビジョンについて改めて語ります。
仙台育英学園が生徒たちと一緒に創り上げる Slack を活用した革新的な教育現場。そこには未来の人材が創出されるたくさんの可能性が溢れています。[# /]
「Slack は生徒の目線に近いやりとりが可能なツールだと感じています。将来的には、在校生だけでなく卒業生たちや受験生とのコミュニケーションでも Slack を活用していきたいと考えています」