日本を代表する文具やオフィス家具・事務器メーカーのコクヨ。創業から 116 年目の 2021 年に、社会の変化に対応するべく新たな長期ビジョンを策定し、社会における自社の役割を「WORK & LIFE STYLE Company」と再定義しました。文具や家具だけにとらわれない「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で、多様な新事業を生み出し、2030 年には売上高 5,000 億円規模となることを目指しています。
次々と事業を生み出す組織となるためには、サイロ化しやすいヒエラルキー型の組織を脱し、組織を横断したコラボレーションや自律的活動が重要と考え、その基盤となるプラットフォームとして Slack を導入しています。そんなコクヨ社の新たな事業戦略における Slack の価値についてコクヨ株式会社 代表取締役社長 黒田 英邦さんがお話しくださいました。
新たな企業理念「be Unique.」のもと、さらなる成長を目指して
学習や仕事で誰もが親しむ文具メーカー、コクヨ。現在その売上 3,000 億円のうち、一般消費者向けの文具の領域は 1 割ほど。主な売上はオフィス空間作りやオフィスで利用される消耗品が大半を占めています。2021 年 2 月には 2030 年へ向けた長期ビジョンを策定し、企業理念も 1905 年の創業以来掲げてきた「商品を通じて世の中の役に立つ」から「be Unique.」に刷新しました。この理念には、「未来へ向けたさらなる成長のために、1 人ひとりの多様性を活かした独創的なアイデアで社会に貢献していく」という決意が込められています。
新しい戦略策定の背景には、デジタル化の加速によって「働く」「学ぶ」といった体験が多様化してきたことにあると黒田さんは言います。「現在、オフィス家具や文房具は非常に高いシェアを占めることができており、収益性も常に改善を図っています。しかし、長い目で見ると、我々の将来性には課題を感じてます。そこで、これからは文房具やオフィス家具を作る会社から、働き方・学び方・暮らし方といった、ワークスタイル・ライフスタイルを提案する会社に変革していくことを決断しました」(黒田さん)
長期ビジョンでは、現状 3,000 億円の売上規模を 2030 年には 5,000 億円に拡大していくと設定し、その実現のために「森林経営モデル」へシフトしていくとしています。これまでのコクヨは、従来の流通基盤の上で、オフィス家具や文具・事務用品を 1 本の樹木の枝葉や果実と見立て、その 1 本の樹木を育てるようなビジネスモデルを展開してきました。しかし今回取り入れた森林経営モデルでは、人材・データ・事業創出基盤など、グループ全体が有する共通資産を活用して、さまざまな顧客体験を提供する複数の新規事業を生み出します。そして、それらの事業ひとつひとつを樹木に見立て、将来的にその集合体である大きな森林となることを目指しているのです。
新しい成長戦略のもとで、次世代への挑戦を迎えたコクヨは、組織やコミュニケーションの在り方、働き方も含めた大規模な変革へ向けて、社内体制の見直しや環境整備への取り組みを始めました。
脱サイロで自律的に動くプロジェクト型の働き方へ
コクヨの森林経営モデルでは、顧客接点を強化し、「働く」「学ぶ・暮らす」の新しい体験価値を創造することで、事業領域の拡大と成長を実現します。そのために重視しているのが、デジタル技術やデータの活用です。それらによって顧客のニーズを掘り下げ、新しい市場を見出し、多くの新規事業を生み出そうとしています。
森林経営モデルにおいて、より多くの樹木(事業)を増やす改革を遂行するには、基盤となるプラットフォームが必要でした。数ある選択肢の中から社内でも検討を重ねた結果、組織の壁を超えたオープンなコミュニケーションを可能にする Slack が、社員の自律性の高い働き方につながると考えました。
長く続く日本の大手企業では、ヒエラルキー型の組織構造である場合が多く、コクヨも従来はこの形式でした。こうした組織構造では、責任や権限の所在が明確になり、トップダウンで意思を伝えられるなどのメリットはあるものの、新しい価値を生み出す際には部門間の障壁が生じやすく、複数の事業をスピーディに生み出しづらいというデメリットもあります。
黒田さんはこのポイントについて、「森林経営モデルでは、上から言われたことをただやるのではなく、プロジェクトごとにテーマを決めて権限を移譲し、各メンバーが自律的に仮説・検証をしながら答えを導き出す働き方が求められます。そのためには、たくさんのプロジェクト創出を支えるための基盤が必要でした」と説明します。
1905 年に創業して以来、文具事業やオフィス家具事業、オフィス通販、海外展開など、時代の流れに従って発展してきたコクヨ。100 年以上前から変わらないのは、顧客の課題に共感し、新たな商品やサービスを作ることです。プロジェクト型の働き方も、Slack のようなデジタルツールを活用し、メンバー自らが自律的により多くの顧客の共感を拾い上げ、新たな価値を創造していくことを目的としています。
また、ツール選定時のエピソードについて黒田さんは「プロジェクト型の働き方に何が必要なのかを社内のみんなで議論をして、様々な選択肢の中から Slack を選びました。情報システム部門の社員から『Slack で会社を改革したい!』という強い要望があったこともあり、最終的に採用を承認したという背景もあります」と振り返りました。
使うほどに価値が高まる Slack で協業を生む組織を実現
Slack には、リアク字、オープンチャンネル、メンバーディレクトリ、高い検索性、外部組織とつながる Slack コネクト、外部アプリ連携など、スムーズなコラボレーションのためのさまざまな仕組みがあります。コクヨでは、双方向コミュニケーションによって経営の考えを社内に浸透させたり、オープンな情報交換によってグループ内ノウハウの質を向上したり、バリューチェーンにおいて密な協業体制を取ることで業務効率化を図るといったことに Slack を活用していく考えです。
「オープンなコミュニケーションをもっと活発にし、仕事におけるそれぞれの役割をつないで協業できるようなバリューチェーンを作っていきたいと思っています。Slack は使えば使うほど、つながればつながるほど、情報共有すればするほど価値が高くなっていく仕組みになっていると感じています」(黒田さん)
コクヨには、顧客の立場で実験をして「共感」を探し出し、「共創」していく社風があります。たとえば、中学生向けの文具を作る際には、Slack のチャンネルで社内アンケートを行い、社員の家族からも意見を募るなどの取り組みも行っているといいます。
黒田さんは Slack について「与えられたツールをただ使うのではなく、それを使って何ができるのか、何を成し遂げたいのか。Slack は自分たちで考えて自律的に働くことを叶えてくれるプラットフォームです」とその魅力を語ります。
こうした取り組みをさらに促進していくために、コクヨでは現在自社オフィスの一角を一般に開放した「THE CAMPUS」も展開しています。新しい働き方、暮らし方を社員自らが実験しながら「コクヨ式ハイブリッドワーク」を模索する場所でもあるというこの場所は、楽しみながら実験を行うことで、人が集まり、人のやりとりがさらに人を呼ぶという考えによって作られています。
「与えられたツールをただ使うのではなく、それを使って何ができるのか、何を成し遂げたいのか。Slack は自分たちで考えて自律的に働くことを叶えてくれるプラットフォームです」
目指すのは Slack を日本一使いこなす企業
「社会の変化の中でも次々と新しい価値を提供できる事業体」を目指す姿として掲げるコクヨは、Slack の導入によって、自律的に組織の壁を超えて新しい顧客体験価値を生み出す「プロジェクト型の働き方」と「コクヨ式ハイブリッドワーク」の確立を実践しています。
黒田さんは今後の展望について「新しいハイブリッドワークとは何なのかを、Slack を使って自らが実験し、さらなる Slack の活用にもつなげていきたいと考えています。日本的な経営の企業は、古く・大きく・動かない、といったイメージがありますが、多様な事業を次々と生み出すためにも、我々自身が Slack を日本で一番使いこなしている会社となり、世の中に多様な提案をできるよう取り組んでいきたいと思います」とその意気込みを語ります。
創業 100 年を超えてなお、時代に合わせた変革を続ける大手老舗メーカーの姿は、これからの時代を生き抜く企業にとってもベストプラクティスとなりそうです。
「自分たちで実験と実証を重ねて、これからの新しいワークスタイルを提案できるように、日本一 Slack を使いこなせる企業を目指します」