面白いことに、職場での対立は、誰もが生産的なコミュニケーションスキルを発揮しつつ、あくまで仕事上のことと割り切れるのであれば有益です。しかし、対立は単なる争いであることもあります。その場合はチームの分裂を生み、仕事の効率を大きく下げるので、早急な解決が必要です。
快適だった職場環境が対立によって悪影響を受けている場合は、解決するための対策を講じることが重要です。今回は、コミュニケーションスキルを活用して職場の問題を一掃し、仲間意識と互いの敬意を取り戻す方法を 5 つご紹介します。
1. 適切な対立に関するパラメーターを設定する
作家でチームの効果性に関するアドバイザーでもある Liane Davey 氏によると、競争力のある革新的な企業が異なる役割や部署の間で緊張感を抱えている状態は、正常なだけでなく健全でもあります。このような緊張感によって前向きな成果がもたらされると全員が理解している時は、特にそう言えます。
従業員が対立を受け入れるのを支援するため、Davey 氏はリーダーに対して、次のような段階的な演習をチームに受けさせることを推奨しています。
- 円を描いて、扇形に分けます。それぞれが個別の役割を表します
- 役割によってもたらされる価値、やり取りする利害関係者、解決する問題など、さまざまな役割について 1 つずつ話し合います
- 各役割によって引き起こされる特有の緊張感について話し合います。一般に、誰との間にどのような理由で緊張感が生まれますか?
Davey 氏によると、この演習は一緒に働く相手が対立には理由があると理解するうえで役立ちます。つまり、対立はそれぞれの立場で掲げる目的にかなうもので、従業員が前進するのを支援するということです。
「共通言語を使って認識を高めることで、対人摩擦と思っていたことが実は役割に基づいた健全な緊張感だったことにチームが気づき始めます」と Davey 氏は述べます。「対立や緊張感は、部門の枠を越えたチームのアンチテーゼではなく、むしろ主な利点なのです」。
2. さまざまな対立スタイルに応じてコミュニケーションスキルを使い分ける
人によってコミュニケーションスタイルの好みが分かれるように、対立に対処する方法もさまざまです。Harvard Business Review で寄稿編集者を務める Amy Gallo 氏によると、対立するのを自制する「回避者」と、残酷なまでの正直さと大論争を好む「追求者」がいます。このような異なるタイプの性格に対処する方法について、Gallo 氏は以下のようにアドバイスしています。
- あなたが回避者である場合、どれほど難しくてもがんばって声をあげてください。追求者のグループと一緒にいる時は、必ず好みのコミュニケーションスタイルを率直に伝えてください(もちろん、怒らずに伝えてください)。
- あなたが追求者で、ほかの追求者と一緒に仕事をしている場合、即席で話すプレッシャーを軽減するために前もって準備しておいてください。回避者と一緒に仕事をしている場合は、会話のペースがゆっくりでも辛抱強く話を聞いて、威圧的な印象を与えないように注意してください。
「緊張状態にある相手が示す典型的な反応を把握しておくと役に立ちます」と Gallo 氏は言います。「ですから、同僚のスタイルがまだよくわかっていない人は、見極めてください」。
3. すぐに反応しないよう努力する
職場での対立に直接巻き込まれた場合(または、マネージャーとして仲裁に入らなければならない場合)、話すよりも耳を傾け、答えを与えるのではなく質問を投げかけることが重要です。
「自己防衛の気持ちを抑えて、代わりに相手が考えを話すのを促す質問を投げかけてください」と、感情知能のエキスパートである Harvey Deutschendorf 氏は記しています。「相手に『話を聞いてもらえている』と感じさせるだけで、厄介な口論を回避して会話を始められるのです」。
企業管理職のコーチで、Cinergy 社の創業者でもある Cinnie Noble 氏も、これに同意しています。Forbes のインタビューで、Noble 氏は対立に巻き込まれた際にリーダーがとるべきいくつかのステップについて、以下の概要を説明しています。
- 憶測に基づいたり、自己防衛を始めたりせずに、アクティブリスニングを実践してください。「つまり、相手が見解を説明してくれるまで『もう少し詳しく教えてください』と繰り返すことが主な戦略です」と Noble 氏は述べています。
- 物理的、感情的に距離を置いて、冷静に問題解決、意思決定、批判的内省ができるようにしてください。
4. 「見えていなければ、意識されない」と考える
職場という背景で、仕事に関する対立が起こることは避けられません。ですから、争っている 2 人の同僚にとって最も効果的な解決法は、仕事環境という制約や対立のきっかけがないところでときどき会話することです。くだけた雰囲気の中では、思った以上に共通点が見つかるかもしれません。
これこそまさに John Rampton 氏が体験したことでした。Rampton 氏は投資家兼起業家で、請求と支払いのオンラインサービスプラットフォームを提供する Due 社の創業者です。「仕事環境から離れて話をすると折り合いをつけるのに役立つかと思って、激しく対立していた同僚を就業後に誘うことにしたのです」と 同氏は記しています。「夜になる頃には、まるで旧友のように一緒に笑っていました。この仲間意識は、一緒に働いている間ずっと続きました。結局、必要なのは、お互いの主張を理解するための時間だけだったのです」。
5. 傾聴とコミュニケーションスキルを実践する
対立への対処で最も効果的なコミュニケーションスキルは、同僚の話をとりあえず信じて、心を込めて耳を傾けることです。結局、ほかの人たちに起こっていることなどわからないのです。
「本当は、誰もが他人の知らないところで密かに闘っているのです。心の知能が高い人は、自分が決して触れることのできない問題を他人が抱えている可能性に気づいています」と Deutschendorf 氏は記しています。
同氏は、同僚の言葉や行動が攻撃的であっても、次のような簡単なステップに従って共感を示すよう提案しています。
- 詮索せずに、問題の原因を探すようにします。あなたには無関係であることがわかるかもしれません。またあなたが話の全体を知り得ない可能性があることも忘れないでください。
- 対立の真の原因について相手より深く理解している時は、相手の言うことに振り回されず、対立の解決方法を考えます。「時には、相手に手を貸すことが極めて妥当な場合もありますが、相手の言いなりになる必要はありません」と Deutschendorf 氏は述べています。
敵意や否定的な考えをチームの間にまき散らさない限り、対立は企業を強くします。緊張感が高まった時には、それを助長せずに、共感を示しながら行う生産的なコミュニケーションスキルを使って対処してください。