自然発生的リーダーシップ : チームに主導権を与える方法

このアプローチがチームの意思決定によい効果をもたらす理由とは

執筆者 : Devon Maloney2025年9月30日イラスト: Kelsey Wroten 氏

医療テレビドラマ『Grey’s Anatomy』(邦題 : グレイズ・アナトミー 恋の解剖学)では、誰が天性のリーダーなのかを見極めるため、インターンの集団に難しい症例を与えて、主治医不在のままその問題を一緒に解決させる話が描かれています。このドラマでは、このチャレンジの勝者は「Gunther」と呼ばれていました。

正規の階層構造が存在しない状況で責任を負うことは、「自然発生的リーダーシップ」とも呼ばれます。 職場の状況が絶えず変化する現在において、これは従業員に最も求められる特性のひとつとなりつつあります。

自然発生的リーダーシップとは

自然発生的リーダーシップは、グループのメンバーの誰かがリーダーとして指名または選出されるのではなく、グループとして行動していくうちにある個人がリーダーとなることをいいます。自然発生的リーダーシップにより、チームのメンバーがビジネス組織における従来構造の枠組みを超えて意思決定を行えるようになります。例えば、業務に関する判断を部下が上司に仰ぐのではなく(これがしばしばボトルネックとなっています)、自然発生的リーダーシップを発揮する同僚がそのような判断を自分自身で行い、チームメートを指揮します。

写真アプリのスタートアップ企業であり、クリエイティブなコミュニティである VSCO では、従業員は本質的に企業のオーナーと同じであるという考えのもと、企業のオーナーと同様に考えて意思決定するよう従業員に促し、自然発生的リーダーシップとビジネスの透明性を推進しています。VSCO の人事担当 VP である Katy Shields 氏は、「早い段階から多くの権限を渡せば、自分たちで修正していく文化を育むことができます。従業員が経営陣の最大の支持者になり、また経営陣がチームとしてすべきことをしていない場合は、最大の批判者にもなります」と述べています。

なぜ組織は自然発生的リーダーシップを推進する必要があるのか

自然発生的リーダーシップは、個人レベルで見ると、プロジェクトの勢いを持続させて実効性のある成果を生むのに役立つ、自発的に行動する従業員の特質を表します。しかし、もっと基本的なレベルで考えると、自然発生的リーダーシップは、組織の有効性と成長を推進する再生可能なエネルギー源であるといえます。

また、自然発生的リーダーシップを採用すると、トップダウン方式の階層構造的なアプローチが不要になります。オンラインの靴小売業者である Zappos のような企業でも、自然発生的リーダーシップが採用されています。同社は、マネージャーやスーパーバイザーの地位に就くリーダーを指名する方式をやめて、自然発生的リーダーシップに関連する特性である自己管理能力を重視する方向へと方針を転換しました。

さらに、自然発生的リーダーシップは、命令ではなく合意によって促進されます。指名されたリーダーの判断を押し付けられるチームよりも、メンバーの誰かを自分たちのリーダーとして自然に認めたチームの方が、結果により責任を持つ可能性が高くなります。

世界で最も成功している企業の一部は、自然発生的リーダーシップの考えを中心に雇用戦略を展開しています。かつて Google で人事担当 SVP を務めた Laszlo Bock 氏は、自然発生的リーダーシップは巨大ハイテク企業である同社の人材全体に求められる重要なアプローチであると強調しています。また、かつて GE と NBC でイノベーションエグゼクティブを務めた Beth Comstock 氏は、将来のビジネスの成功にとって非常に重要な要因であるとしてこのアプローチを支持しています。

マネージャーはどうすれば自然発生的リーダーシップを推進できるか

チーム中心の意思決定プロセスを実践しているマネージャーは、自然発生的リーダーシップが有機的に発展する環境を生み出すことができます。しかしながら、最高のリーダーは自然と頂点に登り詰めるという考えは、能力があるにもかかわらず内向的である多くのリーダー候補者を競争から脱落させてしまうことになります。

結果として、自然発生的リーダーは、外向的な人が大多数を占めるということになってしまいがちです。『Personality and Individual Differences』誌がビジネススクールの学生を対象として自然発生的リーダーシップについて調査したところ、「内向的な人は、将来に対して必要以上に悲観的な感情を抱くため、外向的な人と比べて悲観的な結果を予想する傾向が強い」ということが明らかになりました。

これは、そのような状況で内向的な人がリーダーシップを発揮するのが得意でない(またはリーダーシップを発揮するのが好きでない)ということではありません。これは、自分たちがそのようになれないと「考えてしまう」ことを意味しています。この調査によれば、内向的な人は、グループで問題解決活動を行う際に「恐れを感じる」「不安になる」「苦痛を感じる」「動揺する」「緊張する」と予測していました。

しかし、悲観的な予測がリーダーシップの障壁となるとは限りません。悲観的な予測を客観的に捉えることができれば、内向的な人も、その人独自のやり方で自然発生的なリーダーとして活躍できるでしょう。この調査では次の仮説を立てています。「内向的な人が、自然発生的リーダーシップのやりがいをより正確に予測できるようになれば、社会生活の場面で外向的な人と対等に渡り合えるようになると考えられます」。

それを実現するには、マネージャーは、自分のチーム内に協調的リーダーシップを生み出す気運を醸成し、自らは司令官としてではなく指針や援助を与える存在として直属の部下に接する必要があります。リーダーシップを自然と発揮できるメンバーだけでなく、寡黙なメンバーのリーダーとしての可能性や成長にも目を向けることで、内向的な人にもリーダーの役割を引き受けるのに必要な手段や考え方を伝えることができます。

『Grey’s Anatomy』のエピソードの最後に、このテストの名前が「The Gunther」であることが明かされます。なぜならば、誰にも注目されていなかった Gunther という名前の物静かな人物が最初の勝者だったからです。そのため、職場でも Gunther に目を向ける必要があります。先ほどの調査で論じられていたように、内向的な人はリーダーシップに向かないという先入観こそが問題だといえるでしょう。内向的な性格もまた、よきリーダーになるための重要な資質なのです。

Audra Williams 氏による追加の報告

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