仕事での悪い習慣は、集中力や生産性に影響します。最悪の場合、仕事を失いかねません。しかし適切なツールと方法があれば、よい習慣を身につけることができます。
コロナ禍で私たちの働き方は変化しました。このままいけば、リモートワークも定着するでしょう。Pew Research の調査によれば、アメリカでコロナ禍以前にリモートワークを行っていた人はわずか 20% でした。今では約 71% もの人が在宅勤務を行っており、54% がリモートワークを続けたいと考えています。
リモートワークでは、感染リスクを抑えつつ生産的に仕事を進められる一方で、気が散りやすく、タスクに集中しにくいのが難点です。そこに悪い習慣が加わると、常に注意力散漫な状態になってしまいます。
職場で避けたい悪い習慣
職場での行動は、生産性や同僚との関係、昇進に大きく影響しかねません。職場でのよい習慣はポジティブな体験を育む一方で、悪い習慣は信頼の低下やストレスレベルの上昇を招くだけでなく、失職にすらつながる可能性があります。
職場で避けたい習慣を並べるときりがないものの、とりわけ注意したいのが次の 3 つの習慣です。というのも、これらの悪い習慣は仕事に欠かせない集中力やエネルギーをたちまち使い果たしてしまうからです。
マルチタスク
マルチタスクは「タスクの切り替え」とも呼ばれていますが、Cleveland Clinic の神経心理学者 Cynthia Kubu 博士の「Why Multitasking Doesn’t Work」によると、その定義は「別々のアクションをすばやく連続して行うこと」です。
またスタンフォード大学の研究員である Kevin Madore、Anthony Wagner の両氏は、米国国立医学図書館が発行する論文で、「人間の心と脳には、2 つ以上の作業を同時に行う仕組みが備わっていないため、マルチタスクという呼び方はたいてい誤りである」と説明しています。
要するに、私たちの脳は 1 つのタスクにしか集中できないのです。
さらに、Microsoft の研究者たちがリモートワーク時にマルチタスクを進める様子を分析したところ、マルチタスクは生産性にポジティブな影響を与えると考えられる一方で、精神疲労や注意力・集中力の低下など健康に悪影響を与える可能性があることがわかりました。
休憩時間中の仕事
複雑なプロジェクトや締め切りに追われていると、ノンストップで仕事を続けたくなるものです。しかし、休憩を取らず、ランチもデスクで食べながら仕事をするのは有益どころか有害です。
CNBC による、昼休憩を取らない影響を調べたレポートでは、「昼食をあと回しにすること」によって従業員の士気が下がり、職場の雰囲気が抑圧的になるため、従業員が「徐々にあとずさり」して最終的には辞めてしまうだろうと指摘しています。
スマートフォンやソーシャルメディアを常時チェック
Statista の調査によると、コロナ禍で在宅勤務する従業員が特に集中を妨げられる要因として挙げたのは、ソーシャルメディアとスマートフォンでした。
スマートフォンは、その利便性と効率性から職場でますます欠かせないツールとなっていますが、依存性も高くなりがちです。使いすぎると、あっという間に問題の種になります。
気をつけないと、ほんのちょっと Twitter を見るだけのつもりが気づけば 1 時間もソーシャルメディアを見続けていたという事態になりかねません。また、歩きスマホをしながら道路を渡ったり階段を下りたりすれば、事故や怪我につながるおそれもあります。
集中力の重要性
仕事を終わらせるには、集中力が必要です。問題解決や意思決定、論理的指向、記憶、理解など、あらゆる思考は集中から始まります。
財務レポートを完成させるには、スプレッドシート上の数値に集中することが必要です。ニュースレターを作成するには、読者や伝えたいメッセージ、提供する製品やサービスに注意を向けなければなりません。
予定どおりにタスクを終わらせるには、集中の妨げになるものを減らし、すべてのエネルギーと注意を仕事に注ぐことが求められるでしょう。
仕事で集中力を保つ方法
ここからは、タスクやブラウザのタブ、アプリの切り替えに追われている人のために、集中を切らさないヒントをまとめました。
1 日の計画を立てる
To-Do リストを作成し、タスクを優先度に応じて整理します(すぐに取りかかる作業、別の日に回せる作業、ほかの人にお願いする作業、やめる作業を決めましょう)。次に、自分のスキルとタスクの難易度を踏まえて、各タスクにかける時間を割り当てます。
想定外の事態にも対処できるよう、予備の時間も加えておきましょう。また、月曜の午前 8 時~8 時 30 分はプロジェクトマネージャーとの会議、毎日午後 3 時~4 時はメール対応というように、特定のタスクの時間をカレンダー上で確保するのもおすすめです。
通知を制限する
スマートフォンを手放せないのであれば、重要な通知だけが届くようにしましょう。メールの着信音やアプリからの不要な通知はミュートします。また、Slack のステータスとログイン状態を設定して、「会議中」「集中モード」「離席中」など自分の状況を周りに共有しておきましょう。その際、いつごろ返信できるのか伝えておけば、周りをやきもきさせることはありません。
休憩を取る
脳と身体にエネルギーを補給するために休憩を取りましょう。特にストレスを感じ始めたらすぐに取ってください。おやつを食べたり散歩したりすることはもちろん、ゲーム、同僚との会話、友達との電話もおすすめです。必要であれば、電子機器から離れましょう。とにかくエネルギーを取り戻すことが大切です。
仕事での習慣を改善する方法
習慣とは、私たちが繰り返してきたルーティンや儀式、行動です。それらは潜在意識に浸透しているため、悪い習慣を変えるのは簡単ではありません。とはいえ方法はあります。
悪い習慣を洗い出す
タスクをよく先延ばしにすることはありませんか?会議中にソーシャルメディアをチェックしていないでしょうか?担当外の仕事を断れず、色々引き受けてしまっていませんか?まずは自分の習慣をチェックしましょう。RescueTime や Toggl のようなツールを使って、2 週間ほど、どんなことに時間を使っているのか記録してみるとよいでしょう。
小さく始める
記録してみると、時間の浪費や集中力の低下を招いている悪い習慣がいくつか見つかるでしょう。ただし、すべてを一度に変えようとしても、おそらくうまくいきません。まずは 1 つの習慣に集中しましょう。1 つの習慣を改善できたら、別の習慣に取り組んでください。
よい習慣に置き換える
悪い習慣には、それなりの理由があります。コンピューターの電源を入れてすぐにメールを確認するのは、情報を取りこぼしたくないからです。しかし、その代償として注意力が散漫になり、情報過多となって、やるべきことが先延ばしになります。とりあえずメールをチェックするのではなく、メール対応に集中する時間を 1 時間確保しましょう。
自分にご褒美を与える
ご褒美がもらえるとなると、パフォーマンスはいっそう高まります。そこで、自分にご褒美を与える仕組みを作りましょう。ご褒美は、タスクに見合ったものにします。小さなタスクには小さなご褒美を、大きなタスクには大きなご褒美を用意するといった具合です。
また、『Hyperfocus』と『世界一の生産性バカが 1 年間、命がけで試してわかった 25 のこと』の著者、Chris Bailey 氏が紹介する習慣ポイントによるアプローチを使って、ゲーム感覚でよい習慣を身につけていくのもよいでしょう。これは、よい習慣を実践したりタスクが終わったりするごとにポイントを貯め、ポイントが貯まったらお楽しみと交換できる仕組みです。
サポートを得る
周りの人からのサポートなくして、悪い習慣をやめるのは大変です。ジャンクフードをやめて健康的な食事に変えようとしているのなら、同僚や同居人にもそのことを知らせて、高脂肪・高糖分のスナックの差し入れを控えてもらいましょう。
アプリを使う
Freedom や Forest のようなアプリを使うと、仕事中はソーシャルメディアなど特定のサイトをブロックできます。また Moment はスマートフォンの使用時間を記録し、1 日の制限時間を超えると通知してくれるので便利です。Kanban Flow や Trello などのツールはプロジェクトの管理に役立つほか、Slack では仕事に集中していることを同僚に知らせるおやすみモードを設定できます。
悪い習慣をやめて集中する
仕事を終わらせるには集中力が必要ですが、悪い習慣はそれを妨げてしまいます。仕事での成果を妨げる習慣を見直して、よい習慣に変える方法をぜひ見つけてください。