製造業こそ生産性向上を!その理由や施策のポイントを解説

製造業こそ生産性向上を!その理由や施策のポイントを解説

現在の日本では、製造業の生産性向上が課題となっています。製造業が生産性の向上を目指すべき理由やメリット、生産性を高める手順などについて解説します。

Slack チーム一同作成2023年11月16日

かつてはモノづくり大国として世界に名を馳せた日本ですが、近年では海外メーカーの存在感が増しており、分野によっては日本のメーカーが押され気味になっています。日本の製造業が以前の勢いを取り戻すうえで解決すべき課題のひとつとして、生産性向上が挙げられるのではないでしょうか。

今回は、製造業における生産性向上のポイントや、生産性を高めるためのポイントについて解説します。生産性向上を実現する取り組みとして重要なカギを握る「社内コミュニケーション」を改善するためのツールと併せて、具体的な施策例を見ていきましょう。

製造業が生産性の向上を目指すべき理由

はじめに、なぜ製造業では生産性向上が重要視されているのか、背景となる理由を整理します。製造業を取り巻く環境のなかでも、特に「労働人口の減少」と「グローバル化」は見過ごすことのできない重要な変化といえるでしょう。

労働人口の減少

製造業が生産性の向上を目指す理由のひとつに、労働人口の減少が挙げられます。急速な少子高齢化の進行により、日本国内の人口は減少し続けています。内閣府の推計によれば、現在のペースで人口が減少が続いた場合、 2048 年には 9,913 万人、 2060 年には現在の約 3 分の 2 に相当する 8,674 万人程度の人口になると考えられているのです。

人口の減少は、働き手の数をあらわす労働人口も減っていくことを意味しています。労働の担い手が少なくなっていく以上、限られた人的資源をできる限り効率的に活用しなければなりません。今後より深刻化していくと考えられる労働人口の減少に対応するには、生産性の向上を実現するための取り組みが不可欠です。

※内閣府「選択する未来

グローバル化

製造業に限らず、近年はあらゆる産業が急速にグローバル化しつつあります。だからこそ、製造業も生産性を向上すべきと考えられます。競合他社は国内企業に限らないことから、世界各国の製造業者との競争は避けられません。

一方、国際的に見て日本の労働生産性は低い水準にとどまっているのが実情です。2021年の日本の時間あたり労働生産性は 49.9 ドルであり、 OECD(経済協力開発機構)加盟 38 ヵ国中 27 位と、 1970 年以降最も低い順位となっています。今後も産業のグローバル化が進行していくとすれば、日本の製造業は早急に生産性の向上に取り組む必要があるでしょう。

※公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022

製造業の生産性を向上させるメリット

製造業の生産性を向上させることによって、具体的にどのようなメリットを享受できるのでしょうか。製造業の特性を踏まえた場合、顕著にあらわれやすいメリットは下記のとおりです。

品質を安定・向上させることができる

製造工程における生産性が高まることによって、限られた人員で質の高い仕事をこなせるようになるのは大きなメリットです。結果として製品の品質がより安定するだけでなく、リソースに余裕が生まれることでさらなる品質改善や新製品の開発に取り組むことができるでしょう。

製品の質が高まれば、顧客満足度が向上し、企業としてのブランド価値もいっそう強化され、製造業として注力すべき製品の安定供給を実現しやすくなります。

コストを削減できる

生産性が向上すると、より少ない人的・物的リソースで質の高い製品を生産できるようになります。無駄のない設備の稼働と効率的な作業工程が実現すれば、従業員の労働時間を短縮することもできます。結果として残業手当などの人件費抑制につながり、コスト削減を実現しやすくなるのです。

また、製造品の不良率や廃棄率を下げられれば、原材料費も抑制できます。効率的・合理的な在庫管理や需要予測によって、製品の作りすぎや余剰在庫の発生を抑える効果もあるはずです。

人材不足を補える

労働人口の減少に伴い、優秀な人材の確保は今後ますます難しくなっていくといわれています。限られた人的リソースを有効活用することは、人材不足を補うための対策として非常に重要なメリットのひとつです。

生産性を高めて効率良く作業を進められるようになれば、従業員の労働環境の改善にもつながります。従業員の離職率を下げ、長く働ける環境を提供することにも寄与します。働きやすい環境が整うことで人材を確保しやすくなる好循環が生まれ、将来訪れる可能性の高い人材不足に備えることが可能です。

競争力を強化できる

製造業においては、リソースをいかに有効活用して付加価値を生み出すかが企業としての競争力を決定づけます。生産性を向上させる取り組みは、それ自体が競争力を強化するための施策となり得るのです。

前述のとおり、製造業にとっての競合相手は国内企業にとどまらず、今後、世界各国の製造業者とも競わざるをえない状況になっています。製造業に属する企業として、引き続き世界に存在感を示していくには、生産性向上を実現するための取り組みが不可欠となるはずです。

製造業の生産性を向上させるポイント

製造業の生産性を高めるうえで、注力すべきポイントがいくつかあります。特に重要度の高いポイントとして、下記の 5 点を検討しておくことが大切です。

適切なコミュニケーション

適切な手段・頻度・タイミングでコミュニケーションを図るための仕組みや体制を整えることは、生産性を高めるうえで特に重要なポイントと言えます。
製品が完成し、市場に供給されるまでには多くの人が関わることになります。各製造工程に携わる部門間で連携を図り、協力しながら業務を進めなければなりません。

コミュニケーションの過不足は、作業効率や品質の低下を招きます。複数部署間で必要な連絡や報告をいつでもやり取りできるよう、環境を整えていく必要があるでしょう。

人材の確保と育成・定着

将来的に労働人口が減少していくことがわかっている以上、人材の確保・育成・定着はどの企業にとっても重要なポイントとなるはずです。

特定の工程や作業に精通した人材を育成していくことも重要ですが、同時に従業員の多能工化を推進することも求められます。 1 人の従業員が複数の業務を担えるようになることで、突発的な欠員に対応できるだけでなく、製造工程の全体像に対する理解も深まります。従業員の多能工化は、製造業における人材不足の解決策のひとつとなるはずです。

5S の徹底

生産性を高めるには、従来から製造業で広く知られてきた基本の「5S」を忠実に守っていくことも重要です。 5S とは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」のことで、これらを徹底し、製造工程における 3M(ムリ・ムダ・ムラ)をできる限り削減することが生産性の向上につながります。

例えば、材料や部品が所定の位置に保管されているか、必要な道具がいつでも使えるよう整備された状態になっているか、といった基本を改めて点検してください。定期的に点検を実施し、必要に応じて担当者を指導することによって、 5S の重要性が現場に浸透していくはずです。

SOP(標準作業手順書)の改善

現在運用している SOP(標準作業手順書)を見直し、適宜改善していくことも大切です。長年作業に携わっているベテランの従業員しか理解できないようでは、 SOP としての機能を果たしている状態とはいえません。就業年数の浅い従業員でも容易に理解でき、標準的な作業手順を習得できるように改善していく必要があります。

工程によっては、文章だけでなく画像や動画を活用するのもひとつの方法です。優れた事例は社内で共有し、誰にでもわかりやすい SOP になるよう改善を重ねていきましょう。

IT ツールの導入、設備のアップデート

IT ツールの導入や新たな設備へのアップデートを行うことによって、生産性の向上につながる場合もあります。例えば集計・分析を自動化したり、従来は紙ベースの伝票や指示書を活用していた工程をデジタルデータに置き換えたりすることで、業務効率化や人的ミスの防止に役立つからです。

新たなツールの導入や設備のアップデートにはコストがかかるものの、長い目で見ると費用対効果が得られるケースは少なくありません。中長期的な視点でコストをとらえ、設備投資をすべきか判断することが大切です。

製造業の生産性を高める手順

製造業の生産性を高めるには、段階を踏んで施策を進めていく必要があります。具体的には、次の 4 ステップに沿って着実に改善を図っていきましょう。

1. 目標を設定する

生産性の向上を図るには、まず、目標を設定することが重要です。そのためのアプローチには、いくつかの方向性が考えられます。

ただし、いずれのアプローチにおいても「削減ありき」「抑制ありき」で取り組むのは望ましくありません。製品の品質や安定供給に影響を及ぼさないよう、無理のない目標を設定する必要があります。

2. 業務の課題を洗い出す

次に、設定した目標を達成するために解決すべき課題を洗い出していきます。現状の業務を可視化し、ボトルネックとなっている可能性の高い工程を特定する必要があります。各工程に要している作業時間やコストなど、定量的な数値で比較することで先入観を排して分析するのがポイントです。従業員が現状作業を進めにくいと感じている点など、現場の意見もヒアリングしながら課題を抽出していくことをおすすめします。

3. 洗い出した課題をもとに改善施策を検討する

現状で、ボトルネックとなっている工程や、改善が可能と思われる工程が明らかになったら、それぞれの課題に優先順位をつけていきます。今すぐにでも改善に取り組める課題と、継続的な改善施策が必要となる課題に分けて考えていくとスムーズです。

改善施策には、作業プロセスの改善や人員配置の変更、 SOP の改善、新たなツール・設備の導入など、さまざまなアプローチが考えられます。生産性向上や作業効率の改善が目的であることを念頭に置き、効果が出やすい施策から優先的に取り組むことが大切です。

4. 改善施策に適した IT ツールやシステムを導入、設備の改善をする

改善施策によっては、 IT ツールやシステムの導入、あるいは設備の改善が必要になる場合があります。導入に際しては、自社の課題解決に役立つ IT ツールやシステムは積極的に活用を検討し、費用対効果を見極めることが大切です。

重要なポイントとして、 IT ツール・システムの導入や設備改善ありきで施策を進めては逆効果です。あくまでも課題が先にあり、課題を解決するための手段として IT ツール・システムの導入や設備投資を検討するのが本来の順序です。設備投資をしただけで生産性向上のための取り組みが完了したものと錯覚しないよう、注意する必要があります。

社内のコミュニケーションをスムーズにする Slack

製造業の生産性を高めるうえで、コミュニケーションに関する課題を解決することは重要なポイントのひとつです。部署内や部門間のコミュニケーションをスムーズにするツールの導入を検討している事業者には、コミュニケーションを円滑にし、生産性を高めるインテリジェントプロダクティビティプラットフォーム Slack の導入をおすすめします。

状況に応じてコミュニケーション方法を選択できる

Slack には 1 対 1 でやり取りができる「ダイレクトメッセージ(DM)」のほか、複数名での情報共有が可能な「チャンネル」を活用したグループチャット、チャットから音声・ビデオ通話への切り替えが簡単にできる「ハドルミーティング」などの機能が備わっています。状況に応じて最適なコミュニケーション方法を柔軟に選べるため、社内のコミュニケーションがより円滑に、かつ活発になるでしょう。

例えば、チャットでは説明が難しい入り組んだ話題になった際には、ハドルミーティングに切り替えて音声やビデオでやりとりができます。図を見ながら説明する必要がある場合には、画面共有を活用することで、円滑なコミュニケーションを図ることができます。従来は電話やメール、対面でのやり取りに終始していた現場であれば、コミュニケーションのあり方を大きく改善することも可能です。

業務に関連するナレッジ・マニュアル・SOP の蓄積

Slack には書式付きコンテンツを手軽に作成できる Slack canvas 機能が付随しています。業務に関連するナレッジやマニュアル、 SOP を Slack canvas で作成・共有できるだけでなく、過去に作成したコンテンツの蓄積にも活用可能です。

また、短い動画や音声のクリップを共有・蓄積することもできるため、文字ベース以外での SOP 作成にも対応できます。製造工程の標準化や多能工化を目指す事業者にとって、多岐にわたる活用が期待できるでしょう。

各種ツールと連携させることで業務の効率化も図れる

Slack は 2,600 種類を超えるツールと連携して利用できます。既存のツールを Slack に集約させることで、業務に必要なあらゆる情報にすぐにアクセス可能となります。

Slack は国際的なセキュリティ基準を満たしたツールのため、社内の機密情報を扱うツールとも安心して連携できます。製品や企画に関する社内情報など、取り扱いに注意が必要な情報であっても、 Slack を活用することで安全に共有可能です。

製造業の生産性を向上させ、競争力を上げよう

製造業における生産性向上は、労働人口の減少や産業のグローバル化に伴い日に日に重要度を増しています。将来にわたって競争力を維持・向上させ、持続可能な事業を築いていくためにも、生産性を高めるための取り組みにできるだけ早く着手することが大切です。

今回紹介したポイントや手順を参考に、ぜひ生産性向上を実現するための取り組みを推進してください。生産性向上に向けた取り組みが実を結べば、競争力の向上にもつながるでしょう。

よくある質問

製造業の特性を踏まえた場合、生産性を向上させることで、限られた人員で質の高い仕事をこなせるようになり、品質を安定・向上させることが可能です。また、より少ない人的・物的リソースで質の高い製品を生産できるため、コスト削減にもつながるでしょう。限られた人的リソースの有効活用につながるため、人材不足を補うこともできます。こうしたリソースを有効活用すれば、高い付加価値を生み出せるようになり、競争力も強化できます。これらのメリットを得られることから、製造業こそ生産性向上に取り組む意義があるといえます。
製造業の生産性を高めるうえで、注力すべきポイントがあります。まずは、適切な手段・頻度・タイミングでコミュニケーションを図る仕組みの整備し、適切なコミュニケーションを図りましょう。また、従業員の多能工化を推進することで、人材の確保・定着が可能となります。製造工程におけるムリ・ムダ・ムラをできる限り削減による5S の徹底や、 SOP(標準作業手順書)の改善も生産性を向上させるための重要なポイントです。さらに、 IT ツールの導入、設備のアップデートをすれば、業務効率化や人的ミスの防止にもつながります。

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うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。

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