さまざまなシステムを適切な環境で運用するには、「プロビジョニング」が必須です。しかし、非 IT 業界の方々にとってプロビジョニングが何を意味しているのか、言葉の定義や必要性がわかりにくい面もあるでしょう。
今回は、プロビジョニングの定義や必要性、主な種類についてわかりやすく解説します。クラウド技術の進歩により注目されている「シンプロビジョニング」にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
プロビジョニングの概要
プロビジョニングは主に IT 業界で使われている用語で、 IT インフラ設備を準備・設定することを指します。本来は「規定」や「準備」という意味を表す英語であることを押さえておくと、理解しやすいのではないでしょうか。
元々、プロビジョニングは通信分野で一般的に使われてきた用語でした。ユーザーのネットワーク利用ができるだけスムーズになるよう、適切なハードウェア・ソフトウェアを用意することをプロビジョニングと呼んでいたのです。
しかし、近年では、プロビジョニングの対象は、 IT インフラ全般に広がっています。ユーザーが設備やサービスをすぐに利用できるよう、適切な準備を整えることがプロビジョニングにあたると捉えてください。
プロビジョニングの必要性
通信分野から IT 分野へと、プロビジョニングの領域が広がっていったのは前述のとおりです。では、なぜ IT インフラにはプロビジョニングが必要とされているのでしょうか。主な理由として、下記の 2 点が挙げられます。
インターネットの浸透
現代社会で活用されている IT インフラの多くは、インターネットに接続されています。ネットワークに接続することなく、単独で利用する機器を「スタンドアローン」と呼ぶことがあるように、ネットワークと完全に切り離された機器のほうが少数になっているのが実情です。
インターネットに接続されたシステムやツールを利用するには、各種設定を行う必要があります。ユーザーアカウント設定のほか、サーバーの割り当てや各種セキュリティ設定などを行うことで、システムやツールを利用できる状態になるからです。
このように、購入・契約したシステムやツールを利用し始めるには、設定や準備が必須となっていることが、プロビジョニングが必要とされている理由のひとつといえます。
スマートフォンの普及
プロビジョニングの必要性が高まっているもうひとつの要因は、スマートフォンの普及です。手のひらに収まるサイズのコンピューターともいえるスマートフォンは、私たちにとってなくてはならない重要な情報インフラのひとつとなっています。ビジネスシーンにおいても、スマートフォンを活用して情報のやりとりを行う機会が格段に増えつつあるのです。
こうした背景から、スマートフォンを IT インフラに含めて準備や設計を行うことが求められています。スマートフォンは基本的に 1 人に 1 台を割り当てる機器であることから、 2 段階認証などユーザーを識別するための対策を講じる必要性が高まっています。スマートフォンの普及は、 IT インフラにおけるプロビジョニングの必要性をさらに押し上げた要因のひとつです。
プロビジョニングの種類
プロビジョニングが指し示す範囲は非常に幅広く、さまざまな領域で用いられている言葉です。プロビジョニングの主な種類を押さえておきましょう。
サーバープロビジョニング
サーバープロビジョニングとは、需要に合わせてサーバーを設定・供給することを指します。ネットワークやシステムの設定を行うことで、サーバーと各種機器とのやりとりができる状態にすることです。
サーバーの運用には障害や自然災害など、不測の事態が付き物です。さまざまなリスクが発生し得ることを前提に、障害発生時の復旧作業や原因究明、場合によってはサーバーの割り当て変更なども含めて構築・設計・提供する必要があります。単にサーバーを構築するだけでなく、導入後の運用も見据えて設計することがサーバープロビジョニングに求められます。
クラウドプロビジョニング
近年では、クラウドサービスとして提供されるツール・システムも増えています。クラウドサービスの導入時にも、パスワードやメールアドレスなどの設定を行うほか、目的に応じてスムーズに活用できるようにするには、サービス上でのセットアップを行わなくてはなりません。こうしたサービスの設定・供給に伴う一連の役割を、クラウドプロビジョニングといいます。
また、クラウドサービスを新たに導入する場合、既存のツールからデータなどを移行したり、従来から利用していたシステムと連携させたりする必要が生じる場合もあるかもしれません。こうした各種設定を行うことで、目的に応じたクラウド活用が可能になるよう準備を整える必要があります。
ネットワークプロビジョニング
ネットワークプロビジョニングとは、ネットワークに焦点をあてたプロビジョニングのことを指します。ルーターやスイッチ、ファイヤーウォールなどのセットアップをはじめ、 IP アドレスの割り当てや運用上のヘルスチェックなどが主な役割です。
通信事業者にとってネットワークプロビジョニングは、電話番号の割り当てや配線の設置といった通信サービスの提供を表していました。 IT インフラにおいては、ネットワーク運用全般について各種設定や構築を表す言葉としてプロビジョニングという言葉が用いられています。
ユーザープロビジョニング
ユーザープロビジョニングとは、ツールやシステムを利用する際に必要なアカウントの生成や、 ID 管理などの保守を行うことを指します。
例えば、同じツール内でも特定の情報にアクセスできる権限を持つユーザーとそうでないユーザーを分ける必要があるケースは少なくありません。人事などの関連部署と協力しながら、ユーザーごとに適した利用ができるよう、環境を整えるのがユーザープロビジョニングの役割です。
アカウントや ID の管理を行うことから、ユーザープロビジョニングは「アカウントプロビジョニング」「ID プロビジョニング」と呼ばれているケースも見られます。また、特にユーザーのアクセス権を取り消すことを指して、「デプロビジョニング」という言葉が用いられるケースもあります。
仮想化技術を用いるシンプロビジョニング
クラウド技術が広く活用されるようになった現代においては、「シンプロビジョニング」という新たなプロビジョニングの在り方も登場しています。シン(thin)は、英語で「薄い」という意味を持ちますが、シンプロビジョニングにおいては、機器に搭載されたストレージを仮想化して、空き容量を活用する技術を表す言葉です。シンプロビジョニングの役割や、具体的なメリットについて押さえておきましょう。
シンプロビジョニングの役割
ビジネスシーンで扱われるデータサイズは、年々増加しています。従来、 IT インフラを構築する際にはユーザーが必要とする容量をサーバーや機器に割り当て、確保しておかなければなりませんでした。ストレージ容量が大きくなるほどコストも高くなることから、企業としてはできるだけストレージにデッドスペースを作らず、効率良く活用することが求められます。
オンラインストレージなどのクラウド技術を活用することにより、物理的なストレージ容量には実際に使用する分だけを割り当て、残りの容量は仮想化することができます。
このように、仮想化技術を用いることで物理ストレージを効率良く活用できるだけでなく、将来的に増加する可能性の高い情報を無理なく保持できるのです。
シンプロビジョニングのメリット
シンプロビジョニングを行うことによって、ストレージ容量に無駄が生じるのを極力抑え、効率良く活用しやすくなります。将来的に使用する容量が増えたとしても、増加した分を仮想化されたストレージから物理ストレージに割り当てるなど、柔軟な対応が可能になるからです。
また、ストレージの導入や運用にかかるコストを削減できるというメリットもあります。導入時点で必要とされる物理容量を算出しておくことにより、必要最小限のストレージのみ導入できるからです。ストレージは大型化するほど稼働時の消費電力も高くなるため、運用コストもかさみます。シンプロビジョニングを実施しておくことにより、中長期的な運用コストを削減する効果も得られるのです。
プロビジョニングの意義や目的を正しく捉えよう
プロビジョニングとは、 IT インフラを準備・設定する際に行われる一連のプロセスを指します。ユーザーが設備やサービスを快適に利用できるようにするには、欠かせないプロセスといえるでしょう。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひプロビジョニングに対する理解を深めてください。新たにツールやシステムを導入する際にはベンダーやコンサルタントとのやりとりがスムーズになるだけでなく、自社が必要とする要件を満たしたシステムを実現するうえで役立つはずです。
よくある質問
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