「エンジニアの人数を増やしても処理能力は増えない」と言われることがありますが、そこには誤解があります。増やしても意味がないのは、情報を探し回る時間です。チームの規模が大きくなればなるほど、過去のナレッジを見つけたり、ツールを切り替えたり、同じ質問を何度も繰り返したり……といった時間や手間が増えていくのです。
この問題を解決するために、Salesforce のチームは Slack に「エンジニアリングエージェント」を導入しました。Agentforce をベースに構築され、Data Cloud や MuleSoft、Heroku とも統合されているエンジニアリングエージェントは、エンジニアたちがすでに共同作業しているチャンネルに直接組み込まれ、エンジニアが日々使っているツールと直接連携して、技術的な質問への回答、テストツールの自動化、エンジニアリングシステムへの各種サービスの導入支援など、さまざまな場面で迅速かつ信頼性の高いサポートを提供します。これにより、エンジニアは本当に重要な業務に専念できるようになるはずです。
その成果は驚くべきものでした。集中力の妨げになる要素が減り、いち早く課題を解決できるようになって、実際に成果につながる仕事に多くの時間を使えるようになったのです。エンジニアリングエージェントが扱ったサポート案件は、わずか 6 か月で 18,000 件にも上りました。
必要なときに必要な場所で、エンジニアをサポート
経験を積んだエンジニアは、問い合わせへの迅速な対応、トラブルシューティング、ガイダンスの提供といった「オンコール対応」を任されることが多くなります。Salesforce のチームは、この対応に 1 件あたり 10 分の時間がかかっており、それがシニアエンジニアの貴重な時間をトータルで何時間も奪っていることを割り出しました。
そこに Agentforce in Slack を導入したことで、今ではエンジニアリングエージェントがそのような問い合わせの最初の窓口になっています。情報やサポートを必要とするエンジニアは、チャンネルや DM でエージェントとやり取りして、24 時間 365 日いつでも迅速に、質問への正確な回答や的確なガイダンスを得ることができます。

Slack 上で動作する Agentforce を基盤とした「エンジニアリングエージェント」により、エンジニアは専門特化型エージェントからの支援を得られます。
Salesforce のチームは、エンジニアリングエージェントを「エージェントのエージェント」として機能するようにカスタマイズ。チームメンバーが質問すると、エンジニアリングエージェントがトピックに応じてその質問を適切な専門エージェントに振り分けます。得られた回答は、Slack 上での会話形式で依頼者に返され、関連リソースへのリンクや回答の根拠となる情報も提供されます。この方法により、エンジニアリングチームの誰もが、専門性の高いナレッジに直感的かつ容易にアクセスできるようになります。質問を繰り返して同僚の集中力や生産性を損なうようなこともありません。
正確で適切な回答を提供できるよう、エンジニアリングエージェントは、Slack、Google ドキュメント、Confluence、GitHub などのソースから、構造化 / 非構造化データを継続的に取り込んでいます。そのデータは毎日更新されるため、エージェントは常に最新の情報を得て、正確な回答を返すことができます。
エンジニアの時間を取り戻す
また、エンジニアリングエージェントは、質問に答えるだけでなく、MuleSoft との連携によって日々のタスクをインテリジェントに調整し、アクションを実行して、チームのワークフローを合理化します。OrG リクエストの作成やワークスペースのライフサイクル管理といった日常業務をエージェントが担ってくれるため、エンジニアは繰り返しの作業から解放され、システム全体の運用もスムーズになります。
さらにエージェントは、ビルドの失敗やマージの競合といった重大なシステムイベントが発生した際に、いち早くチームに警告します。これにより、エンジニアは状況をすばやく把握して対応でき、業務の中断を最小限に抑えられます。
エンジニアが価値の高い仕事に集中できるよう支援
エンジニアリングエージェントは、Engineering 360 チームをはじめ、Salesforce の広範なエンジニアリング組織にとって欠かせない存在になっています。
実際にわずか 6 か月で、エンジニアリングエージェントは 3,500 人のユーザーによる 18,000 件以上の会話に対応しました。1 つのチャンネルあたり月平均で 130 件の質問に対応し、約 30 時間を節約している計算になります。3 月の実績に基づいて試算すると、1 年間で 50,000 件以上の会話が不要になり、17,000 時間を節約できる見込みです。これはフルタイムの従業員 8 人以上、140 万ドルに相当します。
私たちは、独自の社内向け Agentforce の構築を引き続き進め、現在 18 件のデータソースを 30~40 件の専門エージェントに拡大して 700 件以上の Slack チャンネルに展開することで、年間 27 万 5,000 時間以上を節約できると見込んでいます。これはエンジニア 130 人分以上の業務時間に相当します。組織のエンジニアリングチーム全体で導入を進めれば、この取り組みによって年間 2,000 万ドルを節約できる計算です。
エンジニアリングエージェントは、作業効率を高めるだけでなく、エンジニアが必要なナレッジをいつでも利用できるようにして、価値の高い仕事に集中できるよう支援します。私たちにとって Agentforce は単なるツールではなく、いつもそばにいるチームメイトなのです。
Slack でエンジニアリングエージェントが強力なデジタルチームメイトに
エンジニアリング部門のリーダーとして、Agentforce を選択し、それをチームがすでにコラボレーションの場として利用している Slack に導入することは、戦略的な決断でした。そうすることで、自分たちのニーズにぴったり合うようエージェントをカスタマイズでき、データのコントロールも維持できます。エンジニアリングエージェントの導入は、Slack と AI を連携させることで、サポート業務を変革し、業務フローを最適化して、コラボレーションしやすい環境を築けることを示す好例です。エンジニアリング部門の生産性を高め、サポート業務を刷新したいと考える企業の IT チームにとって、Slack へのエージェントの導入は、まさに効果的な一手となるでしょう。
Agentforce in Slack の利用の詳細について、ぜひエキスパートにお問い合わせください。