ROI とは?そのほかの指標との違いやメリット・デメリットを解説
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ROI とは?そのほかの指標との違いやメリット・デメリットを解説

事業における費用対効果の検証に用いられる指標のひとつが ROI です。 ROI とはどのような指標か、算出するメリット・デメリットのほか、 ROI を向上させるための施策を解説します。

Slack チーム一同作成2023年4月12日

事業において、費用対効果は重要な視点のひとつです。投資に対してどれだけの利益や効果が得られたのかを客観的に検証することは、以降の投資判断をあやまらないためにも欠かせないプロセスといえるでしょう。

今回は、費用対効果の検証に用いられる指標である「ROI」について解説します。 ROI を求めるメリット・デメリットのほか、 ROI を効果的に活用する方法にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。

ROI とは投資に対する利益率を示す指標

ROI は Return On Investment の略で、「投資収益率」や「投資利益率」と訳されます。投資に対してどれだけの利益を得られたのかを把握するための指標です。 ROI の数値が高いほど投資効果が高く、成功している投資ととらえることができます。

ROI と似た用語として「コストパフォーマンス」が挙げられます。支払った費用に対して得られる効果を表す点は ROI と共通していますが、コストパフォーマンスは一般消費者の視点で用いられるケースが多い言葉です。事業での費用対効果や投資効果を表す際には、 ROI を用いる方が適切でしょう。

ROI の計算方法

ROI を求めるには、次の計算式を用います。

利益金額とは、売上から売上原価と投資金額を差し引いた粗利(売上総利益)のことです。計算例として、次の 2 つのケースを考えてみましょう。

一見すると事例 1 のほうが多くの利益を得られているように思えますが、 ROI がより高いのは事例 2 です。つまり、事例 2 のほうが費用対効果の高い投資だったと判断できます。このように、利益金額ではなく投資効果に着目するのが ROI の基本的な考え方です。

ROI とその他の指標の違い

ROI 以外にも、費用対効果を測るための指標にはいくつかの種類があります。 ROI とその他の指標の違いについて整理しておきましょう。

ROAS との違い

ROAS(Return On Advertising Spend)とは、「広告の費用対効果」と訳される用語で、広告費用の回収率を表す指標です。

ROI は、利益をもとに算出するのに対して、 ROAS は売上をもとに算出する点が大きく異なります。したがって、 ROI と ROAS では損益分岐点にも大きな違いが生じます。

投資が功を奏し事業が黒字化するには、 ROI が 0 % 以上になることが条件です。一方、 ROAS は 100 % 以上にならなければ黒字化は実現しません。なお、 ROAS は利益を考慮していないという点に注意しましょう。

ROE との違い

ROE(Return On Equity)とは、「自己資本利益率」を意味する用語です。株主が出資した金額によって、企業がどれだけの当期純利益を得たのかを数値化するための財務指標です。

ROI が特定の施策効果を検証するために用いられるのに対して、 ROE は主に株主や投資家が企業の「稼ぐ能力」を判断する際に用います。また、自己資本が分母となることから、負債を含めた収益性を把握するために、ステークホルダーが ROE を活用するケースも少なくありません。

ROIC との違い

ROIC(Return On Invested Capital)は、「投下資本利益率」を表します。企業が調達した資金でどれだけの利益を上げられたかを知るために用いられる指標です。

実効税率とは、法人税・法人住民税・法人事業税など、企業が実質的に負担する税率です。

ROI が特定の事業における費用対効果を示しているのに対して、 ROIC は企業全体の収益性を示している点が大きく異なります。企業が調達した資金をどれだけ効果的に活用できているかを把握するのが、 ROIC を算出する主な目的と捉えてよいでしょう。

ROA との違い

ROA(Return On Assets)は総資産利益率を表します。総資産に対して企業の収益性がどの程度高いかを知る際に活用される指標です。

総資産には自己資本のほか、借入金や社債なども含まれています。より少ない総資産で多くの利益を上げられれば、それだけ収益性の高い事業を営んでいると判断できるでしょう。一般的に、 ROA は 5 % 程度が収益性の高い優良企業の目安と考えられています。

ROI が特定の事業や施策の費用対効果を測るために活用されるのに対して、 ROA は企業全体の経営効率を把握するために用いられる点が大きな違いです。

ROMI との違い

ROMI(Return on Marketing Investment)とは、「マーケティング投資回収率」を意味する言葉です。ある特定のマーケティングにかけた費用の費用対効果を示す指標です。

利益は、企業全体の売上から算出される利益ではなく、特定のマーケティング施策によって得た利益を指します。

そのマーケティング施策によって、どれくらいの見込み顧客が顧客となったのか、どれだけの成約数を得たのかなど、その施策の効果を数値化するのが ROMI です。マーケティングという、これまで効果を数値化しにくかった分野における重要な指標として、主流になりつつあります。

ROI は、企業の資本に対する投資の効果を測る指標ですが、 ROMI は、あくまでも特定のマーケティング施策に対する投資の効果を表します。

ROI を求めるメリット

ROI は、投資に対する効果を測定する指標です。つまり、自社の資本をどれだけ効率良く活かすことができたのかを測る指標でもあるといえます。

続いては、 ROI を求めるメリットや、測定結果をどのように業務に活かすことができるのかについて見ていきましょう。

事業の効果測定

ROI を求めることによって、その事業がどの程度の効果を上げているのか、客観的な指標をもとに判断しやすくなります。単純に利益金額の大小で判断するのではなく、投資効果を算出したうえで、事業の成否を判断できるからです。

始めは小規模で始めた事業であっても、 ROI が高ければ事業を拡大する意義があると考えられます。対して、一見すると多くの利益をもたらしているように映る事業であっても、 ROI が低ければ、その事業モデルや収益構造を見直す必要があると判断することができるでしょう。

事業や施策の効果の比較

ROI は、事業ごとに算出することから、異なる事業や施策の効果を比較する際に役立ちます。規模や性質の異なる事業・施策であっても、投資効果を数値で把握することによって成果を可視化することが可能です。

例えば、既存商品と新たに発売した商品の ROI をそれぞれ算出することで、新商品への投資が妥当であるかを判断しやすくなります。あるいは、商品ラインナップを整理する際、どの商品を残し、どの商品を削るかを判断する際にも ROI は参考指標のひとつとなるはずです。

業務改善のきっかけ

ROI をより広義に捉えると、事業や施策ごとの生産性を可視化できる指標としても活用できます。限られた労務時間でどれだけの利益を上げられたのか、労務費に対する利益として捉えることができるからです。

単位時間あたりの利益を高めるには、より効率的に仕事を進める必要があります。投資利益率を可視化することで、現状の作業工程が利益を生み出しているのか、あるいは利益を圧迫しているのか客観的に判断しやすくなります。結果として、業務改善に取り組むきっかけにもなるでしょう。

ROI を求めるデメリット

ROI は決して万能な指標ではなく、評価すべき対象によっては、 ROI 以外の指標を用いるほうが適している場合もあります。下記に挙げる 2 点は、 ROI による評価・分析は不向きなケースです。

長期的な評価に適していない

ROI の算出に用いる利益金額や投資金額は、あくまでも現時点のものです。現状の投資収益率・投資利益率は算出できても、その事業が今後どのように成長・衰退していくかは加味されていません。 ROI は、事業や施策の長期的な投資効果の評価には適していないのです。

実際、事業や施策によっては短期的な利益につながらないケースは少なくありません。単純に ROI だけで費用対効果を判断してしまうと、長い目で見た場合に続ける意義のある事業や施策を安易に切り捨てる原因にもなります。 ROI は、現状の投資効果のみ示している点を十分に理解しておくことが大切です。

数値化できない価値を評価できない

ROI は、利益金額と投資金額をもとに算出されるため、数値となって表れている価値しか評価できません。商品やサービスの知名度や、企業イメージといった定性的な情報は加味されていない点に注意する必要があります。

例えば、ある施策が現状、十分な利益確保に至っていないケースを考えてみましょう。 ROI を算出すれば、費用対効果が得られていない施策と判断せざるをえません。しかし、施策によって企業イメージが徐々に向上しているのであれば、その施策を継続することによって将来的な売上伸張に寄与する可能性もあります。

このように、 ROI は定性的な情報は評価できないことを念頭に置き、費用対効果の検証時には短絡的な判断を下さないよう注意すること重要です。

ROI を向上させる方法とは?

ROI を向上させるには、具体的にどのような取り組みをすれば良いのでしょうか。 ROI を最大化するための主な施策について解説します。

売上増加

ROI を算出する際の分子は利益金額であることから、利益をより大きくすることが ROI の向上につながります。利益を高めるためにまず考えるべきことは、売上の増加です。

具体的には、新規顧客の獲得やリピート顧客の増加、顧客単価アップなどを実現するための施策を講じることが大切です。

現状、 ROI が高い商品に関しては、事業戦略や販売施策などが効果的に機能している可能性が高いと考えられます。 ROI をさらに向上させることを目指し、売上増強を図りましょう。

コスト削減

売上増加に向けた施策と並行して、コスト削減を実現するための取り組みも検討する必要があります。同じ売上高でも、仕入原価や製造原価、販売原価などを抑制できれば、より多くの利益を確保できます。

ただし、コスト削減に向けた施策は、売上増強につながる施策と併せて検討することが大切です。たとえコストを削減できたとしても、商品の品質が低下したり、顧客サービスが悪化したりするようでは本末転倒です。施策を講じる目的は、 ROI の最大化であることを念頭に置き、商品やサービスの品質を損なわないよう留意する必要があります。

ビジネスツールの活用

ROI を向上させるには、ビジネスツールを活用して施策を効果的に実行していくことも重要なポイントのひとつです。

例えば、 MA(Marketing Automation)を導入し、マーケティング施策を自動化できれば、より創造的な業務に従業員のリソースを投じることができるため、 ROI の向上につながります。

また、コミュニケーションツールを導入して、リモートでもスムーズに業務を進められる環境を構築することも大切です。 Slack を導入することで、メールのやりとりに要していた時間のロスや情報の見落としといったリスクを回避しやすくなるでしょう。 Slack をほかのビジネスツールと連携すれば、業務効率が改善し、労務費の削減にもつながります。

ROI の向上と業務の円滑化は深く関わっているため、ビジネスツールの導入・活用は積極的に検討しておくことをおすすめします。

ROI を活用して費用対効果の客観性を高めよう

ROI は、事業や施策の投資収益率・投資利益率を測るための指標です。しかし、現状の費用対効果を客観的に把握できる一方で、長期的な評価や定性的な価値の評価には適していません。 ROI が活用できる場面と活用に適さない場面を使い分け、費用対効果の可視化に役立てていくことが大切です。

今回、紹介してきたポイントを参考に、ぜひ施策の改善や業務効率化を推進するきっかけとして ROI を活用してください。 ROI のメリット面を活かすことで、より適切な投資の意思決定をしやすくなるはずです。

よくある質問

ROI を求めることで、その事業がどの程度の効果を上げているのか、客観的な指標をもとに判断しやすくなるというメリットがあります。また、 ROI は、事業ごとに算出する指標のため、異なる事業や施策の効果を比較する際にも役立ちます。事業や施策ごとの生産性を可視化できる指標として活用することで、業務改善のきっかけをつかむことができるでしょう。対して、 ROI は長期的な評価には適していません。サービスや商品の知名度、イメージのような、数値化できない定性的な情報は加味されないという点には注意が必要です。
ROI を算出する際の分子は利益金額のため、 ROI を向上させるには売上を増加し、利益を大きくすることを考えましょう。ただし、売上増加と並行して、コストを削減するための施策も検討する必要があります。同じ売上高でも、仕入原価や製造原価、販売原価などを抑制できれば、より多くの利益を確保できます。ただし、コストを削減したことで、商品やサービスの質が低下するようでは本末転倒です。 ROI の最大化が目的であることを念頭に、商品やサービスの品質は損なわずに原価コストを抑える施策を講じるようにしてください。

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うーん、システムがなにか不具合を起こしてるみたいです。後でもう一度お試しください。

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