2001 年に当時大学生のメンバーによって創業された株式会社リバネスは、科学技術分野の研究者が集結し、教育、人材育成、研究、創業に関する企画・研究・コンサルティング業務などの事業を手掛ける企業です。
経営理念として「科学技術の発展と地球貢献を実現する。」を、コアコンピタンスには「サイエンスとテクノロジーをわかりやすく伝える。」を掲げ、企業や研究機関との共創により、さまざまな課題解決に取り組んできました。
同社では、Slack と Salesforce 両者の長所を活かしてコラボレーションすることによって、業務効率化や生産性向上だけではなく、従業員の働きやすさにもつながるイノベーションを実現しています。
Slack が「業務で最も利用するプラットフォーム」である理由
株式会社リバネスは、創業後順調に伸びるビジネスに比例して煩雑になる管理業務を解決するため、 Sales Cloud を 2014 年に採用し、その翌年の 2015 年にはコミュニケーションプラットフォームとして Slack を導入しています。
多くの従業員がオフィスではなく社外で業務を遂行することが多いリバネスでは、Slack 導入前は遠隔でのコミュニケーションを可能にする別のツールを利用していました。
しかし、そのツールでは話題にするトピックごとに部屋を作り、その部屋に人を招待する必要があったため、情報共有を行うべきメンバーに漏れが起こったり、その結果、プロジェクトに関わるメンバー間で情報の粒度にばらつきが発生する、というようなことが起こっていました。とはいえ、情報共有だけのためにメンバーを都度集めるようなことを行っていると、社外で業務を遂行するメンバーが多い同社の働き方では生産性が低下してしまいます。スピード感を維持して成長するため、従業員が必要な情報を簡単に入手できる環境構築が課題となっていました。
そこで、同社は新たなコミュニケーション基盤として、Slack の導入を検討しはじめます。同社取締役 CIO である吉田 丈治さんは当時について「人が増えて組織が拡大すると、部門が細分化しチームが増えていきます。そんな時にメンバー間の情報共有がうまくいかないと、サイロ化や分断を招き、結果、余計なコミュニケーションコストが発生します。Slack ならば、こうした課題を解決できるのではないかと考えました」と振り返ります。
また、同社では代表自ら、新しい情報やツールを試す機運があったことも後押しとなり、トップダウンで Slack の導入全社展開を進めることができました。
現在、リバネスでは Slack を活用して、関係者が自然な形で情報をインプットしたり、浸透していけるようなコミュニケーションの活性化が実現できています。
吉田さんは社内のスムーズな情報共有のために Slack を起点とする、さまざまなアプリケーションとの連携の仕組みを構築しました。 Slack は業務で最も利用するアプリとなっています。
「Slack は、Salesforce やサードパーティアプリ、自社開発ツールと適切に組み合わせることで、より効果的な使い方ができると感じています」
リバネスが実施する Salesforce と Slack の 3 つの連携例
リバネスでは、Salesforce と Slack のそれぞれの特徴を踏まえて使い分け、社内コミュニケーションやコラボレーションの活性化を実現しています。
吉田さんは 2 つのツールについてこう語ります。「Slack は情報の浸透性が高いため、コミュニケーション基盤として利用しています。業務上重要な情報は何回も繰り返して流し、多くの従業員の目に入れることができます。対して、Salesforce は情報の蓄積が得意で、過去ログをもとにしたレポートも簡単に作成・保存することができるため、弊社ではすべての承認・申請のワークフローに Salesforce を使っています。ただ、情報は蓄積するだけでは浸透していきません。いくらスピーディに浸透することができても蓄積されなければ消えていきます。しかし、この 2 つのツールを連携することによって情報の浸透と蓄積を同時に行うことができるのです」。
実際に、リバネスでは、Salesforce と Slack を次の 3 パターンのように組み合わせて運用しています。
まず 1 つ目は、「Salesforce から Slack への連携」です。リバネスでは、Salesforce をデータ解析基盤として活用し、独自のプログラミング言語である Apex でデータの蓄積や処理、解析を実施しています。そこから Slack API を通すことで、適切なチャンネルに適切なタイミングで通知する仕組みを構築しています。
吉田さんは「人間は『ないものを見つける』という作業がとても苦手です。たとえば、各メンバーからの週報が提出されているかを確認するような作業では、個々人の提出状況を確認するのは非常に手間がかかります。
そこで、週報の提出状況を確認し、未提出者に Slack で自動的にメンションする仕組みをプログラミングで構築しました。これによって、自動処理で手間がなくなったことはもちろん、チェックをする人とされる人の間で角が立たなくなるという思わぬ効果もありました」と説明します。
2 つ目の連携方法が「Slack から Salesforce への連携」です。Slack をインターフェースとして必要な情報にアクセスし、日々のちょっとした作業・業務であれば Salesforce を開くことなく Slack 上で完結できる取り組みを進めています。
その 1 つが勤怠の打刻です。リバネスでは Salesforce と連携する勤怠アプリを導入しています。一定時刻までに打刻がない場合に Slack に通知される仕組みですが、その際、Slack で数字を入力することで、自動的に Salesforce 側にレコードが反映され、Salesforce を開くことなく、打刻処理を完了することが可能となっています。
3 つ目の連携方法は『Salesforce → Slack → Salesforce という情報の相互連携』です。
リバネスでは、Slack と Salesforce 間で情報の相互循環を生み出すことで、社内の情報共有とともに意思決定のスピードも向上させています。
まず、 Sales Cloud で作成した情報がシステムに保存されるのと同時に Slack API に送信されます。すると Slack 上で、指定されたチャンネルに Sales Cloud で作成した内容が自動投稿される仕組みです。
たとえば、視覚的に分かりやすく情報を伝えたい場合は、Salesforce に接続した Tableau でダッシュボードを作成して、それを Slack に投稿して表示・共有することも可能です。
Slack に流れた情報に対して、メンバーが絵文字でリアクションしたり、コメントをしたりすると、その反応データが Salesforce API を介して、再び Salesforce に蓄積されます。そうすることで、それらのデータを他の Salesforce ツールで解析したり、レポートとして出力することもできます。
![](https://d34u8crftukxnk.cloudfront.net/slackpress/prod/sites/6/CS_salesforce.jpg?w=128&h=96&crop=1)
このように Slack は、Pardot や Tableau、CRM など Salesforce に接続するさまざまなアプリケーションとの連携を担うようになり、Salesforce で作成、分析されたデータが Slack へ通知、その通知を受けた反応を Salesforce へ戻し新たな情報へ活かすといった相互循環が生まれています。そうした有効活用によって、同社では Slack と Salesforce によるリアルタイムな情報連携が価値あるコミュニケーションを創り、社内の意思決定のスピードが確実に向上しています。
「当社では、Salesforce では情報の蓄積、Slack では情報の浸透という価値を重視しています。それぞれの特徴を踏まえて、上手に連携する仕組みを構築しないともったいないです」と吉田さんは連携のメリットを強調します。
「リアルタイムな情報連携で意思決定のスピードが確実に向上し、価値あるコミュニケーションを実現しています」
Slack コネクトによって社外との継続的な議論が可能に
リバネスでは Slack は社内だけではなく、外部組織との連携にも活用しています。たとえば、同社では 2021 年 5 月、知識で世界を変えていく人のための参加型プロジェクトである「リバネスユニバーシティ」を開始させました。このプロジェクトは、世界中の研究所、企業、教育現場と課題解決型のビジネスを生み出してきた同社の蓄積を外部に開放し、学生やベンチャー企業、大企業など所属にかかわらず、多様な専門性を持ち寄り、互いが学び合うことのできる場を構築することを目的としています。
リバネスユニバーシティでは、単に講義を行って終わりではなく、内容によっては継続的な議論が必要な課題も多くあります。アイデアをじっくりと長期的に醸成し、集合知を生み出すためには Slack コネクトが欠かせないといいます。
たとえば、メールを軸とする外部とのコミュニケーションでは、一言で済む要件であっても、冒頭にマナーとして挨拶文を添えるなど、外部関係者が多くなるほど冗長で意見を出すのが億劫になってしまいます。かといって、外部関係者が増えれば増えるほど定期的なミーティングも難しく、進め方に課題を感じていました。
吉田さんは「Slack コネクトでは、外部の関係者を招待でき、いつでも、どこからでも非同期で情報を共有することが可能です。挨拶文なども必要ないので、アイデアを気軽に投稿することができ、議論を活発化させることができます。継続的なコミュニケーションによって議論をさらに深めたり、より良い価値を生み出す企画が生まれる場として欠かせないものになっており、この事業の柱と言っていいくらいです」と強調します。
Slack の活用を続ける同社では現在、ボットを含む 100 アカウントによって 1 日当たり 3,000 ものポストが流れており、アクティブチャンネル数は常時 300 ほどが稼働しています。
吉田さんは「Slack はリバネスにとって業務で最も利用する No.1 アプリとなっています。多くの事業活動の源が Slack から生まれ、コストの何倍ものバリューを発揮しています。しかし、まだまだ可能性を秘めていると感じているので、今後も新たな活用方法を模索し、事業の成長へと繋げていきたいと思います」と締めくくりました。
「継続的なコミュニケーションによって議論をさらに深めたり、より良い価値を生み出す企画が生まれる場として欠かせないものになっており、この事業の柱と言っていいくらいです」