Nexomics は、オーストラリアで最先端のガン専門医療研究機関Peter MacCallum Cancer Centre(Peter Mac)における臨床検査サービスチームです。 同チームは病理検査部の一部門として、Nexomics 臨床試験や医療検査をサポートするために腫瘍の認定臨床検査を担っています。
ガンの病理検査結果を待つ患者や医師、研究者にとって、時間はとても重要です。患者のケアを組織の中心にする Nexomics では Slack を活用し、コミュニケーションを効率化して病理検査のプロセス改善を実現しました。 Nexomics は研究者とラボの検査助手で構成されていますが、チーム全体で Slack を導入後はやり取りがスムーズになったうえ、メンバーが責任を持って仕事を進めやすくなり、検査所要時間を全体的に短縮することができました。
「Slack を導入する前は、よくコミュニケーションのずれが起こっていました。さまざまなラボやオフィスで仕事をする間、FAX やメールに頼っていたからです。 Slack のおかげで、チームが 1 つにまとまることができました」
Slack チャンネルで血液検査が迅速に
病理検査ラボで最も難しいタスクの 1 つに、ほかの国から届けられた検体のトリアージがあります。さまざまな場所で働く複数のチームが大勢関わるケースが多く、ほとんどが通常の勤務時間外に届きます。 検体の検査は結果を届けるまでの時間が厳密です。また、臨床試験の検査は専門チームが担当します。
Slack 導入前は、コミュニケーションや検体のトリアージのプロセスが煩雑で、多くの時間がかかっていました。 各ラボとオフィス、その他のワークスペースは物理的に離れています。 ラボの中ではメールへのアクセスは制限され、メールを送るためにラボから出る場合は手袋を外し、ガウンを脱がなくてはなりません。 ここでは、チーム同士が直接コミュニケーションを取りづらいシステムになっていたのです。
「いつもラボに来ると、夜に届いたメールが大量に溜まっていたものです」と分子血液研究者の Anna Korczynski 氏は振り返ります。 「それらに目を通し、削除したり優先順位をつけたりするのに時間がかかっていました」。
検体を受け入れたあと、速やかに処理・分類しつつも完全な状態に保つことも簡単ではありませんでした。 医師や患者に結果を届けるために使うべき時間が、関係がないメールを分類するために費やされていたからです。
「私たちはラボの中で、できる限り迅速に動かなければいけません。 患者の役に立たないことは、ここでやるべきことではないのです」と Korczynski 氏は話します。
Slack 導入後も、研究者やラボの検査助手は受信トレイに送られた情報に引き続きアクセスすることができます。これまでと少し違うのは、情報が Slack チャンネルに整理されたという点です。 チャンネルによってやり取りされるメッセージがより短いバイトサイズとなり、メールの文面を練る必要がなくなりました。 これにより、緊急性が低い検体に対する追加テストのトリアージなど最大 1 時間かかっていたプランニングのプロセスが 5 分以内で済むようになったのです。 患者情報の機密性に変わりはありません。
Nexomics の前 General Manager of Pathology で現在は Peter Mac の Director of Strategy を務める David Lee 氏は、Slack によって研究者が以前よりも高品質の検査を効率よく行える環境ができたと話します。 今や Slack が業務に欠かせない要となっているのです。
「検査所要時間は重要です」と Lee 氏は続けます。 「その先には、特定のガン治療を受けられるかどうかを知るために結果を待っている患者がいるからです」。
さらに Slack によって、病理学者と研究者間で重要情報の共有にかかる時間が短くなりました。密閉されたラボから物理的に離れる必要がなくなったからです。
「Slack を使うようになって、ラボ内でのコミュニケーションがものすごくスムーズになりました」と話すのは、Nexomics で臨床試験を担当する研究者、Chloe McDermott 氏です。 「以前なら、検体を検証するのに適切なメンバーを探すために 1 日 1 時間は費やしていました。 でも今は Slack であっという間に見つけることができます」。
例えば週末に国外からの検体が Nexomics に届いた場合、時間的制約のあるケースについては #nexomics_samples チャンネルで専門チームにアラートが通知されます。 また、医師が同じ検体に対して追加検査をする必要があると判断した場合には、医師からのメールが #csr_requests に自動トリアージされます。大量にあるほかの未読のメールを処理するまで対応が 30 分遅れるなんてことはもうありません。 検体の量は限られているため、追加検査が時間内に行われない場合は別の検体を採取しなければならないことがあります。このことが結果的に治療の遅れにつながることもあるのです。
「Slack を使い始めて、メンバーがメール対応のためにラボでの作業を中断する必要がなくなり、 患者の治療に必要な検査結果を出すまでの時間を短縮できるようになりました」
組織カルチャーを育む推進力としての Slack
滅菌されたラボと一般的なオフィス間の物理的な壁は、スタッフがスムーズに仕事を進めるうえで別の課題となっていました。 ラボの研究者たちがコンピューターから離れていると、メールによる病院全体や部門全体の通知が見落とされていたのです。 ラボのスタッフは病院内のほかのメンバーとは違ってイントラネットに常時アクセスしていません。このことが、抜け漏れのないこまめな内部コミュニケーションを妨げていました。 当時行われていたラボスタッフ用の掲示板や冷蔵庫に貼った付箋といったその場しのぎのソリューションは、Slack の導入によって過去のものとなったのです。
「当時はコミュニケーションに明らかなずれがあり、それによって効率は上がらずカルチャーも強化できずにいました」と Lee 氏は語ります。「でも Slack を使うようになって、重要な通知を物理的にピンで留めたり、未読のままになるメールを送信したりすることはなくなり、この問題も解決したのです」。
Slack 導入前はメールをこまめにチェックしていなかったチームメンバーもいたと話すのは、Nexomics で Manager of Central Specimen Reception を務める Simon Fox 氏です。
「Slack を第 2 画面で実行させ、メンバーが通知を読んだことを確認できるようになったことは、私たちにとって大きなものでした」と Fox 氏は振り返ります。 「つまり、メンバーと個別に話したり、コミュニケーションのためにちょっとした打ち合わせをしなくてもよくなったのです」。
Nexomics ではチーム内の効率アップとカルチャー強化のために、次のように Slack を活用しています。
- #path_management に内部の重要業績評価指標(KPI)をアップロードしてマネジメント会議を行う
- #roster に 6 週間分のシフトスケジュールを投稿する
- #path_news で同僚が発表した論文を共有する
- #kudos で、メンバーのすばらしい仕事を賞に推薦・認定する
- #social や #xmas_2019 で、ホリデーパーティーでの借り物競争などチームビルディングイベントを企画する
Nexomics では Slack 導入によって、同僚がどんな仕事をしているか見えるようになったほか、病理検査ラボの責任を強化し、チームの士気を高め、さらには全体的な効率アップにもつながりました。
「Slack チャンネルでリマインダーや絵文字リアクションを設定しておけば、1 日に何度も行う必要があるタスクもきちんと実行できます。膨大な仕事に追われるなかでもミスを防ぐことができるのです」
Slack に重要アラートを組み込んでラボ業務を効率化
Nexomics の研究者たちは、非常にデリケートな生体物質に対して人の命に関わる複雑な検査を行います。 そのため、病理検査ラボの環境は常に厳重に管理されていなければなりません。 Slack を使い始めたことで、緊急対応が劇的に改善し、コストのかさむ中断をほとんどなくすことができたため、ラボの一般的な業務を効率化できるようになりました。
「例えば構内放送による来訪者アナウンスといった小さなことがチームの生産性を妨げます」と Lee 氏は話します。「病理学者は検体を顕微鏡で見ながらボイスレコーダーを使ってメモを取っています。 アナウンスのたびに全員がその作業を中断し、また途中から再開していました。集中し続けることが難しい状況でした」。
Slack を導入した現在、来訪者通知や緊急ではない情報は、ラボの #visitors および #all_pathology チャンネルで共有されるようになりました。 緊急性のない構内放送によって作業が中断されることはもうありません。
また Slack を使い始めたのを機に、ラボの初期対応システムが廃止されました。これは、安全な環境で検体を保管するためです。
「冷蔵庫の温度が長時間適正になっていないと、各検体や試薬が使えなくなるおそれがあります」と Lee 氏は説明します。 「Slack の導入前、温度アラームが作動した際に通知を受けるポケベルを持っていたのはたった 1~2 人でした。 現在は、アラームが作動すると #path_alarms に通知が送られるため、その場で一番動けるメンバーがすばやく対応することができます。
さらに Fox 氏は、患者登録フォームへの記入などの定型タスクに変更がある際、ラボ内のコミュニケーションチャンネルにピン留めし、自動リマインダーで通知しています。
「1 日分のリクエストフォームから見落としたものを探すのはなかなか難しく、膨大な時間がかかります」と Fox 氏は話します。「今では、Slack から 1 日に何度かリマインダーが送られるため、それがはるかに簡単になりました」。
重要な検査結果を待つ医師や患者にとって、検査所要時間は重要です。そんな世界において、Nexomics は Slack 活用で医療イノベーションの最先端に立ちました。 チームの研究者や病理学者は貴重な時間を取り戻し、患者ケアの質を向上させて今後の医療界の可能性に道を拓いています。